スーパーSF大戦  第17話


C−PART

 5人は富士駅から電車を待った。
 電車がホームに入ってくるとジャンは目を輝かせた。

『うっわー、見てよナディア。電気で動く汽車だよ』
『ええそうねジャン・・・はぁ』
『どうしたのナディア。元気ないけど』
『なんでもないわ。まったくもう』

 だが、富士駅から電車に乗って移動中、車内放送で緊急停車の知らせがあった。
 その為、危険域へと向かう彼らの乗った電車はひとつ手前の駅で止まってしまった。
 アスカはタクシーを拾って急ごうとするが駅前のロータリーにタクシーの姿はなかった。
 既に県内には緊急避難の指示が出ていたため、市民の避難は着々と進んでいた。
 アスカは電話でSCEBAIに連絡を取ると、使徒と思われる物体が駿河湾から上陸し彼女たちの方向へ進んでいるとのことであった。

「使徒? だって、使徒はカヲルくんが最後だって言ってたのに」
「ATフィールドが確認されたって。間違いなく使徒ね」
 アスカの言葉にシンジは黙ってしまった。
 しかし、あの最後の使者、渚カヲルの言葉が嘘だったとは思えない。
 これは一体どう言う事なのだろうか。
「とにかく。あと5分でSCEBAI から迎えが来るそうだから、ここで待ちましょ」

 その直後、丸い穴のような仮面の顔が特徴の使徒が駿河湾から静岡県富士市近郊へ上陸した。
 自衛隊は以前現れた使徒に有効打撃を与えた打撃護衛艦の艦砲射撃を以て迎撃に当たるつもりであった。
 今回は前回の使徒迎撃で滑空砲に撤甲誘導弾という組み合わせが有効性が高かった為、大口径弾戦艦群の主砲塔はほとんどが誘導装置を組み込んだ砲弾に換装されていた。
 現在、使徒に対して攻撃可能距離にいたのは八門全ての砲塔を換装していた旧超弩級戦艦で現在の分類名称は打撃護衛艦「ナガト」と姉妹艦の「ムツ」、それとハワイ県で第二次世界大戦の記念艦として真珠湾に動態保存されていた四〇センチ級砲門九基を積んだ高速戦艦アイオワ級ミズーリが日本に回航されて高速打撃護衛艦「ミズーリ」として改装されていた。いいのか?
 それら計25門の40センチ滑空砲の誘導弾が使徒に向けられ、いま正に発砲準備を進めていた。
 しかし、こんなに沢山金の掛かる兵器を揃えていて国の財政は大丈夫なのか? エヴァ1機の修理で国がひとつ傾くというのに、まぁ、この話の中ではそこら辺は無視して進めますので突っ込みはしないでね。
 現在、サキエルの位置確認は陸自との連携で完璧に打撃艦隊に伝わっていた。
 この打撃護衛艦の兵装は弾頭を交換することで多様な戦闘シチュエーションに対応することが出来た。
 射撃用の管制システム、炸薬や薬室、補助多段階炸薬システムに改造した砲身に改良が進められた四〇センチ級の射程は80キロメートルを誇っていた。
 直接照準が出来る距離にはないため、他艦や空自や陸自との連携による間接射撃が必要不可欠であるが。
 最大仰角は五〇度と大仰角を持ち最高有効高度は三〇〇〇〇メートル、空気の薄い成層圏を通過することで飛距離を格段に延ばすことが可能になったのだ。(これは史実の戦艦大和も同じ。もっとも、空気が薄い為に空中目標に対する誘導性能は格段に落ちる)
 打ち出された砲弾は慣性誘導装置に導かれて目標近くまで運ばれた後、レーダーテレビ複合誘導装置で誘導する事が出来た。
 そのお陰でホーミング機能を持った対空誘導散弾として有効使用が出来るようになっていた。
 又、元来の目的である対艦撤甲弾としても有効であったし、何よりも多数の撤甲貫通針や小型触発弾を内蔵した面制圧兵器としての使用も可能であった。
 又、ミサイルと違って迎撃される心配がない事も利点に挙げられるだろう。
 射撃地点が海岸線より陸上に上がれないのが欠点だが、その有効半径内なら誘導装置によって精密誘導し直前に多数の対装甲弾頭をバラ撒くことで激しく機動する機動兵器キラーとしての有効性が考えられていた。また、艦を主力とする事で大陸に対する侵攻を行う気がないと言うデモンストレーションにもなっていた。
 このお陰で機動兵器が全盛期であるにも関わらずこの前世紀の遺物がその価値を見直されこうして戦列の一端を担うことになったのだ。
 その為、以前のように対空砲に身を埋め尽くしたハリネズミのような外観は鳴りを潜め、現在の姿は主砲塔だけが目立つシンプルなスタイルになっていた。(勿論、近接対空兵装としてCIWSやレーザーファランクスも積んでいたが、至って目立たないように配置されていた)
 さて、現在、改装が進められている旧GFの戦艦群であるが、兵装の大幅な変更が施されている。
 Soft Weapon:レーダー等の探知機器
 Hard Weapon:対空兵装の充実と主砲塔の性能向上である。
 この内、レーダー、対空兵装については現行のシステムの流用で事足りたのだが、主砲の改装については難航した。
 現代に於いて主砲の交戦距離は正に近接戦闘の範囲であり、このままでは無用の長物でしか無かったのである。
 いっその事、ミサイルを主兵装にという意見も出たのだが、様々な世界の技術を流用する事でその射程距離を大幅に伸ばし、充分に使用に耐える物に改善することが出来たのだ。

