作者:LIAさん

スーパーSF大戦外伝


混沌の這い寄る足音 第二話 



*****
 白雪と輝夜の双子が蒸気獣を倒し、雷門へと向かう様を見ている一組の男女の姿があった。

 「・・・手間が省けたな。」
 「はい。あの双子の能力に関してもデータが取れそうです。・・・・・・ですが、何もわざわざ出向く必要はなかったのではないでしょうか?配下の者にでも・・・。」
 「なに、ちょっとした暇つぶしだよ・・・。大帝國劇場のほうは?」
 「須藤の息子が向かっております。」
 「・・・・・・あれか。」
 「能力的には問題ないかと。」
 「・・・いや、性格的にな。人のことを言えた義理ではないが。」

 そういって男は苦笑した。

*****

 いささか時間をさかのぼり、双子が蒸気獣と戦っている最中。ここ、大帝國劇場の地下にある帝國華撃団秘密基地にも浅草に蒸気獣出現の報は届いていた。
 しかし、ちょっとしたトラブルが巻き起こっていた。

 「なにぃ、アイリス機と紅蘭機が出撃できない?」
 「はい。アイリス機は本人との同調がうまく取れず、紅蘭機は装備の重量バランスが悪いため出撃を見合わせたほうがよいとの報告があがっています。」

 作戦室に全員集合した帝國華撃団の面々だったが、副司令、藤枝かえでからの報告に米田司令は声を上げ、当事者のアイリスと紅蘭は罰が悪そうに肩をすくめる。
 なお、この時期帝國華撃団は新しく開発された霊子甲冑『光武弐式』の配備が終了していた。この機体、電子工学と霊力工学とのハイブリッドを目指した機体第一号である。にもかかわらず非常に安定性、信頼性が高い。
 だが、やはり初期不良というのは出るもので、一度搭乗者との同調がうまく取れれば問題はないのだが、それまでは何度か調整を繰り返すこととなる。そしてタイミングの悪いことに全九機中二機が現在出撃不可となっている。もっとも、二機だけですんでまだよかったという意見もあるだろうが。

 「ええぃ、仕方ねえ。残りの面子で出撃してくれ。アイリスと紅蘭は大至急機体の調整にかかってくれ。」
 「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」

 しかし、結局彼女らの出撃はさらに遅れることとなった。

*****

 一方、浅草に向かった白雪と輝夜は蒸気獣・ポーンU改たちが暴れている場所にようやくたどり着いていた。

 「あれか・・・。」
 「数が多いね。」

 そう、先ほど戦ったポーンU改は一体だけだったがここには十体以上はいる。

 「こりゃさっさと片付けないとこっちが参っちゃうわね・・・。」
 「一撃必殺、だね。」
 「そうね。できる限り急所を確実に捕らえなきゃ。」

 双子は建物の角・・・ちょうど陰になっている部分から覗き見るようにして相手を観察している。

 「でも急所ってどこかな?」

 輝夜がポーンU改を観察しながら呟く。

 「ん〜、何か背中にエンジン背負ってるみたいだけど・・・。」
 「いや、そこはまずくない?爆発したりして・・・。」
 「・・・・・・でもあれって蒸気機関でしょ?ガソリンエンジンとは違うわけだからそこまでひどい爆発は起こんないと思うよ?っていうか、さっきさんざん火炎系魔法ぶちかましても大丈夫だったし。」
「・・・・・・それもそうか。」

 輝夜の分析にもっともだと納得する白雪。

 「それじゃ、作戦を練りましょ。まずは輝夜がタルカジャ掛けて、引き続き今度はスクンダを掛けてちょうだい。」

 タルカジャは味方の攻撃力上昇、スクンダは敵の敵の攻撃命中率下降の効果を持つ戦闘補助魔法である。

 「・・・・・・タルカジャ掛ける時点であいつらに気づかれるよ?」
 「間にあたしがマハラギで牽制するわ。」
 「・・・・・・それなら何とかなるかも。」
 「いい、これは速さが肝心よ。手際よく、スムーズにことを進めて、できるだけあいつらに攻撃の隙を与えない。わかった?」
 「・・・OK。」

