アコシトマ パッタキクル ウン ウウェタシタサ  B−PART




 ショッカーという組織があった。
 彼らはテロリズムを以てその目的である世界征服を成そうというテロ組織、秘密結社である。
 その目的も非常識であるが、組織構造の点からしても非常識な点が目に付く。
 彼らの組織に置いては兵隊である戦闘員はショッカーに理想を求めて戦う人間ではない。
 肉体的に目星を付けた人間を拉致し、薬物他の洗脳を以て自由意志を奪い、命令にのみ従う戦闘ロボットに仕立て上げてしまうのだ。
 更には肉体その物をも改造する技術をも開発していた。
 その改造技術によって既に3体の改造人間が作り出されていた。
 そして現在では4体目の改造人間の手術に取りかかっていた。
 今まで多少の問題があった洗脳技術であるが、レビの組織が持ち込んだ特殊な分子構造をした神経薬、原酒(モルト)を基に新たなる洗脳方法が考案された。
 今まで戦力の整備に努めてきたショッカーであるが、時空融合によってシンパから切り離され後が無くなってしまった。
 彼らはその戦力を用いて戦いの準備を行っていた。
 時は新世紀元年12月30日、東京にて様々なイベントなどが行われ、警察も手が空かない時期が選ばれた。
 更に、マスコミのお膝元にて民間への影響の大きい場所。年末に人が溢れかえる新スポット、お台場に決定された。
 ショッカーの幹部と首領がこの計画を練るときにもう一箇所の候補とどっちのイベントを襲うかで検討が行われたのだが、首領の鶴の一声でコンサート会場の占拠に決定した。
 幹部地獄大使は最古参の戦闘員、スピーカーを通じて命令を下す事が唯一の接点である首領の顔を知る最先任戦闘官でもある戦闘員その1に訊いた。

「何故首領は天蓋付き全天候野球場を選ばなかったのだろうか。簡易な造りのテントでは敵の攻撃を受け易い。ハッキリ言って野球場を襲撃した方が社会的に影響が大きい人質が見込めるし会場は密閉されている。立て籠もりには最適なのだが・・・?」
「ああ、それは・・・前から首領は熱心なG党でしたから。昔はG軍が負けるたびに不機嫌になられてましたからね、今はまだましな方ですよ」
「・・・・・・なるほどな」

 首領の意外な一面に面食らう地獄大使であったが、そう言うこともあるかと思い直した。
 自分も含めて、例えそれがどの様な物で有れ、己の私利私欲を満たすために自ら志願して戦いの準備を進めてきたのだ。
 ショッカーに拾われるまでは地味な革命家に過ぎなかった自分が今では想像もできなかった戦力を率いているのである。
 自分の理想を追求できるので有れば、首領の趣味など些細なことではないか。


 結局会場周りに不審な点を見つけられなかったつとむinバーディーはコンサート開始時刻になった為、会場内に入っていった。
 会場内に入った千川つとむは比較的前の席に座りパンフを見ながらジュースと菓子の準備をしてソワソワしながら座っていた。

<ちょっとツトム、そんなにソワソワしてどうしたのよ>
「だってこの会場に敵が現れるかも知れないんだろ? そりゃソワソワもするさ」
<でも私達がやらなきゃレビのばらまいたスピリッツの犠牲者が増えるかも知れないのよ。仕方ないじゃないの、しっかりしてよね>
「・・・・・・」

 たまたま会場の廊下でつとむを見つけていたつとむの同級生である早川夏美は、近くの席からそんな彼の様子を見ていた。
 様子を見ているとどうもコンサートが始まるのを待ちきれずウズウズしている感じではない。
 そんな挙動不審なつとむを見て彼女は呟いた。

「どうしたんだろう、つとむくん。変なの」

 以前の事件から「彼女」の存在について捜索無用とクギを刺されていた夏美は最近つとむの事が気になってはいたのだが、どことなく近寄りがたく感じていた。

 事件が起こったのはコンサートが始まって1時間、ステージと観客席の熱狂が最高潮に達した時ショッカーは行動を起こした。
 自動小銃を構えた戦闘員15名が突然に非常口を開け放ち銃を振りかざしつつ素早くコンサート会場の中心ステージに駆け上がったのだ。
 彼らはそこで司会をしていたアナウンサーを銃底で殴り倒すと口から赤い血を流し気絶している彼の手から黒尽くめの装束に身を固めた戦闘員がマイクを奪い取った。
 そしてそれを彼らが確保した通路から整然と現れた男に手渡した。
 その姿を見た者達は、それを仮装パーティーか何かと勘違いした何処かのバカが暴れたか、何かのアトラクションではないかと思い浮かべていた。
 それはその男の次のセリフによってより強固な物となってしまったようだ。

