Super Science Fiction Wars 外伝

東京空中戦 -Battle of Tokyo.-

番外編・変態仮面疑惑


新世紀2年 7月某日
静岡県富士市 富士研究学園都市内 江東学園

真の第5使徒を撃滅してから数日後、この作戦の「主役」の一部であったエヴァチルドレン3人はデブリーフィングも終え、再び平穏な日常へと戻って来ていた。

江東学園は元々、時空融合以前からSCEBAI付属の研究・教育機関の職住近接的な集約を目的として建設されていた富士研究学園都市を整備したものであり、SCEBAIと本来の富士市市街を取りこむ形で幼等部(幼稚園)から大学院に至るまでの各学校施設や研究所が設置されている。
(さもなければ、融合後わずか五ヶ月でこれだけ巨大な学園を建設できるはずがない)

当然、市街地も可能な限り区画整備されており、富士市を走る岳南鉄道も江東学園の主要交通機関となる形に整備されていた。
その学園都市地区を貫く大通り沿いにあるスターバックスへ第5使徒殲滅作戦に参加したアスカ、レイ、ノリコ。それにマナは学校帰りに立ち寄っていた。

「『変態仮面お見事、押上スカイシティで機関銃男を未遂で撃退。』かぁ。変態だけど正義の味方ってのもねぇ……」

店備え付けの写真週刊誌に目を通しながらマナが関心したように言う。
誌面にはSMGを持った男に猛然と蹴りを入れ、ロープを自在に操り男を縛りあげる変態仮面の姿が映っていた。

「え~?正義の変態ならうちにも居るじゃない」

事情を知らぬノリコが、アイスキャラメルラテをすすりながら笑う。
と、アスカ、レイ、マナはそろって「ず~ん」と言う効果音を背景にテーブルに突っ伏していた。

「ノリコ……お願いだからその事は言わないで……」

カップラーメンが出来上がるぐらいの時間が経過して、ようやくアスカが絞り出すように答える。
江東学園の正義の変態……そう、シンジが変身した『アナルマン』の事である。

あの一件以来、シンジの神経が妙に図太い……と言うか物おじしなさが常人離れしたものになってきており、平然と人前で服を脱ごうとしたり、アスカ達がミニスカートを履いていたらじっとしゃがみ込んで見た挙句

『僕は単にアスカの美脚に見とれているだけだよ!』

とのたまわったり……とどうも「スケベ」「変態」の度合が高くなっているように思えて仕方ないのだ。
それでいながら態度はやたらと紳士的な辺りも、怪しい。

『今に学校の校門前でHしだすとか、そういうことも…』

以前、とある私立学園の高等部の校門前で堂々とやった奴が居る……という噂を思い出し、さらに3人は嫌な気分を覚えずには居られなくなる。

「もしかしたらさぁ、シンジ君もパンツ被ったら変身しちゃったりして」

冗談めかして言ったノリコの言葉に、3人は一斉に顔を起こし

めきょっ。

と言う音とともに血走った恐ろしい目つきでノリコを睨みつける。

「ひっ……」

ノリコは3人の「眼力」に気圧され、思わず声を上げた。
目の前の3人の目線は、今なら少々心臓の弱いご老人を2,3人心臓麻痺で殺せる勢いがあった。

「シンジがこれ以上変態になったら…」

アスカの脳内に、パンティで覆面をしてスリングショット一丁のシンジが布袋寅泰の「スリル」をBGMに江頭2:50よろしく妙なポーズで暴れまわっている姿が浮かんだ。

「いやぁぁぁぁぁぁあぁ!」

レイも同じような情景を想像していたのだろうか、突如として額を何度もテーブルに叩きつけながら絶叫する。
ヨハネ・クラウザーII世も裸足で逃げ出しそうな勢いのハードコアグラインドだ。

さらにアスカは、ノリコの肩をひっつかむと血走り坐った眼でにじり寄り一気にまくしたてる。

「ノリコ!シンジの呪いを解く方法ってないの?ないの?教えて!!っていうか教えろやゴルァァァァァァ!」

猛烈な勢いでノリコの体をゆすり、もはや理性等どこに行ったとばかりの勢いであった。

「お、おちづきなさいよアスカちゃんってば……」

タミフルの飲み過ぎとしか思えないアスカの半狂乱を落ち着かせ、ノリコは何とか守りきったアイスキャラメルラテのグラスをテーブルに置くとたしなめる。
普段こういう時のたしなめ役であるカズミが居ないだけに、ノリコがここまで御しきれたのは奇蹟かもしれない。

