裏側の勇者達

エピソード:4


神威の拳


C−part






 「千鳥さん、相良君は?」
 「え? あら、いつの間に……」
 3年4組担任の神楽坂先生の言葉に、千鳥かなめは、いつの間にか姿を消したクラスメイトのことを思って頭を抱えた。
 ここ東京中西部は調布市泉川にある都立陣代高校には、いくつかの名物がある。ひとつ、やたら自治権の強い生徒会、ひとつ、突如起こる爆音。ひとつ、いきなり半年近く巻き戻った時間、ひとつ……。
 あげているときりがないので省略するが、去年ここにやってきた転校生、相良宗介もそうしたうちの一つだ。校内の爆弾騒ぎは大半、いやすべて彼が関わっていると見て間違いない。融合前にアフガンの紛争地域から転校してきた彼には、日本はあまりにも平和すぎた。彼が常識として行う各種の用心のため、下駄箱は吹き飛び窓ガラスは割れ、トラップの犠牲となる人物多数。彼が退学にならなかったのは、入学と同時にもたらされた謎の寄付金の威光と、去年まで生徒会長だった林水敦信の手腕によるところが大きい。
 その林水会長が先日無事に進学し、副会長のかなめがほぼ成り行きで会長職を引き継ぐことになった。かなめははっきり言ってやりたくなかったが、卒業間近に前会長より直々に引継を言い渡され、そのとき「君が引き継がねば相良君はまず間違いなく退学になる」と脅されてしまったため、泣く泣く引き受けたのである。
 そしてそれは間違いではなかった。林水より渡されたマル秘生徒会運用マニュアルは、ある事情により天才的な頭脳を持っているかなめをしてなんとか理解できると言うほど難解なものであったが、その分恐るべき効果があった。新学期に入って2度ほど起こったというか、宗介が引き起こした事態を、かなめはこのマニュアルに従うことでもみ消すことに成功している。普通なら即退学になるようなことを、である。
 かなめはあきれると同時に感謝した。不本意ではあったが、宗介が退学になるのは個人的にもいやだったから。
 だからといってかなめは彼を野放しにはしていなかった。彼が出来るだけそんなことをしないように見張るのは彼女の役目であると、陣代高校の生徒は新入の一年生に至るまで認識していた。
 あれだけ衝撃的なことが起きれば無理もないが……それについて語るのはやめておこう。残念ながらそれが原因で転校していった一年生もいるのだ。寝た子を起こすのはよくない。
 そして今日もかなめは宗介のために授業を潰すことになる。それでも彼女に宗介を止めることは出来ない。彼のそんな行動は、あくまでも自分のためなのだから。校内では二人だけの秘密であったが、彼の暴走は決して意味のないことではない。彼にはそうまでして彼女の安全を守るだけの理由があったから。
 任務と、個人的な理由、その双方で。



