結局あのあと5機ほどの戦闘ロボットのテストがありました。
それぞれのデーターを出しても良いんですが、面倒なので省略しますね。
艦長達はSCEBAIの所長、岸田博士と会見した後、今度は博士自ら運転したアルミボディも輝かしいオールドタイプのベンツに乗って帰ってきました。
それを見たセイヤさんが目を輝かせていましたけど、まぁいつもの事ですね。
現在ナデシコは低電力モードで動作しています。
取り敢えず戦闘以外の標準的な生活は可能なわけで、今日はナデシコの皆さんも艦内にお泊まりです。
明日からの休暇はほとんど両舷休息になるようです。
ミナトさんとメグミさんは近くの温泉に行く計画を立ててました。
わたしも誘われましたが、今回はパスです。
艦長と副長はSCEBAIで今後のディスカッション。一応責任者ですから仕方がないですね。
提督はミナトさん達とは別に温泉に行くって言ってました。
プロスさんとゴートさんは東京に出張です。
どうも契約書の一部に不明瞭なところがあったそうで、いつも契約書を良く読んで下さいねと言ってる割には不手際ですね。
それはさて置いて、私はナデシコで留守番です。
特にしたいこともありませんし、思兼と話をしてる方が楽ですから。
あ、そうそう、食堂はホウメイさんのご厚意で一応開けて置いてくれるそうです。
まぁ、全員が全員出て行く訳でもないですから、整備班の人達は全員近くの繁華街で英気を養うとの事ですけど。
そう言うわけでもう夕方ですし、食事にしましょう。
一応警戒体制を取って置いて、あとは思兼、お願いしますね。
<どうぞ、ごゆっくり>
<また明日お会いしましょう>
よろしくね。
食堂はいつも通り混んでいますね。
「ナデシコは宇宙軍の宇宙戦艦なんかと違い、福利厚生に力を入れていますから、ハイ」
て言ってるプロスさんの言葉に嘘はないようです。
特に食堂の責任者のホウメイさんがしっかり管理してますから、ここは和洋中の他にも世界各国の料理が食べられるのが自慢だそうです。
「こんな食堂なんて、地上のレストランにもないよ。アハハハ」何かと私に気を掛けてくれるホウメイさんは笑ってそう言ってました。
他にも大浴場にはコーヒー牛乳(瓶)が完備され娯楽室には卓球台やエアホッケー、ビリヤード台まであります。
さすが民間企業のネルガル重工所属と言った所なんでしょう。
さて、夕食です。
「あ、ルリちゃんいらっしゃい。何にする?」
私がカウンターに近付くとコック兼パイロットの天河さんが声を掛けてくれました。
さっきまでパイロット勤務だったと言うのにご苦労様です。
「チキンライスお願いします」
「ハイよ、チキンライス1丁」
「天河、あんた作ってくれないかい? いま手が放せなくってさぁ。この前作ってくれた腕前なら大丈夫だろう、頼むよ天河」
「は、はい! 分かりました、」
天河さんは目を輝かせてホウメイさんに返事しました。
こう云う所を見るとやっぱり天河さんてコックさんなんだなと思います。
「ルリちゃん、腕によりをかけて作るから座って待っててね」
「ハイ、よろしく」
それからしばらく私が席について待っているとわざわざ天河さんがトレイにチキンライスを乗せて持ってきてくれました。
呼べば取りに行くのに、わざわざありがとうございます。
「天河さん、呼んでくれれば取りに行きますよ。ワタシ特別扱いはイヤです」
ちょっとストレートすぎましたでしょうか、テンカワさん困った顔をしてしまいました。
「ゴメン、ルリちゃん。キミの気を損ねるなんて思って無くて、そのゴメン・・・」
「そこまで気にしなくても構わないですけど」
「うん、実はさ。このナデシコ食堂ではじめてコックとして作った料理なんだ。だからさ、お客さんが喜んでくれるかどうか知りたかったんだ。ゴメンね」
「いえ、別に構いません。それじゃ戴きます」
「どうぞ召し上がれ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「あの、テンカワさん」
「どうしたのルリちゃん。食が進まないみたいだけど」
「・・・・・・その、恥ずかしいですから、ジッと見つめないで下さい」
真っ赤な顔してます? ワタシ。
「えっ、アハハハゴメンルリちゃん。じゃあオレ食堂に戻ってるから、じゃ、じゃあゆっくり食べてね」
テンカワさんは慌ててこっちを向き頭を掻きながら厨房に駆けていきました。
前方不注意です。 しかも不潔です、ちゃんと手、洗って下さいね。
あっ、
ドンガラガッシャーンと何かが落下する音が響きました。
「コラ、テンカワ! 何やってんのアンタは! ここは刃物や火を使う所なんだから気を抜くんじゃないよ」
「は、ハイ。済みませんホウメイさん」
「ほら、さっさと片づけて、それが終わったら皿洗いだよ」
「分かりましたー」
バカ。
テンカワさんの事が少し心配でしたが、とりあえず目の前の天河特製チキンライスをいただくとしましょう。
むぐむぐむぐ、ゴックン。
パラリとした触感がナイスです。
やりますねテンカワさん。少なくともチキンライスの味はホウメイさんよりもテンカワさんの方が好きです。
「あ〜らルリルリ、幸せそうな顔してるじゃないの」
え、いつの間にかミナトさんとメグミさんが私の前の席に座っていました。
ミナトさん、何をそんなにニコニコしてるんでしょう。
「本当、ルリちゃんが笑ってるの初めて見ちゃった」
メグミさんまで、ワタシが笑ってるなんて、そんな事はありません。
「温泉旅行は決まったんですかミナトさん」
「うん、何とか宿も見つかったし、今回特別に支給された賞与使ってのんびりと一泊二日の旅に行って来るわ」
「お気を付けて、行って来て下さいね」
「ハァーイ! ルリルリ。 で、アキトくん特製チキンライスってそんなに美味しいのかなぁ」
「え、ハイとっても美味しいです」
耳まで熱いですけど、食堂の気温が急に上がったみたいですね。思兼ったらどうしたのかしら。
「あー、ルリちゃん耳まで真っ赤だよ。たーいへん」
まったく、ワタシがそんな事になるはず有りません、気温のせいです。もうさっきからカッカしていけません。
もう、ばか。