作者: アイングラッド

スーパーSF大戦

第23話

エヴァンゲリオンパート

7/3 午前0時 その1.

 午前0時

 今回の作戦は午前3時過ぎになると考えられていた為、エヴァ・チルドレン達は宿舎にて仮眠を取らされていたのだが作戦準備のため午前0時になると目覚ましが鳴った。
 布の仕切りで二部屋に分けられていた仮眠室でシンジは目を開く。
 目覚ましが鳴る前に既に目を醒ましていたのか、しっかりとした光を湛えていた。
 すっくと上半身を起き上がらせるとカーテンの向こうへと目を向ける。
 それまで薄暗かった照明は、意識の覚醒を促すためか、強力な白色光を放ち出した。
 その為、それまで完璧に仕切られていると思っていたカーテンが薄〜く透けていることに気づいたのだった。
 カーテンの向こうにはアスカとレイが仮眠を取っており、「くかー」「すーっ」と寝息を立てているのが見えた。
 この明るさの中でも目を醒まさない二人に、女性の逞しさを感じたシンジは苦笑してベッドから降りた。
 いつでも出撃できるようにプラグスーツに着替えやすい貫頭衣の様な寝巻きを着ている。
 以前のアスカならば「ジェリコの城壁」とでも形容した仕切りは、その例えの如く越えられる事になった。
「アスカ、レイ。時間だよ。起きてよ」
「う〜ん、もう食べられないわよ」
「…ベタベタなお約束だなぁ」
 思わず後頭部に巨大な汗を垂らすシンジであったが、気を取り直すとアスカの肩を揺すった。
「アスカ、出撃だよ。起きなきゃ」
「え〜、出撃…出撃ねぇ…って出撃じゃないっ! レイ、起きて! 時間よ」
「……むぅ〜…オハヨウ…」
 レイは寝ぼけ眼をカシカシとコスると、少しばかりボーっとした顔で起き上がり、すーっと目蓋が閉じて行く。
 あの世界の赤木リツコからしたら到底信じられない事だろうが、以前レイならばまるで機械人形のように目を醒ましたであろうに、今ではすっかり寝坊助と化していたのだ。
「ホラ、眠らないで目を醒まして! 急いで着替えて食事を取って出撃準備をしなくっちゃ!」
 アスカはレイを急かせながらも、自分も急いで作戦の準備に入る。
 そのまま、素早くパジャマをたくし上げて…。
「あっ…」
 という声が耳に入ったアスカは右へと顔を向けた。
 当然の事ながら、アスカを起こしたシンジはまだそこに立っていた。
 その視線を追って見ると、たくし上げた自分の…。
 アスカの顔面にある毛細血管は瞬間的に拡張し、逆に血圧は急上昇した。
「いっ…つまでそこに突っ立ってんのよっ! シンジのエッチィ!!」
 いつものワンパターンで恐縮ではあるが、鞭のようにしなったアスカの右腕はシンジの左頬に炸裂した。
「ガヒュッ!」
 幼少時から命を狙われかねない立場にあったアスカは当然のように対人戦闘訓練を積んで来ており、その弾丸のような拳は、極めて濃度の濃い物だとは云えどもわずか1年ばかりの訓練しか受けていないシンジに避けられる物ではなかったのである。
 シンジの肉体は、まるでダミー人形のように弾けとばされてベッドへと逆戻りしてしまった。
「ふんっ! まったくエッチなんだから」
 非常に理不尽な事ながら、彼女的な見地からすれば当然の事だと言わんばかりに鼻息も荒く着替えると、隣室へと行ってしまった。
 ぴくぴくと震えるシンジであったが、そこへ影が落とされた。
 思わず目を向けると、レイが冷たい表情で見下ろしていた。
「出撃。先に行くから」
 レイはいつかどこかで聞いたような言葉を嘗てのような態度でシンジに言ってのけた。
 以前ならばシンジが裸を見ようと気にもしなかったし、ちょっと前まではレイが裸を見られれば真っ赤になって照れるばかりであったから、相手に対して軽蔑の念を抱く現在のレイの感情表現は、新たなるステージへと足を踏み入れ始めているようである。
 シンジはそんなレイの精神的な成長には嬉しいものを感じるものの、何故だか非常に理不尽な思いを背負いながら、よっこらせと身体を起こして自らも無言で準備を進めるのであった。

