<前回の粗筋>
自衛隊が東京都青ヶ島村沖での実弾演習中に発見した使徒「ゼルエル」は自衛隊、GGG機動部隊の幾重にも及ぶ防御戦線を打ち砕き東京湾へと侵入を果たした。
エヴァの殲滅を目的としたゼルエルは川崎沖に浮かぶGアイランドを襲撃、防衛に当たった超竜神、ガオガイガー、エヴァ初号機、零号機、そして弐号機を撃破し勝利の凱歌を上げた。
しかし、親愛なるレイとアスカ、尊敬するガイが地に伏すのをエヴァ初号機の中で感じたシンジは激昂した。
その激しい感情はエヴァの奥底に眠る彼の母親碇ユイの精神を揺さぶり撃破された筈の初号機を再起動させたのだ。
それに伴い急激に上昇したシンクロ率は400%を越え、シンジの肉体と精神、そしてシンジと共にいた火蜥蜴3匹はエヴァ初号機の中に拡散消滅してしまった。
シンジ達を飲み込んだ初号機は体を覆っていた拘束具を弾き飛ばしその内包されていた力を解放した。
その姿は火蜥蜴達の属性をも顕現した様に、蝙蝠の様な翼を広げた禍々しい姿をしていた。
暴走した初号機の力は尋常ではなく、最強の使者たる「ゼルエル」も赤子の手を捻るように手折られてしまった。
その様子を見ていた謎の少年渚カヲルは何処かへと姿を消し、いままで使徒の現れた現場に必ず現れていたセブンすら初号機の敵ではなかった。
しかし、暴走した初号機は活動限界を超えても未だにその活動を止める様子を見せなかった。
初野あやめは地区の地下シェルターの廊下に倒れていた所を同級生の蒼斧 蛍太によって発見されていた。
発見した蛍太は慌てふためくばかりであったが、直ぐ近くに電話ボックスがあることを思い出すと救急センターへ連絡した。
直ちに駆けつけた医療班によって医務室に運ばれたあやめは1時間後に目を覚ました。
彼女の枕元には従姉妹の初野 華が心配そうに就いていたが、うっすらと目を開け意識が戻ったことに気付くと見る見る涙目になって俯いてしまった。
意識の戻ったあやめは華を元気付ける為微笑を浮かべたのだが、その心の中では何か違和感を感じていた。
ようやく落ち着いた華から聞き出した話によると、あやめは意識不明の状態にはなったが脳波その他に異常は見当たらず、後遺症も無い全くの健康体であるとのことである。
あやめは自分がセブンとなって戦っていた事は憶えていたが、初号機との決戦に敗れ姿を消してから後の記憶は無くなっていた。
そしてそれから数日後、彼女は不意に気付いたのだ。
それまでは常に繋がっていたセブンとの交感が途切れている事に。
彼との交流は色々と面倒なことも多かったのだが、厳しさ、そして何者にでも向けられていた優しさ。その存在感はいつしか彼女の中に無くては成らないものに成長していたのである。
その喪失感は激しく彼女を物悲しい気分にさせたのである。
一方、渚カヲルは奥京都の山中にある祠へと姿を現していた。
ここの主神はイザナミ神、別天神(ことあまつかみ、別の宇宙の神)によって作られ天地を創造したふたりの男女神のひとり、神道でのEVEとその息子カグツチを祀っていた。
神話によると彼女は最後に火之神カグツチを産み、その激しい産褥により死に至った。
パートナーであるイザナギはこれに怒り狂い息子であるカグツチを殺してしまう。
カグツチは祟り神となり、現在では日本各地の愛宕(仇子)神社で祀られている。
現在日本の地名に愛宕と名前が付いている場所には過去に於いて激しい災害が起こった事例が多い。
そして、この地に於いても巨大な災悪が眠り続けていたのである。
遥か太古の時代、まだ原日本語の弥生語も生まれていなかった頃にこの地に住みついた人々がいた。
