作者:アイングラッド


 スーパーSF大戦
 第23話 サンフラワー作戦


 第三新東京市に於ける使徒迎撃作戦が失敗に終わり若しくは目標がSCEBAI方面へと向かった場合の予備作戦である。
 芦ノ湖からSCEBAIの近くにある自衛隊の東富士演習場までは意外と近く山を越えると直ぐである、よって飛行可能な第五使徒にとっては指呼の間であった。
 その為に事前にSCEBAIは臨戦態勢に入り、隣接する紅東学園も避難準備が完了していた。
 東富士演習場にSCEBAIと紅東学園が隣接しているのにも訳があり、何時侵略者によってSCEBAIと紅東学園が狙われる事があっても直ぐに戦力を展開し易いからと云う理由である。
 さて、現在までに第五使徒の性能は把握されており、そのATフィールドによる防御能力に対抗すべく迎撃態勢が整えられていた。
 その作戦がサンフラワー(向日葵)作戦であり、その陣地を見た作戦指揮を担当する自衛官が見た目の印象から命名した経緯を持っている。
 当作戦の指揮官は対ゴジラ戦闘の経験を持つ事から抜擢された権堂吾郎一等陸佐である。

「さてと、目標の第五使徒とやらもこっちに向かったって話だし。そろそろおっぱじめっかねぇ」

 彼が不敵に笑うと背後の通信機器で交信を行っていた通信兵が振り返り、報告を行った。

「権堂一佐。目標は大涌谷方面から御殿場方面へと進行中、じきに有視界に入ります」
「うむ。正面部隊の0式メーサー戦車部隊、92式メーサー戦車部隊、ハイパワーレーザービーム車部隊、93式自走高射メーサー車部隊、原子熱線砲、三式試製メーザー砲車、66式・70式・90式メーサー殺獣光線車部隊は直ちに予想進路に向けて照準を開始。自走パラボラ式光線砲『マーク』部隊は両翼にて待機、スーパーXU及びマーカライトファープはいつでもカバー出来るように指定地域に待機、ガルーダ、92式メーサー攻撃機部隊、α号および第二β号、富士壱號と弐號は富士山の裏側の稜線下にて機体を隠蔽しつつ待機だ」
「了解、各部隊へ直ちに伝達致します」
「うむ。急げよ」

 報告にあった機体に関する知識のある者ならばそれらに共通する項目を挙げる事が出来るだろう。
 α号と第二β号は防御力を買われてパンドラボックスから引き出されてきた機体だが、それ以外は全てパラボラ式の光線兵器を搭載した実に日本的な外観を持つ攻撃兵器である。
 現在、東富士演習場に機体を並べて待機している光景を覗いてみれば、まるでヒマワリ畑の様にパラボラを向けた兵器の群れが見えるだろう。
 それらのメーザービーム、レーザービーム、原子熱線、荷電粒子の有するエネルギー量は使徒のATフィールドを破壊させるのに充分量を保有している計算である。
 これらパラボラ式光線兵器は日本各地の自衛隊から移動してきており、中でも外観と性能が特異な無人式自走式パラボラ光線砲マークの部隊は北海道にある中空知防衛軍からの移動であった。
 そうこうしている間に第五使徒は山の稜線を越え、その姿をサンフラワー作戦参加部隊の前に現した。
 真っ青な四角錐をした第五使徒は機械とも生物とも取れない不思議な形状をしていたが、位置と移動ベクトルが観察されれば未来予想攻撃は可能であり、移動レーダー車の助けも借りて精密な移動位置情報が部隊全体にもたらされていた。
 情報によればこちらから手を出さなければ攻撃はされないと云う事であり、それに基づいて射程内に収まるまで攻撃待機を行う予定だが、攻撃された場合は使徒の荷電粒子によって絶滅の危機すら存在していた為にいつでも防御に移れるように準備だけは怠っていない。

「くそぅ、射程にはまだ入らないのか。グズグズしてるとやられっちまうぞ。各機エネルギーチャージ開始!」
「射程まで後1キロ。!? 敵内部に高エネルギー反応!」
「なんてこったぁっ!? チッ、直ぐにマーカライトファープ部隊に伝達、正面位置に展開し、敵攻撃を、跳ね返せ」
「了解」

