スーパーSF大戦 外伝



インターミッション


ERET出動(中篇)



 ERETはオプスレイ機の駐機エリア横で、出動準備を始めていた。剣鉄也とサイボーグ戦士の3名が参加した為、ERETも本来の移動航空機であるオプスレイ機1機では全員を運べない為に、多用途ヘリ UH-60JA を借り出して出動する事になった。2機の速度差の為に全員が集まるのに時間差が出るが、先に到着する班を囮にして敵の出方を見る作戦にした。
「時間差は10分。この間に敵がどう出るかだな」
 ガミアQ3が先に現れたときのことを考えて先行するA班には精鋭を当てたかった。
「それなら僕たちがA班に入ります」
 島村ジョーが真っ先に手を上げた。
「うむ、実はこちらから、君らのマドンナにお願いしたいことがあるので、A班に志願してくれて丁度いい」
 ERET隊長の新命が逆にお願いした。新命がマドンナと表現したサイボーグ003アルヌール・フランソワーズにお願いしたい事とは、彼女の能力を使ってある場所を真っ先に調べてもらいたかったからである。
「我々はこの中央タワーの屋上ヘリポートを出撃拠点とする。幸いあの怪獣も中央タワーだけは避けてくれたし、怪獣や機械獣相手の戦場も離れているから、まず巻き込まれることもあるまい」
 新命が新ヤイヅシティの地図を指し示しながら説明を始めた。
「フランソワーズさんには屋上を確認してもらった後、真っ先にこのタワーの地下にある大金庫に鉄仮面が接近しているか確認していただきたい。この中にはテロリストには渡せない技術資料が眠っている」
 新命はこう言うと今の直接の上官である特殊救難偵察隊司令の高崎 一佐から聴いた情報を思い出していた。

・・・

「地図を見て解るとおり、この都市はクレーターの跡地に建設された。焼津市に命中した隕石のな。だが、隕石と言うのは表向きの話だ。落下してきたのは実は異星の恒星間宇宙船だったと言う話だ」
「宇宙船?ですか」
「そうだ。その技術資料が丸ごと中央タワーの地下金庫に入っている。と情報を持ってきた奴は言っていた」
「というと高崎司令はまだ裏があると?」
「そうだ。もしかするとその宇宙船がまだ生きているかも知れんぞ。乗客もな」
「乗客もですか?」
「新ヤイヅシティが出来てから、その住人、話によると女子高生には超人的能力をもつ者が出てきたそうだ。知力体力とも群をぬいてな。もっともそうなった原因は不明だ。宇宙人が化けているとも、ガーディアンにする為に改造したともいろんな噂が出たらしいが。だが、現地にわざわざ戦車部隊を駐留させて置く所を見ると、何がしか重要な秘密が隠されている事は間違いないだろう。しかし我々の任務は残念ながら謎解きではない。ここは命令どおり敵兵士を中央タワーに近付けない事を最低限の条件として考えてくれ」

・・・

 話が決まり新命隊長を班長として剣 鉄也と3名のサイボーグ戦士、ERET隊員から5名がA班に、持丸副長を班長として残りのERET隊員がB班に割り当てられた。
 ERET隊員たちは次に科学要塞研究所から借り入れた対機械獣用装備を身に付け始めた。
 対機械獣装備と共にやって来た科学要塞研究所所長の兜剣造博士が装備の説明を始めた。
「超合金NZはガミアの金属髪を容易に遮ることは出来る。だが、アーマーの隙間から致命的な傷害を受けるだろう」
 兜博士はそう言うと、科学要塞研究所の装備で左半身だけ改良したERETのボディアーマーを纏わせたマネキン人形にガミアQ3の金属髪を振り当てた。彼の言葉通りマネキン人形は改良したボディアーマーの隙間から侵入した金属髪で切り刻まれた。無論、未改良部分はボディアーマー毎切り刻まれた。ちなみにこの金属髪は、兜甲児が倒したガミアQ3から復元したものである。
「他にも奴は振り当てるだけでなく、髪の毛を一本単位で針のように飛ばすことも出来る。だから奴の毛を遮る事の出来る超合金NZ製の防弾シールドでも銃眼の隙間を付いた攻撃を受ける可能性が有る。油断せずに、奴の動きを止めることが肝心だ」
 兜博士はこう言って、持って来た装備をERET隊員たちに配った。ERET隊員たちが受け取った装備は、超合金NZの複合材を使用した軽量突入用ヘルメット、超合金NZ製ボディアーマー挿入用追加装甲板と超合金NZ製防弾シールド、超合金NZ製のアーミーナイフである。
 強行突入をする彼らは、KFRP(ケプラー繊維強化プラスチック)製防弾ヘルメットにフェイスマスクとゴーグル、ボディ・アーマーを兼ねたタクティカルベストを身に着ける。ボディアーマー挿入用追加装甲板をセラミック製から超合金NZ製に交換し、ヘルメットや防弾シールドでも超合金NZ製を使用することで、ガミヤQ3の攻撃を防御しようとするのである。
 銃器は、光子力ビームライフルも数丁持ち込まれたが、歴戦の戦士達はアーマーやナイフと異なり、使い慣れていない銃を現場で始めて使用することを嫌ってそれを受け取らなかった。
「今の我々に必要なのは貫通力ではなく、アンドロイドを跳ね返すほどのストッピングパワーだ。その点は大丈夫なのか?」

