新世紀2年4月4日AM12:11
 市ヶ谷駐屯地の裏にある物資搬入ゲート前に、いつものように業者が搬入に来ていた。

「今日はずいぶんと大荷物なんですな」

 ずらりと並んだ3台の大型トレーラーを見ながら警務隊員が言う。

「ええ、なんでも新型の警備装置を開発したとかで、ま、詳しい話は知りませんけどね」
「はい、それでは許可書の提出を願います」
「はいどうぞ」

 ダッシュボードから許可書を取り出す。

「………ご協力に感謝します」
「いえいえ、あ、そうそう」

 許可書を戻しながら運転手が言う。

「はい?」
「頼んでいた黒と白の奴、御願いできますか?できればたくさん貰えるとうれしいんですが」
 黒と白の奴とは警務隊を指す隠語である。
 なぜそんな隠語かと言うと、警務隊の腕章は黒地に白い文字で警務と書かれているからである。

「!!わかりました、それじゃあ………」

 不意に助手席から銃声がする。
 頭を吹き飛ばされ、そのまま倒れる警務隊員。
 ドアが開き、運転手が蹴落とされる。
 尻餅をついた運転手に向け、銃弾が降り注ぐ。

「銃を捨てろ!!」

 監視小屋から飛び出した別の隊員が小銃を構えながらトレーラーに近づく。

「車から降りて銃を捨てろ!!早く!」

 すると、荷台にある小窓から小銃が乱射される。
 警務隊員は銃声に合わせ、奇妙なダンスを踊り地面に倒れる。

「こちらKD1、これより市ヶ谷に突入する」

 助手席の男は無線にそう言うと、トレーラーを発車させた。

『パンドラの箱』

最終回

「技研の一番長い日 前編」




 防衛省防衛技術研究所正面エントランス AM12:13

「皆さんこんにちは!今日の「突撃隣のご昼食」は最近何かと活躍している、防衛省防衛技術研究所にお邪魔してみましたぁ」

 突撃と書いてあるヘルメットをかぶったレポーターがカメラの前で喋っている。

「あの、アポはお取りでしょうか?」

 受付嬢が一応尋ねる。

「いいえ!我々「突撃隣のご昼食」撮影班は常にアポなしでの活動をモットーとしています!と言うわけで、許可、頂けないでしょうか?」
「はあ、それでは所長に許可を頂きますので少々お待ち下さい」
「はい」

 そう言うと受付嬢は内線電話の受話器を取った。

「………あら?」

 うんともすんとも言わない。

「おかしいわね…」

 フックを押してみるが、何も反応が無い。
 不審に思い、受話器を戻すとちょうどエントランスの正面にトレーラーが停車するのが見えた。

「あら?搬入ゲートは裏のはず………ええっ!」

 受付嬢は思わず大声を上げてしまった。
 なんと、停車したトレーラーから重武装の兵士が次々と下車していたのである。
 慌てて非常ボタンに手を伸ばす。
 しかし、それに気づいた兵士の一人が小銃を発砲した。
 受付嬢が血潮を迸らせながら壁に叩きつけられる。

「きゃぁぁぁぁ」

 それを見てパニックになるレポーター。
 しかし、銃声と共に頭が吹き飛ぶ。

「う、うわぁ……」

 余りの事に満足に喋る事も出来ないカメラマン。
 ファインダーの中の兵士がこちらへ銃を向ける。
 そして………
 同時刻 地下7階警備室

「おいおいまじかよ」

 銃撃の様子を見ていた警務隊員が慌てて警報装置を押す。
 しかし、警報は鳴らない。

「あれ?」

 何度も押すが反応が無い。

「ま、まさか!!」

 慌てて後ろを振り向いた彼の前に銃口が突きつけられる。

「ま、待っ」

 かまわず引き金を絞る。

「こちらKD2、警備室を確保」

 全員の射殺を確認した工作員は、無線に向かってそう言うと、
 本隊と合流すべく正面エントランスへ向かった。
 突然の侵入者に、技研の中はパニックに陥っていた。
 なにしろ、ほとんどの職員は実戦など経験した事が無かったからである。
 しかも侵入者は、一般職員は射殺してもかまわないという指示を受けている為、目に付いた職員を片っ端から撃ち殺しているのである。
 パニックにならないほうがどうかしている。

