スーパーSF大戦 外伝 加治首相の議

第四話 安全保障会議

Cパート 防人達の哀歌

 プロフェッショナルな戦士と自他共に認めるグレートマジンガーのパイロット、剣鉄也は絶望的な戦いを繰り広げていた。ミケーネ帝国との戦いにすら遭遇することのなかった最強最悪の敵に、矢尽き刀折れても更に立ちふさがる敵の数々に、プライドと引き換えにしても逃げ出すことを考え始めていた。

「鉄也〜、がんばってる?(ハート)」

 暗雲を吹き飛ばす清涼な風のような声が響いてきた。その声の持ち主は炎ジュン。剣鉄也の戦友にして恋人(というには鉄也のほうが逃げ回っているようであるが)、そして今は副官として彼を支えている美女である。

「ジュン!後を頼む」(__;)

「こら〜、これくらいの書類で逃げ出すな」(~_~メ)

「そんな事言われても、書類戦争の訓練は受けていないんだ〜」(T_T)

 剣鉄也の現在の戦場である特殊機動自衛隊幕僚長執務室の机の上には、決済を待つ書類がうず高く積まれていた。設立準備段階の組織とは言え、スーパーロボットを一つの戦力としてまとめるために必要な人材がとても足りない特機幕僚監部では、ほとんど唯一必要な知識と経験を持つ剣幕僚長に集中してしまう、避けるに避けられない事務処理であった。そう、過去の名将達が敗戦してきたあの書類戦争に剣鉄也もまた敗れ去ろうとしていたのである。

「あのね、鉄也。これでもだいぶ減っているのよ。後少しだからがんばってね」

 そう言うとジュンは鉄也のほほに軽くキスをして、更に書類を机の上に置いた。

「・・・」(T_T)

 幕僚長に推薦した人物に押し付けたいと思い始めた剣鉄也であった。

「例の巨大生物の報告書よ」

 ジュンがまじめな表情になって差し出したそれは、防衛省情報分析局が特急で出した敵性巨大生物への戦果分析報告書であった。情報分析局は各国の軍事情報を政治的に分析するほか、自衛隊の戦果や行動結果、その政治的影響を科学的に分析する任務もおっており、今回の報告書も加持首相や防衛相と共に各自衛隊幕僚監部にも送られていた。

「ほとんど被害らしい被害を与えられていないわ。それとMATの加藤隊長にもあの怪獣の感想を聞いたんだけど、人為的に作られた可能性が高いって。しかも、ウルトラホークとの戦闘途中から何者か知性を持つ者のコントロール下に入ったと考えられる行動になったって」

 MATはゴモラ迎撃戦の後、怪獣対策の必要性を感じた政府当局により解散をまぬがれていた。ただし自衛隊から独立した組織のままでいられるほどの実績を残せなかったため、特殊機動自衛隊の一部隊として編入されていた。スーパーロボット達の支援が主任務とされたが、対怪獣戦闘では逆にスーパーロボットを指揮下に置いてMATで足りない火力を補えるようになったのであるから、名を捨てて実を取った事になる。同様な怪獣対策組織のGフォースが、その戦闘能力に疑問が持たれて兵器研究開発部門以外は解散させられたのと比べたら、MATは幸運であると言えるだろう。ただし加藤隊長は特機自衛隊設立の書類戦争に投入されてしまったので、不幸になったのかもしれない。

「あの怪獣を操る存在が何処に居るかが判ればな・・・」

 と、書類の山の下で電話が鳴り響いた。鉄也は書類の山を親の敵とばかりに崩して電話を掘り出した。

「はい、特機幕僚長、剣です。」

『こちらは統合幕僚本部です。統幕議長柳田陸将からの御連絡です。そのままお待ちください』

『剣君かね? 統合幕僚本部の柳田陸将だ』

「はい!特殊機動自衛隊の剣です」

『うむ、状況は行っていると思うが、現在首都圏に向かっている敵性巨大生物についての件だ』

「やはりそうですか。情報分析局の報告書を今読んでいましたが、戦果らしい戦果が無かったようですね」

『ああ、新型のメーザービーム砲による11基集中攻撃も効果が薄く、このままでは陸自空自の手に余ると判断された。そこでだ、大変に済まないがキミの軍団に出撃を要請する』

「なんですって! まだ出動できるスーパーロボットは僅かしかいませんが」

『頼む、今現在首都の民間人を守ることが出来るのは他にいないんだ。未だに戦力が整っていないことも承知している』

「了解しました。特殊機動自衛隊スーパーロボット軍団。これより敵性生命体迎撃に出動します」

『うむ。頼んだぞ』

 電話は切られた。そして剣鉄也は嬉々として出動していった。

「書類に埋もれるぐらいなら、グレートと共に戦いに行くさ」

 怪獣との戦いが終わった後、休む間も与えられず倍に膨れた書類との格闘に再投入されるとも知らずに。

 合掌。







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