1.射程の伸長。
 現在様々な砲塔システムが提案されていた。
 実体弾としてはI.通常炸薬式。II.多段燃焼室式。III.プラズマ燃焼式。IV.電磁加速式(レールガン)。の4形式。
 エネルギー弾としてはV.レーザー砲(位相励起光線砲)。VI.メーザー砲(原子熱線砲)。VII.荷電粒子砲。IIX.超音波砲。の4形式、計8形式の物が考えられていた。
 この内、大気圏内にて最大の射程と命中率、破壊力、運用の手軽さから選定されたのはII.の多段燃焼室式であった。
 ちなみに、近接対空防御用としてV.式のレーザーファランクスが採用されていた。
 又、III.とIV.VII.の形式も研究開発は続行されており、実用化の目処が立ち次第実験艦に搭載し実験を行う予定が立っていた。
 そして採用された多段燃焼室式の砲塔システムだが、様々なデータベースから、射程の伸長には、火薬の改良と砲身の改良が必要であることがわかった。
 火薬の膨張率を引き上げれば、砲弾の初速が向上するのは確かであり、また、砲身の途中に予備の薬室を設けガス圧にプラスする事により更に射程がに延びることが確実だった。
 しかし既存の材質ではその圧力に耐えうる物は存在しなかった。
 だが、様々な科学技術が集まった結果、多種多様な材質が用意できた。
 中でもリチウム−チタン合金とスペースチタニウム、そしてダイヤモンド繊維を使用する事で、材質的には解決出来た。
 そのどれもが切削成形加工に絶大な苦労を伴い実現は不可能と思われた。
 だが、それは画期的な方法でクリアーする事が出来た。
 それらは普通鋳造品を切削する事で製品としていたが、その製造工程の為、複雑な形状の物は作れなかった。
 しかし、特殊な形状記憶合金であるゲッター合金を型枠に使用することで、通常あり得ない鋳造品が一発で成形出来たのだ。
 ゲッター合金こそ未来の技術を担う金型に相応しい。
 但し現在の所コストがバカ高であるためコストを半端度外視できる戦闘用にしか使われないが。
 何しろ変形の自由度は並はずれているのだが、その度にゲッター炉からゲッター線を抽出照射しなければならないのだから、手間も半端ではないのだ。
 しかしその高性能故に主砲塔の途中に補助薬室と云う多段式発射装置を持つ、複雑な構造物が製作可能になったのである。
 また、この射出速度になるとライフリングによる回転(捻れ)モーメントもバカに出来ないためライフリングのない滑空砲となっている。
 又、弾頭を撃ち出すための火薬も新式の物が採用されていた。
 今まで戦艦が沈む事例の大半は、それが事故であれ戦闘による物であれ火薬庫に引火し船体の破壊を招いた物が多かった。
 戦うフネの一番のウィークポイントと言えるだろう。
 また、砲弾を撃ち出すときには砲の角度を変える事により飛距離を調節できるのだが、それとは別に火薬の量によっても飛距離の調節が可能である。
 短距離ならば少なく弱装に、長距離ならば多く強装にと変えるのだがその調節には火薬のブロック何個使うかで調節される。しかし、コンピューター制御の精密射撃ではその調節方法では間に合わなかった。
 以上のことから最新式の液体火薬が開発されていた。
 これは揮発性の不安定な構造の危険物質ではなかった。
 通常の状態では水よりも燃えにくく、現に一部では冷却剤としても使用されているほどだ。
 それを爆発させるには(注意:燃えない。あくまで急激な膨張作用が発生するだけである)有る一定以上の強磁下に置き専用の電子パルス栓から強力な電子パルスを放出させなければならない。
 また、液体であることから、装薬の微調整が容易になり、又わざわざ弾薬庫から弾頭と共にエレベーターで火薬を上げる必要もなかったのだ。