 白雪が立てた作戦に輝夜も同意を示す。

 「じゃ、いくよ。1、2ぃのぉ・・・。」
 「「3っ!」」

 掛け声とともに隠れていた建物(何かの土産物屋らしい)から飛び出す二人。

 「ケット・シー、タルカジャかけて!」
 <承知。タルカジャ!>

 輝夜のペルソナ、ケット・シーが攻撃力を上昇させ、それと同時に白雪のペルソナ、ラミアが敵蒸気獣を火炎魔法で牽制する。

 「次、スクンダかけて!」

 ラミアが放った火炎に怯んだ隙に、今度は敵の攻撃命中率を下げる。
 そうして準備を整え、双子は蒸気獣への攻撃を開始した。

 「てえぇぇぇぇぇいっ!」
 「てやぁぁぁぁぁあっ!」

 ガン!ギンッ!ガシャァンッ!!
 補助魔法によるサポートの効果は凄まじかった。
 最初にポーンU改の腕や脚を斬り飛ばし、動きを封じてしまう。そうしてから止めを刺すというスタイルは先ほどと変わりないのだが、生身の人間がほぼ二撃でポーンU改たちを撃破していくその様は脅威に値する。
 もちろん、ポーンU改のほうもむざむざとやられるのを待っているわけではない。当然、双子に対して攻撃を繰り出すのだが、ことごとくかわされてしまう。これも補助魔法の効果である。
 そんな双子の様子とみるみるうちに数を減らしていくポーンU改を見て感心していた者がいた。

 「・・・・・・ほう、生身であれだけの戦闘力を誇るとはな。」

 ライオンの頭を持ったたくましい体つきの怪人が感心したようにつぶやくと、もう一方のウサギのような容姿をした小太りの怪人が慌てたように怒鳴り返す。

 「レオン、のんきに感心している場合じゃないウサ!早く何とかしないとせっかく作った蒸気獣たちが全滅するウサ!」

 それは、雷門の天辺で新型蒸気獣の性能を検分していた怪人・レオンとシゾーであった。

 「まあ、確かに。少しばかり灸をすえてやるか。」

 そして、二人の怪人は雷門から飛び下りた。

*****

 「これでっ、ラストぉっ!」
 「悪いが、そうはいかん。」

 残り一体となった蒸気獣。その機体ももはやぼろぼろで、鉄屑寸前といった風情である。
 その機体へ止めの一撃を放とうとした白雪は唐突に横からかけられた野太い声に反応し、とっさに声をかけられた反対側へと飛び退っていた。

 「ほう、よい反応だ。」

 そこには、今まで倒した蒸気獣たちとは違う二機の蒸気獣がいた。
 一方はライオンの頭部を模した頭を持つ直立二足歩行タイプの機体。両腕もライオンの頭のようになっており、その両腕での打撃攻撃を得意とする機体なのだろう。
 もう一方は卵形のボディに短い手足。そして頭部に大きなはさみがついた機体。こちらは盾を持っていることから、防御力に優れた機体なのだろう。

 「・・・・・・なによ、あんたたち。」

 新たに現れた二機の蒸気獣への警戒も露わに話しかける白雪。

 「・・・・・・白雪。」
 「わかってる。こいつら、強い。」

 ・・・双子にもわかるのだ、この二機が今まで撃破してきたポーンU改とは圧倒的なまでの実力差を誇ることに。

 「ふむ・・・とりあえず、お前は帰還しろ。」

 そんな双子を無視して一機だけ残ったぼろぼろのポーンU改にむかってライオンを模した蒸気獣が命令する。
 そうして、双子のほうに向きなおり・・・

 「私達は・・・・・・この小娘どもの相手をしよう。」

 戦闘態勢を整えた。

*****

 最初に仕掛けたのは白雪だった。

 <マハラギっ!>

 白雪のペルソナ、半身半蛇の怪物・ラミアが火炎系全体攻撃魔法を放って二機の視界をふさぐ。そして、その隙に輝夜が斬りかかる・・・否、斬りかかろうとした。

 「ふんっ!」

 ばぎんっ!

 「きゃうっ!?」

 だが、火炎を煙幕代わりにして跳びかかった輝夜をライオンの蒸気獣は無造作にはたきおとした。

 「ったぁ〜・・・。」
 「輝夜っ!?」
 「大丈夫。へーき。」

 そう言って輝夜はあっさりと立ち上がる。本当にたいしたダメージではないらしい。
 しかし、それを見て驚いたのは攻撃した蒸気獣のほうであった。

 「・・・・・・信じられんな、手加減していたとはいえこのマルシュの攻撃を生身でくらってこの程度ですむとは・・・・・・。」

 その言葉を受けて白雪が言い返す。

 「はんっ、あんたたちの攻撃なんかでやられてなんかやるもんですか!」
 「これでもウサか?」
 「へ?」

 ガガガガガガッ!!