彼らは世界を2分し永く続いた終末戦争に於いて、既に滅び去った伝説上の大西洋上の一大帝国の生体兵器を開発していたチームであったのだ。
そして現在、ここには彼らが敵対する勢力に対抗すべく開発した最高の生体兵器が五千年間の永い眠りに就いているのである。
小川の傍にある小さな祠の横には後年、ここが母性信仰の拠り代となった要因のひとつである洞穴がポッカリと空いていた。
そこには最近になって村外の無思慮な観光者達を寄せ付けぬ為に簡単な板を打ち付けてあったが、念動力を持つカヲルには意味のない物だった。
彼が一声唱えると板は粉砕され、洞穴の入り口が姿を見せた。
山中に響き渡る轟音を気にもしないでカヲルは洞穴の中へと足を踏み入れて行く。
薄暗い洞穴の内部は湿り気が多く、水滴などが滴り落ち決して居心地の良い場所とは言えなかった。
彼が数十メートル進むと、地面に中華文明に於ける四聖獣のひとつ玄武(亀)を象った長径五〇センチ程の石が鎮座していた。
カヲルは胸に掛けていた青黒い勾玉を右手に取ると目の前にかざした。
「アレ、フタツメのフィをともすモノらにつらなるカヲルのみことのりをとなえん。我、名帯びの神と交わりて悪しき魂と戦わん」
彼がその言葉を発すると同時に彼の持つ勾玉から光が漏れだした。
玄武の鎮護岩は振動を始め、弾け飛ぶように転がった。
その下には、有機質によって作られた黄金色の戸が開いていた。
洞穴の中に風が吹き、カヲルの前髪を煽った。
「我らの同胞の仇、そして人類の敵エヴァンゲリオンは必ずボクが滅ぼす」
彼が決意を唱えると黄金色の戸から無数の触手がカヲルに伸び、彼をその体内へと引きずりこんだ。
戦場となったGアイランドの被害は甚大であった。
Gアイランドの象徴たる宇宙開発公団の本社ビルGタワーには無数の流れ弾が当たり、その一部は完全に崩落していた。
また、その城下町たる一般市街に於いてもその三〇パーセントは完全に消失、残り七〇パーセントにも深刻な被害が出ていた。
ただひとつの不幸中の幸いは人的被害がこの災悪にも関わらず過少であったと言う事であろう。避難が迅速に行われていなければこの人工島に住む人口5万人の大都市全ての住民が戦いに巻き込まれ死滅していたかも知れないのだから。
だが、それでも数百のオーダーで死傷者が発生していた。
首都圏間近で行われたこの戦闘の被害を重く見た日本国連合の加治首相は総理大臣権限によって自衛隊その他関係省庁に働きかけ最大限の救助活動の準備を始めていた。
碇唯は地下シェルターの人混みの中、電話を第3新東京市の家族の元へ掛けていた。
シェルターの中は人々が発する熱気と湿度によって不快指数は夏コミ男性向け系のそれに匹敵していた。
電話ボックスから伸びる長い列の最初に並んでいた唯であったが、それでも電話にたどり着くまでに小一時間が経っていた。
彼女が電話番号を押し、呼び出し音がなったと同時に向こうで受話器を上げた。
「もしもし唯ですけど」
<お、お〜唯! 無事か?! 怪我はないのか>
電話に出たのは彼女の夫の碇源道であった。普段の落ち着きは欠片もない口調であったので、思わず唯はクスッと笑ってしまった。
「はい、問題ないわ。まったく、こっちに就いた途端の騒ぎだったでしょ、何もする時間が無くって。困った物ね」
<む、無事なら問題ないな。・・・しかしどうする。今彼らに接触することは困難極まりないと思うが>
「それなんですけど、今現状がどうなっているのか教えて貰えませんか? こっちは情報が混乱していて何が何だか」
そう言うと唯は溜め息をついた。
何しろ彼女がシェルターに飛び込んでからは、頭上から響いてくる不気味な振動と爆音ばかり、ほとんど何の情報も与えられず停電によって闇に閉ざされた室内に閉じこめられ続けたのだ。