2.命中精度の向上。
 射程が長い以上、今までよりも命中率が下がるのは仕方がないが、訓練を積んだ目測時の命中率が6%程度しかなかった物が更に低下しては話にならなかった。
 その為、複合センサーを搭載した誘導装置を搭載した弾頭を用いることになった。
 これにより、命中率は大幅に向上し、静止目標に対しては90%以上を誇っている。


 さて、3隻の打撃護衛艦はその全ての主砲塔を使徒へと向けた。
 陸自との連携による間接射撃の準備は整っていた。
 打撃艦隊司令官は号令を下した。

「全艦斉射、最大火力を目標へぶち込め。」

 次の瞬間、小田原沖に遊弋していた3隻の打撃護衛艦から衝撃波と共に25本もの火柱が立ち上った。
 さしもの超弩級戦艦と言えども全ての衝撃を受け止めきれず射撃とは反対側へ大きく傾ぎ、旧日本海軍伝統の設計でトップヘビー気味の「ナガト」と「ムツ」はあわや復舷限界を超えてしまいそうな所まで行った。
 打撃護衛艦の全力射撃は今まで実弾訓練に於いても行われた試しが無く、今回が初めての体験であった。
 しかしその反動は砲の性能が格段に上がっていた為、予想よりも大きな物であった。その為、今後の射撃マニュアルには停泊状態である事、更に緊急時以外は絶対に全砲門斉射は禁止とされた。
 撃ち出された砲弾は弾道軌道を描きその頂点を高度約3万メートルとし、伊豆半島を越え富士山の寄生山である愛鷹山の頂上上空から大気を切り裂き落下していった。
 それらは地上から照射される誘導信号に従い目標へと針路を修正、目標の手前10キロの地点で各弾頭の複合照準機(レーダー・TV・レーザー)が作動し重力加速度の赴くまま真っ逆様に使徒へと迫っていった。


 シンジ達6人は駅前のロータリーで待ちぼうけしていた。

「おっそいわねぇ。SCEBAI の迎えはまだなのぉ?」

 苛立ったアスカはつま先を踏み鳴らすと道路の彼方を見ようと額に手を当てた。
 それに対してシンジは落ち着いていた。が、妙なデジャヴーをも感じていた。

「あれ、なんだか前にもこんな事が合ったような・・・」

 そうシンジが呟いた瞬間だった。
 バシーン! と大気が鳴り響き、駅前商店街の看板、ショーウィンドウ、電線が大きく波打った。
 その後まるで地響きのような体に響く振動が彼らを襲った。
 その場にいた6人は驚きのあまり耳を塞いでうずくまった。
 ようやく許容できるレベルまで収まってきた音に6人は抑えていた耳を放すとお互いの顔を見合わせた。
 彼らがゴロゴロゴロと鳴動とキュルルルルルと言う複数の風切り音が鳴り響く南の空を見ていると、ムクムクと凄い勢いで爆発の煙が上空へ立ち上っていった。

「なんだろう。一体」
「さっきのは衝撃波、それでRHOOOoooNN!!ってのが弾道弾の射撃音ね。多分使徒に向けて自衛隊が近距離弾道ミサイルか何かを使用したのに違いないわ」

「・・・・・・やっつけられたのかな」
「無理ね。それ位でやられる相手ならエヴァは必要ないわ。カヲル達の文明が造った使徒のデッドコピーとは訳が違うのよ」
「また、戦わなくちゃならないのかな」
「シンジ、アンタが自分で選んだ道なんだから。私達を護ってくれるんでしょ、シンジ」

 アスカが優しく呟くとシンジは肯いた。
 未だに自らの目の前で消えていったカヲルのことが忘れられないのだ、シンジは。
 だが突然、そんな彼らの頭上を2発の地対地誘導ミサイルが飛び去った。
 ふと気付くと周辺の上空には航空自衛隊所属の支援戦闘機と陸上自衛隊のAH−1S戦闘ヘリコプターが飛び回り、海の方へ向けて攻撃を始めていた。
 しかもその着弾音は意外と近くから聞こえてきていた。
 彼らがそちらに注目していると、先程の爆発音とは異なる地響きが連続して聞こえてきた。
 緊張の面持ちで注目する6人。
 2〜3キロ離れたビルの影からそれは姿を現した。
 首のない仮面の使徒。
 シンジはそれを見知っていた。
 アスカとレイは映像資料の中でそれを知っていた。
 第参使徒「サキエル」
 エヴァ初号機の初陣の際に暴走したエヴァ初号機によって滅びたはずのサキエルが姿を現したのだ。
 サキエルは50メートルはある巨体を見た目にはゆっくりと動かし富士山の方へ歩いていった。