「おい!正面エントランスは駄目だ!もう敵で一杯だ!」
「2階だ!2階に行くんだ!」
「駄目だ!エレベーター前にはもう敵がいるぞ!」
「とにかく逃げるんだ!!」

 しかし、そんな状況下でもなんとか理性的に行動しているグループがいた。
 斎藤を中心とした元武官のグループである。
 地下1階第1研究室 AM12:29

「落ち着け!隔壁と防火扉を下ろして立てこもれ!」

 89式小銃を構えながら斎藤が言う。
 エレベーターの扉が開き、血まみれの研究員が転がり出てくる。

「主任!施設の地上部分は、ほぼ制圧されつつあります!上にいた職員は全員射殺されました。撤退者は自分が最後です」
「分かった!直ぐに医務室へ行け」
「はい」

 仲間に支えてもらいながら医務室へと向かう研究員。

「誰か!1階へのエレベーターの電源を切って来い!」
「俺が行ってきます」
「気をつけろよ」
「はい」

 図面を片手に走って行く研究員。
 それを見ながら斎藤はハンディースピーカーの電源を入れた。

「現在、我が研究所地上部分が制圧されつつある。敵軍の妨害により外部への通信は不可能だ!
 敵はプロだ、まもなくこのフロアへも雪崩れ込んでくるだろう。これより、地上部分及びフロア1・2・3を放棄する。各員撤収の準備を始めろ」

 斎藤の指示を聞くと研究員達は慌てて放棄の準備を始めた。
 わずか5分後には、各研究室の撤退準備は完了した。

「第1研究室の撤退準備完了!」
「第2・第3研究室、いつでも撤退できます」
「よし、それでは………」

 撤退すると言おうとして斎藤はあるものに気がついた。

「おい!二式強化装甲服と、強化服も持ってくぞ!」

 5分後
 エレベーターのドアを爆破してテロリストが突入してきた。
 しかし、すでに撤退が完了していた為、地下1階は無人であった。

「残党を探せ!主任クラス以外は殺してかまわん!」

 直ぐにフロア中に散らばるテロリスト達。
 斎藤の机の上に頑丈そうなスーツケースが置いてあるのを一人が見つける。

「隊長!こんな所にスーツケースがあります」
「中身はなんだ?」
「待ってください!」

 スーツケースを持ち上げる。
 すると、ケースの下に紐のようなものが付いていた。

「なんだ?」

 紐をたどって行く。
 すると、そこには………

「爆弾だ!!」

 叫び声と共に爆弾が炸裂した。

「おい、今爆発音がしなかったか?」

 キッチンを調べていたテロリストが仲間に聞く。

「ああ、確かにしたな」
「立てこもってる奴等に手榴弾でも投げ込んだんじゃないか?」
「だろうな…………ん?」

 仲間が奥の部屋を凝視する。

「どうした?」
「あの扉、半開きだ」
「よし、1・2の3で突入するぞ」
「ああ」

 ドアの左右に分かれて立つ。

「1」
「2の」
「「3!」」

 ズズン!!
 凄まじい爆発音に部屋中の動きが一瞬止まる。

「どうした!何があった!!」

 隊長が叫ぶ。

「トラップです!キッチンが吹き飛びました!」
「馬鹿な、相手はただの学者じゃないのか?」
「いま、上の方で爆発音しましたよね?」

 トラップを仕掛けながら新人。

「したな。連中もう地下1階まで下りてきたらしい」

 自動バルカンをセットしながら斎藤。

「主任、それって使えるんですか?」

 不安そうに新人。

「当たり前だ、お前「エイリアン2」見なかったのか?」
「見ましたけど、映画と現実は違いますよ」
「そう、こいつはあれとは違って各種装備が充実してるからな」
「確か0式無人機銃でしたっけ?」
「ああ」
「それ半年も倉庫にしまわれっぱなしだったんですよね?そんなものいきなり実戦に持ち出して、ちゃんと動くんですか?」
「当たり前だ………ここだけの話な」

