『パンドラの箱』

Eパート

 富士山上空に突如出現し、スクランブル発進したF−15編隊を一瞬で撃墜したUNKNOWN。
 UNKNOWNの目的は依然不明だが、警告を無視した上に攻撃を加えてきたと言う事は日本に対し明らかな敵意を持っている事は明確であり、自衛隊はその総力をあげてUNKNOWNを撃墜する事を決定した。
 防衛出動命令が下されると共に富士・北富士・駒門・滝ヶ原・板妻各駐屯地より高射部隊が非常召集され、
 入間・浜松・静浜より迎撃機が舞いあがった。
 今回の作戦に召集されたのは5個高射連隊及び3個航空部隊、そして、不測の事態に対する備えとして戦車教導隊、第1独立機動中隊である。


 問題のUNKNOWNだが敵と認定された為、以後FA(Fighter Attacker)と呼称する事になった。


 新世紀2年3月24日PM3:12 東富士演習場上空 


<チャーリーエンジェルより入間ABへ、現在14機編隊にてFAに接近中>
<了解チャーリーエンジェル。FAの攻撃方法は不明。接近は厳禁とする>
<了解入間AB、これより攻撃に移る>
<Ok!Good luck!>


 合同航空部隊は細心の注意を払いながら、FAに接近した。
<チャーリーエンジェルより各機へ、ミサイル発射と同時に急速離脱。急いで離脱しないと撃ち落されるぞ>
 指示を出しつつ戦闘機動に移る。
 アフターバーナーを全開にしてFAに迫る。
 ぐんぐんとその姿が見えてくる。
「よーし、そのままでいろ……いまだっ!」
 両翼からミサイルが発射される。
 着弾を見届けずにすぐさま離脱する。


<エンジェル13、発射!>
<エンジェル14、発射します!!>
 部下からの報告が次々と入ってくる。


「頼んだぜ……」
 隊長の祈りが通じたのか、ミサイルは全弾FAに命中した。
<入間ABへ、こちらチャーリーエンジェル!FAに命中を確認!!!>
<チャーリーエンジェル、こちらでも確認した>
<FAはどうなった?>
 期待を込めて尋ねる。
<……駄目です。FAは依然として飛行中>
<畜生!!>
<入間ABよりチャーリーエンジェルへ、まもなくその空域に対空砲撃が開始される。直ちに離脱せよ>
<………了解。全機これより帰還する!!>
 次々と翼を翻し各基地へ帰還して行く航空隊。


 同時刻 富士駐屯地高射連隊射撃管制室 
「どうやら空自の攻撃は無駄に終わったようです」
 レーダーを見ながら観測員が言う。
「そのようだな、さて、システムの方はどうなっている?」
「全車すでにリンク済みです。こちらの管制でいつでも発射できます」
「よし、全車の射程に入ると同時に攻撃を開始しろ」
「はっ」
「技研の方からなにか連絡きてるか?」
「現在第6研究室にてFAの解析が進んでいるそうです」
「そうか、特機の方は?」
「施設付近に出現した機械獣と交戦している模様です」
「こちらへの支援は?」
「現在、集中オーバーホール中のため主力のほとんどが出撃不能だそうです」
「まったく、なんで集中オーバーホールなんかしてるんだ?」
「本演習に合わせたためです」
「……そうだったな」
「技研より連絡!FAの散布していた粉末の解析が終了したそうです!」
「それで?あれはただのチャフなのか?」
「その質問には私がお答えしましょう」
 不意に後ろから声が聞こえた。
 振り向くと長身の男性が立っていた。
「君は?」
「第6研究室主任の柴田和也です」
「それで、あの粉末はなんなんだ?」
「あれはいわばレーダー波中和剤みたいな物でして」
「レーダー波中和剤?」
「ええ、詳しい説明は省きますが、あの粉末を散布する事によってその周囲のレーダー波を全て中和してしまうのです」
「なるほど、それで対策は?」
「ミサイルを開口部付近に撃ちこんでください。そうすれば散布装置が破壊できますし、運良く機体内部に到達すれば中から破壊できます」
「やはりそれがベストか……オペレーター、聞いたとおりだ。照準を機体開口部に合わせろ」
「はっ」
「あーそれと」柴田が口を挟む。
「まだなにか?」指揮官が振り向く。
「例のFA、特機のデータベースに該当する機体がありました」
「本当か!?」
「はい、名称は空中要塞グールだそうです。基本兵装は破壊光線、ミサイル、爆弾、ショックビーム等かなりの重武装です。しかも、あれのなかには機械獣がある可能性があります」
「なんだって!?あれのなかには機械獣がいるのか?」
「はい、ほぼ間違い無いと見ていいでしょう」
「そうか、それでは待機中の特科にも召集をかけておくことにするよ」
「そのほうがいいと思います」
「他に情報は無いかね?」
「現時点では」
「わかった、また何かあったらたのむ」
「はっ」
 敬礼をすると柴田は管制室を出ていった。