「・・・使徒を肉眼で確認」
「でもこのままじゃ戦えないじゃないのぉ!」
「てよりも、このままじゃ私達もやばいんじゃ」

 マナが指摘した通り先程から使徒の周辺で爆発したミサイルの衝撃波がガンガンと彼らに打ち付けられていた。
 使用されているミサイルや爆弾の炸薬は100キロから500キロであるが、500キロ爆弾が炸裂すると地面に50メートルのクレーターが出来るのである。
 それから推測すればこの距離は正に死の瀬戸際、ボーダーライン上にあると言える。

「大丈夫よ、直ぐに迎えが来て・・・くれる筈」

 アスカも不安そうにそう言った。
 その時、サキエルは右手の平から光の槍を空に向け打ち出した。
 それは近くからサキエルを狙っていた戦闘ヘリアパッチのテールローターを砕き飛ばした。
 主回転翼の回転トルクを抑えきれなくなったアパッチは機体を風車の様に回転させながら彼らの方へ吹き飛んできた。
 パイロットは主回転翼を爆破すると、射出座席を作動させ空中へ待避した。
 しかし、主を失った機体は未だに懸架カートリッジにTOWミサイルを格納した危険な状態で落下してきた。

「キャアアアア!」
「みんな伏せて!!」
「危ない!!」
「ナディア!」

 戦闘ヘリの残骸は彼らの眼前10メートルに落ちた物の大きくバウンドし、反射的にしゃがみ込んだ彼らの頭上5メートルを飛び越えていった。
 それは電線を引き千切り、駅前のパチンコ屋に飛び込むと店内の可燃物に引火したのか盛大に煙を吹き出し始めた。
 一瞬、呆然とそれを眺めてしまった6人であったが、アスカは安全ピンが外され未だに封の破れていないミサイルのケーシングが炎に晒されているのに気付いた。
 それが爆発すればこの場にいる者全てがただでは済まない。

「早く逃げて! ここはあぶ」

 アスカが全てを言い切る前にそのミサイルから閃光が光った。
 彼女が死を覚悟したその瞬間、襲いかかる破片に青い影が立ちはだかった。
 その青いアルピーヌ・ルノーはタイヤを軋ませながら爆風から車体の影に彼らを隠すべくハンドルを切った。
 急ブレーキを掛けて止まったクルマに鋭い音を立ててミサイルの破片が突き刺さった。
 だが、SCEBAI のマッドサイエンティストと極楽エンジニア達によって改造された車体はAPC(装甲兵員輸送車)並の堅さを持っていたのだ。
 運転席に座っていた20代の女性は、まったく異常がない車体を見て口笛を吹いた。

「へぇ〜。さっすがBさんが自慢するだけあって頑丈ねぇ」

 彼女は窓の外に目標の少年少女達がへたり込んでいるのを確認するとホッと息を吐いた。
 だがニッと笑うと右側のドアーを開けた。

「ゴッメーン、お待たせ!」

 彼女は笑顔を向けたが6人は呆然とした顔を向けていた。

「さぁ! 急いで乗って! 急がないとアレが来ちゃうでしょ」

 彼女が指さす先には第三使徒「サキエル」の姿があった。
 しかも針路を彼らの方へ変えて1キロの位置に迫っていたのだ。
 それを確認した6人は慌てて車内へ飛び込んだ。
 だが、運転席を除くと詰めても5人しか乗れない筈だが。

「きゃぁ、ちょっとシンジどこ触ってんのよ」
「えっ、あっ、ゴメン」
『ちょっとジャン! どさくさに紛れてどこ触ってるわけ』
『うわーっ! ゴメンよナディア。わざとじゃないんだ』
『ふん、男の子ってみーんなエッチなんだから。ねぇーキング』
 ニャア、ニャア
『そんなぁ』
「しまった綾波さん、アスカに図られたわ」
「シンジくん」

 後部座席の左奥からジャン、ナディア、マナ、レイ。前部の助手席にはシンジの上にアスカが座っていた。
 後ろにねじ込むより早かったというのは紛れもない事実だが、ワザと狙った節もある。

