GGGのエリア4の空間湾曲率測定機により、世界の状況を調べる獅子王博士と、その報告を受ける大河幸太郎長官。

「何が世界に起こっているんですか! 獅子王博士!」

GGGの長官である大河幸太郎は訊いた。
数時間前、GGGオービットベースに接続しているエリアYにある空間湾曲率測定装置から、異常なデーターが吐き出されていた。
それに先立ち、40分ほど前に川崎工業地区に異世界からの来訪者、エヴァンゲリオン零〜弐号機の3機が空間のひずみより吐き出され、ガオガイガーが出動するという騒ぎも発生していた。

「これは大変なことだぞ、データーによると、今、地球はおろか宇宙空間にまでディバイディングエネルギーが溢れかえっておる。つまり・・・」
「つまり?」
「このままでは、世界はバラバラに引き裂かれ、砕け散ってしまうかも知れん」

大河長官は絶句した。

「そんな、そんなバカな事が・・・」


スーパーSF大戦 第3話 すべてのものが集ういまこの時





川崎工業地区に出現し、行動不能に陥ったエヴァンゲリオン3機はベイタワー基地より発進したエリアW・水陸両用装甲車によってベイタワー基地に運ばれた。
エヴァンゲリオンのパイロットの3名、それと緑の羽根を持つ謎の少年、天海 護も彼らGGGによってベイタワー基地まで連れてこられていた。

エヴァのパイロット達は、体に付いているLCLを落とすためにシャワーを借り、エヴァにしまってあった予備の学生服に着替えていた。

「ネルフの制服ならともかく、なんで学生服なのよ」
「そんなのボクが知る訳ないだろ、リツコさんにでも訊いてくれよ」
「無事だったらそれもいいかもね」
「あっ・・・。ゴメン」
「アンタバカ?! いちいち謝らないでよ、もう」
「ゴメ・、うん」
「それ・・・    ・・・私が頼んだの・・・」
「「 えっ? 」 綾波が?」
「エヴァに積んでいた学生服のこと」
「どうしてわざわざそんな事すんのよ、優等生」
「規則だもの・・・。」
「アスカ、ネルフの規則にそんなのがあるの?」
「バカ、ある訳ないでしょ」
「これに書いてあるわ」

綾波レイは彼らに学生手帳を見せた。

「学則第4条2項にこうあるわ、放課後外出する際は学校指定の制服を着用する事。」
「優等生!!」
「何?」
「今時そんなこと守っている人間が一体何処にいるっていうのよ!」
「知らない。規則だもの・・・。それに多分私は2人目だと思うから・・・」
「ハァ!? ちょっとシンジ、ファーストって前から変わっていると思ってたけど、ほんっとうに変わってるわね」
「う、うん。少しね」
「あれが少しって言えるの?」
「う、うん」
「はぁ〜ああ。本当、私の周りって変な奴ばっかいるんだから、まともなのは加持さんだけじゃないの、え〜ん加持さーん」

「アスカ、類友って知ってるのかな?」

「何か言ったシンちゃ〜ん!?」
「いや、何も言ってないよ」
「バカ!!! しっかり聞こえてんのよ!!!」

バッチーン!!