 かなめと宗介には秘密がある。融合前の世界で、かなめはある組織にその身を狙われていた。
 『ウィスパード』……ささやく者。
 意識の深層のさらに深いところからもたらされる声を聞くもの。それを聞く者はこの世にないことを知り、この世に生み出すことを可能にする。それを抜きにしてもこの声を聞く者は頭脳の働きが一変する。平たく言えば超人的な天才になる。今ではかなめも12元連立偏微分方程式を暗算で解けるし、レイバーのオートバランサーのバグを外から見ただけで指摘できる。
 そして宗介は、その組織から彼女を守るために別の組織から派遣されてきた超一流の兵士であった。
 組織の名は『ミスリル』。
 オーバーテクノロジーを操る正義の味方の傭兵組織であった。
 だがその構図も一年前の時空融合によって崩壊していた。今でも宗介の自宅にある専用の通信機は融合直後ただ一度、ごくわずかな時間鳴っただけで沈黙を続けている。そのただ一度の通信が、彼をこの場にとどめている。
 「追って……別命あるま……で……現在の任……務を継……続……せよ」
 切れ切れながらも、それは間違いなく、彼の上官から伝えられた命令であった。この一件で、彼は『ミスリル』が完全には消滅していないことは確信したものの、以後の連絡は完全に途絶えている。
 宗介は唯一事情を知り、かつ当事者であるかなめにだけはこのことをうち明けた。
 「千鳥、というわけだ」
 「ふーん、ということは少なくともテッサ達はこっちに来てるわけだ」
 「肯定だ」
 「まあ彼女たちのベースは潜水艦だもんね。基地はともかく。よかったじゃない」
 声の中に安堵と、ほんのちょっぴりの嫉妬を滲ませてかなめは言った。
 ところが、というか当然というか、宗介はそう言う微妙なところに全然気づかずに答えを返した。
 「俺には見当もつかないが、この時空融合という現象の中、『ミスリル』が残っていると考えるのはあまりにも軽率だ。むしろ確認の取れたトゥアハー・デ・ダナン以外の組織は壊滅していると考えた方がいい。だからといって敵対組織が消えたと考えるのも早計だ。最悪のケースはこちらがメンテナンスベースすら失った『デ・ダナン』と俺のみ、向こうは全関連設備込みと考えねばならん。よって以後の行動はこの事実に基づくことにする」
 「はいはい」
 何を行っても無駄と知っているかなめは、首をすくめながら言った。
 「でも、ということは、ソースケは高校を卒業したあともあたしの護衛を続けることになるのよね」
 「肯定だ」
 即答する宗介。
 「追って別命あるまで、という以上、解除命令が来るまで任務は継続される。普通ならもう一つ、報酬契約の不履行、という解除条件があるが、この件は俺がすでに解除してしまっているため該当しない。最長君が寿命で自然死するまでということになる」
 「大学に行ったら?」
 「当然俺も同じ大学に通う」
 「就職しても?」
 「当然だ」
 「私生活は?」
 「出来れば寝食を共にする方が望ましい。20をすぎたら結婚するというのも有効な手段だ」
 顔色一つ変えず語る宗介。一方かなめは真っ赤っかである。そしてそれをごまかすように彼女は言った。
 「そ、ソースケって、任務のためなら結婚でもするの?」
 「肯定だ。それが必要なことならば」
 真顔で答える宗介。とたんにかなめの顔から血の気が引いた。
 「任務のためならテッサでもマオさんでも奥さんにするって言うわけ! 勝手に結婚でも何でもしなさい!」
 どこからか取り出したハリセンで宗介をしばき倒すと、ふくれっ面のままかなめは出て行ってしまった。
 「……任務以外で結婚するのなら千鳥が一番適任だと思っていたのだが」
 おかげで一番いい台詞を聞き逃したかなめであった。もっとも宗介は結婚という行為の持つ深い意味など全然分かっていなかったのであるが。