 シンジ達がプラグスーツに着替えると、宿舎の前に待っていたSCEBAI(スケベイ)の職員がアイドリングしている自動車から降りてきた。
 街灯から外れていたのでいまいちハッキリと姿が認識できなかったが、白衣を着た大柄な人影から研究所員Aであることが分かった。
「エヴァンゲリオンの準備は出来てます。岸田所長の指示でエヴァンゲリオンに乗り込んで現場に移動するとの事です。よろしいですか」
 その体つきから高圧的な印象を持たれることの多い研究所員Bであったが、実は細かい心の持ち主であり、高校1年生の彼らに対しても丁寧に説明をしている。
「はい、Aさん。よろしくお願いします」
「よろしくね、A」
「よろしく」
 シンジ達は了解した旨を述べると、研究所員Aの乗っていた年代物のジープに乗り込んだ。
 この国立科学研究所は元の世界に於いて最先端の技術を開発するために、文部省(当時)が主導して作り上げた筑波学園都市に対抗して科学技術庁が作り上げた最先端の研究施設であったが、その実、趣味に走ったとしか思えない年代物の乗り物がゴロゴロしている事でも有名であった。
 何しろ元の世界では、世界で唯一飛行可能なB29を保有していたし、第2次世界大戦を生き延びた日本帝国海軍の巡洋艦「轟天」を改造して保有しているし、警備主任の持つ飛行機などは第1次世界大戦のエースが駆った複葉戦闘機「レッドバロン」と同型機の「レッドオババ」であったから、第二次大戦で現役に使用されていたジープなどはごく普通の足として利用されている。
 ちなみに現在の三人の護衛は江東学園警備部からSCEBAI警備部へと引き継がれている。
 元々、江東学園警備部がSCEBAIの影響下にある事も理由のひとつであるが、偽装を行うことなく堂々と警備出来る事が理由としては大きい。

 エヴァンゲリオンの格納されている格納庫、通称「ケージ」はSCEBAI本部棟から少し離れた場所にある。
 多少不便ではあるが、暴走と云う危険な状態を持つ人型兵器である以上これは当然の事だと言えた。
 むしろ、暴走を理由に廃棄されなかった事が幸か不幸か。
 そして今回の出撃理由となった存在は、刻一刻と第三新東京市へ向かっていた。
 第5使徒である。
 その現在位置は自衛隊によって観測され続けており、伊豆諸島近海を伊豆大島へ向かっていた。
 使徒は決してエヴァンゲリオン以外に倒せない、という訳ではない。
 第3使徒サキエル程度のATフィールドであればマジンガーZのブレストファイアーで打ち破ることが出来るであろうとする研究結果がアンノン博士から発表されている位だ。
 しかし、力天使=ゼルエルのATフィールドは無理だとも計算されていた。
 つまりエヴァンゲリオンでなければ戦うたびに人類滅亡を覚悟する程の危険性があるのも確かなのだ。
 よってエヴァンゲリオンは日本の防衛に絶対に必要なスーパーロボットのひとつに数えられており、その運用には細心の注意を払う必要があるのだ。
 さて、ここSCEBAIのある敷地は富士山麓であり、箱根の第三新東京市から遠い物ではないのだが、身長50メートルの巨大ロボットが歩いて行ける距離でもなく、トレーラーに乗せるにはあまりにも大きすぎた。
 よってその手段は空に求められる。
 だが、エヴァンゲリオンを乗せて移動できる航空機はとても限られる。
 ナデシコA、Bは使徒戦に際して別任務が与えられているし、スーパーロボット運搬用の専用機は整備中だ。
 グロイザーX改では1機を運搬するのが限界だろう。
 サイズから云えば最も適任と思えるのが、TDFが持つ小型潜水艦ハイドランジャー空中輸送用のドルニエ機だが、治具が異なる上に海面効果を用いた機体であるのでやはり適当とは云えなかった。
 よってそれが可能な機体を国外からレンタルした。
 エヴァンゲリオンほどもある巨大な重量物を積んだまま低速で低空を飛行出来るもの、それが中華共同体の国際警察機構にレンタルを依頼し先日飛来した巨人飛行船「グレタ・ガルボ2」である。
 通常は中華共同体にて「ジャイアントロボ」の運搬任務に就いている彼女だが、第5使徒対策のとある兵器を先日第3新東京市に置いて来た後こちらへ回航されて来ていたのだ。
 通常は、あのジャイアントロボを運用しているだけあって超巨大な硬式飛行船なのだが、その巨大さはまるで戦艦が空中に浮いているような圧迫感を感じさせるのだ。
 それが上空から降下してくる。
 スーパーロボットの分類別ではLサイズに分類されるエヴァンゲリオンであったが、グレタに比べれば圧倒的に小さく見えた。
「でかい…っ」
 シンジがエヴァンゲリオンのコクピットから思わすそう呟く。
 その全長は実に戦艦大和に匹敵し、その大半を占める巨大な飛行嚢の下には、駆逐艦並みの砲塔を有した船室部分を下げ、空中移動用に設置されたプロペラをシズマ=フォーグラードライブにて駆動していた。
 初代グレタ・ガルボはBF団の大怪球が破壊した上海からの逃避行中に襲ってきた幻夜によってジャイアントロボの道連れに撃墜されてしまったが、同型機の就役の時にその名を贈られたのである。
 とは云え、エヴァンゲリオンも3機となればジャイアントロボ1機よりも重くなる。
 だが、中華大陸の峻険な山脈よりも低高度にある箱根の外輪山なれば、何とか移動も可能であった。

