スーパーSF大戦 外伝
インターミッション
ERET出動(後編)
ニューヤイヅシティの中央タワーに侵入した鉄仮面兵士の内12名は、屋上ヘリポートに向かっていた。
「いいな、この地をDr.ヘル様の御料地とする為にもアシュラ男爵様のご命令通り、我ら以外の人間は全て殺し尽くすのだ」
リーダー格の兵士が仲間へ言った。無論この発言は、003の耳がキャッチしていた。
「隊長。やはり彼らは本気で私たちを殺しに掛かるようです」
悲しそうにフランソワーズは発言した。
『しょうがないよフランソワーズ。剣さんの言うとおり彼らは自我を奪われたんだから』
島村ジョーからの通信が彼女を慰めた。新命が006の翻訳で009と連絡を取る。彼らサイボーグ戦士たちの間で使う脳波通信は普通の通信機では利用できないので、003か006に介在してもらわないといけないのである。
「ガミアQ3も1体そちらに行ったようだ。鉄仮面12人とガミア2体はこちらで引き受ける。金庫を守ってくれ」
『了解しました。フランソワーズをお願いします』
ERET達が準備を整えて待ち構えるうちに、鉄仮面軍団は目前にやって来た。
「では行くぞ。3・2・1、ゴー!」
合図と共に鉄仮面達はヘリポートに大声をあげて突入した。
かくしてERETが初体験する未知の戦いは、一瞬のうちに終わった。
ヘリポートに突入した鉄仮面兵士はERET隊員が仕掛けた、巧妙な事に全兵士がヘリポートに姿を晒すと同時に爆発したクレイモアの洗礼をまず浴びたのである。これで反撃できないまま鉄仮面兵士はERETの火線に晒され、10秒と経たずに全滅した。もちろん事前のブリーフィング通り、生き残った鉄仮面はいなかった。
「こんなものなのか?」
ERETの中からも疑問の声があがったが、その声を新命隊長が直ぐに否定する。
「素人相手に油断するな!気を引き締めろ。本命のガミアはまだ残っているんだぞ」
隊長の一括でERET隊員は再び配置についた。
009からも情報が入った。
『こちら009。金庫室に侵入した鉄仮面は全て倒した。ガミアが接近してくる気配は無いけど、居場所は解るかい?フランソワーズ』
「待って、ジョー。そう言えば、隊長!地下に向かった筈のガミア1体がいません。居場所が不明です」
003は急いで探索に入った。
再び待ち伏せに入ったERETだったが、その態勢は003の警告によって崩されてしまった。
「新命隊長!ガミア一体が背後から飛び込んできます」
彼女は捉えた物音に視線を向けると、一体のガミアが外壁を伝って屋上に飛び込んできたのが見えた。
新命が振り返ると同時に、ヘリポート入り口からも2体のガミアQ3が飛び込んできた。
すべてのガミアの位置を確認することなく新命は叫んだ。
「総員、直ちに戦闘開始!」
ガミアQ3はマントを纏っていた。これを見た剣 鉄也は言った。
「確かあのコスチュームだと、」
ガミア3体は大きくジャンプした。
「あの下は」
そしてガミアはマントを、両足ごと、大きく開いた。その下はもちろん一糸纏わぬ姿であった。
「素っ裸だ」
鉄也の警告も空しく、機械と判っていてもおっぴろげキックに一瞬引き金を引く手が鈍ったERET隊員たちであった。悲しむべきは男の本能か。
その隙にガミアQ3は髪の毛を隊員たち目掛けて針の様に飛ばした。流石にそれには反応した隊員たちはシールドで髪の毛を防いでいった。
その間にガミア達はERET側が発砲すれば同士討ちになるように間合いを詰め、さらに巧妙に動き回り銃器を使えないようにもしていた。しかしナイフ格闘術にも長けているERET隊員達はアーミーナイフを右手に持つと果敢に格闘戦を挑んでいった。そして003と006、そして剣 鉄也はスーパーガンや光子力ビーム銃を構えて、隙あらばガミアを攻撃しようと距離を取った。
ガミアQ3の金属髪がERET隊員の一人を襲う。辛うじてシールドで遮ったが、1本の金属髪がシールドをかいくぐりアーマーの隙間から隊員を疵付ける。致命傷を負う事は無かったが、時間が経過するうちに出血も無視できないほどになるだろう。
しかしガミアの攻撃もシールドを巧みに使い、入れ替わり立ち代り攻撃を交代するERETにはそれ以上は通じなかった。しかも彼らが振るうナイフは只のナイフではない。科学要塞研究所謹製の超合金NZ製である。ガミアが深く踏み込むとERETが振るうナイフがガミアの装甲を切り裂いていく。