 「きっとあそこね」
 かなめは教室を出ると、校舎の一階の角、昨日の日曜に工事をやっていた一角へと向かっていった。先週の土曜に、校舎荒らしの泥棒を追いかけ回して付近一帯を宗介が吹き飛ばしてしまったため、補修の工事が入っていた。
 それが宗介の勘に障ったらしい。登校途中、宗介はかなめにこう語っていた。
 「校舎の修復跡を厳重に検査せねば。あのポイントは校舎を全壊させるポイントにぴったり一致する。業者があの4カ所に爆発物を仕掛けたなら、見事に校舎だけを破壊出来る」
 「んなバカな話があるわけないじゃない。だいたいそこを壊したのはソースケ、あなたでしょ」
 「それも敵の作戦の一環だとしたら?」
 ツッコミをツッコミ返されて、かなめは思わず硬直した。
 「どういう事?」
 「土曜の校舎荒らしが敵のエージェントだとしたら、かなり見事な腕前だ。完全に逃走できるところをワザと作戦ポイントにおいて隙を見せ、こちらからの攻撃を誘う。そうとも知らず挑発に乗った俺の手で校舎の一部が破壊され、敵は何ら疑われることなく爆発物を設置できるポジションを手に入れることが出来る。見事だ。敵には林水閣下並の策略家がついていたかもしれん。俺も今日になるまで思いもつかなかった」
 「それは妄想っていうのよ」
 そこまで言ったところで学校に着いたのだ。
 だが宗介はいつの間にか教室を抜け出していたらしい。冗談みたいな話だが、彼は物音も立てずに匍匐前進で教室を抜け出すという特技を持っている。
 外に出て工事現場跡に言ってみると、案の定宗介はそこにいた。いつもロッカーに入れてあるファイバースコープを壁に差し込んでいる。
 「くぉらソースケ! あんた、修理したばっかりの壁に穴開けたわね!」
 「千鳥」
 宗介は短くそう答えただけであった。なのにその一言で、かなめの足はぴたりと止まってしまった。同時にこの一年間感じなかった『いやな感じ』が背筋をはい上ってくる。
 「ソースケ……」
 彼の雰囲気が一変していた。いつもの彼ではなく、この学内では彼女だけが知っている『彼』に。
 「修理直後の壁に、ちょうどこれが入る大きさの穴があいていた。おかしいと思って調べてみたらビンゴだった」
 そう言うと彼はかなめを手招きし、カメラのファインダーを覗かせた。
 かなめの視界に、減算していく数字が見えた。
 「点検孔だ」
 耳元で宗介が言った。
 「この壁は完全に埋めてしまう構造だから、工事完了後の爆弾の作動確認が出来ない。この穴はそのために開けられているものだ。タイマーが正確なら爆発まであと30分前後……おそらくちょうど10時に爆発する。ここにあった以上、ほかのポイントにも仕掛けられていると判断すべきだ」
 「……解体できる?」
 宗介は黙って首を横に振った。
 「壁を壊すのにそのくらいかかる。構造上振動感知は採用してはいないだろうが、爆発物で一気というわけには行かない。誘爆のおそれがあるからな。ましてや1カ所ではなく4カ所だ。爆発物処理班を呼んでも間に合うまい」
 「じゃ……」
 「最善の手段は、さっさと逃げることだ。幸い避難のための時間は十分にある」
 かなめはそれを聞いてあわてて放送室へ向かった。が、宗介に手を掴まれた。
 「何するのよ! 早くみんなに」
 「気をつけろ、千鳥。敵が混乱の中、君を狙ってくるおそれがある」
 考えてみればその通りだ。何かの偶然でない限り、ここにテロを仕掛ける理由は自分しか考えられない。かなめは思わず宗介のことを見つめた。
 その瞳の中に、揺るぎない自信がある。
 「だから俺から離れるな。いいな」
 かなめは素直にうなずき、宗介を引っ張ったまま、放送室へ駆け込んだ。
 「緊急放送! 全校生徒及び教師は直ちに身の回りのものを持って校庭に集合せよ! 繰り返す! 全校生徒は身の回りのものを持って校庭に集合せよ! なおこの命令を無視したものの命は保証しない、と、相良安全補償問題担当・生徒会補佐官は言っている。20分以内に校庭に集合せよ! 以上、生徒会長、千鳥かなめ!」
 一気に言い切るとスイッチをオフにした。
 「爆弾のことは言わなくていいのか?」
 「そんなこと言ったら絶対パニックになるわよ。出てくるまでは秘密」
 「肯定だ。素人は自分の身に危機が迫ったとき、往々にして適切な判断力を持ったプロに逆らおうとすることがある」
 やがて不思議そうな顔をしながらも、生徒達がぞろぞろと校庭に出始めた。
 「とりあえずはよし、と。あとは……」
 「警察だろう」
 「あ、そうか」
 ぽん、とかなめが手を叩いたとき、放送室の外から声がした。
 「ねーカナちゃん、今度は何があったの?」
 同級生の常磐恭子の声であった。
 「わっ、こんな所にいないでさっさと校庭に行って!」
 かなめはあわてて彼女を引っ張り出した。



 警察は最初いたずらだと思ってまともに取り合ってはくれなかった。だが午前10時、爆音と共に校舎は崩壊し、陣代高校は瓦礫となって崩れ落ちた。
 警察は職務怠慢を追求され、署長の首が飛んだ。
 生徒及び教師の一部に精神障害が現れ、生徒の1/3、新入生の7割が転出届を出した。
 マスコミの注目の中、陣代高校は文字通り崩壊した。
 残った生徒も、転校を余儀なくされることとなった。