「まぁ……しいて言うなら……」

ここでノリコはふと、下手に落ち着かせるより逆ギレさせてしまった方がかえって落ち着くかもと考えた。
普段の「ツンデレ」的なアスカなら、どうみても実行不可能に思えることを言ってやれば逆ギレして結果、早く落ち着く事になるかも知れない。

アスカを逆ギレさせるような事……と考えたノリコの脳内で赤いフレイトライナーCOEトレーラーがスピンターンを決めながら『キガゴゴゴ』と言う効果音と共にロボットへ変形し、玄田哲章の声で

『私にいい考えがある』

と言い放つ姿が浮かんだ。

だが、なぜか黒いジャケットに携帯電話を持った天使がノリコに問いかけた。

『そんな考えで大丈夫か?』

ノリコは脳内で迷わず

『大丈夫だ、問題ない』

と答え、口を開いた。

「アスカちゃんがシンジ君の事好きなら、自分のパンツをそのまま脱いでシンジ君の顔にかぶせてあげたら?脱ぎたてのホカホカを」

自分の想像する限界で変態的な事を言ってみたつもりだった。
これで多分、「そんなこと出来るわけないでしょ!バッカじゃないの!?」と逆ギレしてオチだろう……とノリコは内心安堵のため息をつく。

が、それは甘かった。

ノリコの言葉を聞いたアスカは「それだ!」と言わんばかりに輝く笑顔でノリコの肩を再びがっちりつかむ。

しまった、日本海だったか。

内心そうつぶやくノリコとは裏腹に、アスカは地獄に仏とばかりに喜色満面であった。

思わず「い、今の冗談!取り消し取り消し!!」と言おうとしたノリコだったが、次の瞬間なぜか

『神は言っている、ここで止める 運命さだめ ではないと』

という囁きが脳裏に響き、口に出すタイミングを逸してしまった。

「ノリコ……ありがとう……早速試してみる!」

と、アスカはこれ以上無いと言って良い笑顔で店を飛び出していく。
その様を見て、ノリコは全身から冷たい汗が流れ出すのを感じていた。

「ダメだこいつら……早くなんとかしないと……」

思わずそんな言葉が口を突いて出る。
気が付けばアスカのみならずレイまで姿を消し、マナが二人の飲みさしを平らげていた。

今更

『一番良い考えを頼む』

と言った所で何も出てこない。
ただノリコは呆然と立ち尽くすだけであった……。

更に追い打ちをかけるかの如く、どこからか

『ああ、やっぱり今回も駄目だったよ。あいつアスカは話を聞かないからなぁ』

という声が聞こえてきたノリコは、一気に腰砕けとなりその場に崩れおちたのである……。

 

所変わって、江東学園中等部男子寮。
シンジは自分の部屋に戻ってくるなり、彼にしては珍しくそのままベッドに倒れ込んだ。

『はぁ…なんか最近のアスカ……可笑しい』

この間ワイドショーで流れた「変態仮面」の話を聞いて以来、なぜか自分を見る目が時々妙なものが混じっている感覚がするのだ。
まぁ、時を同じくしてシンジが「アナルマン」と言う超人への変身能力と「人前で平然とフリチンになれる」瀬戸大橋のワイヤーケーブルに匹敵する図太い神経を手に入れた事もあるようだが。

シンジとしては大した事でもないと思うのだが、アスカとレイにとっては大ショックだったのか時として二人が異様な行動を取ることが多くなってきているのが気がかりであった。正直、二人が自分を抑えるためと称してする奇怪な行動の方がシンジには「変」と言う気がするのだが、解決方法が思いつかないでいたのだ。

そんなことを考えながら寝転がっているうちに、うつらうつらとした睡魔が彼の体を眠りの世界へ取り込もうとしかけた時であった。

どこからともなく文字にすると「テテーン!」と言うピアノソロが鳴り響き、彼の寝ているベッドの下から人が転がり出てきた。
その人影はベッドから反対側の床に転がり落ちたシンジの体に馬乗りになると、なぜか涙声でしゃくりあげながら喋り始めた。