特に新命隊長のナイフ捌きは凄まじいものである。後ろから攻撃してきたガミアに一人立ち向かったのが新命である。最初は不意を衝かれたが、超合金NZ製のシールドを巧みに使い、ガミアQ3の攻撃を裁きつづけていた。そのうち攻撃パターンを読みきった新命は、向かって左手から襲い来る金属髪を掻い潜りガミアの懐に飛び込み、シールドごと体当たりしてそのままガミアを外壁に押し付けた。ガミアは左腕を振って攻撃しようとしたが、新命はガミアが振りかぶった隙を付いて逆手に持ったアーミーナイフを下から振り上げた。
2度金属を断ち切る音がした。
円弧を書くようなナイフの軌跡は、まず左腕を襲いその腕を半分切り裂いた。骨格まで断ち切られたガミアは左腕を使えなくなった。
そして左腕を断ち切ったナイフはそのまま頭部に流れ、地肌ごと左の金属髪を切り落とした。
そして新命はそのまま刃を返すと、頭部の傷口から再度切り込んだ。
超合金NZの刃はガミアQ3の左側頭から右頬に顔面を切り裂き、そのまま右肩から腋の下に抜けた。ガミアの残る金属髪が顔半分ごと宙に舞い、後を追うように右腕も飛んでいった。
右半頭部と両腕が切り取られても、新命に突進するガミアQ3であったが、残る左眼一つでは距離感を誤ったか、易々と躱されてしまった。新命はガミアの突進を利用して大きく距離を取ると、例の超合金NZ使用ライフルド・スラッグ弾(一粒弾)を仕込んだショットガンを構えた。
「面白い戦いだったぜ、ベイビー」
スラッグ弾はガミアQ3を貫くと、その勢いで空中へ弾き飛ばしていった。
残る2体との戦いでも、ERETはガミアの金属髪で傷付くのと同じくらいナイフの傷をガミアに与えた。しかしアンドロイドと生身の体ではそんなに長く持ちそうには無かった。それでも彼らは入れ替わり立ち代りガミアQ3と戦いつづけた。そう、時間を稼ぐように。
そしてERETが期待していたその時が、突然の轟音と鉛弾と共に降って来たのである。
轟音に気が付いたERET隊員たちはガミアQ3から急いで距離をおいた。間髪入れずに鉛の雨がガミアに降り注ぎ、アンドロイドの行動を足止めした。10分置いて飛来した多用途ヘリ UH-60JA から、ERET持丸副長が身を乗り出してガミアQ3目掛けて5.56mm機関銃MINIMIを発砲したのである。今回科学要塞研究所が持ち込んだ装備と異なり、自衛隊正式採用装備であるが故にガミアQ3に命中してもそれを破壊する事は出来なかったが、毎分750〜1000発の発射速度はガミアの行動を一瞬でも封じるには十分であった。それに特製THV弾を仕込んだステアーAUGと違い、万が一流れ弾がボディーアーマーで保護しているERET隊員に当たっても、致命傷には成らないという計算が有った。
そしてその隙を見逃すERETではなかった。
ガミアが鉛弾に足止めされているうちに9パラ短機関銃型ステアーAUGを構えた隊員たちは一斉に発砲する。こちらが使った弾は超合金NZ使用特製THV弾である。あの敷島博士の自信を裏切らず、ガミアQ3の装甲を貫き、弾頭の持つ運動エネルギーをガミア体内に解放した。その結果、たちまちの内に穴だらけになり、内部からの衝撃で体が膨れ上がり活動を停止したのである。
残る一体も姉妹が破壊された事で一瞬動きが止まった。その隙に006が攻撃する。彼の特殊能力は火炎放射である。口から大きく吐き出した炎がガミアQ3を覆い尽くした。その高熱はマントを燃やし、センサーを潰し、金属髪を溶かして一塊にした。そのガミアQ3に対して残りのERET隊員と003、そして剣 鉄也が発砲する。
「作戦 完了」
003の再度の広域探査により活動するガミアQ3が存在しない事を確認した新命が、ガミアQ3掃討作戦の終了を宣言した。
その後の彼らの行動には、特に記述する事は無かった。
エヴァンゲリオン初号機の墜落に伴う衝撃波を中央タワー内でやり過ごした彼らは、命令されたように島内に潜む鉄仮面軍団を探し出し、続けて飛来した第一空挺団および第34普通科連隊を誘導したのである。そして彼らの活躍のもと、島内に潜む鉄仮面軍団は完全に排除されたのであった。
エピローグ
中央タワー屋上ヘリポートにて。
「はぁ、まさかこんな事になってるとはな」
「全くでさぁ。帰りをどうしやしょう」
疲れ果てたERETの前には、大破したオスプリー機と多用途ヘリ UH-60JA が有った。どう見ても完全なスクラップである。
初号機墜落の衝撃波で、彼らの乗り物が無くなったのであった。
MATジャイロを改修したCATジャイロを特殊部隊の対テロ作戦に採用する事になった裏にはこんな事件があったのである。
後書き Ver1.0
やっと終わった。これで本編に進む事ができる。
しかし終わって気が付いたけど、中篇と後編あわせて前編とほぼ同じ大きさなんだ。だんだん短くなっていく。(^_^;)