 「で、なんであたし達は転校できないのかしら」
 「ふむ……少なくともこの件に敵は絡んでいないようだ」
 「ほんと、なぜでしょうねえ」
 数日後、学校近くのハンバーガーショップ『タコドナルド』に、1男3女がたむろしていた。
 勝ち気な美少女、千鳥かなめ。
 ツインテール眼鏡っ娘、常磐恭子。
 おっとりとした清楚な美女、お蓮さんこと美樹原蓮。
 そしてざんばら髪にへの字口、相良宗介である。
 陣代高校を爆破した犯人からは、なんの声明もなかった。事件そのものは、出入りの業者が殺害されていたなどと言うおまけを伴ってワイドショーなどをにぎわすという悲惨な結果になっている。
 結果陣代高校は廃校が決まってしまった。生徒達は他の高校に転編入をすることになったわけだが、ここになぜか引き取り手のない人物が4人居た。
 「もうゴールデンウィークですから、休みが明けるまではどうにもなりませんね」
 蓮は相変わらずのんびりとした口調でそう言った。
 「まあそれは仕方ないけど、なんであたし達はだめなのかしら。編入試験の成績は問題ないと思うんだけど」
 ちなみにかなめの編入試験はどこも全科目満点である。
 「俺は学業はあまり得意ではないが、編入試験は落とすためのものではないと聞いていたが」
 宗介だってそこまでひどい点ではない。
 「あたしは何となく見当がついてるけど」
 恭子が3人を当分に見わたしながら言った。
 「どういうこと?」
 首をひねるかなめに恭子はいたずらっぽい笑みを浮かべながら答えた。
 「怖がられてるのよ、きっと」
 その瞬間、かなめは宗介の首根っこを捕まえていった。
 「こいつのせい?」
 「ううん」
 恭子は首を振ると、再びみんなを見わたした。
 「怖がられてるのは、みんなが生徒会役員だから」
 「はあ?」
 なおも首をひねるかなめに、恭子もため息をつきながら言った。
 「ソースケ君やお蓮さんは、本人の性行や実家の絡みがあるとしても、カナちゃんまでとなるとそれしか考えられないよ」
 ちなみに蓮の実家は、規模は小さいながらも、由緒ある「やの字」家業である。
 「でもなんで?」
 なおも不思議がるかなめに、恭子はゆっくりとかんで含めるように言った。
 「正確に言えば怖がられていたのは、林水先輩。で、カナちゃん達は先輩の衣鉢を継ぐ革命的生徒会役員って見られてるの」
 「なによそれ! それになんでキョーコがそんなこと知ってるの!」
 いきり立つかなめを恭子は何とか押さえ込んだ。
 「落ち着いてカナちゃん……これね、あたしが書類出しに言ったとある学校で聞いちゃったの。千鳥かなめって、あの林水の後継者だろ、ああ、二代目にふさわしい実力を持つ天才だ、あんなのに学校を乗っ取られてたまるか、って話してたのを」
 かなめの顔は怒りでどす黒くなっていった。
 「まーまー、怒ったってしょうがないよ」
 恭子は必死にかなめをなだめる。
 「文句言ったってかえって怖がらせるだけだし……それにカナちゃんの行き先が決まってくれないと、あたしも困るし」
 「へっ、なんで?」
 きょとんとなるかなめに、恭子は満面の笑顔を向けた。
 「だってあたしも、カナちゃんと一緒のガッコ行きたいんだもん」
 「キョーコー!」
 何かが弾けたのか、思わず泣きじゃくりながら恭子に抱きつくかなめであった。周りの客があっけにとられているのも目に入っていない。
 「千鳥」
 そこにハンカチを差し出しながら宗介が割り込んできた。
 「今の話を聞いているうちにいいことを思いついた」
 「珍しいわね」
 涙を拭きつつかなめが答える。そして宗介は、本当に珍しくまともなことを言った。
 「はっきり言って我々にこの手の問題を解決するのは無理だ」
 うなずく3人に対し、宗介は言葉を続けた。
 「ならばこの手の問題が得意そうな人物を頼ればいい……林水前会長閣下に相談しよう」
 「まあ……それは良い考えですわね」
 蓮が相変わらずおっとりとした口調で言った。