 さて、現在のエヴァンゲリオンであるが、零号機と弐号機は外部からの電源補給を行わなければ僅か5分間しか動くこともままならないエネルギー機構となっている。
 以前はGGGから貸与されたGストーンによるGSライドをアンビリカルケーブル取り付け部にアタッチメントして運用していた。
 だが、Gアイランド事件で暴走したエヴァンゲリオン初号機での反省から現在はアンビリカルケーブル方式に戻されていた。
 その事件に於いて件の初号機はSS機関を使徒から摂取してしまったので、現在の初号機は活動限界を超越した行動を行うことが出来る。
 云わばウルトラマンに対する初期ウルトラセブンの様な物だが、それが幸運なことなのかは今後の動きによって判断が分かれる所だ。
 そういう理由から、零号機と弐号機は待機状態のまま初号機によってグレタ・ガルボ2へ搭載される事となった。
 具体的に云うと、簡易型のケージに固定された零号機と弐号機を初号機が持ち上げてグレタ・ガルボ2の格納庫に固定するのだが、空中に浮遊している物に対して抱え上げるほど重いものを固定するのはなかなかに骨が折れる作業だった。
 簡易型のケージの角をグレタの縁にぶつけては誘導員、そして何よりアスカから激しく注意を受けながらも15分位掛けて格納に成功、初号機自らを格納庫内部に固定して発進を待つ。
 第三新東京市までの道中はエヴァンゲリオンのコクピットから出られず、そのまま移動が予定されていた。
 元々、グレタ級が如何に巨大だったとしても飛行中に格納庫へと収納した通常の固定翼機の運用は無理であった。
 よってヘリコプター以外の機動兵器の運用を想定していなかったので、いささか窮屈な思いをする破目になった。(垂直離着陸能力を有するMATアロー1号,2号や科学特捜隊のジェットビートルなら運用も可能)
 幸いだったのは、飛行船の移動が静かに滑らかだった事くらいだろうか。もっとも御殿場線上空の山間の超低空を風の影響を受けやすい硬式飛行船で移動するのだから超絶的な操縦技術が必要とされたのだが、とある組織の天才少年ドライバーによってそれが可能となった。
「おまえに命を吹き込んでやる、グレタガルボ2っ!」
 グレタはわざわざ危険な山陰に隠れるルートを採って移動していった。
 その理由は、接近しつつある使徒の視界に入らない様に、山陰に隠れるように飛行高度に注意しつつ箱根外輪山西側の湖尻峠を超えて第三新東京市へと入る為である。