「この敷島の造る兵器に手抜かりは無〜い!」

 新命の死角から老人が急に顔を出してきた。この老人、新命に気配を一欠けらも感じさせなかったらしい。老人の顔に驚きながら新命は思う。
(俺の背後を取るとは只者では無いな)
 もう少しで拳銃を抜くところであった。
 この老人は早乙女研究所の地下で兵器を開発している敷島博士という。ゲッターチームの流竜馬ですら「顔を近づけないで」と言わしめた迫力のある顔は、この世界でも健在であるようだ。
 早乙女研究所と光子力研究所・科学要塞研究所は結構交流が盛んである。兜博士は超合金NZを使用した銃器の開発を敷島博士に依頼しており、敷島博士はその成果をERETに持ち込んで来たのであった。
 新命は今回の戦闘は市街地、屋内戦闘になると予想した為、銃器はステアーAUGを9パラ短機関銃型にして出動することにしていた。拳銃とも共通に使用できる9mmパラペラム弾を使えるからで、持っていく銃弾の種類を一つにする代わりに携行弾数を増やすことが出来る。そして彼らが選択した9mmパラ弾はTHVの一種である。フランスGIGN(国家憲兵隊対テロ部隊)などが採用していたTHV弾は、軽量で高速で発射され貫通力もある上に高いストッピングパワーをも持っている。
「さらにワシの作った特製THV弾は装甲を貫通する上に、弾の持つ運動エネルギーを体内へ100%衝撃にして叩き込む。これに耐えうる者は地上に居ないと断言しちゃる」
 敷島博士の自信ある台詞を受けて、ビームガンの代わりに彼らは対機械獣用に開発した実弾を受け取った。新命は特製THV弾をステアーAUGに込めると、2枚重ねに置いたチタン製防弾盾相手の試射で貫通力を確認した。新命が受けた反動は通常の射撃と同じであった。しかしその結果は今までの弾とは異なっていた。
 通常の銃弾では防弾盾に着弾した弾は表面で弾かれていた。しかしこの銃弾では1枚目の防弾盾には、弾頭が貫通した事を示す小さな穴が開いた。そして2枚目の防弾盾は後方に跳ね飛ばされ、着弾点を中心に大きく凹んでいた。敷島博士が自慢したように超合金NZ使用の特製9mmパラペラムTHV弾は、ガミアの装甲をも貫通し、かと言って背後へ貫通することなく体内で運動エネルギーを放出する適度な貫通力とストッピングパワーを持たすことに成功していた様である。
 新命は続いて50口径対物ライフルにも同種の弾を試射し、この結果にも満足してこれも持っていくことにした。
「ビームガンは嫌ったようじゃが、この銃を試してはみんかね?」
 そしてもう一つ敷島博士が新命に手渡したのはSPASコンバットショットガンを手本にしたような、超合金NZ使用のSG弾とライフルド・スラッグ弾(一粒弾)が発射可能な銃器である。
「これを撃つには銃身から素材を変える必要があったんでな」
 流石に散弾に超合金NZを使うと並みの材料では銃身も削れてしまうのである。
 これも新命が試射した。SG弾は標的の防弾盾を木っ端微塵にした。通常のショットガンでは9粒の散弾が入っているSG弾が、これは2倍の18粒が入っており、その全てが超合金NZ製である為に標的を削り取ってしまったのである。
 そしてスラッグ弾は炎を噴出し高速回転しながら加速して行き、着弾点周辺の素材をも巻き込んでぽっかりと大きな穴をあけていた。
 このスラッグ弾も弾頭に超合金NZを使用した上に、ミニミサイルと呼べるほどの構造を持たせた為にミニ・ロケットパンチ、ミニ・スクリュークラッシャーパンチと読んで良い程の物に仕上がっていた。
「まあ、ためしに一丁持っていってみるか」
 ビームガンより役立ちそうな予感を感じた新命が持っていくことにした。


 そして、A班が乗ったオプスレイ機は新ヤイヅシティの上空に到達した。
 眼下では機械獣軍団と戦っているRX−7軍団と、ゴモラに対して戦端を開いたMATアローが見えた。
 事前の打ち合わせどおりに中央タワー屋上ヘリポートに降り立った彼らは、003フランソワーズの偵察結果を待っていた。
「新命隊長。地下金庫はまだ破られてはいないようですが、鉄仮面軍団24名が屋内に侵入してきました」
 彼女の強化された目と耳が、敵の行動を捉えた。引き続き新命が質問した。
「ガミアQ3は発見出来たか?」
「それはまだ発見できていません。あっ、鉄仮面軍団が二手に分かれました。ここと地下金庫室にそれぞれ12名ずつ向かっています」
 これを聞いて新命隊長は直ちに決断した。
「島村君。君の加速能力で先行して地下金庫に向かってくれ」
「ガミアはどうします?」
「それはこちらで何とかする。途中の敵には構わなくて良いから、地下金庫の中身を守ることに専念してくれ」
「了解しました」
 009島村ジョーはこう言うと加速装置を作動させ、地下に向かって行った。
「隊長!ガミアを発見しました。只今1階から1体が地下へ、2体がこちらへ向かっています」
「よし。全員戦闘準備!気を引き締めてかかれ!」
 新命龍明の命令が下った。ERET隊員だけでなくサイボーグ戦士も剣 鉄也も息が合うように、戦士たちは互いに援護できる位置に散開した。


 そしてERETにとって未知の敵との戦いが始まった。


続く・・・だろうな\(・_・)ヾ(^_^;)


後書き Ver1.0

 う〜ん、なかなかアクションが始まらない。銃器の説明も資料を参考にしたけど、SFで許容できる範囲に収まっているかな。
 後編ではスカッとするようなアクションシーンを書かないとね。



<アイングラッドの感想>
 いよいよ、あの過酷な戦場の裏側に繰り広げられた戦いが始まろうとしています。
 表側を書いた私にも予測のつかないこの戦いの行方は如何に。
 大変に楽しみです。
 岡田”雪達磨”さん、大変にありがとうございました。




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日本連合 連合議会


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 提供/岡田”雪達磨”さん。ありがとうございます。


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