更衣室前の扉から、もの凄い音がベイタワー中に響きわたった。


メインオーダールームにはGGGのメンバーが勢揃いして天海護と綾波レイ、碇シンジ、惣龍・アスカ・ラングレーの計4名を待ち受けていた。

「良く来てくれた諸君!」

メインオーダールームの一番奥まった席上からオールバックにした濃い男が声を掛けてきた。
もちろん、GGGの長官大河幸太郎である。

「さて、エヴァンゲリオンのパイロット諸君、君たちはどうしてここに来たのかな?」
「あの、その・・・、僕たちは使徒を受け止めようとして、あの、それはうまくいったんですけど、なんかその、使徒が爆発したら途中で白いところで漂っていたら何か黒いところが見えたんでそこに行ったらここに来てました」
「?」
「バカ。それじゃ私だって訳分かんないわよ。優等生、説明してよ」
「命令?」
「そうよ」
「あなたに私の命令権はないわ」
「いいから、やんなさい」
「私たちエヴァンゲリオンパイロット3名は、国連直轄の特務機関NERVの作戦科課長である葛城3佐司令代行の指揮の下、人類の敵である「第10使徒」10thANGELサハクィエルを迎撃し第3新東京市防衛任務を遂行したが、使徒の爆発に巻き込まれ所在不明の空間に移動。その後、経過時間不明ののち空間のほころびと思われる特異点を通過したところ、旧関東地区川崎市と思われる地点に出現。現地防衛軍の迎撃を受け、現在に至る。以上です」
「了解した。迎撃の件については済まなかった。つい先日我々も地球外知性体による侵略を受けた所だったのでね。臨戦態勢を取っていたのだよ。さて、これからの君たちの処遇についてだが、・・・・・・・」

大河長官はそこで一息入れた。

「君たちの同意が得られれば、GGGの一員としての待遇を保証しよう」
「それで、同意しなかった場合はどうなんのよ」
「その場合は、エヴァンゲリオン各機は没収。君たちの身柄は拘束と言った所かな」
「・・・・・・何よ、選択の余地なんて無いじゃないの」

国会答弁等政治の舞台でヤリ手の官僚と渡り合っているGGGのメンバーは一筋縄では行かないヤリ手揃いである。

「同意してもらえるだろうか」
「保留期間は?、状況がハッキリするまで答えたくないの」
「そうか、分かった。碇シンジ君、君はどうするかね?」
「えっ、ぼくもアスカと同じでいいです」
「ふむ・・・。綾波レイくん、君は?」
「NERV規則によれば、命令無く下位組織の指揮系統にはいることは禁ぜられています」

実際はGGGはNERVの下位組織などでは無いのだが、戦略自衛隊の例を参照したらしい。

「そうか、それは残念だ。だが、安心したまえ、逮捕拘留はしないよ。我々は正義を行う勇者なのだからね、もっとも監視はつくが」

そう言うと大河長官は警備員を呼んで3人をベイタワー内にある居住区へ連れて行かせた。
3人は居間がひとつと個人用の部屋3つからなる部屋に入れられた。

「ねぇアスカ、僕たちGGGに協力しなくて良かったのかな」
「アンタバカ?! ネルフの最高機密を持ったままホイホイとそんな事出来ると思ってんの?」
「駄目かな」
「もしも、ネルフと連絡が取れたら私たち反逆者よ。出来るわけ無いじゃない、もっともNERVとの関係が完全に途絶したなら話は別だけどね。このままにして置いてもエヴァの秘密は奴らに調べられるわけだし・・・、それならコントロール下に置いといた方が安全てものだもの」
「そうだよ、それに正義の味方って言ってたし、きっといい人達なんだよ」
「ハン、自分で正義だの勇者だの言う人間を信じられるわけ無いでしょ」
「アスカ、悪いよ」
「アンタね、あれだけあからさまに脅迫されて何でヘコヘコこびなきゃならないのよ」
「NERVだって人類の砦じゃないか」
「最高指揮官が、あんな何考えてるか分からない髭親父じゃね。悪の秘密結社って方があってるんじゃないの? あ〜、そう言えばアンタの父親だっけね」
「そんなの関係ないじゃないか」
「フン」
「アスカはエヴァに乗るのイヤなの?」

「そんな訳、ないでしょ! 私は人類を救うエヴァンゲリオンの正式パイロットよ! その為に私は今まで頑張って来たんだから、ポッと出のアンタなんかに、分からないわよ!」


「ゴメン・・・」
「いちいち謝らないでよ、まったく内罰的過ぎるのよ、あ〜ったく! イライラするわね。・・・・・・私寝るから、声掛けないでよね」
「ゴメン」
「バカ!」
「碇くん、食事にしましょう」
「あ、うん。ボクが用意するから綾波はそこに座っててよ」
「そう・・・わかったわ」
「あ〜あ、お熱いことで」