 権堂一佐の命令が伝達され、この場に存在するパラボラの中でも最大の直径200メートルを誇るマーカライトファープは遠隔操作されるまま4本の支柱の下部に取り付けられた無限軌道を駆動させて部隊の正面に移動を開始する。
 それと同時に無人機の為に遠隔操作されたスーパーXUが駐機スペースより飛翔し、部隊正面で空中に静止して機体前部のファイアーミラーを展開した。
 両機は強力な熱線攻撃をしてくる敵に対してそれを増幅反射する事により相手にダメージを与えるリフレクターウェポンである。
 宇宙から飛来したミステロイドに対抗すべく開発されたマーカライトファープ。
 地球の怪獣王の吐き出す放射能火炎を封じる為に開発されたスーパーXU。
 共にパッシブな兵器ではあるが、その効果は抜群だ。
 次第に近づきつつあった第五使徒だが、その身体の外周部を加速装置としてエネルギーを走らせサンフラワー参加部隊へと向けて撃ち放った。
 荷電粒子の強力な束はブロッケン伯爵の搭乗する飛行要塞グールを一撃で破壊出来る破壊力を誇る。
 共に無人兵器であるマーカライトファープとスーパーXUは躊躇いなく荷電粒子に身を曝し、その攻撃を受け止めた。
 前方で直撃を受けているスーパーXUは人工ダイヤモンド製のファイアーミラーにて変調したビームを打ち返す事である程度を打ち消し、後方に位置するマーカライトファープはエネルギー吸収作用のあるマーカライト塗料を塗布した巨大なパラボラで弾かれた荷電粒子ビームを受け止めている。
 本来なら一万倍にして撃ち返す性能を持つファイアーミラーであったが、荷電粒子による巨大な熱量によって熱に弱いという致命的な弱点を持つ人工ダイヤモンド製の反射鏡に歪みが生じ、同等のエネルギーを反射出来るマーカライトファープも巨大なパラボラを形成している骨組みが歪んでしまった。
 だが結果としてエヴァンゲリオンでしか受け止められないとされた使徒の攻撃を防ぎきったのだ。
 流石に一度に吐き出せるエネルギーが尽きたのか、息切れを起こした第五使徒の攻撃は止んだ。
 その隙を逃す権堂一佐ではない、直ぐさま矢継ぎ早に命令を下す。

「ぃよし、今だ! 正面メーサー部隊は3組に分かれて常時攻撃を継続しろ。自走パラボラ式光線砲マーク部隊は今の内に両側面に展開し、射撃準備。航空メーサー部隊は上空から打ち下ろしでメーサー攻撃を敢行せよ」