 綾波レイは地元っ子だが、余所から喚ばれたシンジとアスカのふたりが元の世界の第三新東京市にいた期間は、実際の所それほど長くなかった。
 だが、エヴァンゲリオンでの戦闘の大半がこの地で行われ、すべての作戦目的がこの都市と地下のジオフロントの防衛であった事から、その思い入れは大きい。
 グレタは予定通り第三新東京市の芦ノ湖湖畔へと到着した。
 幸いにして飛行船最大の障害である風はほとんど無く、まるで幽霊のようにピタリと静止すると、格納庫のハッチを開いた。
 まず、エヴァンゲリオン初号機が三〇mほど下にある地面に着地すると辺りを見回した。
 住民の大半が避難した第三新東京市であったが、市街のあちらこちらにサーチライトが煌々と輝いており、そこかしこに自衛隊の人間が集合して作業を行っていた。
 中には初号機の事を確認した隊列が手を振ったり、一斉に敬礼したりしている。
 シンジは軽く会釈するとエヴァンゲリオン弐号機と零号機の簡易ケージをグレタから降ろした。
 まるで棺桶のような簡易ケージのロックを外すと、中からエヴァンゲリオン弐号機と零号機がのそりとした動きで出て来る。
「あぁ〜あ、もう肩凝っちゃった。キツキツよぉ」
 出てくるなりアスカは不満たらたらで文句を言う。
 実際に自分の体が固定されているわけではないのだが、エヴァンゲリオンのエントリープラグの中に居続けるとどうしても同じぐらい身体に負担がかかるのだ。
 アスカは身体をほぐす為だろうか、肩幅に足を開くと左右に身体を傾けながら屈伸し、柔軟体操を始めた。
 生身の人間に酷似した人造人間特有の構造を持つエヴァンゲリオンは人間と同じように同じ姿勢を連続して取り続けると運用に若干の支障を来たす為なのだが、ハッキリ云ってシュールな光景である。
 アスカが屈伸を始めると続けてレイも同じように柔軟を始める。
 音楽は無いがこちらはラジオ体操第二の様だ。
 ここに北海道は千歳に出現したDoLLsのメンバーがいたら、その動作の自然さに驚愕しただろう。それ以前に五〇メートル級のエヴァの巨大さに圧倒される可能性が高いが。
 それはともかく、この時点のアスカとレイのエヴァンゲリオンの駆動用電力は内部に残存した電力のみとなっていた為、電源切れによる行動不能が考えられた。
 よってエヴァンゲリオンの降り立った場所に二つばかりの巨大な箱型タービンエンジン発電機が用意されていたである。
 シンジの初号機がそこから伸びたアタッチメントを掴むと、アスカとレイの背後に回った。
「アスカ、レイ、アンビリカルケーブル繋ぐから」
「了解、コネクトソケットパージ、外部電源受け入れシーケンス起動」
「おなじく、外部電源受け入れ準備、ヨシ」
 アスカとレイの返事を聞くとシンジはおもむろにアンゲリカルケーブルのアタッチメントをアスカに挿し込んだ。
「あっ…はぁん」
「…アスカ、そう云うのやめてよ。(不用意に膨張すると凄く痛いんだから)」
「だってぇ、ねぇレイ」
「私知らない」
 無表情を装っていたが、レイの頬も何となく赤らんでいる。
 だが無理も無い、アンビリカルケーブルの取り付け位置は背中の中程にある。
 そこへ、アンビリカルケーブルを繋いで通電すると、背筋を『ツツツ』となぞる様な擬似感覚を得るのだ。
 思わず総毛立つ微妙な感覚である。
 電力の取り入れも開始し、取り敢えずこの地で活動するための準備を整えると、予め準備されていた陣地へと移動を開始した。
 作戦計画では、使徒が地下の「黒の月」目掛けて行動をするとなると、以前のシールド掘削位置と然程変わらない市街地のど真ん中に陣取るはずであった。
 よってヤシマ作戦と同様に攻撃陣地が設定された。
 ここで今回の作戦が以前の「ヤシマ作戦」と異なっている点を上げてみる。
 まず、参加機体が以前はディフェンス・エヴァンゲリオン零号機、オフェンス・エヴァンゲリオン初号機だったのが、ディフェンス・エヴァンゲリオン零号機、初号機、弐号機に増え、オフェンスにマイクロ・ガンバスターが参加となった事だ。