「静かにしろ! この会場は我々悪の秘密結社ショッカーが占拠した!」

 その言葉は会場のお客にドッと受けた。
 余りにも昔から流布されてきた典型的な悪の秘密結社の連中が喋りそうなセリフを一字一句間違いなく喋るとは、良くこの手の番組を研究しているなぁ等と言った独り言も聞こえてくるほどだったのだが・・・勿論本人は大まじめであったのだ。
 自分の予想と違う観客達(総員5000名余り)の反応に蜘蛛男は苛立った。

「テメエら、舐めてるんじゃねぇぞコラっ!」

 だが、世の中には直ぐ調子に乗る連中が多いと言うことを認識しておくべきだろう。
 具体的な例で言えば成人式の会場で市長の祝辞の最中に酒盛りしたり大騒ぎした挙げ句、あのよぉ祭りじゃ目立ったモン勝ちよ、目立ったモン、とか言い出すような人間のことなのだが。そう言った人間のひとりがヘラヘラと笑いながら観客席の垣根を乗り越えて舞台に上がってしまった。

「ははははー、なに言ってんのヨ テメー。バッカじゃないのかヨ、こんな所に出てきてヨー、秘密もナンもねーっつーのヘーンだバーカ。こんなお面して何考えテンだアホー」

 彼は蜘蛛男に顔を近付けながら、あからさまに「舐めています」と言った顔をしてそう言った。
 そして彼がそのマスクを剥がしてやろうと顔に手を触れた瞬間、蜘蛛男は戦闘員から機関銃を奪い取ると至近距離からその男の胴体に音速の鉛玉を十数発叩き込んだのだ。
 一瞬ブスブスと言ったくぐもった音がした瞬間、男の背部から赤い煙が撒き散らされた。
 その瞬間、会場は一瞬にして静まり返ってしまった。
 シーンと静まり返った舞台の上で男の体はまるでスローモーションのように後ろに崩れていった。
 ドッと床に崩れ落ち、辺りは男の動脈から吹き出す鮮血によって染められていった。

 ひとりの女性が上げた悲鳴をきっかけに観客席は騒然となった。
 パニックに陥った彼らは次々に席から立ち上がろうとした、しかし辺りを固める戦闘員達が一斉に機関銃を天井目掛けて撃ち始めたのであった。
 勿論、銃になれていない日本人だけに全員が床に伏せたわけではなかったが、鎮静効果という点では最適だったようである。
 ようやく静かになった観客席を睥睨し、蜘蛛男は満足そうに肯いた。

「ようやく分かったか。我々、秘密結社ショッカーは躊躇しない。我々の造り上げる世界にはあのような人間は不必要なのだ、お前らもそうなりたいのか? 違うので有れば静かにしていろ。おい、戦闘員、それを片付けて置け」
「イーッ!」

 未だに痙攣を続ける男の死体は黙々と行動する戦闘員によって直ぐに片付けられたが、その血の跡は残され、その事実が夢ではないと観客達に訴え続けていたのである。

「戦闘員、楽屋の連中はどうした。直ぐにここへ連れてこい」
「イーッ!」

 命令を受けた戦闘員は直ぐに駆け出すと舞台袖から姿を消した。
 楽屋に於いていきなり機関銃を持った戦闘員に襲撃を受けた彼らアイドル達は、マネージャー達共々成す術もなく手を上に上げていた。
 それまで楽屋の一室に閉じこめられていた彼らは前後を戦闘員に固められながら舞台へと追いやられていた。

   そこから出てきたのは二〇名。
 星野スミレ。
 ソニィ率いるロックバンドNOVA。
 黒沢ゆかり。
 クリィミーマミ
 フラワードリーム・ナナ
 帝國華撃団とお付きの大神一郎
 そして先程舞台で喝采を浴びていた希代の魔術師マジカル・エミである。
 彼らは舞台の真ん中で周りを自動小銃を構える戦闘員に囲まれ、身動きできずにいた。
 もしも彼らが逃げ出せば、ショッカーの連中は躊躇いもなく密集した観客に向かって銃弾の雨を降らせるであろう。
 少なくとも数百人の単位で死傷者が出ることは必至であるだけに、誰も身動きが出来ないでいたのだ。