「みんな乗ったわね! 飛ばすから! しっかり掴まっててよ」

 運転席の女性はアクセルを踏み込むとタイヤから煙を上げるような激しいダッシュで街道を爆進し始めた。
 あ〜れ〜等と悲鳴を上げてシンジに抱きつくアスカを見てレイとマナがまなじりを吊り上げたが、ただでさえ大混雑の席の上に急発進によるGで全員シートに押しつけられていたため文句を付ける余裕はなかった。
 30秒も全力で走り続けるとサキエルの姿は遠くへと離れた。
 それを確認すると彼女は安心したのか、アクセルを緩めた。

「な〜んか、どうやら逃げられたようね。初めまして・・・かな? 碇シンジくんと惣流アスカラングレーさん・・・仲良いのね。・・・それと綾波レイさん。他3名と」
「あの〜。アナタは?」
「あ、ごめんねぇ。私はSCEBAI でARIEL の機長なんかさせられてる河合 未亜って言うの」
「えりある?」
「そ、この前新ヤイヅCITYでゴモラと戦っていたロボットがあったでしょ? 憶えてないかな?」
「ちょっと・・・憶えていないです」
「あらら。まぁそのロボットのパイロットなんかやってる訳よ」
「へぇ〜。出撃はしないんですか?」
「う〜ん、大叔父様・・・もとい博士はやる気満々なんだけどねぇ、後ふたりのパイロットがまだ揃わないんだわ。で、丁度手の空いていた私があなた達の迎えに駆り出された訳。OK?」
「はぁ、何となく」
「で、アナタたち、・・・何?!」

 未亜が3人のチルドレンに何かを伝えようとした所、ナディアの胸に下がっていたブルーウォーターが点滅を始めた。

『ナディア、これって・・・』
『ええ、何かが・・・ジャン、さっきの化け物は』
『うーん、見えないなぁ』

 ジャンが首を巡らせ後ろを覗いていると、話を聞いていたマナがナディアに訊いた。

『ナディアさん、ブルーウォーターが光る時って確か』
『マナ。そう、何か危険が迫っている事を教えてくれてるの。さっきの化け物の姿はどこ?』
『え〜と 見えないけど』
『きっと、あの化け物の事よ。このブルーウォーターの輝き方って普通じゃないもの』
『不安ね』
『ブルーウォーターが守ってくれますように』

 ナディアはブルーウォーターを握りしめ、祈りを込めた。
 が、それは直ぐに裏切られた。
 突然の衝撃と共に、未亜の運転するアルピーヌの車体は一瞬宙に浮いた。

「なに!?  げ!」

 未亜が辺りを見渡すと、二本の巨大な足が後ろから迫ってきていた。
 彼らが立ち去った後、サキエルは走り去るクルマを眺めていたのだが、何かに興味を持ったのか脇腹にある鰓状のスリットから圧搾空気を吹き出し、逃げ去るアルピーヌの背後まで一気にジャンプしたのであった。
 未亜は再びアクセルを踏み込んだが50メートルの人型歩行システムの歩速は尋常ではなく、あっと言う間に距離を詰められてしまった。
 サキエルはつぶらな瞳をパチクリと瞬かせると、アルピーヌを捕まえようと腕を伸ばした。
 しかし、又もナディアのブルーウォーターが断続的な光の明滅を放った。
 その青い光を浴びたレイの顔が苦痛に歪んだ。

「綾波さん?!」

 隣の席に座っていたマナは直ぐにレイの様子がおかしいことに気が付いた。
 すると前席のアスカも直ぐにレイの様子に気が付いた。
 普段から苦痛を表に出さないレイである。アスカにはこれが尋常な出来事ではないことに直ぐに気が付いたのだ。

「レイ!」
「いゃあ!」

 苦痛に耐えていたレイは、鋭い悲鳴を上げると意識を失った。
 後ろを向いていたアスカはレイの異常に気付いた時と同時に使徒の動きも止まったことに気付いた。
<もしかして、レイがATフィールドを使える事と無関係ではないのかも知れない。>
 突然動きを止めたサキエルをその場に残して未亜は緊急体勢に入っていたSCEBAI へ向けて交通の絶えた道路を急いだ。