 そのマイクロ・ガンバスターであるが、既に陣地にて準備を行っていた。
 彼女たちが操縦するマイクロ・ガンバスターは巡航形態「バスターフライヤー」へと変形が可能な可変戦闘機なのである。よって射撃陣地にもより早く到着していたのだ。
『あ、ヤッホー。待ってたよー』
 能天気な声で手を振ったのはガンバスター・パイロットのタカヤ・ノリコである。
『いらっしゃい、三人とも。今日はよろしくね』
 上品に笑って通信してきたのはガンバスター・コ・パイロットのアマノ・カズミである。
 この様な超強力なエネルギーを内蔵した機体を持ち出してきた事が、今回の作戦の規模と重要性を示していた。
 エヴァンゲリオン(初号機)もS2機関を搭載した、政治的に要注意に二重丸が付くような危険な機体であるが、エネルギー内包力で云えば縮退炉と云う化け物じみたエンジンを持つマイクロ・ガンバスターに敵う物ではない。
 そのマイクロ・ガンバスターであるが、ヒザ立ちした状態で何やら調整の真っ最中であった。
 どうやらその縮退炉の微調整に苦労しているようだ。
 今回の作戦ではマイクロ・ガンバスターの前に三機のエヴァンゲリオンが陣取り、バスタービームで攻撃するマイクロ・ガンバスターを使徒の過電粒子砲の攻撃から三重のATフィールドで守るのが役目である。
 作戦を聞いた時、自らが攻撃の主役でない事に文句を言っていたアスカであったが、マイクロ・ガンバスターの攻撃手段とエネルギー総量を聞き目の色を変え、直ぐに作戦に賛同したのは記憶に新しい所である。
 さて、こう云う複雑な作戦と高度な技術を用いた場合、その技術的サポートに就くのは決まってSCEBAIの所員なのだが、今回はそれにナデシコAのウリバタケも参加していた。
 宇宙規模のエネルギー施設を扱える経験を持った人間は流石の日本連合と言えども、そうそうは存在しなかったという事だ。
 よって、シンジ達の耳に入ってきた通信の声も、そのウリバタケの物であったのは不思議な事ではなかった。
『ダメだ、ヤッパリ実際に繋いでみんと何とも云えねーぜ、コリャ。おーい、そこのアスカちゃんとレイちゃん、早くこっちに来てくれや』
 突然のウリバタケの言葉に驚いたアスカだったが呼びつけられて腹が立ったのか、少し険の籠もった声で返事をした。
「何よ、一体」
『何って、エヴァンゲリオンを超過エネルギーの負荷媒体に使うんだろう? 実際に繋いでみねーとエネルギーの変動が掴めねーんだよ。分かったら、そこに座ってくれや』
「むぅ、ここでいいの?」
『おう。マイクロ・ガンバスターの前に並んで座ってくれ。その間にシンジは二人が使う盾と自分用の新兵器の準備だな。時間が無いから、急いでやってくれや』
 そう云うとウリバタケは後ろに控えるSCEBAIの技術者たちに指示を与え始める。
 アスカの弐号機とレイの零号機はマイクロガンバスターの前に跪き、タービンエンジン式のエネルギーパックから伸びたアンビリカルケーブルをパージした。
 アンビリカルケーブルのアタッチメントは、紐付きで着地寸前にバーニアを噴かすとは云え、そのサイズはトレーラーヘッドよりも巨大で重量がある。
 よって、轟音と地響きを立てて、現場を監督していたウリバタケのすぐ横に落下した。
『どわーっっったったった!! こらーっ! よく考えてから行動しやがれってんだっ!』
 衝撃で地面に投げ飛ばされたウリバタケは両腕を振り上げて猛烈に抗議した。
 一歩間違えば即死であったので、顔を真っ赤に染めて物凄い剣幕である。
「なによーっ、急げって云ったから急いだんでしょう!!」
『注意一秒怪我一生ってなっ! 何かあってからじゃ手遅れなんだ! 分かってるのか!!? コラァッ!』
「ちぇっ、悪かったわよ」