アスカは2人を冷たい視線で捉えた。
シンジは居間に備え付けられていた冷蔵庫から食事のパックを3つ取り出し、説明書きを読んでから電子レンジに入れようとしていた。

「アスカはどうするの、食事」
「いい、食欲ないから」
「ウン、わかったよアスカ。おやすみなさい」
「・・・じゃあね」

アスカは何やら寂しげに個室へと姿を消した。


一方、メインオーダールームではGGGのメンバーが緑の少年、天海 護を取り巻いていた。

「さて、天海 護くん」
「ハッはい!」
「我々はあの地球外知性体に対抗する手段としては武力しかもっていない。だが、あのゾンダーの素体として人間が用いられている以上、その人命を尊重するため君の能力が必要だ。是非、GGGの特別隊員になって貰いたい」
「えっ? でも・・・父さんや母さんに心配掛けるし、・・・」
「是非頼む!」

その時、メインオーダールームの研究班オペレーターを務めているホワイト・スワン隊員(アメリカ軍所属、GGG派遣員兼特別情報部員)がマモルの前にひざまづき、仰ぎ見るように涙目で訴えた。(ちとわざとらし過ぎたが)

「ゾンダー化された人々を救えるのはアナタしかいないのデス、お願い、プリーズ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかりました。ボクで良ければがんばります」
「!良し! それでこそ勇者だ! 我々が、全力で君を守ってみせる」
「よろしくな護くん」

獅子王ガイがマモルに手をさしのべた。
だが、マモルの次のセリフを聞いて少しずっこけた。

「あ、チョベリカチョロンさん」
「なんだい、そのチョベリカチョロンって?」
「えっと、ボクのクラスの女の子が、この前助けて貰ったときにいた女の子なんですけどその子が、超ベリーカッチョイイロンゲさまのことだって言ってました」
「ハッハッハ、チョベリカチョロンか! こいつは傑作だぜ」

GGGで作戦参謀を務める筋骨隆々の火麻 激参謀が爆笑した。

「ねぇ、「チョベリカチョロン」?」

機動部隊オペレーターの宇都木 命までが悪のりする。

「なんだよ命まで、いいかいマモルくん、俺の名前は獅子王ガイ、サイボーグガイだ。命もな」
「ゴメンゴメン、マモルくん?」
「はい、なんでしょう」
「これ、君に渡して置くわ、いつも持っててね」
「これは?」
「GGGポケベル。GGGの隊員専用の身分証になってるの。これでいつでも私たちと連絡取れるわ。ね、ガイ?」
「ああ、マモルくん、これを見てくれ」
ガイはアルティメットアーマーの右胸を開いた。
中から命から貰ったペンダントがポロッとこぼれたが、素早くそれを掴んで隠すと、内部をマモルに見せた。

「これがGGGポケベルの送受信装置になっているんだ。これでいつでもオレと連絡が取れる。何か起きたらすぐにオレに連絡してくれ」
「ウン、分かったガイ兄ちゃん」

マモルは元気良くうなづくとGGGポケベルをじっくりと見はじめた。

「さて、マモルくん」
「はい、長官。」
「これで君はGGGのメンバーとなったわけだが、GGGの事は他の人には絶対秘密にして貰いたいんだ。もちろん君の両親にもね。分かったかい?」
「はい、分かりました」
「それでは、余り遅くなるとご両親が心配するな、ガイと宇都木くんはこれからマモルくんを自宅まで送っていってくれないか?」
「分かりました長官」
「それじゃ行きましょマモルくん」
「はい、それじゃサヨナラー!」
メインオーダールームから去っていくマモルをGGGのメンバーは温かく見守った。