 国立科学研究所SCEBAI ここは日本の科学技術の最先端を研究開発するために科学技術庁他が文部省主導で開発された筑波学園都市に対抗して造られた広大な研究所である。
 その規模は、時空統合で多数の研究所が現れたが、それらの内で最大の規模を持つ事からも推測できるだろう。
 現在ここではもっとも大きな整備能力を持つことから日本各地に現れた人型兵器についての研究と整備運用が行われようとしていた為、その機能拡充のため様々な工事が行われていた。
 その中でももっとも早く完成していたのが第壱地下格納庫である。
 ここは整備用と言うよりも拘束する事が第1目的であるかのような整備塔が3基、深さ四〇メートルもの冷却水に浸かっている。
 それらは各1機ずつのロボット、いや汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオンが縛り付けられていた。
 エヴァンゲリオン、時空統合以来幾多の敵と戦ってきた歴戦の勇者である。
 しかし、数多く存在するスーパーロボット達の中、唯一その駆動方式も制御方法も良く分かっていない謎の多い危険な存在でもあった。
 最近も東京湾上に存在するGアイランド直上の第二次使徒決戦に於いて初号機が暴走。
 メインパイロットである碇シンジを体内に取り込みあらゆる制御を離れてしまった。
 事件の終結後、エヴァンゲリオンに関しての取り回しについては意見が二分化した。
 曰く、こんな制御も不完全な上に何時暴走するかどうか分からない危険な兵器は封印し、2度と触るべきではないと言う意見。
 もう一つは、報告書にあった「使徒」と呼称される謎の敵性体とまともに戦闘できるのはエヴァンゲリオンしかない、充分な監視下の元に管理運用をすべきである、と言う意見であった。
 実際、国防に於いて最終的な責任者である加治首相は一時、エヴァンゲリオン全機の解体命令を出しかけた所である。
 しかし、彼を補佐する各種機関の内、天才科学者や天才技術者を擁するグループから「本物の使徒」の予想データーとそれに対する意見を見て意見を変えた。
 彼らの最終結論は「使徒に関する脅威が完全に無くなっていない以上、エヴァンゲリオンを何時でも使用できる状態にしておくことが望ましい」と言うことであった。
 尤も、科学に命を捧げた科学者達の果てない探求心がそれを望んだだけかも知れないが。
 だが、今のところ核の炎に対してすら耐久力を持つと考えられている使徒のATフィールドを中和できる存在がエヴァンゲリオンにしかないと言うのであれば、それに従うしかないのが現状だったのだ。

 注/空間その物を取り扱うガオガイガーのディバイディングドライバーやディメンジョンプライヤー、又はあらゆる能力をコピーする力を持つ水原イフリータならば辛うじて対抗できるかも知れなかったが、確証のない物を頼りにするわけには行かなかったのだ。彼女もひとりつの人間として誠と共に生きて行く事を心に誓っていたので実戦に参加するつもりは毛頭無かったのだ。

 そのエヴァを格納するためのその格納庫は計画されている内でもっとも装甲が厚く造られている。
 それは外敵から守るためと言うよりも、内部から猛獣を出さない為の檻と言えるだろう。
 何しろ永遠保管だろうが廃棄処分だろうが目の届かない場所に放置することは考えられなかった、手元で管理しなければならないのは核物質よりも危険なエヴァの宿命である。
 だが、使徒のATフィールドに対抗する為には同じATフィールドを持つエヴァの存在は欠かせなかった。
 例えガオガイガーがディメンジョンプライヤーによってATフィールドを引き剥がす事に成功していたとは言え、GGGは地球全体の機械昇華を狙うゾンダリアンと臨戦態勢にあり、使徒に対していつでも対抗できるとは限らなかったのだ。
 エヴァンゲリオンは未知数の力を持ちエヴァパイロット達は未成年、これでは頻繁出動させる訳にはいかない、あくまでも秘密兵器として必要とされた時以外は出動させるつもりはなかった。
 しかし今回は本物の使徒が現れた、極力エヴァの出撃を控えると云う方針が有ろうとも出撃させざるを得なかった。
 SCEBAIに急行したシンジとアスカは、気絶したレイをマナに任せて格納庫へと急いだ。
 ふたりはプラグスーツに着替えエントリープラグへと搭乗した。
 勿論、初号機の暴走事故を引き起こした原因と考えられたリンカージェルシンクロ補助システムは既に外されている。
 今回は初めてSCEBAI でエヴァを起動運用する事になる。
 今までも、前回の暴走から安全性の確認のために疑似エントリーは十数回、実戦は一回経験していたがバックアップ側がなれていない今回の状況は2人に少しばかりプレッシャーを与えていた。
 SCEBAI No.1のマッドサイエンティストとして名高いSCEBAI所長の岸田博士は本部ビルから使徒の監視を続けながらエヴァ起動の統合監督を行っていた。
 現在、エヴァのエネルギー供給システムはGストーンを用いた外付けのGSライド発電システムから旧来のアンビリカルケーブルに戻されていた。
 これはGSライドの運用実績がなかったと言う事もあるが、暴走したエヴァに恐れを抱いた上からの指示であった。
 もっとも岸田博士は折角の機会を台無しにしよってと怒っていたが。
 だが、彼らは知らなかった。 暴走したエヴァは普段は不活性化しているSS機関から供給される純粋エネルギーによって無限に動き続ける事が出来ることを。