 今回のこの大コンサート、TV局によって完全生中継されていた。
 その為、警察の動きも早かった。
 ここで遅ければ警察の威信は丸潰れだからだ。
 まず駆けつけたのは所轄の湾岸署の刑事と警官達だった。
 直ぐに周辺に警戒線を敷き、周辺から人払いを行い新たな混乱を避けた。
 既にマスコミが動き始めていたのだが、未だに中の様子は完全に生中継されていた為抜け駆けを行おうとする者は居ないようだった。
 次に現場に到着したのは警視庁から一番早く駆けつけた刑事である。
 彼は自動車を止めると直ぐに駆け寄り、警察手帳を提示しながら黄色いテープを潜った。

「所轄の刑事さんはいませんか!?」

 彼が呼びかけると近くにいたトレンチコートを羽織った若い刑事とダウンコートを着込んだ老刑事が来た。

「所轄の方ですか?」
「あ、どうもー。湾岸署の青島ですー」
「同じく湾岸署の和久だ。アンタは?」

 青島が差し出した名刺を受け取っていた彼は慌てて和久に答えた。

「あ、済みません。私以前警視庁に派遣されていた「未確認生命体特捜班」に所属していた一条です。よろしくお願いします」
「以前は? って事はよぉ今は本店じゃねぇってのかい?」
「いえ、この度、特殊犯罪課が創設される事になりまして、その件で警視庁へ向かう途中だったのですが、ニュースで犯人を見たところ、私が担当した事件に類似する犯人像だったので慌ててこちらへ駆けつけました」
「ほー。熱心だな、で、あの中にいる犯人・・・って言うか仮装パーティーの連中に心当たりがあるのかい?」
「ええ、姿形に類似点が多いのですが。ほぼ間違いなく別人ですね。ですが、彼らが人間を超えた能力を持つ存在であることに変わりはありません」

 そのセリフに和久は感嘆の声を漏らした。

「ふーん、そんなに凄いのかい、あいつらは」
「私の知る未確認生命体と呼ばれていた犯人達は鉄板をも引き千切る身体能力の持ち主でした。恐らくは」
「ふぇー、怖い怖い。俺にとっちゃほとんど子供番組の中に出てくる怪人としか思えねぇなぁそいつぁ」
「ええ、それで間違いないと思います」
「そいつぁ拙いなぁ」

 何しろ通常彼ら刑事達は拳銃の携帯すら行っていないのである。素手で鉄板を引き千切る相手にどうしろと言うのだろうか。

「本店自慢のロボットでも持ってこなくちゃ話しにならないぞ」
「和久さん和久さん、ロボットじゃなくてレイバーですよ」
「モツだかレバーだか何だか知らねぇがとっととしろッてんだよ。まったく。・・・おっと、押っ取り刀で本店のお出ましだぁ」

 和久刑事が見る道から次々と覆面パトカーが駆け込んできた。
 ゾロゾロと本庁の捜査員達が中から降り、テント近くに仮設しつつある対策本部に歩いてきた。

「警視庁捜査1課だ、所轄の刑事は?」
「はーい、ここでーす」
「で、状況は」

 それから現場は外部の侵入(マスコミ、野次馬に紛れて増援の可能性も捨てきれなかった)と内部の封鎖及び偵察などに追われた。
 湾岸署の人間も手すきの者達はほとんど駆りだされてこのテロ事件の対応に追われてしまった。
 その殺気立つ現場に、いつの間にかもっさりとした、だが刑事独特の雰囲気を漂わせた男が現れた。
 彼は青島刑事に目を付けるとスタスタと歩み寄り、妙に苦み走った顔をしながら警察手帳を提示した。

