作者:OkadaYukidarumaさん

スーパーSF大戦 外伝




 女がいた。

 女は巨大なクリスタルに封じ込められていた。
 黒いベルトに口から、手足から、全身を拘束されていた。
 それでも彼女の感情は、その眼を見れば直ぐに解る。
 彼女は怒りに満ちていた。
 自分を閉じ込めた敵に対しての怒り。そして、罠に落ち仲間にその事も伝えられずにいる何も出来ない自分自身に対する怒り。
 身動き出来ない彼女が今出来る事は、自分が捕らわれた時の状況を思い返す事のみである。


 世界が一変したあの夜。気が付けば自分と仲間たちは根拠地である警察署ごとTOKYOから遠く離れた地に出現していた。
 TOKYOの状況を求めても、交通網、放送通信網、コンピュータネットワークなど尽く混乱しており、求める情報は入手できなかった。
 だが意外なほど短期間で世間も落ち着き、国内の様子が日本中に知れ渡る時が来た。東京の臨時政府が自衛隊経由で日本国内の状況を流し始めたからである。
 これにより彼女と仲間たちも探し求めるTOKYOとは違うけれど、そこに似た懐かしい東京が存在する事を知ったのであった。
 彼女とその仲間達はこの地の自治政府に参加を請われていた。しかし、彼女はそれを断り皆で東京に戻ろうと決意した。
 だがその瞬間、突然現れた者達がいた。

「久しぶりね、姉さん」
「ロ、ローザ!?」

 それは死んだ筈の妹。
 妹に注意が向いたその一瞬に襲い掛かってきた、敵。
 その敵が、封じ込まれた筈の魔剣に操られている仲間であると知った時、時空融合の悪戯で自分にとっての過去が襲って来たと気が付いた。だが時既に遅く彼女は結界に捉えられていた。
 動きを止められた彼女の目の前に全ての黒幕が立ちはだかった。
「殺しはしないよ。貴方の力は今の我々に必要なのだ。あの星の力を受け取る為にね」
 その男の魔術により、結界がそのままクリスタルへと変化して、女を封じ込めていった。
 彼女の意識を奪いつつ。

 彼女が気が付けば、そのクリスタルは無人の空間の中心にあった。
 蛍光灯の光が降り注ぎスーパーコンピューターが迷路を作っている、広大な空間の中心に置かれていた。
 知識を持つ者が見れば、スーパーコンピュータが作るネットワークが、魔法陣を描いている事に気が付いたであろう。
 だがそれを設置した者はその知識を持たずに居たので、自分らが置いたコンピュータが製作者の意図から外れた使い方をされている事に気が付かなかった。
 利用する者は己が欲したデータがどういう経路を辿るかは知る由も無かった。故に彼らは自分達の操作が彼女を封じ込め、そして利用している事に気が付かなかった。
 その魔方陣は彼女一人を封印する為に、そして彼女を媒体として今は遥かに離れた星からの力を受け取る為に作られ、そしてこれまでその目的を果たしていた。
 女は時空融合以来途切れそうになっていた力の流れを、皮肉な事にクリスタルに封じ込まれているこの状態で一番感じ取っていた。
 その力の一部を取り込めるおかげで、封じ込まれていても肉体は死ぬ事無く生き続けていた。
 だが逃れようと力を溜めると、その瞬間魔法陣が動き出し、力を吸い取ってしまうのであった。
 何度試しても逃れる術は無く、星の力を憎い敵が吸い取っていくのを黙って見ているしか無かった。



 そして一年の時は流れた。


 クリスタルの前に男が一人立っていた。
 女を封じ込めた敵である。
 男は笑みを浮かべていた。女を軽蔑し、無力さを嘲笑う、まさに悪魔のような表情であった。
「ふふふ、悔しかろう。己の無力さを呪うがいい。お前の顔をした女が、絶頂にいるこの国の人間に何をするか感じ取るがいい。その瞬間、お前が育ててきた人間はお前たちが守ろうとした人間と殺しあうのだ。さぁ、流血のパーティーを楽しもうではないか。あ〜はっはっはっはっはっはっは・・・・・」
 笑いながら男は身を翻して、女の前を去っていった。
 途切れる事の無い嘲笑が、無人の空間に響き渡っていった。
 後に残るは怒りの表情を浮かべた、封じられた女が一人・・・






− 闇 −

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