 通路を歩きながら柴田は携帯をかけた。
「……俺だ」
「はっ、お疲れ様であります」
 電話の相手は第1独立機動中隊長、田村幸一1等陸尉であった。
「まもなく対空砲撃が開始される。機械獣の襲来に備え、対機甲装備で待機せよ」
「はっ、腕が鳴ります」
「ああ、ここらで我々の力を見せておく必要があるからな」
「お任せ下さい」
「期待している」
 そこまで言うと柴田は電話を切った。


「司令、まもなくFAは射程に入ります」
「よし、距離は?」
「射撃ラインまでのこり20、18、15、10……」
「安全装置解除」
「安全装置解除します。射撃準備完了」
「8、2、0!射程に入りました!!」
「攻撃開始!」
「了解、攻撃を開始します!」
 オペレーターが発射ボタンを押す。
 ボタンが押されると同時に広範囲に布陣した81式短距離SAMが発射された。
 既に入力されている目標に向け一気に突き進む。
「目標到達まで後20秒…15…10…5・4・3・2・1…着弾を確認」
 上空に花火のような閃光が見え、一瞬遅れて爆音が響いてくる。
「続けて第2波発射」
「了解」
 再びミサイルが発射される。
 再びFAに向けて突き進み、炸裂する。
「着弾を確認!」
「第3波発射準備」
「…!!待ってください!FAが……停止しました!」
「停止だと!?空中で?」
「はい、間違いありません。FAは高度を維持したまま停止しました!!」
「至急、技研の柴田さんを呼べ」
「なんでしょう?」
「うわっ!!」
 いつのまにか柴田が後ろに立っていた。


「い、いつの間に?」
「今来ました。それよりご用は?」
「ああそうだった、FAが空中で静止した。このまま一気にけりをつけたいのだが、何か意見はあるか?」
「現時点では余りに敵の情報が少なすぎます。が、このまま敵に戦線を突破されては困りますからね、いいとおもいます」
「そうか……よし、第3波発射用………」
「FAに動きが!」
 指揮官の声を遮り通信士が叫んだ。
「なに!?どうした!?」
「機体下部のハッチが開いています……き、機械獣です!!」
「なんだって!?いかん!すぐに対空車両を下げて戦車隊を全面に立てろ!」
「はっ!」
「落ち着いてください指揮官。今戦車隊を出すとグールに爆撃されますよ」
 柴田が横から注意する。
「分かっているが、そうしたら対空車両が……」
「すでに第1独立機動中隊が現場に展開しています。
 機械獣の相手は彼らに任せて攻撃を続行してください」
「だが……」
「もちろん長居する必要はありません。発射したら直ぐに後方へ下げて下さい」
「後方へ?」
「はい、この場合、一度後方にラインを引きなおす必要があります」
「そ、そうだな」
「そして、後方に構えたラインまで敵を誘導し、一気に殲滅するのです」
「なるほど……その作戦で行くか」
「囮は第1独立機動中隊に任せてください」
「大丈夫なのかね?」
 指揮官が不安そうに尋ねる。
「ご安心を」
「そうか、では最後尾は彼らに任せるとして、後方の布陣はどうする?」
「それに付いては既に出来あがっています」
「見せてもらえるかな?」
 すると柴田は足元にあったアタッシュケースから作戦図を取り出した。
 それを司令のコンソールの上に置く。
「まず、停止地点より後方210メートルの地点に駒門戦車大隊の増援を配置します。そして、さらにその後方300メートルの地点に特科連隊を配置、グールは空自に任せます」
「ふむ、それで?」
「第1独立が機械獣を誘導しながらこのラインまで下がってきたら、特科の一斉斉射を食らわせます。後は第1独立と駒門の共同攻撃で機械獣を葬れるでしょう」
「なるほど……よし、それでいこう。通信士!すぐに各部隊に連絡しろ」
「はっ」


 ども!T・Mです。

ようやくWAPが闘う環境が整いました。

予定より少し遅いですが、次回は第1独立機動中隊VS機械獣です。

現在、頑張って戦闘シーンを書いているところです。

来月の頭には出せると思います(多分)

それでは☆






<アイングラッドの感想>
 こんにちはアイングラッドです。
 T・Mさん、続け様の投稿ありがとうございます。
 ちゃんとした描写が嬉しいです。
 やはりきちんとした知識の元に書かれた陸自の対応は、大変に参考になります。
 後は通常の火力で如何に戦闘ロボットを撃破出来るかの戦術を考えなくては。
 では、T・Mさん続きを楽しみに待っております。
 ではでは。




日本連合 連合議会


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 提供/岡田”雪達磨”さん。ありがとうございます。


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