作者:EINGRAD.S.F

スーパーSF大戦 第23話


E−PART


 さて、世の中にはこう云うトラブルを待ちかねている輩がいる。
 混沌としたこの世界であるが、奇跡的な事に時空混乱の直後に世界を支配した社会の法則は混乱ではなく、戸惑いながらも力を伴った秩序であった。
 裏社会の実力は果てしない物であるが実益優先で訪れていない危機に対しての備えは薄い、却って防災出動にて豊富な出動経験を持つ表社会の行動派の方が裏の連中がモタモタしている間に機先を制する事が出来た。
 よって、奴らは巻きかえしの機会を虎視坦々と狙っている。

 神奈川県横浜市内。
 時空融合後の横浜と云う土地は海上自衛隊の停泊地に近い上に「さがみの自治区」等の特別自治区が数多く隣接し、鉄道を始めとする公共の交通機関も発達している為に人の出入りも多いので経済的に活況を呈している活発な土地となっている。
 だが裏を返せばそれは多くの犯罪者達が隠れるのに都合の良い土地であるとも云えるのだ。
 木の葉を隠すなら森の中、人を隠すなら町の中、と云う訳だ。
 数多くの犯罪組織や国家のスパイ達が自衛隊の動向の調査や装備の研究に訪れており、又、組織から追われる犯罪者達は都市の闇の中に身を潜める。
 そんな町、横浜港湾区に程近い某ビジネスホテルの一室に彼女は居た。
 彼女は命令を受けてここへと来たのだが、改造人間奇怪人に改造される以前の記憶が無く、また破壊工作員としての経験も皆無の彼女は一般観光客をカモフラージュする事も無く、漫然と時間を室内で過ごしていた。

 真昼間から室内に篭る客にホテル側も不審がったが、体調が優れないから、と云う話を聞くと近くの医療機関を紹介し、あっさりと引いた。
 それから後、体力を温存するためか彼女はベッドの上で横になっていた。
 奇っ械人タックルたる彼女は任務を遂行する事しか意識上にのぼる事は無い。
 任務遂行上、キャラクターを演じるために擬似人格プログラムを実行する事はあるが、本来の彼女の頭脳は擬体を運用維持する為のみに使用される様に改造されている。よって睡眠を取っている時も夢を見る事は無い。
 だが、現在の彼女はその夢を見ていた。
 否、どちらかと云うと彼女の見ている物は幻覚に近い。
 休眠状態にあるにも関わらず目を見開き、周囲の警戒に当たっている彼女の視界は天井と蛍光灯、そして何故か味方であるはずの戦闘員と戦う自分、そして共に戦う見た事の無い戦闘用サイボーグの姿である。
 真っ先に取り除かれた不必要な人間的雑音である感情、それを持たない彼女は単なる戦闘記録の流出としてそれを眺めていた。

『・恐らくこれは、先行試作タイプか完成前の自分が受けた戦闘試験の物なのだろう。
・だが、そこに映っている自分?の顔に浮かぶ物、表情は感情に満ち満ちている。
・戦闘に不必要なはずの感情を除去していないのは何故だろうか。
・理解不能。
・自分?と共に戦っている戦闘用サイボーグは? 今はここに居ない。試作に失敗したパートナー奇っ械人?
・パートナーの居ない今の自分は不完全なのだろうか。
・情報不足。
・不完全ならば、完全な能力を欲する。
・権限不足。
・対策を取るには情報不足、新規入力をまつ。』

 取りあえず判断を先送りした彼女はそのまま作戦準備開始の時まで待機行動を続ける事を選択した。
 既に自衛隊の主力部隊は東海方面へと移動を開始している。
 治安維持を目的とした軽装備の留守番部隊が中心の首都圏で作戦が始まるまであと少し。




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