「状況を教えちゃくれないかな?」

 トレンチコートに身を包んだ四〇代のその刑事は「RYOMA」ブランドのタバコを口にくわえたまま青島刑事に声を掛けた。

「あなたは? あ、私、青島という者ですぅ。ドゾよろしく」

 そう言うと彼は「湾岸署刑事課所属」とネーム入りの名刺を差し出した。
 だが、相手はそれを受け取らずに自分の所属を告げた。

「三課の転だ」
「コロンボ?」
「転(ころび)だ! 」

 その名を聞いた青島と和久はポンと手を打った。

「ああ、あの本店の」
「一回り以上年下の」
「キャリア組の倉見雛子女史を」
「光源氏計画で」
「嫁にしたことで有名な」
「あの」
「逆タマキング」
「「 転警部 !!」」

 ふたりが大きな声で解説した為、周囲の人混みの関心もみんな転警部に集中してしまった。
 転警部もギリギリと歯を食いしばりふたりを睨み付けたが、顔を真っ赤にしていては迫力も何もあった物ではなかった。
 しかも背後から「へー、人は見かけに・・・」とか「ムッツリすけべ」とか「もしかしてロリ?」等と聞こえてくるのだ。
 警部はクルリと振り返ると近くにいた警官に怒鳴った。

「おいっ!! 誰か拳銃を貸せっ!!」

 今回の作戦には現場指揮官である蜘蛛男を筆頭に改造人間が計4人も姿を見せていた。
 現在のショッカーに存在する改造人間の全てである。
 実用型改造人間として第2の生を受けた蜘蛛男であったが、流石に人間の数十倍の戦闘力を持つ改造人間が勢揃いする光景には我ながらショッカーの実力に惚れ惚れした。
 この戦力をこれから自分が率いて戦うのだ。
 武者震いに襲われないわけがなかった。
 ここに揃った改造人間共はショッカーがスカウトしてきたあるマッドサイエンティストの手によってその改造手段が編み出されていた。
 その為、幹部候補生であった彼は志願して自らの肉体を実験材料に捧げ、その第1号となった。
 しかしそれ以降の改造人間の素材となった人間達は彼らショッカーの人間が目星を着けてきた健康で能力に優れた人間を拉致し、脳改造(ロボトミー手術)を行うことによってショッカーに対する忠誠と命令を聞かせていた。
 その為、彼、蜘蛛男のように自己判断が素早くなかった。
 第2号蝙蝠男は自衛隊の戦闘機パイロットを拉致。肉体改造を施した後にその前頭葉を切り離しその部分にマイクロチップを埋め込んでいたのだが、興奮作用が強く出過ぎ単独での作戦行動は不能。
 第3号蟷螂男はプロボクサーを拉致。肉体改造後に聴覚野に暗示機能を持たせたマイクロチップを、快楽神経であるA10神経には神経を刺激する電極を埋め込んだのだが殺人狂になり、これもまた単独行動は不能であった。
 その為、第4号の飛蝗(バッタ)男としてはプロのバイク乗りを拉致し、別組織から入手した新型の薬物「スピリッツ」を元に精製した洗脳用の薬物による洗脳を行うことになった。
 元々、戦闘員の洗脳手段として薬物等を併用した洗脳手段は確立していたのだが、改造人間の素材ともなる優れた人間には効き目が薄く、また肉体改造による耐薬物効果の向上にも伴って改造人間製造計画から外されていたのだ。
 しかし、時空融合後に接触した他の犯罪組織が提供した「スピリッツ」と呼ばれる薬物にはそれまででは考えられないような薬効があった。
 判断力を奪わずに完全な洗脳が可能であったのである。
 だがまだ実験段階である新方式にも関わらず、何故かそれを用いた4号の改造手術は急ピッチで執り行われたのである。

 蜘蛛男はその日の事、1ヶ月前の夜、改造術式室での出来事と会話を思い出していた。
 今回の計画が決定した会議の直後のことである。
 長い間ショッカーへの勧誘を続けられていたその男は、遂にその考えを曲げずショッカーの戦闘員達の手によって拉致され、今、手術台の上に縛り付けられていた。
 男の名前は本郷猛、プロのバイク乗りにして空手他の武術の使い手としても有名な男であった。
 本郷は鍛えられた体を激しく動かし、その拘束から逃れようとしていたが無駄だった。
 いよいよ手術という段になっても彼は抵抗を続け、その無念の思いは叫びとなって現れていた。