 「分かった。任せたまえ。さすがに休みの学校を相手には出来ないが、ゴールデンウィークが終わるまでには君たちの受け入れ先を探しておくことを約束しよう。それまで気楽に待ちたまえ。ちょうど今そちらはフランスからの移民が来るとかで大にぎわいだと言うではないか。祭りでも見物しながら吉報を待つとよい」
 電話の向こうで、自信たっぷりに前会長はそう告げた。
 「これで解決だな」
 「ま、少なくともこういうとき会長が嘘やいい加減なことを言ったことないし」
 かなめもこの点だけは認めていた。
 「じゃカナちゃん、一緒にUVTの大会見に行かない?」
 「そうね。それいいかも」
 実は二人とも結構格闘技が好きだったりする。あくまで見るだけだが。
 「ならこれをどうぞ」
 意気投合する二人に、蓮がチケットのようなものを取り出した。
 「えっ、これ大会のアリーナ席! いいの!」
 「ただとは言えませんけど、正価でならどうぞ。実家の関係で手に入れたものですから」
 くどいようだが、彼女の実家はやの字のつく家業をしている。
 「もちいいに決まってるよ! UVTのアリーナっていったら、よっぽど運がないと取れない席だもん。高くたってかまわないわ」
 「うんうん」
 猫にマタタビである。
 「俺の分もいいだろうか」
 宗介も首を突っ込んだ。
 「あら……興味あったのですか?」
 もちろんかなめには自分についてくるために必要だというのは分かっていた。だが宗介の答えは少々意外だった。
 「肯定だ。あの戦いの中には侮れない使い手が結構混じっている。彼らの技を見るのはいい訓練になる」
 「ソースケ……格闘技に興味あったんだ」
 「普通のものにはあまりない。あれでは人は殺せない」
 「ぶっ……」
 物騒なこといわないでよ、といおうとしたかなめの言葉は途中で止まってしまった。宗介はこういうことでいっさい冗談を言わない、となると……
 「て言うと何? UVTのあれは人を殺せるって言うの?」
 「あくまで一部だが。たとえば予選第16試合で神月かりんとあたったレックス・ディザスターマン。彼はプロレスラーを名乗っていたが、あの技はストリートで複数の人間を相手にしたときにふるわれる技だ。相手が彼女でなければ最初の一撃で勝負がついていただろう」
 かなめはちょっと感心しながらも、意地悪そうに言った。
 「その割には女子高生に手玉に取られていたけど……そりゃ優勝したのはその彼女だけどさ」
 「相手が悪かったと言ったはずだ。残念ながら彼は試合をしていた。だが彼女は間違いなく彼を殺しにいっていた。おそらくレックスは長らく実戦から遠ざかっていて勘が鈍っていたのだろう。そうでなければ彼はもっと上位にいたはずだ」
 かなめも恭子もあっけにとられていた。
 「するって言うと何? 神月かりんさんって、人を……殺せるって言うの?」
 「肯定だ。彼女が相手を殺そうとしなかったのは、決勝戦のみだ。それまでの試合は、殺される心配がなくなるまで相手を痛めつけている」
 「じゃなんで決勝戦はそうじゃなかったの? 一番大事な試合だけ、手加減するなんて」
 恭子の問いに対する答えは、聞かなきゃよかったと思うようなものであった。
 「当然だ。彼女を相手にそれをやったら、決着が付くのはどちらかが死ぬときだ」
 かなめと恭子は思わず見つめ合ってしまった。
 そんな二人を気にする様子もなく、宗介は言った。
 「だからあの大会には見るべきところがある。明らかにプロと思われる人物が、日銭を稼ぐために出場していることもあるしな」
 なにやらよけいなことを知ってしまった二人であった。



 D−partにつづく。






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