 岸田博士はこれからエヴァの起動を始めようとマイクを握った。
 その顔に浮かんでいるのはいつもの実験を行う際に浮かべる、マッドな笑顔であった。

「これからエヴァンゲリオン初号機及び弐号機の起動を行う。各員準備はよいか」

 岸田博士が館内全てに通じるマイクに問いかけると、今回のミッションに関連した部課から返答が続々と入ってきた。

『こちら発電部、汽力ボイラー出力良し。発電量は充分に余裕があります』
『こちら電算部で〜す。MAYUMI の調子もバッチリオーケーです。あとバックアップでYURIKA の準備もしてますけど使っていいっすか博士?』
「おお、使えるモノはありったけ使え」
『へいへい、了解しやした。野郎ども、博士の許可が出たからな。気合い入れて行けよ』

 おう、とスピーカーの向こうからやけに威勢の良い返事が聞こえてきた。
 状況が変わってもSCEBAIはSCEBAIに違いは無いようである。

『こちらは警備部じゃ、岸田よ。所内の非戦闘員と野次馬どもはこの婆が閉め出した。これで失敗したら許さんからな』
『はかせぇ〜、渉外課ですけど隣の自衛隊連中が所内の敷地から攻撃させろって煩いんですけど』
「ええい、こちらは大事な所だから後で掛け直せと言っておけ」
『博士、こちらマッドアップルですけど、コーヒーの追加注文とかありませんか〜?』
「ああ? いまから注文をまとめて置くからちょっと待っといてくれ。ワシはいつもの奴を頼む」
『は〜い』

 等と煩雑な連絡事項に追われつつも岸田博士はエヴァ起動シーケンスを進めていった。


 シンジはエントリープラグのシートに身を任せ、静かに座っていた。
 彼自身は憶えていないのだが、このエヴァの中には彼の母親である碇ユイの魂が封じ込められているのだとユイのもう一つの可能性、平行世界の碇唯の報告書を読んだアスカから聞きシンジもその事実を知っていた。




 シンジはリハビリが済んだ後アスカを尋ねてきたアスカの平行世界での母親である響子との会話を回想していた。


「だからボクはいま、こうして戦いを続けている。大事な人達を守るために」
『その大事な人ってアタシも入ってんでしょうね』

・・・・・・・・・。

「わっ! アスカ聞いてたの?」
『聞いてたのも何も、さっきから連絡入れてたでしょ。アンタはトリップしてたけどぉ』
「う、ゴメン」
『ゴメンて言わないでって言ってるでしょ、もう、仕方ないんだから。シンクロ開始するわよ、シンジ』
「分かってる、アスカ、行くよ」

 ようやく現実に戻ってきたシンジはSCEBAI の手順に従い、エヴァとのシンクロを始めた。
 確かに、響子が言っていたようにエヴァの中にはかつて彼が憶えていた感じが遠くに感じられた。

「かあさんか、全然記憶にないけど・・・どんな人だったんだろう」


 SCEBAI 本部ビル

「エヴァンゲリオン初号機及び弐号機シンクロ開始、起動目標の40%まで後25%です」

 SCEBAI 管制室ではSCEBAI 謹製ニューロンコンピューターMAYUMI とYURIKA の手助けを受けてエヴァの起動シーケンスが進められていた。
 エヴァンゲリオン自体は自立行動が可能な機械式の電子頭脳と未知の制御システムによって独立稼働が可能なのであるが、安全の確保とエヴァの謎を解明するためにその全てを人類側で管理する必要があるのだ。

「そうか、特に異常な点はないか」

 岸田博士は近くにいた研究所員Bを捕まえて質問をぶつけた。
 Bはプリントアウトしたデーターと睨めっこしていたが、すぐに近くのキーボードを叩いて必要なデーターを呼び出してそれを目で追いながら報告した。

「そうですね、シンクロ率の上昇と共に筋肉に当たる部位の電位値が上昇してますが、これは人間の反応とほぼ同一ですから予想範囲内です」
「ふむ、今回は内蔵電源はフルチャージしているな」
「はい博士、バッチリ搭載しています」
「そうか、不測の事態に備えてバッテリーの準備と電源コンセントの準備もして置けよ。それと今回の迎撃位置だが」
「はい、今回は敵がこちらに接近してきてますのでSCEBAI の敷地内で迎撃が可能です。具体的にはまだ未開発の駐機場建設予定地の樹海の一部ですが」
「ふむ、では環境保護団体以外から苦情はないな」
「はい博士」
「現在シンクロ率は」
「55%です」
「よし、パイロット両名へ連絡を取ってくれ」
「はい」