シェルターの警戒状態が解放されたのはセブンが初号機によって倒されてから更に2時間も後のことだった。
<そうか・・・、こちらもテレビのニュース特番で流されている情報しか入っていないのだが・・・・・・大変残念な知らせしかないな>
「? どう云うことです」
<テレビでは何も言っていないが・・・恐らく、初号機は暴走している>
「なんですって!」
それを聞いた唯は思わず大声で聞き返してしまった。
興奮によってざわついていたシェルターの中であったが、尋常でない唯の声に室内は静まり返ってしまった。
だが、混乱してしまった唯にはそんな周りの様子は入っていなかった。
「そんな、人間の制御を離れたエヴァンゲリオンは人類にとって最強の災悪に他ならないのよ」
<ああ、日本政府もそこら辺を理解しているかどうか・・・、下手に手を出して刺激するよりはマシだが。しかも現在そのGGGのロボット兵器たちもゼルエルの手によって壊滅状態だ。このままでは・・・>
「このままでは、少なくてもこのGアイランドにいる人間は全員、死ぬわ・・・。一両日中には日本全土が灰燼に帰すでしょう。ああ、何て事、せめて後一日早くここに来ていれば」
唯が言葉を切ると、彼女に注目していた周りの人々の間にポツポツとざわめきが戻り始め、それが一定量を超えた瞬間群衆はパニックに陥った。
例え、それを言ったのが一介の主婦に過ぎないとしても、先程までの恐怖と興奮、そして妙に説得力を持つ唯の言葉は人々の胸に恐怖を呼び起こすのには充分すぎたのだ。
唯は思わず自分が口走ってしまった内容がとてつもなく不穏当な事であった事に気付き後悔した、だが時既に遅く、事態は動き出していた。
唯の言葉を聞いていた者もそうでない者も、興奮のるつぼに叩き込まれ混乱の極地にあった人々は、一斉にこのGアイランドから逃れようと出口に殺到した。
唯はその人の波に巻き込まれないように必死に抗ったが、その圧力は到底抗しきれる物ではなかった。
暫く後、人に押され身動きの出来なくなった怪我人以外いなくなった室内では。
先程まで唯が使っていた電話からは源道の叫び声にも似た声が聞こえてきていたのだが、テレフォンカードの数値がゼロになった瞬間回線が切れ、押し出されたテレカと電話機の音だけが室内に響いていた。
壊滅状態のGアイランドの地上。
未だにGアイランドに於ける戦いに終止符は打たれていなかった。
毒壺の中の最後の生き残り、最強の力を手に入れたエヴァンゲリオン初号機は未だにその活動を止めてはいなかったのである。
だが、戦いの興奮から冷めたのであろうか、彼女は辺りに対する破壊行動を行わずに静かに近くの丘の上に腰掛ける様に鎮座していた。
とりあえずであるが、行動を止めたエヴァの様子を伺いながらGGGのメンバーは彼らの勇者達を回収して回った。
だが、彼らの容態は悲惨の一言に尽きる。
初号機を守るためゼルエルの攻撃を受けた超竜神の損傷は特に大きく、彼らの熱い魂が封じ込められた超AIの中枢付近まで及んでおり、その快復は予断を許さない状況であったのだ。
他、ビッグボルフォッグも加粒子砲の直撃を受け大破し沈黙。
ガオガイガーは右腕の損傷に続き、左腕の脱落、頭部アーマーの破損、脚部両膝関節の崩壊と、考えられる限りの損害を各部ガオーマシンに受けていた。
だが、幸いなことにガオガイガーの中枢を担うガイガーには比較的損害は少なく、中にいた凱の生存も確認された。
また、それに伴いエヴァ零号機と弐号機の回収も行われていた。
エヴァ2機の損傷も激しく、素体は元より外付けの制御機構にもガタが来ていた。
当分の間は修復に時間が掛かりそうである。