 正面部隊に配備された陸上メーサー部隊は0式メーサー戦車部隊10両、92式メーサー戦車部隊20両が第一陣としてメーサービームを使徒へと照射する。
 0式メーサー戦車は時空融合後に対地対空攻撃用に陸自が開発した機体で、市街地への展開を想定した為に一番コンパクト且つスマートな外観をしている。
 92式メーサー戦車はGフォースにて運用されていた亀のような外観の大型車両で自在に向けられる砲塔にメーサー発振器が搭載された実用的な機動力を持つ機体である。
 比較的新しい2種類のメーサー戦車だが、連続照射はメーサービーム発振器に負荷が掛かるので約二十秒程度で照射を停止する。
 だが、間髪入れずに第二陣であるハイパワーレーザービーム車部隊5両、93式自走高射メーサー車部隊10両、原子熱線砲1両、三式試製メーザー砲車5両が攻撃を開始した。
 ハイパワーレーザービーム砲は80年代に陸自で開発された対空対宙戦闘用の唯一のレーザービーム兵器であり、大島三原山から復活したゴジラの迎撃に用いられたが成果を上げられずに後継機である92式メーサー戦車に取って代わられた悲劇の機体である。
 93式自走高射メーサー車は自前の射撃管制レーダーを持ち、僚機の射撃統制能力を有するが機体単価が高く量産されなかった過去を持つ。
 原子熱線砲はロリシカ国より派兵された輸入兵器で、大怪獣モスラの繭を焼き切る為に使用された高火力の兵器だが、この中でも最も古い兵器である為に収束率が低く本作戦後は解体が決定されている。
 三式試製メーザー砲車は第三新東京市の地下のジオフロントに残されていた試作兵器であり、基本的な性能はメーサー殺獣光線車に準ずる。
 第二陣は比較的バラけた能力の為に約10秒ほどで照射は停止された。
 第三陣であるが、もっとも完成されたメーサー兵器であるという評価が高い66式メーサー殺獣光線車5両・70式メーサー殺獣光線車10両・90式メーサー殺獣光線車10両の部隊である。
 これらのメーサー殺獣光線車シリーズは基本設計は同一であり、年代と共に車両の運用と射撃管制の自動化省人化が進められ、より使い勝手が良くなっている。
 運用に長けた隊員ほど古い機体を好む傾向が見られるが、66式と70式も出力とメーサー発振器の換装作業が行われているので大人数での運用という贅沢を許すのであれば旧式とばかりは言えない性能を保持し続けている。
 もっとも熟れた練度を有するメーサー殺獣光線車は最大1分間の連続照射が実用化されており、最も長く攻撃が行われた。
 第一陣から第三陣までの地上からの攻撃が行われたが、第5使徒はATフィールドにてそれらの猛攻を防ぎ続けている。
 ただし、SCEBAIへの進行速度は停止し、反撃に回すエネルギーを確保出来ないのか防戦一方となっていた。
 そしてその隙を突き、富士山の陰から出撃したメカゴジラのサポートマシンであるガルーダが真っ先に突撃しながら、第5使徒の正面から2連メーサービームを浴びせつつ側方をすり抜けて上空へと遷移した。
 続けて92式メーサー攻撃機部隊5機、α号および第二β号、富士壱號と弐號が編隊を組みながら第5使徒の上空へと位置取りし上方向からの攻撃を開始する。
 92式メーサー攻撃機は攻撃ヘリに似た形状の可変ベクトルジェットによる飛行を行っており、機体側面に設置されたメーサービーム発振器から対地対空攻撃を可能としている。
 α号と第2β号は大型のロケットにジェット機の操縦席を取り付けたような形状をしており92式メーサー攻撃機と同じく可変ベクトルジェットによって飛行する大型攻撃機だ。機体先端のビーム砲からの攻撃に加え、機体に耐光線兵器用のマーカライト塗料を厚く塗布している為に短時間のビーム兵器に耐えられる性能を誇る。
 そして富士壱號と富士弐號は全領域活動兵器であり、前面に設置されたドリルにより地底、海中、陸上、空中での活動が可能となっている。機体上部前面にパラボラ式メーサービーム兵器が搭載されており、高機動ミサイルと共に高い密度での攻撃能力を有している。
 空中部隊の参戦により前面と上部からの攻撃に曝された第5使徒だがATフィールドは健在で、両方向からの攻撃を防ぎ続けていた。
 その頃、地上を4本の多目的歩行脚とジェットホバーにて使徒の側面へと移動していた自走パラボラ式光線砲マーク部隊40両が配置を完了し、両側面からメーサービームの照射を開始、前面左右と上面からの同時攻撃が開始された。
 ゴジラでさえ浴びた事の無い量のメーサー兵器の集中攻撃に曝されて尚、第5使徒のATフィールドは耐えていた。
 時折、オレンジ色のATフィールドに揺らぎが生じ、確実にダメージが与えられているのは観察されているのだが、使徒の持つ理不尽なエネルギー発生能力の源であるS2機関がそれを可能にしていたのだ。

「出し惜しみは無しだ。駿河湾に遊弋する打撃護衛艦部隊に支援砲撃要請、スコールの様に濃密な奴を頼んどけ」
「了解、沖合の打撃護衛艦群へと伝達。支援砲撃要請、支援砲撃要請」