「シンジ……あたしはアンタが変態仮面になっちゃうんじゃないかと不安だったのよ。だからパンツと言う言葉を聞く度に、あたしは…あたしは…」

人影の正体はアスカであった。

「あ、アスカ……?」

よく見るとアスカはどこで手に入れたのか胸を強調した露出度の高い、黒を基調とした超ミニのワンピースに白いフリルの付いたエプロンと黒い長手袋を合わせ、黒いサイハイソックスを履いた衣装……。
確か東京のどこかにあると言う話を聞いたことが有る「ドリームクラブ」とか言う店の制服を着て、頭に白い男児用ブリーフを帽子のようにして被っている。
しかもなぜか、目から滝のように涙を流しながらである。

変態になってるのはアスカの方じゃないのか、と突っ込みたいシンジだったが、その支離滅裂な台詞と異様さに気圧されて正直何も言えない。

「あたし……アンタがこれ以上変態になるぐらいなら、あたしも変態になってやる!だから一緒に逝こう!!」

と、アスカはいきなり腰に手をやると両脇のスリットにある紐の結び目をほどき、それを取りだした。

「これを被りなさいっ!」

アスカの手に有るのは、ピンク色をした両サイドの紐を結んで止めるパンティ……俗に言う紐パンであった。

「脱ぎたてホカホカよぉぉぉ!」

そのままアスカは脱ぎたてのパンティをシンジの顔面にかぶせようとする。

「ちょっ……何を言ってるか判らないよアスカ!落ち着け、落ち着いてよ!」

本来、江東学園に転入して以来鍛えて来たシンジであれば、今のアスカを投げ飛ばすぐらい屁でもない。だが「紳士」としても目覚めた彼には幾ら自分に対して狼藉?を働いているとは言え親しき間柄の女性を投げ飛ばす等選択肢に無い事であった。

「それにアスカ!僕はいくら変態でも公衆の面前でHするような趣味はないぞ!!」

「あんたも変態って自覚してるのなら、別に問題ないでしょ!」

ついでに言うなら、脱ぎたてホカホカなアスカのパンティ(しかも紐パン)を顔面にかぶせられてしまった事で興奮していたのだ。
その意識が無くても、ぬくもりとフィット感がシンジの本能を覚醒させてしまう。

『駄目だ……このぬくもりと匂い……アスカの……あぁアスカの……お……』

「ふぉっ!フオッ……フオオオオオオッ!!」

何かがシンジの中で弾けようとした時であった。

「気功拳っ!」

「おふぅ!」

謎の叫びと共にシンジに馬乗りになっていたアスカは倒れ込み、シンジもようやく冷静な判断力を取り戻した。
気絶したアスカの体を丁寧にどけ、入口の方を見ると、なぜか「かめはめ波」のようなポーズを取った春麗の姿が有る。

「全く……惣流さん。勝手に男子寮に入り込んだ挙句何をしているのかしらね?」

春麗は普段はまず見せない、本気の武道家としての殺気をまといずかずかと近くと、白目を剥いて痙攣しているアスカの襟首をつかみ、ひったくるように持ちあげシンジから引き離す。

「碇君も!いつまでもパンツ顔に被ってないでこちらに渡しなさい!!」
「は、はい!!」

顔に被ったままだったアスカのパンティをあわててはずし、春麗に渡す。
春麗に付いてきていたレイも、引きつった表情でシンジを見ている。

『シンジ君ごめんなさい……。私はアスカを止められなかったの……だって……だって……』

シンジとまともに視線を合わせられない程恥ずかしい思いをしながら、レイは内心つぶやく。

『私も……変態と言う名の淑女だから』

ひそかにレイの手にシンジの履いていたボクサーブリーフが握られていることを、誰も知る由はなかった。
彼女もまた、相手に気取られることなく下着だけを盗み取る「ノーパナイザー」として目覚めていたのだ…。

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ってなわけで、東京上空戦番外編でした。

なんかシンジ達、作者の予想以上にダメな方向にぶっ飛んでいってるようなw

これが、「キャラが勝手に動き出す」と言う奴なのでしょうか?

ま、こういう変態大暴走な話は筆が進みます。まー、最近になって「青空にとおく酒浸り」の単行本買ったり「とある科学の超電磁砲」の白井黒子に大爆笑させてもらったのもあるんでしょうけど。まぁ、ほどほどにしておかないとアイングラッドさんの本編もブチ壊しにしかねないので抑えておきます(汗)

でも、何かのきっかけで他の作品のキャラが同種の変態に覚醒するかも知れませぬ…(ぇ)