新世紀2年3月24日PM4時10分
陸自による機械獣殲滅作戦が開始すると同時に、空自によるグール撃墜作戦が開始された。
今回の攻撃に参加したのは奈良、小牧、浜松、静浜、小松、岐阜、入間、新潟の航空部隊、及び岐阜のパトリオット連隊、すなわち中部航空方面隊のほぼ全部隊である。
PM4時11分 空自移動司令部
「陸自が機械獣に攻撃を仕掛けました!」
「よし!全部隊攻撃開始!!」
直ちにパトリオットがグールの方を向く。
「パトリオット発射準備完了!」
「発射しろ!」
箱型のランチャーからミサイルが次々と発射される。
「発射完了!目標到達まで後11秒!」
「航空部隊はどうした!?」
「新潟・入間・静浜・浜松合同隊到着予想時刻1613(16時13分)」
「小松・岐阜・小牧・奈良合同隊、只今作戦空域に侵入しました!」
「小松合同隊は直ぐに突入させろ!」
「はっ!」
「パトリオット第1波、命中するも目標に損傷は認められず!」
「第2波用意!」
<本部より小松01へ。本部より小松01へ>
<こちら小松01、感度良好>
<攻撃許可が出た。機体前面にミサイルを撃ちこんでやれ!>
<小松01了解>
夕日の富士山をバックに、次々と戦闘機動に入る戦闘機。
<小松01より各機へ!敵の装甲は極めて強固だ!間違えてもドックファイトは挑むな!!以後の指揮は各中隊長に任せる!通信終わり!!>
通信を切ると、突然雲の向こうにグールの巨体が現れた。
「行くぞ、浜松の連中の弔い合戦だ」
照準の中にグールの巨体が入る。
「小松01、発射!」
両翼に収められている国産ミサイルAAM−3が発射される。
放たれたミサイルは一気に加速しグールの前面部分に吸い込まれて行く。
次の瞬間、グールの真正面に着弾した。
「やった!」
爆煙に包まれるグール。
回避するのを忘れ歓声を上げるパイロット。
<小松01!直ぐに退避しろ!!>
「え?」
突然激しい頭痛が起こる。
「なっ、なんだ!?畜生!!あ、頭が……」
「小松01撃墜されました!」
「馬鹿野郎!!各機にミサイル発射と同時に離脱するように厳命しろ!」
「はっ!」
次々に発射されるミサイル。
そのどれもがグールに着弾する。
しかし、どれも表面にへこみや焦げ目をつけるに過ぎない。
「入間合同隊、作戦空域に侵入!」
「よし、小松合同隊を下げろ」
「はっ」
「パトリオット第2波発射!」
再び発射されるパトリオット。
グールに向かって突き進み、前面に着弾する。
「目標に損害は認められず!」
「くそっ!一体どうすればいいんだ!」
帽子を床に叩きつける指揮官。
「まずは落ち着いてください」
後ろから柴田が現れる。
「君は?」
「技研第6研究室の柴田です」
「技研の?それで?」
「朗報って奴を持ってきました」
「朗報だとっ!」
思わず立ちあがる指揮官。
「なにかあるのか?」
「はい、撤収した在日米軍からくすねたハープーンを特殊徹甲弾に改良した奴をウチの研究室が完成させました」
「それはどこに!?」
「現在、ブルーインパルスと、例の部隊に搭載させています」
「例の?ああ、あれか」
「非常に癖のあるミサイルですからね、ま、あの人達なら使いこなせるでしょう」
「そうあってほしいね」
航空自衛隊静浜駐屯地
静浜駐屯地には、臨時召集されたブルーインパルスとハミングバードが集結していた。
「隊長、いいんですか?」
ブルーインパルス隊員が、T−2を珍しそうに見ているハミングバード五姉妹を見ながら不服そうに言う。
「しょうがないだろ、上からのお達しなんだ」
「しかし……」
「まあ、あちらさんも元の世界じゃ凄腕だったらしいし、良いんじゃないか?」
「はあ………」
「それにしたってほら、あそこの小さいのなんてあれ絶対小学生ですよ?良いんですかねぇ?」