 急に声を潜める斎藤。

「はい」
「こいつは半年前に開発されてからずーっと倉庫に保管されてたんだけどな、俺がひまを見ては整備したり改良したりしてたんだよ」
「ええっそうだったんですか!?でもなんでわざわざ?」
「川崎の騒ぎの後、当時の技術研究本部の首脳が集まっていろいろ話し合った結果、融合後の政情不安のさなかに武力クーデターや大規模なテロが起きる可能性が非常に高く、万が一の際に首相を始めとした議員達を守るための手段としてこいつが開発されってのは知ってるよな?」
「はい」
「その後色々あって政治も安定し、クーデターや大規模なテロもまず起こらないだろうという状態になって、こいつはお払い箱になったんだ」
「たしかに、これの破壊力は常軌を逸していますからね」
「ああ、本体は二十ミリガトリング砲、採用している弾は爆裂弾。
 液体窒素を使った銃身冷却により連続5分の斉射が可能。
 装填や給弾、照準まで全自動なので置けばそこから後ろは安全地帯、おまけにRPGやステンガーもほぼ100%の撃墜率ときたもんだ。こんなもん使う相手はまずいないからな」
「ええ」
「ところが、その後機械獣だの使徒だのって妙な連中が連続して襲ってきた時期があっただろ?」
「ええ、テレビは連日報道特別を流してましたからね」
「その時期にERETが前にウチを襲った連中とやりあった事があってな」
「ガミアシリーズですか?」
「ああ、死ぬほど苦戦したらしい」
「そりゃそうですよ。ウチなんか、19人の黒ずくめとガミアQ1一機を破壊する為にかなりの死傷者が出ましたからね」
「それで、急遽こいつにお呼びが………」
「かからなかったんですね?」
「良く分かったな……そう、これはあくまでも拠点防御用だからな。
 しかも、余りに無骨な見た目だから街中や官邸に配備するわけにもいかない。
 結局、こいつは日の目を見ぬまま保管され半年という月日が過ぎたわけだ。
 だけどよ、今必要がないからってこの先も必要ないとは限らないだろ?それで俺が監視の目を盗んでは整備したりしていたわけだ」
「しかし分からないんですが、なんでわざわざ主任一人で?他の連中も使えば良かったのに」
「簡単な話だ。俺が始めて基本設計をした兵器がこいつだったんだ」
「なるほど、かわいい我が子を人にいじらせたくないって言うわけですか」
「ああ」
「しっかし、これも主任が基本設計していたんですか、どうりで過剰とも言える装備が付いている訳ですね」
「過剰とは失敬だな」

 斎藤が作る兵器には常に過剰ともいえる装備が付けられていた。
 それは、斎藤が現役時代に遭遇したハイテクテロと言われた事件のせいである。
 当時、第一空挺団で誘導隊にいた斎藤は小瀬賀島周辺において発生した大規模な所属不明軍による侵攻を食い止めるための先兵として部下たちと共に山中へ降下した。
 空挺団内部でも一流の隊員たちをそろえた誘導隊の隊長として、自衛隊初の陸戦を指揮できる喜びに身を包みながら現地に向かった斎藤を待っていたのは、
 総勢24名中、殉職者20名、行方不明者2名、重症者2名という最悪の結果だった。
 通信士と一緒に瀕死の重症で救出された斎藤は、救出されたとき、隊内通信用ヘッドセットの電池は切れ、89式小銃は弾詰まりを起こし、唯一斎藤だけに支給されていた暗視装置は故障していたという信じられない状況であった。
 後日、上官に技研への転属願いと共に提出した報告書にはこう書かれていた。