 「きゃあっ!?」

 白雪がライオンの蒸気獣(マルシュというらしい)に啖呵を切っている隙に忍び寄っていた、大きなはさみが頭についた蒸気獣が唐突に体の前面に装備している機関銃で攻撃してきた。
 もちろん、そんな攻撃をかわせるはずもなくなすすべもなくクリーンヒットしてしまったのだが・・・・・・。

 「いたたたたたた・・・・・・。」
 「本っ気で頑丈ウサな・・・・・・。」

 あっさりと立ち上がってくる白雪を見て呆れたように言うはさみ付き蒸気獣。とはいっても、今回はさすがに結構ダメージが大きいようだ、白雪の足取りはちょっとふらふらしている。

 「さ、さすがに効いたわ・・・・・・。」

 ふらふらしてる白雪のそばに輝夜が駆け寄ってくる。

 「白雪!」
 「だいじょーぶ。・・・・・・輝夜、そろそろ本気で行くわよ。こいつら、本気で強いわ。」
 「・・・・・・そうだね。」

 小さな声でちょこっと相談をすると、双子はタイミングを計って同時に魔法攻撃を繰り出す。

 <マハラギ!><ザンマ!>

 そして、乱戦が始まった。

*****

 戦闘が始まってすぐ、輝夜は自分の体の異常に気づいた。体が重いのだ。

 (・・・・・・やばいかも。ペルソナ、使いすぎたかな?)

 双子が使っているペルソナ能力とて、何のリスクもないわけではない。
 さまざまな魔法や技能が使えるようになり、身体能力も跳ね上がるペルソナ能力だが、その発動には当人の精神力が必要となる。そして精神力と体力はある程度かかわりがある。そうなると当然、ペルソナ能力を使えばそれだけ消耗してしまう。
 そして、消耗しきってしまうとたとえ意識がはっきりとあったとしても体が一切動かなくなってしまうのだ。
 双子の場合は1回の発動ではほとんど気にならないほどしか消耗はしないが、今回は事情が違う。なにせ、夕方からご飯も食べずに(すなわち休憩もせずに)ペルソナ能力を使いまくって戦闘し続けているのだから。

 (本気でまずいかも・・・・・・そろそろ逃げることを考えたほうが・・・・・・。)

 輝夜がそう考え始めたとき、タイミング悪くはさみ付きの攻撃が白雪にヒットした。

 「白雪!」

 とっさに、輝夜は倒れた白雪のフォローに回ろうとする。
 しかし、

 「どこをみている!」

 がぎん!がぎん!

 「くあっ・・・!」

 マルシュが繰り出してきた拳の二連打をまともにくらい吹っ飛ばされてしまう。だが、そのおかげで白雪のところまで移動することができた。

 「いたたた・・・。」
 「輝夜、大丈夫?」
 「何とか・・・。白雪は?」
 「・・・・・・ちょっとやばいかも。そろそろ体が動かなくなってきちゃった。輝夜は?」
 「こっちも。そんなに長くは持たないと思う。」

 こんな会話を交わしている間にも敵蒸気獣の攻撃は続く。

 「こうなったら・・・合体魔法で一気にいくよ。」
 「・・・・・・わかった。」

 ペルソナが使う魔法の中には複数の使い手が特定の組み合わせによって魔法を使うと別の魔法へと変化するものがある。それらは消耗も大きいものの威力も絶大であり、いざというときには頼れる存在である。

 「次に隙を見せたとき。そんときにやるよ。」
 「・・・・・・OK。」

 しばらく、二機からの怒涛のラッシュが続く。だが、双子は一つ一つの攻撃を丁寧にかわし、避け、捌いてダメージを最小限に抑えようとする。

 「ええい、チョコマカと鬱陶しいウサ!いい加減やられてしまえウサ!」

 はさみ付きの蒸気獣から苛立ったような怒鳴り声を上げる。

 「へへーんだ、へなちょこな攻撃しかしてこないくせにでかい口たたくんじゃねー!」

 相手の苛立ちをさらに煽るように挑発する白雪。ご丁寧なことに中指を立てて下品な手つきまでしている。すると案の定、はさみ付きの操縦者・ウサギの怪人シゾーはその挑発にあっさりと乗ってくる。

 「よぉくも言ったウサね!いいウサ、そこまで言うのなら手加減なしウサ!」

 そう言うと、はさみ付きの頭についていた大ばさみが引き出される。

 「くらえ!ジガンテスク・シゾー!!」

 蛇腹式のアームに固定された大ばさみを振り回して必殺攻撃を繰り出してくるはさみ付き。だが、双子はその瞬間を待っていたのだ。

 「いまだよ白雪!」「いくわよ輝夜!」

 ほとんど同時に、ただし、ほんの少しだけタイミングをずらして魔法を放つ白雪と輝夜。

 <マハラギ!><一文字斬り!>

 その魔法は、新しい魔法としてカウンター気味にはさみ付きの繰り出す大バサミと交差する!

