ネルガル監査部のプロスペクターとゴート、そしてナデシコ艦長のユリカは第2船体最下層の昇降口から地上へ降り立った。
すると左舷ブレード部の外に停まっていたマイクロバスの運転手が彼らに気付き、アイドリングしていたバスを寄せてきた。
ガチャ、と音を立てて扉が開くと、中からサングラスを掛けた大柄な男(白衣着用)が愛想笑いを浮かべて降りてきた。
「初めまして、私はSCEBAI研究所員のAと言います。皆様を所長の所へご案内するように言われております。狭いクルマですがどうぞお入り下さい」
確かに、こう云う場合、黒塗りのクラウンやベンツが相場と言ったところではないだろうか、それはともかく、旅館の送迎バスのようなマイクロバスにユリカとプロスペクター、それから少し窮屈そうにゴートが乗り込み本部ビルに向かって走り出した。
プロスペクターは普通の造りのマイクロバスの内装を値踏みするように眺めると感想を述べた。
「ほほう、コレはまたレトロなクルマですな」
「そうですか? まぁ二〇〇年後には浮遊型のエアカーなんかが普及してるんでしょう?」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。第一エアカーじゃ燃費が悪いですからねぇ。そこら辺が解決できないとなかなか・・・。」
「しかし、反重力エンジンが開発されているならそこら辺も解決出来るのではないですか?」
「それがですねぇ、流石に重力制御システムを自動車レベルまでに小型化すると値段が張ってしまいまして。下手をするとエンジンだけで通常の自動車の10倍近くコストが掛かってしまうんですよ」
「はぁ、成る程」
等々、話ながらマイクロバスが航空機等に使う巨大な格納庫の扉の前を横切った時、その扉が徐々に開かれ中が見えた。
通常なら中にはSCEBAIの研究員達が趣味と実益で運用している航空機がズラリと並んでいるのであるが、今日はそれらは脇へ追いやられていた。
替わって立ち並んでいたのが
「ええー! プロスさん見てみて! あんなに沢山ゲキガンガーが有りますよ」
ユリカはBと話し込んでいたプロスの首根っこを掴むと格納庫の方へ向けた。
突然捻られたせいで首に痛みが走ったプロスペクターは眉をしかめながら渋々とそちらに目を向けた。
プロスペクターが目を向けると広大な格納庫の中には、大小様々な大きさと形をした人型ロボット達が立ち並んでいた。
もちろんそれらはゲキガンガーではないのであるが、その手の知識に疎いユリカは最近アキトがハマリ掛けているゲキガンガーをアキトと共に何回か見ていたので咄嗟に巨人型ロボット=ゲキガンガーと思いこんでしまったのだ。
因みに、こんなに多数の戦闘ロボット達がここSCEBAIに集結した理由は、先の国会でスーパーロボット軍団の結成が決定され、その整備とデータの収集の為ここSCEBAIをそのスーパーロボット軍団の中心基地とした為である。
もちろん、一品物のスーパーロボットの中には特定の研究所に所属し現在も情報の蓄積と改良が続けられている物が多かったので、今回は登録だけに集まった機体も多かったのだが。
又、ロボットの中には、優れた基本設計でありながら時代的な設計の古さからその性能を十二分に発揮されていない物もあったからそれらの改良も計画に入っている。
顕著な例を挙げれば「帝國華撃団」の光武であろう。
設計開発が太正時代に拠る物のため、制御系が機械式の蒸気計算機によって組まれており、強電のみで組まれた電気回路に用いられている旧式な真空管ですら光武にとっては最新の技術であった。
故に、機体の大部分を占める制御系を電子技術による電子機器に換装し、余ったスペースと重量を運動性、稼働時間、装甲の向上に当てる事が可能なのである。
改良されるはずの光武は、現在の物をも凌駕する高性能の蒸気機関とその特徴である霊子機関を併せ持ち、それらを制御する電子回路と探知機器を現代の高技術にする事により元の性能にくらべ、試算では250%の性能を誇ることが分かっていた。
これにより、今まで戦ってきた敵・黒鬼会の魔繰兵や降魔よりも強くなると考えられている。
さて、艦長らのマイクロバスが格納庫前を通り過ぎる時刻、SCEBAI側のタイムスケジュールではある研究所に所属する戦闘ロボットがその性能テストに入るところだった。
格納庫の片隅に駐機していた3機のゲットマシンにはそれぞれ専属のパイロット達が既に乗り込んでいた。
パイロット達が無線で会話しながら、ゲットマシンはSCEBAIの牽引車に曳かれて格納庫を出て、滑走路に並んだ。
「こちら早乙女研究所所属のゲッターチーム。いつでも準備OKェェ」
『こちらSCEBAIコントロール了解。上空はクリアー、いつでも開始していいですよ』
「了解! 隼人、弁慶行くぜぇ」
「ヤレヤレ、了解」
「弁慶りょうかぁい!」
ゲッターロボGのゲットマシン3機はGアイランドで受けた損傷も既に修理が終了しており、ゲッタードラゴンのメインパイロット流竜馬の合図の元性能テストが開始された。
幅広い滑走路に横に並んで停めてあった3機は一斉にスロットルを開くと一気に加速、ほとんど垂直と呼んで良いような角度で上空へ一気に駆け登っていった。