 時空融合後に改装され海上自衛隊の護衛艦に採用された戦艦の数は多いが、広大な太平洋への各海域へと任務に就いており、日本各地にある基地や海外拠点の基地へと赴いていた。
 その為に海外はともかく日本の基地にて待機している艦隊も各地で暴れ回っている武装勢力への備える為に治安待機状態であり、横須賀の護衛艦隊も主に首都圏に隣接する東京湾へと出動していた。
 また、使徒にはATフィールドが存在しているので必然的に高火力を備えた打撃護衛艦にしか使徒迎撃任務は割り振られなかった。
 よって海外での任務を終えて戻ってきていた手空きの打撃護衛艦が臨時に使徒迎撃任務艦隊として編成された。
 北方海域での哨戒任務から帰還した金剛型打撃護衛艦の金剛と霧島は艦隊を組んでいた軽空母に改装されていた比叡、榛名と分離して駿河湾へと急行して印度洋からゾーンダイク警戒任務に就いていた穂高型巡洋打撃護衛艦の穂高と合流、更に豪州周辺海域でのベルク艦隊への威力偵察に就いていた越後型高速打撃護衛艦の越後が合流し、ここに打撃護衛艦4隻で構成された使徒迎撃任務部隊が単縦陣を組んで沼津沖に遊弋していた。
 打撃力の点で云えば筑後型双胴打撃護衛艦が最適なのだが、現在は近代化改装の最中であり断念されていた。
 さて、駿河湾の沼津市と富士市の境に近い現在位置から使徒は愛鷹山に遮られて直接目視が出来ず、現地からの観測結果を受け取り間接照準による射撃を予定している。
 全艦がその横っ腹を海岸線に曝し、全ての主砲が指向出来る様に全力砲撃の体勢は整えられていた。
 そこへ使徒迎撃枝作戦のサンフラワー作戦指揮者である権堂一佐からの支援砲撃要請が入った。
 艦隊旗艦である金剛のCICでは麾下の霧島、穂高、越後とデーターリンクを構成しつつ作戦本部からの敵照準のデーターを受け取るべく符丁の確認交信を行っていた。

「暗号電文・データーリンク『白黒抹茶小豆珈琲柚子桜』以上です」
「符丁入力よし。UAVによる間接照準データーリンク開始。艦隊の自動照準開始しました。いつでも撃てます」
「うむ、砲撃戦開始。撃てぇっ!」
『バァーニングゥ・ラァ〜ブ!!』
「…最近、幻聴が聞こえる気がするのだが」
「艦長、気のせいであります」

 金剛型戦艦の金剛、霧島に搭載された4基の35.6cm連装砲合計8門と穂高型戦艦穂高に変則的に搭載されている40cm砲は前甲板に三連装1基と背負い式に連装1基、後甲板に三連装1基の合計8門、越後型戦艦越後の前甲板に集中して搭載されている51cm砲三連装3基の合計9門。
 それらが愛鷹山の向こうに位置している第5使徒へと向けられた。
 1門づつ連続的に射撃が開始されて移動電探車によって識別された徹甲弾の弾道が目標に到達しているかが観測されて、正確に命中するように照準が修正されて行く。
 背後の方角、海側からの攻撃にほぼ全方位に展開したATフィールドであったが、その機能は衰えていなかった。
 過負荷に近いメーサービームの攻撃を受けてATフィールドは飽和状態にも思えるのだが、徹甲弾はフィールドに接触しコンマ数秒後に遅延信管の働きにより爆発するも波紋状の歪みが見えるのみで、ひび割れは発生していない。

「ちぃっ、意外にしぶといな。上空のシラサギは定位置に付いているのか?」
「は、予定通り上空一万メートルにて遷移しつつ待機しております」

 権堂一佐は事前計画で計算されていた現象を待ち望み、無駄にも思える攻撃を続行させた。
 その時、待ち望んでいた報告が寄せられた。

「報告、発 気象庁 宛 権堂一佐。富士山レーダーにて観測。使徒上空に積乱雲の発生を確認。急激に勢力を拡大しています」
「よし、シラサギに伝達、直ちに行動を開始せよ」
「了解」