「ぅうおおぉぉおおおおおお!!! 止めろぉおおおおショッカァアっ!! ぶぅうっとばすぞぉおおお!!!!!」

 だがそれも虚しく、彼の肉体は怪奇バッタ男へと改造されてしまったのである。
 そして、スピリッツを使った洗脳も順調に進み、今日のこの日に何とか間に合わせることが出来た。
 現在の所、洗脳は上手く行っている様子である。
 しかし、現在、蜘蛛男の脳裏にはひとつの引っかかりが存在していた。
 あの時、彼は先輩であり、創成期の構成員でもある戦闘員その1に先程の会議の会話で気になった事を聞き、その答えを貰ったのだ。

「しかし、G軍ですか。何故そんなに首領は拘るのでしょうか」
「さぁてな、元一般市民に元代議士の考えなどわからんよ」
「元・・・代議士ですか?」
「む、知らされていなかったのか?」
「はぁ、初耳です」
「そうか・・・まぁ自らその身をショッカーに捧げたキミになら話しても良かろう」
「是非聞きたいです。No.1」
「うむ。誰もおらぬな」
「ええ、問題有りません」
「元々ショッカーは政府の自国民政策の一貫として政府組織によって創り上げられた物なのだ」
「なんですって?!」
「ああ、考えても見たまえ。これだけの技術とそれを支える人材、資金。秘密結社にしては潤沢すぎる。そうだろう?」
「はい」
「増えすぎた人口を調整するために、政府自らが創り上げた国民の敵、ショッカー。ショッカーの憎むべきテロリズムにより政府は無念にも国民を守りきることが出来ませんでした、誠に遺憾に存じます。国民の皆さんを守るためにも我々は警察力、そして軍事力の強化を行い、国民の皆さんを国内外の敵から守りきる所存であります。何卒ご理解の上ご協力下さい、とな」
「それは・・・」
「そう、警察国家、全体主義への道だ。そして我々ショッカーの最終目的とも一致する、そうだな?」
「それは・・・そうですが・・・」
「そしてある代議士が将来のポストと引き換えにこのプロジェクトの推進役に付いた、それが我らの首領だ」
「しかし・・・」
「そう、しかし近年になって少子化によって国民の数は減少傾向にあり、ショッカーは政府にとって百害有れど一利無しと判断された。もっとも高齢者の切り捨てに使用するという案も有ったのだが、潰されたようだな。そしてこの計画がばれれば政権交代は間違い無しだ。斬り捨てられたのだよ首領はな」
「・・・・・・」
「3年前」
「3年前?」
「不名誉なことで代議士生命を断たれた代議士を憶えているかな?」
「・・・たしか、熱烈なGファンで自宅に収蔵品の山を築き、それに飽きたらず選手宅に忍び込み御用となったあの?」
「ああ、あれはでっち上げだ。あれ以来誰も彼の言う言葉を聞きはしない。もっとも熱狂的なGファンというのは自他共に認めていたがね」
「それが我らの!?」
「まぁな。そして今回の時空融合のどさくさで代議士に返り咲こうと色々と努力をしたらしいが、現政権は優秀な情報機関を持っているらしいな。その醜聞はしっかりと調査されていたらしい。ブラックリストのNo.100だと愚痴っていたよ」
「それで今度の実力行使を実行しようと決意したと」
「まず、間違いなかろうよ。それでもGファンであることを止めようとしないのは・・・愛・・・かな? ふはははは」
「ははははは・・・」

 真実を知った彼には虚しい笑いしか浮かんでこなかった。
 だが、首領はどうあれ、自分の努力次第ではショッカーの本来の目的を果たすことも可能だと彼は考え、その後も作戦に向けて努力を続けていたのである。

 ステージ上に集められているスター達、それぞれが秘密にしていたのだが、実はそれぞれ歴戦を乗り越えてきた実力の持ち主達である。
 この程度の敵など、あの自動小銃さえなければ自分たちでどうにか出来るのにと歯噛みしていた。
 ふと、それを漏らしてしまった大神の言葉にエミは聞き返した。

「本当にどうにか出来るの? あの人達凄く強いみたいだけど?」
「大丈夫だ。オレ達はあれ以上の敵と常に渡り合ってきた。長い監禁で観客の方々も疲れてきている。早く何とかしなくちゃならないんだ」
「あなたは良いとしても、他の人達が人質にされてしまったらどうするんですか?」
「それは大丈夫だ。歌劇団のメンバーは全員が武術の達人でね、あの戦闘員が素手だったらここにいるスタアの方々を守ることは出来るんだよ」
「おっと、そいつは聞き捨てならないな」