「先の戦闘で痛感したこと一番のことは、わが自衛隊の低性能で役に立たない兵器を今後とも使用し続けることは、得策ではないということであります」

 それが今の斎藤を生むのだから世の中何が幸いするかわからない。

「ははは、すいません。しかし、主任が始めて基本設計をしたのが融合後ってのが驚きですね。確か以前は技術研究本部にいらしたはずでは?」
「ああ、だが融合前の世界では、俺は単なる飾りだったんだよ」
「ええっ!主任ほどの人が!?」
「ああ、技術研究本部が欲しかったのは、俺達の才能じゃなかったのさ、
 奴等が欲しかったのは、俺や秋田さんみたいに元武官が大量にいるという事、つまり、現場の声を聞いているというポーズ。それだけ」
「そんな」
「まさかと思うだろ?だけど、それが現実だ」

 そこまで言うと斎藤はタバコを取り出した。

「ちぇっ、切れてやがる。お前は吸わないんだったよな?」
「はい」
「しょうがねえ、さっさと終わらせて下に行くぞ。設置する個所はまだあるんだ」
「はい」

 地下4階階段前 AM12:35
「急いで机を持って来い!!」
「こっちに鉄板の補強を急げ!」

 指示を出しながら柴田は図面に目を落としていた。

「どうした?」

 第3研究室主任の秋田健吾が尋ねる。

「今思ったんですけど、空調の中にC−4を仕掛けるってのはどうでしょう?」
「空調の中にか……うんいけるかもしれないな。すぐにやらせよう」
「それと、実戦経験者で編成した戦闘班をここに配置しましょう」
「ここに?もっと後ろの方が良いんじゃないか?」
「いえ、エレベーターのドアが開くと同時に消火器で煙幕を張って撃てば、こちらの被害も最小限ですむはずです」

 数秒考える秋田。

「なるほど、確かに言えてるな、よし、それじゃあ補強用の鉄板をもう少し配置しよう」
「いいですね。このフロアで可能な限り敵の主力を排除しましょう」
「だが、万が一このフロアも放棄する事になったらどうする?」
「備えはしておきますよ」
<こちら斎藤>

 不意に無線が飛びこんできた。

<柴田です。大丈夫ですか?>
<安心してくれ、全てのコンピューターに爆薬を仕掛けた。いじればドカンだ>
<なるほど、それじゃあ最下層まで避難しましょう>
<まってくれ、フロア4の原爆を運ばないと>
<あ、そうでしたね。それじゃあ職員を何人か送ります>
<あと、医薬品と弾薬の補給を願います。もう弾が無いんです>
<そういわれましても、自分達ももうほとんど弾は残ってないんです>
<ええっ!>
<まあ、大丈夫でしょう。連中ももう攻めてはきませんよ>
<そうですね>
<それじゃあ、私と秋田さんも4階へ行きます>
<分かりました。あ、それと、目薬を持ってきてくれませんか?>
<またですか?>
<はい、もう目が痒くって>
<分かりました>
<それじゃあ、通信終わり>
「柴田さん!」

 交信を終えると秋田が血相を変えて詰め寄った。

「あんた何考えてるんですか!?無線であんなにぺらぺら喋ったら!」
「ああ、あれ暗号ですから」
「暗号!?」
「ええ、「目薬持ってきてくれませんか?」ってのが、このフロアで戦闘を行う確認です。 で、「目が痒くって」が重火器の使用許可です」
「なるほど、で?フロア4の原爆ってのは?」
「あれは傍受していた敵をおびき寄せる為の餌ですよ。ちなみに他の部分は適当に話しただけです」
「なるほどな、確かにあれを聞けば多少犠牲を出してもここまで来るからな」
「ええ、ここでの戦闘で敵に対してどのくらいの損害を与えられるかで、これからの流れが変わります」
「ああ、全てはこれからだな」