 現在、多数の光線兵器による熱量によって使徒周辺に上昇気流が発生し積乱雲が形成されていた。
 渦を巻きつつ周辺から湿気を巻き込み、上空の寒気にて水蒸気は氷の粒へと変化し粒同士の接触により静電気が発生し帯電を開始する。
 そこへシラサギがワイヤーで吊り下げた直径10センチ長さ10メートルの炭素繊維の棒を投入する。

「シラサギ心棒の投入を完了」
「よし、冷凍光線照射!!」
「冷凍光線照射開始」

 その心棒に対し、御殿場市の四方に配置した95式冷凍レーザータンクから冷凍光線が照射された。
 照射されたレーザーによって励起状態の炭素分子から光子が誘導発散し、分子振動が強制的に揃えられて基底状態へと移行、瞬時に氷点下183度へと転じた温度と静電気により炭素繊維の棒に積乱雲中の氷雪が付着を開始する。
 回転による強い圧力により堅く押しつけられた氷雪は硬い氷の柱へと成長した。
 三式機龍をも吊り下げる能力を持つシラサギは重量五万トンの氷柱へと成長を遂げたそれを使徒の直上へと移動させて照準をつけた。

「権堂一佐、グングニール照準よし、です」
「そうか、グングニール発射」

 権堂一佐の命令によりグングニールと名付けられた氷槌が高度一万メートルから自由落下を開始した。
 重力加速度により位置エネルギーを運動エネルギーに変換したグングニールはまっすぐに使徒の直上へと迫撃する。

「グングニールは予定の速度で落下中です」
「そうか、ちなみに使徒から外れた場合にはどうなる?」
「…地殻を貫いた後に衝撃波で地上の土砂が山津波となって周辺都市を破壊し、巨大なクレーターを形成した後にマグマが噴出して第2の富士山が出来る、かも知れません」
「賽は投げられた、な」
「はい」

 ふとした疑問を口にしてしまった権堂一佐は冷や汗を流しながら経過を見守る。
 メーサービームによる攻撃により足止めされた第5使徒にはグングニールを避ける余裕は無く、頭上からの攻撃は使徒の直上に形成されたATフィールドによって受け止められた。
 オレンジ色の四角形が輝きATフィールドの抗力が全力まで振り絞られる様子が観測された。
 次の瞬間、グングニールが自身の運動エネルギーに耐えられず圧壊したが、それと同時にATフィールドがバラバラに砕け散った。

「今だ! 全力射撃開始、砲身が熔解するまで撃ち続けろ」

 その命令と共に正面部隊の第一陣から第三陣までの計76門のメーサービームと空中攻撃部隊からの14門のメーサービーム、側面部隊からの40門の合計130門のメーサービーム、そして32門の徹甲弾が使徒へと殺到する。
 青い結晶体状の第5使徒はそれらを体表で屈折させてすり抜け弾き返しATフィールドによらない非物理構成体による使徒の身体の強靱さを見せつけた。
 が、内部で乱反射されたメーサービームは使徒の根幹たる核(コア)に確実にダメージを与えていた。
 メーサービームの集中攻撃が止み、辺りに静寂が漂う。
 次の瞬間ガラスが割れるような音と共に使徒の身体にヒビが入り、コアから零れた後楽園球場五杯分もの赤い液体が地面に溢れた。

「やったかっ!?」

 権堂一佐がガッツポーズと共に期待の声を漏らす。
 甲高い悲鳴のような軋み音と共に光が溢れる中でコアが膨らみ爆発するかと思われたが、ある瞬間からフィルムが巻き戻るように無傷の姿へと還元された。
 それを見た権堂一佐は心が折れるような思いと共に呟く。

「なんてこったぁ、これで倒せないなんてなんちゅう化けもんだよ。ちっ、反撃に備えて、おっ?!」

 全力射撃の直後で反撃もママならない中、使徒はフラフラとした足取りで第三新東京市へと進路を変更した。

「全メーサー車は全力射撃の影響で射撃が出来ないし、こりゃあ今日は看板だな。第三新東京市へは連絡を入れて置けよ」
「ハッ、現在第五使徒迎撃に成功するも撃墜は適わず、現在第三新東京市へと移動中」


2017.01/11 改稿



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