 対ガギエル、使徒戦デビュー時の様に人死にを出してまで急ぐ必要は無かったのだから、ここで反抗しても意味は無い。
 今度はおとなしく指示に従った。
 零号機と弐号機にマイクロガンバスターから伸びたケーブルが中継器を通して繋げられている。
 それとは別に初号機はアスカとレイが使用する盾、南原超電磁研究所が開発に関わった超電磁コーティングが施された分厚い盾と武器の類が集積された広場に来た。
 特に盾は元の世界で超電磁コーティングされた大気圏再突入体の機体を用いたにも拘らず、最終的に熔け落ちて零号機に過電粒子砲が直撃した前例からゲル状物質や冷却媒体と超電磁作用によって荷電粒子を反発させる対ビーム専用の盾となっていた。
 熱線に耐えられるように作られているそれは核兵器の直撃にも耐えられる為、核戦争用の物ではないかと云う政治的疑惑をも呼び込む事になる代物であったが、現在の所は関係ない。
 目的が目的なのでサンライズ製作のアニメーション機動戦士ガンダム0083に出てくるRX−78GP−2の盾に外観が似てしまったのも仕方が無いかもしれない。サイズは桁違いだが。
 それはさて置き、シンジは自分が使う事になる武器を確認した。
 エヴァンゲリオンの身長を人間の等身大として比較すると直径三〇センチメートルの鉄球に尖った棘が多数付き、長く伸びた鎖でそれを取り扱う、凶悪な暴力をそのまま形にしたものであった。
 「アスカ」
 シンジは思わずアスカに通信を入れてしまった。
「なにシンジ」
「今回のこの新兵器だけど・・・」
「シンジにだけ新兵器なんてちょっと狡いわね」
 攻撃精神旺盛なアスカとしてみれば安全性の増した新型の盾よりも攻撃力そのものの武器の方に食指をそそられるのであった。
 現在、エヴァンゲリオンの武装強化が計画されており、そのうちの一つ、最も単純な試作兵器が完成した為に実戦配備されたのだ。
 この他にもATフィールドの収束を目的とした強化装甲のF型装備、通称フルアーマーエヴァンゲリオンやSCEBAIが保存している銀河帝国侵略会社ゲドー社の降下兵の竜骨から削りだした太刀、エクスターミネーターマゴロクソード改やデュアルソー等が開発中である。
 だが、シンジは配備されたばかりの武器の有効性に対して疑問を持っていた。
「ていうか、これ本当に役に立つのかな?」
 実はこの武器の完成に伴いシンジにこの武器の取り扱い説明と特訓が課されていた。
 訓練の為に作られた、人間用に縮小した訓練用の物を渡されていた為、それを振り回して目標に当てればそれが鉄板でも穴を開ける威力があるのを知っているが、特訓をつけてくれた「武器の申し子」と呼ばれた師匠と比べると自分の未熟さからちゃんと使えるのか自信が無かった。何しろ取り回しが異常に難しいのだ。
「モーニングスターね、トゲトゲの付いた金属球。質量と運動エネルギーの総和を破壊力にする訳だから・・・エヴァーのサイズだとグレートマジンガーのドリルクラッシャーパンチよりも破壊力があるわよそれ、きっと」
「ええっ!? このガンダムハンマーが?!」
 力に任せた原始的とも言える武器に、その威力をイマイチ信用していなかったシンジであったが、あの分厚い装甲を持つ戦艦の主砲防循に穴を開けるドリルクラッシャーパンチの上を行くと聞かされて驚愕の声を上げた。
「ガンダムハンマーって、あのねフィクションと現実をゴッチャにしないの!?」
「え、あ、ゴメ…」
「ん? ごめ…なんですかー? まさかゴメンとか言おうとしたとか。約束したでしょ、ゴメンとか言わないって」
「イヤイヤ、違くて、ゴメ、じゃ無くて、えーと、悪かったです」
「まぁヨシ。いい事シンジ。もしもバスタービームで使徒が仕留められなかったら貴方がそれで攻撃するんだから」
「うん、善処します」

 決戦、新ヤシマ作戦へと続く。





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