 その会話を黙って聞いていたバードが異論を吐いた。

「あなたはバードさん」
「ああ、オレとソニィも修羅場は潜っている。並み以上の人間が相手でも問題はない。なぁ」
「ええ、忌まわしかったこの体だったけど、役に立てるんだったら喜んで使ってやるわ」
「そう言うことだ、出来れば歌劇団の方々にはウチのメンバーの護衛をして貰いたいな。彼らは普通の人間だ」

 大神は暫くバードとソニィを見ていたが、ふと彼らの雰囲気があの獅子王凱の持つ雰囲気に似ていることに気付いた。
 彼は、そう自分のことをサイボーグと呼んでいた。

「あなた方は・・・サイボーグ、と言う者なのですか?」
「外観で分かるか? ただ者じゃないな、アンタも」
「ええ、以前サイボーグの方と一緒に戦ったことがありまして、雰囲気が一緒なんですよ、あなた方と。・・・そうですか、ではみんなにはステージ上の護衛をして貰って、僕らであの改造人間を倒すと」
「それが良いだろう。出来れば観客の目が無ければいいんだがな」
「ああ、そうですね。ボク達としてもうちのスタア達がお転婆であることを宣伝しても仕方ないですからね」

 あくまでも自分たちが帝國華撃団である事を秘そうとし、大神はそう言った。
 が、それを漏れ聞いた華撃団の女性達の目が冷たい。
 それに焦った大神は慌てて言葉を繋いだ。

「それはともかくとして、問題は敵の戦闘員の配置ですね。奴らに自動小銃を撃ちまくられたら目も当てられない」
「ああ、ここにいる奴らを倒しても隠れているのがいたらその時点でお仕舞いだな」
「現在ショッカーの戦闘員達は10名が舞台の前を固めるように小銃を構えて警戒中。残り5名が我々の周りを取り囲んでいる」

 大神の現状解析にバードは黙って肯く。

「同じく怪人達は4体、奴らはボク達と同じ舞台の上で戦闘に備えて警戒しながら休憩中。それに対してこちらには満足な武器もない。徒手空拳での戦闘しかない。勝てるでしょうか?」
「オレは・・・こっちの方が慣れている。まぁ、あの改造人間はオレとソネット、サイボーグに任せてくれ」
「ソネット? ソニィさんじゃ?」
「ああ、芸名さ」
「それもそうですね、愚問でした」

 などと作戦を立案し始めたが、それをショッカーの連中に聞かれないように小さな声で話していたとは言え、スター達は一ヶ所に集められていた為その内容は人質達の間には聞こえてしまっていた。
 それを興味津々に聞いていたのはアイドル歌手のフラワードリーム・ナナであった。
 ナナはフワリと広がった髪(実はカツラ)の中に仕込んであった通信機を使って、外にスタンバイしていた何でもござれのエキスパート、通称スガちゃんにコンタクトを取った。

「ねぇ、聞こえたスガちゃん」
『ハイハイ、聞こえてましたよ。えーとですね。テントの外に配置されている戦闘員はいないようです。狙撃の防止でしょうけど、ほとんど素人の手口ですね。あとそれから情報ですけど、政府は対テロ用の特別チームの出動を検討中のようです』
「え、それって不味いんじゃない?」
『はい、人質奪還をモットーにしているとは言え、SWATの一種には違いないですから、手荒い方法で制圧する筈です。下手をすると死傷者が出る可能性が・・・』
「ふぅーむ、急がなくちゃならないわね。どうやって知らせようかしら・・・。そうだ(ニヤり)」

 何を思い付いたのか、ナナはひとりほくそ笑んだ。
 バード達が計画を詰めていると突然横からナナが口を出してきた。

「ちょっと良い? 今調べてきて貰ったんだけど対テロ部隊が動き出すかも知れないの」

 その突然の忠告に彼らは驚いた。

「一体、キミはどうやって外部と連絡を取ったんだ?」
「えっと、アマリリス騎士団の海くんに」

 突然話題を向けられた森村海、仮面に頭部を覆われたナナの5人のバックコーラスのひとりは驚いてしまった。
 驚いた顔をして(と言っても仮面に隠れて表情は分からないが)頻りに自分を指さした。