<<合体魔法!火炎撃!!>>

 炎を纏ったケット・シーのレイピアは大バサミを打ち砕き、その胴体までを深々と斬り裂き、その活動を停止させる。

 「やったぁっ!」

 見事にはさみ付を撃破した白雪と輝夜。思わず抱き合って喜ぶ。しかし、双子は忘れていた。もう一機、敵が残っていることに。

 「見事だ。だが、詰めが甘いっ!」

 そう、ライオン型蒸気獣、マルシュの存在を。
 どがぁぁんっ!!

 「「ああっ!」」

 はさみ付を撃破し、ほんの一瞬だけ緩んだ緊張感。その隙を突いたマルシュの強力無比な一撃は双子を薙ぎ払う。

 「っくぅ・・・・・・。」
 「あ・・・う・・・。」
 「大したものだ、小娘。たった二人、それも生身でこれほどの戦果を上げるとはな・・・。」

 もはや消耗しきってしまったのか、倒れた双子は立ち上がろうとしない。

 「だが、もはやこれまでだ。ここまで戦った貴様らに敬意を表して・・・私の最強の技で葬ってやろう!」

 そう言って、マルシュは右拳を高々と掲げる。そして、振り下ろそうとした、その瞬間。

 「まてぇっ!」

 四色の煙幕弾がその場に打ち込まれる。
 とっさに後ろに飛ぶマルシュ。双子の姿は煙幕に覆い隠されてしまい、判別しない。
 そして、煙が晴れた後、そこにあったのは双子を守るように囲み、こちらに向けて構えを取る四機の人型霊子甲冑・・・・・・光武弐式であった。

「「「「帝國華撃団、参上!」」」」

続く


 《あとがき…というか作者のたわごと》
 どうも皆様、始めまして。前回はあとがきを書いていなかったLIAです。拙作『混沌の這い寄る足音』第二話をお届けいたします。…待たせた割には展開が遅いですが…。
 それはさておき……困りました、書くことがありません。
 とりあえず、いまだ原作のキャラが出てこないことに不満を感じている方もいらっしゃるでしょうがもうしばらくお待ちください。多分、五話か六話あたりでやっと出てくるはずです。また、あの双子もこれから先、さまざまな運命と向かい合うこととなり、成長していくでしょう。
 では皆様、第三話でお会いいたしましょう。

 おまけ:双子のステータス
 ◎姫宮白雪、8月11日生まれ、16歳、七姉妹学園1年。性格は強気で勝気で元気いっぱい、でもちょっと短気が玉に傷。
 守護アルカナ:STRENGTH、相性の良いペルソナ:龍王、妖鬼
 装備可能武器:片手剣、両手剣、銃器、槍、投擲武器
 Lv15:パラメータは輝夜とそっくり。ただし白雪のほうが『力』に優れています。
 装備品
 武器:ビリークラブ、兜:無し、鎧:カジュアルジャケット、具足:コピーバッシュ、アクセサリー:ブルーバンダナ
 交渉コマンド:お喋り
 使用ペルソナ STRENGTH:ラミア、Lv5
 所持魔法:アギ、マハラギ、まきつき、マリンカリン、毒ひっかき、ポズムディ
 防御相性:火炎に強く氷結に弱い

 ◎姫宮輝夜、8月11日生まれ、16歳、七姉妹学園1年。性格はおっとりのんびりマイペース、ちょっと天然入っているかも。
 守護アルカナ:FORTUNE、相性の良いペルソナ:魔獣
 装備可能武器:片手剣、両手剣、銃器、斧、拳打武器(拳に装着して使う武器)
 Lv16:パラメータは白雪にそっくり。でも輝夜の方が『速さ』に優れています。
 装備品
 武器:ポリスサーベル、兜:無し、鎧:デニムジャケット、具足:スポーツスニーカー、アクセサリー:スウォッチ
 交渉コマンド:目で訴える
 使用ペルソナ
 FORTUNE:ケット・シー、Lv6
 所持魔法:ザン、一文字斬り、悲しみのワルツ、ザンマ、メディア、タルカジャ、スクンダ
 防御相性:全体的に強い。破魔無効。衝撃を吸収。


 二人とも初期ペルソナのままで行動してるのでそんなに強くないです(所持魔法はえらく強力ですが)。装備品も初期のままのものが多いので、そこまで無茶できません。作中でパワーアップの予定はありますが・・・。





日本連合 連合議会


 岡田さんのホームページにある掲示板「日本連合 連合議会」への直リンクです。
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 提供/岡田”雪達磨”さん。ありがとうございます。


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