さて、天海護とエヴァンゲリオンのチルドレンの対応をメインオーダールームで行っている間、エリア6・三式空中研究所では獅子王 麗雄博士と研究所員のメンバーが次元歪曲測定器から送られてくる情報を分析していた。
獅子王博士の正面のモニターには3Dの地球が表示されており、異常を示す赤いラインがマスクメロンのように全域に張り巡らされていた。
その範囲は地表のみならず、大気圏を越え静止衛星軌道上にまで広がっていた。

「ふぅ〜む、これはえらいことになったわい」
「どうですか? 獅子王博士」
「おお、大河長官。これを見てくれたまえ」
「これは!」

大河長官は表示された画面を見て、驚愕の表情を浮かべた。

「そしてだ、このシミュレーションを見てくれ。ホイホイっと」

博士は手軽にキーボードを操作すると画面の日付が加速度的に進み、画面の表示も劇的に変化した。
それは日本時間00:00ちょうどにモザイク状のパターンとなり、それぞれに区切られたパターンが明滅し始めたのである。
明滅するパターンの色は次々と入れ替わり1時間ほどで落ち着いた。

「どういうことですか?」
「うーん。これは推測でしかないのじゃが、この荒れ狂うディバイディングエネルギーはこの世界のみならず、平行世界の空間まで引き裂いているようなのじゃ。それが何らかの原因でひとつの世界に集まろうとしている。こうなったら、この世界から消滅するか否かはルーレットで当たりを引くようなものじゃな」
「この現象を収めるにはどうしたら、博士なにか手はないのですか」
「ダーメじゃ、こうなったらボクにもさっぱり手の打ちようがない。こうなったら運を天に任せるしか無かろう」
「博士がそう言うなら・・・。だが、打てる手は打って置いた方が良いですな」
「もちろんジャ、時空が落ち着くまでには、かなりの地震、雷、その他の自然現象が発生しますわい。警察、消防の関連各省庁の厳重なる警戒が一般市民の生命を守る、おおきな盾になるじゃろうの」
「では、私はこれで失礼します。それから、我らの勇者達に出動を掛けるかも知れません。彼らの起動準備を進めて置いて下さい。」
「氷竜、炎竜の事か! しかし、まだ起動実験も済んでいないが」
「背に腹は代えられません。人命救助が最優先です」
「史上初のGSライドを用いた超AIのデビューとなるか・・・。果たして吉と出るか、それとも」
「よろしくお願いします、博士」
「おお、まかせんしゃい」

午前0時まであと4時間、かれらには余りにも時間が無かった。






その瞬間、地球上にいた人間達、いや、生命体すべてが天地がひっくり返るような衝撃を受けていた。


その衝撃は凄まじく、物理的のみならず、精神的な衝撃波すらともなっていた。
ある聖職者はその瞬間、地獄の釜の縁から地獄の住民達がこちらを見ていた様であると表現した。
ともあれ、彼らGGGのあるGアイランドは、川崎近辺の空間もろとも時空融合現象に巻き込まれてしまった。
世界は真夜中にもかかわらず赤く燃え、余剰エネルギーが空間に渦巻いていた。
しかし、死傷者の数は災害の規模にも関わらず驚くほど少なかった。
その影には、起動後最初の出撃で災害救助に駆け回った我らが勇者軍団の姿があったことは言うまでもない。



時空融合が落ち着いた地球は、ほぼ、元の地形をしていた。
だが、その上に乗っている国、組織、団体はおおきくバラついていた。
大小さまざまな国が、文明がこの地の上にばらまかれたのだ、これからの混乱は予想を上回る事はあれど、下回ることはあるまい。
さらに、天空に広がる宇宙にも時空融合の傷跡は残っていた。
静止衛星軌道上には地球を卵の殻のように包み込む白い壁が覆っていた。
これを越えようとする物質はその原子の構造まで破壊され、そのままでは、それを通り抜けることは出来なかった。
ただし、光を除いて。これが、如何なる災害を引き起こすことになるかは、又の話で。


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