 地下3階への階段のドアが開き斎藤達が出てきた。

「お待たせしました柴田さん、秋田さん」
「おつかれ」
「おつかれさまです」
「それで、どう言う配置にしたんですか?」

 柴田が尋ねる。

「2階にはワイヤートラップを2ヵ所だけ」
「3階には?」
「ここへの階段前に無人機銃2門。それとワイヤートラップ19ヵ所です」
「そんなにやったら崩れないか?」

 不安そうに秋田。

「大丈夫ですよ」
「だと良いんだけどな、まあそれはいいとして………」

 ズズン

「もう掛かったみたいだな」

 地下2階
 部屋中に煙が立ちこめている。

「誰だ!」

 隊長が怒鳴り声を上げる。

「わかりません!左の方にいた誰かです!!」
「気をつけろといっただろ!いいか、連中の中には元SASや空挺もいるんだぞ!」
「はっ!」
「全員足元に細心の注意を払え!」
「イエッサー!!」

 慎重に慎重を重ね、ゆっくりと歩いていくテロリスト達。
 そのうちの一人が、机の上に銃を発見した。

「隊長、銃があります!」
「触るな!トラップだ!!」
「はっ!」
「触らずに先へ進め」
「はい」

 進もうと足を前に出す。
 その足にワイヤーが引っかかる!
 ズズン!

「奴等って、もしかして馬鹿か?」
「さあ?」

 4度目の爆音を聞きながら作業を続ける斎藤と新人。

「斎藤主任!C−4の設置完了しました!」
「よし、非戦闘員は直ぐに下層フロアへ退避」
「はっ」


「ごほっごほっ、おい!誰だ?」
「さっき銃を見つけた奴です」
「気をつけろっていったろ!!」
「すいません」

 副長と隊長が話しているうちに部下の一人が階段に到着する。

「隊長!自分のルートが安全です!」
「よし!奴のルートで行くぞ!」

 一列に並んで部屋を進んで行くテロリスト達。
 地下3階
 階段のドアを開くと同時に左右に展開する。

「階段前クリア!」

 言いながら二人のテロリストが研究室のドアの両側に立つ。
 そのうちの一人が隊長の方を見る。

「研究室内を確保」
「はっ」

 テロリストの一人がドアノブに手を掛け、一気にドアを開ける。
 ズズン!!
 地下4階階段前

「今のは近かったな」
「はい、どうやら3階まで降りてきたみたいですね」
「斎藤さん、あのバルカンちゃんと動きますよね?」
「当たり前ですよ柴田さん、俺がずーっと製備していたんですから」
「なら安心ですね」
「ええ、ただ相手が本隊を投入したらちょっときついですね」
「どうして?」
「弾薬が不足してるんですよ」
「どのくらい?」
「5分位斉射したら弾切れですね」
「それはきついですね」
「まあ、敵を足止めできればそれでいいですからね」
「できそうですか?」
「大丈夫ですよ」

 第3研究室
 部屋の中を三つのルートに分かれてテロリスト達が走って行く。

「ひるむな!突き進め!!逃げる奴は俺が撃ち殺す!!」

 隊長が部屋の外から叫ぶ。
 全員ドアに向かって必死に走る。
 そのうちの一人の腕に細いケーブルが引っかかる。
 ドン
 手榴弾で吹き飛ばされる。

「走れ!後ろを見るんじゃない!!」

 やはり部屋の外から隊長が叫ぶ。

「走れって言ったって、こう障害物が多いと……」

 ぶつくさ言いながら倒れた机を飛び越そうとする。
 その足に何かが引っかった感じがした。

「なんだ?」

 ドン
 呟いた途端に辺りの机ごと吹き飛ばされる。
 次々と死んでいく仲間を尻目に走りきった一人がドアまでたどり着く。

「突破成功!!」

 ドアの前に熱源が現れた事によって機銃の電源が入る。
 機銃後部についている液晶に文字が次々と表示される。

「攻撃システム起動………目標を確認………排除開始」

 ガトリングが静かに回転を始める。

「良くやった!すぐに階段を確保しろ」
「はい!」

 喜んでドアを開けようとするテロリスト。
 しかし、次の瞬間ドアごと粉々に吹き飛ばされた!