「おいおい副長までやめてくれよ。俺だって好きで………」
「あら?ずいぶんとあんまりなお言葉ですね」
たむろっている隊長達の後ろから女性の声がかけられた。
「あなたは?……!!けっ敬礼!!」
慌てて立ちあがり敬礼する隊員たち。
「あなたがブルーインパルスの隊長さん?」
「はっ!そうであります」
「さっきから会話を聞かせてもらっていたけど、私の娘達に何かご不満でも?」
「はっ!いえ、あの…その……」
いきなり図星を付かれて途方にくれる隊長。
「副長」
「どうした?」
「あの人は誰なんですか?」
「なんだおまえ知らないのか?あれが有名な取石一佐だよ」
「ああ、例の民営自衛隊の」
「……その〜、ですから……」
隊長はまだ困っている。
「まあいいですけどね」
取石一佐はそろそろ解放してあげることにしたようだ。
「それで?新型ミサイルの開発者はどこにいるのかしら?」
「もうまもなく到着すると思われます」
隊長が言ったとたん、格納庫の方から青年が走ってきた。
「遅くなりました。技研第5研究室の岡村継です」
「ずいぶんと遅かったわね」
「申し訳ありません」
「まあそれはいいとして、新型ミサイルの説明をしてもらえるかしら?」
「はい、それでは皆さん機体の方へお集まりください」
ぞろぞろとT−2の方へ集まる一同。
「これが我々が開発したハープーン改です」
機体下部に取り付けられたミサイルを指しながら岡村。
「米軍撤収のドサクサにまぎれてウチの人間がくすねた物に改良を加えた特注品です。弾頭部にはニュージャパニウム合金を採用し、考えうるほぼ全ての装甲を破る事が出来ます」
ブルーインパルス隊員の一人が手を挙げる。
「どうぞ」
「それで目標の装甲を破れるんですか?」
「実際に試したわけではありませんからなんとも言えませんが、少なくとも何かしらのダメージは与えられるはずです」
「なるほど」
「このミサイルは総重量がかなりあります。発射の際は機体バランスに気をつけてください。説明は以上です、ご質問は?」
「………」
「無いようですね、それではご無事をお祈りしています」
移動司令部
「静浜ABよりブルーインパルス・ハミングバード合同部隊上がりました」
「各合同隊攻撃態勢を整え、現在上空を旋回中」
「対空部隊展開完了!目標付近への陸自高射隊の展開も完了しました!!」
「司令!攻撃準備完了です!」
報告を聞いた参謀が言う。
「よし、第二次攻撃作戦開始だ」
「はっ」
<本部よりレッドオクトーバーへ、本部よりレッドオクトーバーへ。作戦開始、作戦開始>
<レッドオクトーバー了解、レッドオクトーバーより編隊各機へ、作戦開始よ。作戦通り、ブルーインパルス攻撃後目標への攻撃を開始する>
<マーチラビット、了解>
<ブラッディエイプリル了解>
<メーデー了解>
<ジューンブライド了解>
ちなみに、レッドオクトバーとはハミングバード隊員、取石神無のコードネームである。
他の隊員のコードネームは以下の通り。
マーチラビット………………取石弥生
ブラッディエイプリル………取石卯月
メーデー………………………取石五月
ジューンブライド……………取石水無
(全員この世界では自衛隊員ではないので階級は無し)
<こちらジューンブライド、現役のブルーインパルスと一緒に飛べるなんてうれしいね>
<そうね、父さんや母さんがいたころと同じ、ちゃんとした自衛隊のだものね>
神無の声だ。
<ねえねえ、基地に帰ったら東京見物しに行かない?帝國歌劇団の舞台みてみたいんだ>
<五月、通信の前にはコードネームを言いなさいって言ったでしょ>
<あ、ごめん神無姉。こちらメーデー、以上です>
<こちらマーチラビット。でも、これが終わったら俺達戦闘機を降りなきゃいけないんだよな>