さて、彼女が覚醒を初めた瞬間から戦いを終えるまでの間、日本各地の研究所に於いて異常なほどのエネルギーが観測されていた。
不思議なことに、それぞれの研究所が研究していた様々なエネルギーに類似した性質を持った物がそれぞれの観測機器によって観測されていたのだ。
つまり、光子力の研究を続けていた宇宙科学研究所に於いては光子力エネルギーが、ゲッター線の研究を行っていた早乙女研究所に於いてはゲッターエネルギーがそれぞれ観測されていた。
後日、SCEBAIを中心にネットワークを作っていた研究者会議の場に於いて、ひとつの推論が出された。
それは、今回の現象が大統一理論への新たなるアプローチの方向性を示す物だと言う事だ。
だが、まだこの時点で分かっている事は各研究所に於いて異常な観測結果が検知されたと言うことのみ。
弓博士も早乙女博士も首を捻っていた所だ。
しかし、その後の行動がふたりは異なっていた。
あくまで平和主義の弓博士は今回の現象についての観測データーの情報収集に務めていたのだが、恐竜帝国との戦いの経験から宇宙開発よりも専守防衛に重きを置き戦闘用のスーパーロボ、ゲッターGを開発した経緯を持つ早乙女博士は素早いアクションを起こしていた。
元々の開発母機となったプロトタイプのゲッターロボは宇宙開発用の人型を模した作業機械であった。
宇宙と云う過酷な環境に於ける作業は僅かな油断もならない現場である。
その為、ゲッターロボには天体の状態を精密に分析する為の観測機械(特にゲッター線を中心とした)が搭載されていた。
彼は今回の現象の原因を突き止めると言う名目でゲッターGを静岡の新早乙女研究所の基地から緊急発進させようとしていた。
勿論、現在Gアイランドで起こっている一連の事態にちょっかいを出すつもりはないが、異変が起こった際にはいつでも駆けつけられる用意は出来ていた。
地下、GGGの基地機能はここへ集中していた。
その中枢中の中枢、全ての指揮所として機能しているメインオーダールームの面々はGアイランドの混乱の沈静化、そして今も脅威として残っている人類の制御を離れたエヴァンゲリオン初号機に対する対策を必死で練っていた。
だが、全ての勇者達は修理のため出撃は不可能。
機動部隊隊長の獅子王ガイも生命維持回路に不調を来たし整備ベッドの上で固定されたまま。
現在のGGGの戦力は皆無である。
もっとも、お陰で今後の改装計画が繰り上げて実施される事にはなったが、現時点に於いては机上の計画に過ぎない。
こうなると外部の戦力を当てにするしかなかったが、現状に於いて新たなる戦力はエヴァに対して刺激を与えてしまい折角沈静化したエヴァンゲリオンが活動を再開するかも知れない。
迂闊な手を打つわけには行かなかった。
だが、事態の進行は彼らの計画をあざ笑う形で進むことになったのだ。
どぉぉおおおお〜〜〜むぅぉおおっっ!! 長らくお待たせ致しました。
スーパーSF大戦 第十六話の公開を始めます。
う〜むよぉし良し、乗ってきたぁ! と云う訳で今現在バリバリと書いております。
ようやく前半が見えてきたって所ですが。
Aパートは何とか書こうとして足掻いていた形跡があちこちに有り大変読みにくい感じになっておりますが、ご了承下さい。
やっぱり一気に書ききるのが一番読みやすくなりますね。
では、Bパートは直ぐに、Cパート以降は出来次第って事で掲載致します。
17,19話とインターミッションは16話が書けなくなっていた頃に大体書いてしまっていますので、スムーズに出せるはずです。
後はどれだけスムーズにこの話を終わらせることが出来るかに掛かっています。
では感想を宜しく、とっても強力にお願いします。
そう言うワケで。