「敵襲ー!!敵しゅ…………」

 叫んでいた男が頭を吹き飛ばされる。

「伏せろー!応戦するんだ!!」

 窓から小銃を撃ちつつ隊長が叫ぶ。
 慌てて物陰に隠れるテロリスト達。
 すぐさま応戦しようとするが、バリケードにした机を貫通してきた銃弾に次々と引き裂かれる。

「撃てッ!撃つんだ!!」

 頭を下げながら小銃を乱射する。

「畜生!食らえ!!」
「撃て!撃てー」

 銃弾が飛んでくる方へ凄まじい銃撃を加えるテロリスト達。

「糞ッたれ!これでも………」

 悪態を付こうとして、そのまま銃弾に貫かれる。 

「おい!しっかりしろ!おい!!」

 抱き起こし、必死に仲間だったものを揺さぶる、だが、直ぐに銃弾によって自分もバラバラになる。

「隊長!弾がありません!」
「こいつを使え!」

 傍らの部下にマガジンを渡そうとする隊長。
 しかし、次の瞬間に壁を貫通した弾が部下を貫く。

「………」

 無言で倒れる部下。

「糞ッ!」

 必死に抵抗をするテロリスト達。
 しかし、相手が悪すぎる。
 バリケードを貫いて飛びこんでくる弾丸の前になすすべもなく引き裂かれていく。

「RPGを持って来い!!」

 床に伏せながら隊長が怒鳴る。
 エレベーター前にいたテロリストがRPGを担いでくる。

「持ってきました!」
「よし、撃て!」
「はっ」

 壁の陰からRPGを発射しようとするが、壁を貫通してきた弾丸によってぼろきれのようになる。

「畜生!」

 そう叫ぶと隊長は死体からRPGと奪い、狙いを付ける。

「くたばれっ!」

 銃弾が飛んでくる方へ発射する。
 発射されたRPGはまっすぐ突き進んだが、ドアの手前で撃ち落された。

「馬鹿な!RPGを撃ち落しただと!!」

 そう叫んだ隊長を銃弾が貫いた。

「隊長!隊長!!」

 床に倒れこんだ隊長を副長が揺さぶる。
 ゴロンと隊長の首が転がる。

「退避しろ!隊長が戦死なされた!」

 武器をまとめ、エレベーターへ向かう副長。
 エレベーターの中へ飛びこむと1分だけ部下達を待つ。
 しかし、誰もやってこない。
 仕方なく扉を閉めると、エレベーターは上へ向かい始める。

「ま、まさか我々がここまで追い詰められるとは……」

 自分のほかには誰も乗っていないエレベーターのなかで、副長は指揮官にどう言い訳したら良いか悩んでいた。


 ども!森泉です。
 とうとう技研内部に敵が侵入してきました。
 今の所は斎藤達が撃退に成功しています。
 しかし、まだテロリスト側には多くの兵士や人質がいます。
 一体この先、どのような展開となっていくのでしょうか?
 次回『技研の一番長い日 中編』お楽しみに




<アイングラッドの感想>
 ハードな展開です。
 テロリストに襲われた技研はどうなってしまうのでしょうか。
 先の展開が気になります。


 理不尽な暴力は嫌なものです。
 私はこう言った自分の都合の為に暴力を振るうある種の人間の事が大嫌いです。
 嫌いだからこの手の話しを読んだり書いたりしています。
 はっきリ言って捻くれ者ですが、コレで良いのです。
 知らなきゃ反対も対処も出来ませんから。


 では森泉さん、続きをお待ちしています。





日本連合 連合議会


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