<こちらブラッディエイプリル。しょうがないよ、首相が未成年は駄目っていってるんだから>
<こちらメーデー、あーあ、ハミングバードから戦闘機取ったらなんにも残……いろいろ残るか>
などとのんきに世間話している彼女達に苛立った管制官から通信が入る。
<本部よりハミングバード各機へ!戦闘中に世間話は止めろ!以上だ>
「「「「「す、すいませ〜ん」」」」」
さて、先行するブルーインパルスは、ようやく発射地点へ到達した。
<ブルーインパルス01より本部へ!これより攻撃を開始する!>
通信を終えると、ブルーインパルス01は発射態勢に入る。
<ブルーインパルス01、発射>
機体を離れたミサイルは、ブースターに点火しマッハ3で目標へ突き進む。
同時に、僚機が次々と発射する。
目標へ正確に向かっていくミサイル群。
それを戦術モニターで見守る司令達。
「目標まで後50キロ!46・40・36・30・25」
レーダー監視員のカウントダウンに聞き入る。
「19・9!命中!!」
不気味な静寂に包まれる司令部。
そこへ監視班からの無線が飛びこむ。
「こちら監視班!目標に損害を確認!繰り返す!目標に損害を確認!!」
次の瞬間、司令部は歓声に包まれた。
一方のブルーインパルス各機は、ミサイルが離れた反動でバランスを崩し、失速しかけていた。
なんとか態勢を立て直し、上昇する。
<ブルーインパルス01よりレッドオクトーバーへ、発射の際は失速に気をつけろ>
<レッドオクトーバー了解!>
次々と攻撃へ移るハミングバード各機。
再びグールへ向けてハープーン改が突き進んでいく。
「ハープーン改第二波、命中!」
「監視班は!?」
「こちら監視班!目標前面部に命中を確認!レーダー攪乱物質散布装置の停止を確認、そちらのレーダーはどうか?」
「レーダーどうだ!?」
「レーダー上に目標を確認!」
「よーし、反撃開始だな。陸空合同高射隊攻撃開始!」
パトリオットと共に81式短距離SAM改(短SAM改)が発射される。
それらが損傷した前面装甲に命中するのである、いくらグールの装甲が厚いとは言っても限界がある。
やがて、少しずつではあるが装甲が無くなっていく。
「目標前面装甲はかなりダメージを受けているようです」
「よし、メーザー発射!」
巧妙に構築された掩蔽壕からメーザーが発射される。
一瞬弾かれるが、酷く損傷した前面装甲が耐えられず貫通してしまう。
次の瞬間、グールの前面から爆風が飛び出す。
「目標内部での誘爆を確認!」
「メーザー第2射、発射!」
「はっ、第2射発射します!」
再び放たれたメーザーは正確にグールの中へ飛びこんだ。
何事も無かったかのように進むグール。
だが、その巨体がゆらりと傾く。
次の瞬間、凄まじい大爆発を起こし地面へ落下していく。
「目標撃墜を確認!!」
通信士が叫ぶと同時に司令部は歓声に包まれた。
ども!森泉です。
Gパート完成しました。
今回はハミングバードに登場してもらいました。
いやはや、空戦を文字で描写する事って凄く難しいんですね、まあ今回は長距離からのミサイル戦のみですけど。
昔、何かの本で読んだ記憶があるんですが、ミサイル技術が発達した現在では、戦闘機同士の空戦は今回のような形になるらしいです。
次回は久々に開発話です。
今まで登場しなかった他の研究室の活動をまとめて書くつもりです。
それでは☆
岡田さんのホームページにある掲示板「日本連合 連合議会」への直リンクです。
感想、ネタ等を書きこんでください。
提供/岡田”雪達磨”さん。ありがとうございます。
スーパーSF大戦のページへ
SSを読んだ方は下の「送信」ボタンを押してください。
何話が読まれているかがわかります。
その他の項目は必ずしも必要ではありません。
でも、書いてもらえると嬉しいです。