「彼、忍術の修行をしてたから気配を消して行動するのが得意なの。一度なんか彼が気配を消して更衣室にいたのに気付かないでシャワーシーンの撮影をしようとして・・・全部見られちゃった」
「ほぉ〜。大したスケベだな」
「海くんって言ったっけ? そう言うことをすると嫌われるよ」 大神一郎、経験者は語る。
「な、ナナ! あれは、疲れて眠りこけていたらお前が!」
「しっ! 海くん余り大きな声出さないで。奴らに聞こえちゃうじゃない」
「むぐっ」

 思わず口を噤むが、その場にいる女性陣の目が痛い。ついでに言うとアマリリス騎士団の他の4人の視線は殺人的ですら有る。

「で、さっき彼に気配を消して見てきて貰ったんだけど、このテントって人の出入りを制限するためにしっかりした造りになっているけど構造自体はすっごく簡単なの、建物の外で牽制している戦闘員はいないみたい。この建物の中にいる15名+4体で全部よ」
「そうか、分かった。参考になったよ」

 バードはナナからそれを聞くと直ぐに海に向き直った。

「所で海、対テロ部隊の事はどこで聞いた? 警察にコネでもあるのか?」

 突然の鋭い質問に海は口ごもった。何しろ実際には彼は何もしていないのだ、とは言えここで不用意なことを言ってしまいナナ、と言うかナナの本性である怪盗アマリリスに愛想を尽かされることがイヤだった。

「・・・ボクの叔父さんが警視庁三課にいるんだ」
「ほう? しかし、三課と言えば物取り相手の筈だが?」
「・・・身なりはヨレヨレだけど中身は凄い人でさ、何か感じ取ってきたんだと思う。怪盗アマリリス専従班だったけど、ここの所アマリリスが出てこないから駆りだされたのかも知れないけどね」
「そうか、しかし対テロ部隊というと、警視庁のあの忍者部隊か?」

 幾ら海が先を読んで行動しているとは言え、流石にそこまではナナのセリフから読みとれなかったので何と言おうかと悩むが、直ぐにナナからフォローが入った。

「それか緊急特殊部隊のERETか、どのみち急襲による制圧になるから、人質に怪我人が出るかも知れないわ」
「そうか、・・・ではさっさとやるしかないな」
「見たところ、全ての指示はあの蜘蛛男が出している。恐らくアイツを無力化すれば」
「だな。それで行こう、バッタとコウモリ、カマキリはどうする」
「じゃあカマキリはアタイが」
「コウモリはアタシね」

 蟷螂男と蝙蝠男にはそれぞれ霧島カンナとソニィがすかさず立候補した。

「後はバッタか、」

 バードと大神は悩んだ。
 戦闘員達からスターを守る為の護衛役の華撃団からこれ以上手を抜き出したら、スター達の方が危なかった。

「仕方ないわね、じゃあアタシが拘束するわ」
「ナナさん、そう言う無茶は止めて下さい。あなたには無理です」
「オレもそう思う」
「うふ、勿論アタシはただのか弱い女の子ですから。私の親衛隊、アマリリス騎士団にやって貰いまーす、言う訳でお願いね海くん」
「おいおい」
「だって、わたし普通の女の子だし、テロリスト相手に立ち回りなんて出来ないもーん。そうでしょ海くん」
「ああ、分かったよ」

 お気楽に言うナナに海は呆れた声で返したが、その事自体については文句はないようだった。

「いいけど。おれ手加減できないぜ。こう云う奴ら大ッ嫌いだからよ」
「アタシも」
「オレも」
「みんなそうでしょ、やっぱり」
「だな、じゃあそう言うことだ」

 バードは呟き、大神とソニィ、そしてナナと海も頷いた。
 大神は小声で華撃団の面々に指示を与えると、いつでも動けるように心構えをして置いた。
 それで肝心要の自動小銃の無力化が再度懸念となった。

「ねぇ、エミさん。本当にどうにか出来るの?」
「ええ、多分。自信はあるわ。この魔術師・マジカルエミにお任せね。失敗したら失敗したでタイミングを取るから」
「本当に大丈夫なのぉ?」
「イッツ・ショーウ、タァイム」

 エミはひとつウインクをするとおどおどと立ち上がった。




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