スーパーSF大戦外伝
それは新世紀2年6月6日の早朝の事だった。
日本連合が南極方面を監視すべくアフリカ大陸南端の喜望峰に配置した基地にて。
「なんだあ……?!」
当直に備え日課のラジオ体操を行うべく屋外に出てきた数名の隊員達は己の目を疑い何度も目を擦った。
昨晩も遅くまで「力道山&豊登VSアントニオ猪木&ジャイアント馬場はどちらが強いか」と討論していた2人など、「俺達はまだ夢を見ているのか?」とお互いに猪木方式で気合を入れ合いダブルノックダウンした.
結局、その場に居合わせたHM―12(個体の愛称は“ミユキ”)とHM―13(愛称“フブキ”)がそのセンサーで、特にフブキが衛星からのデータで感知した事からようやく事実だと認識できた。
時空融合以来、アフリカを世界から切り離し喜望峰を陸の孤島としてきた天まで届く雲海。それが彼らの目の前で天空の彼方から徐々に消失して行き、やがて完全に消失したのだ。
観測開始、いや時空融合以来、雲海の向こうに隠されていたアフリカの大地も今やハッキリと視認できるようになっていた。
雲海のベールが取り除かれ、眼前に広がるスペクタクルな光景に呆然としていた彼らであったが、ようやく基地から非常事態警報が発せられている事に気がつき、あわてて駆け込んでいった。
時間を少し遡る。マダカスカル島上空に日本連合が配置したインド洋/南極監視衛星は配置以来始めて、アフリカ大陸の全域を観測し始めた。喜望峰を除いたアフリカ大陸中南部とナイル川流域一帯を包んでいた不可視不探知領域、通称<アンノウンフィールド>が消失しつつあったのだ。
喜望峰に位置する監視基地でも夜勤の当直を勤めていたHM―13、愛称“ハルナ”がこの観測が始まって以来の事態に気づき、観測衛星からもデータが入ってきている事を確かめてから基地全体に伝えるべく非常事態警報を発令した。
基地では本国への報告を始めとする観測の準備が慌ただしく進められて行った。
その混乱めいた準備の中でかつてのフィールドの向こう側から「ゾイド連邦より世界へ」という通信が届いていた。通信担当のHM−13“イスズ”が応対に出ようとしたが、英語・仏語・アラビア語・伊語・独語・ヒンズー語・スワヒリ語etc…と、それこそ全世界の代表的な言語(極マイナー語も混在)で大量に送信されてきた為基地隊員が総出で応対に当たっていたが、基地の外から駆け込んで来た隊員の一人が日本語の通信を探し当てた。応対したところ、その通信は若い女性の話すものであった。
この通信を替わった基地司令は世界情勢を簡単に説明した後で、フィールド内の情勢について説明を受けた。
驚いた事にフィールド内では、地球から銀河系中心部を挟み6万光年の彼方にある異星から生態系と、その星の人類並びに地球からのその星への移民たちの子孫、そして元からアフリカに転移して来た人々が共に世界と接したときに備え緩やかな連合国家を形成しているという。そして自分達は平和的に(貿易と世界秩序の維持をもって)世界の仲間入りを望んでいる、とも語った。
「それでは、これからそちらに参ります」
基地隊長が応対していた女性(20歳ぐらいの理知的な声だった)はそう伝えてきた。
たまたまアフリカ上空に差しかかった際に時空融合に遭遇し、フィールドに巻き込まれたという彼女は、自分の船で喜望峰基地まで来てくれるという。
西暦2197年の遊撃宇宙戦艦が自分の船である、との話を聞いた基地隊長は(まるでナデシコのようだ…)との呟きを漏らしてしまったが、相手の女性が通信の向こうでクス、と軽く微笑んだ事に気づかなかった。
そして彼は相手が乗ってきた船を見て絶句するのであった。
「改めまして、日本連合の皆様。この艦は形式番号UN−SF−444B。ゾイド連邦統合軍<ガーディアンフォース>直属、スーパーナデシコ級航宙戦艦<カグヤB>。そして私は艦長のカグヤ・オニキリマル大佐。人類の平和と発展の為、共に生きて行きましょう」
昔話の「かぐや姫」を連想させる、夜空色の長髪が印象的な女性艦長が乗ってきた艦は細かな差異はあるものの、その特徴は間違い無く日本連合所属の宇宙戦艦<ナデシコ>級のそれであった。