 岸田博士の命令に、パイロットの生体モニターを監視していた研究所員がプラグ内の通信機に回線を繋いだ。

「エヴァンゲリオンパイロット両名。こちら所長の岸田だ。聞こえているな」
『はい』
『感度クリアー』
「良し。ではこれからエリ・・・もといエヴァンゲリオンを稼働する。問題はないかな」
『いつでも行けます』
『あんな奴なんか、アタシの手に掛かればチョチョイのチョイよ!』
「よし、いい返事だ。エヴァンゲリオン発進!」

 岸田博士が命令すると起動シーケンスから発進シーケンスへと切り替わった。

「エヴァンゲリオンケージ、冷却水排出弁1番から1000番、弁開度100%、レベル5から4へ推移中。ブリッヂ稼働可能まで後5分」
「第壱地下格納庫、装甲ハッチ起動用電磁モーター稼働開始、後3分で開きます」
「拘束ブリッヂ、頭部、背部、右腕、左腕、両脚ロック機構補助システム解除」
「アンビリカルケーブルよりの送電開始。初号機起動レベル確保、弐号機も・・・オッケーです」
「使徒の現在地は?」
「はい、SCEBAI 敷地の外、自衛隊の演習場を突っ切ってきてますねー。自衛隊の対機動兵器特殊機甲師団が対応しているようですが、全部ATフィールドに弾かれてますね。光学観測による損害は見当たりません」
「と、言う事はARIELの兵装でも効果は薄いと考えて間違いないな。しかし、宇宙人共といい、使徒とかいう奴と言い、どうしてこうも人類の科学の常識を越えた奴らばかりやって来るんだ。非常識な」
「やっぱり軽く手をひねくれる相手だからじゃないですか」
「・・・・・・・・・しかし、どんな相手でもこの岸田が撃退してみせるわ」

 岸田博士は他人から見れば根拠のない自信を振りまいていた。


 地上では、サイレンとパトライトを鳴らし地下第壱格納庫の装甲ハッチが開いていた。
 それが完全に開き切ると、中から2人の巨人が姿を現した。
 一人は紫の警戒色を身に纏った巨大な角を生やした鬼の様な巨人、エヴァンゲリオン初号機。
 そしてもうひとりは赤と黄色の警戒色に身を包んだ四つ目の巨人、エヴァンゲリオン弐号機。
 初号機と弐号機は背中から電線を引きずりながら使徒の進んでくる樹海へと足を進めた。
 初号機が手に持っているのはエクスターミネーターマゴロクソード、ではなくて宇宙人の再生機動兵器降下兵スクラッパー1号の竜骨から削りだした超硬金属製の日本刀、本来はARIEL AA(ダブルA)用の装備であったが今回はエヴァンゲリオンに貸し出されていた。
 それと飛び道具としてエヴァ用のハンドガンが一丁。こうして見るとヤクザの鉄砲玉と装備が同じだ。
 それに対して弐号機が装備しているのはソニックグレイブ1本のみである。
 こうまで潔い装備は、操縦者のアスカ本人の格闘スタイルがスピードを基本とする物であるからだろう。
 さて、予定時刻、使徒は自衛隊の障害を物ともせずにSCEBAI が設定した時刻に予定の場所へ到着した。
 その樹海の反対側、工事用の資材などが置かれた場所には2機のエヴァが仁王立ちで使徒サキエルを睨み付けていた。
 そのエントリープラグ内ではアスカとシンジが通信で会話していた。

「シンジ、アンタはあれと戦った事、あるのよね」
「うん。あるけど、ただ強かったって印象が強いだけで・・・。結局暴走したエヴァが倒したから」
「でも、倒せない相手では無いわね」
「そう思う」
「だったら、シンジ、私が先鋒を務めるわ。アンタは後ろから援護よろしく」
「了解アスカ」

 シンジが肯くとアスカはソニックグレイブを構えた弐号機を進めた。
 その後ろでは初号機が膝を着きハンドガンの狙いをサキエルに付けた。

「それじゃシンジ3分以内でケリを付けるわ、行くわよ」
「うん」
「アンビリカルケーブル、パージ! ATフィールド中和開始!」

 アスカがそう叫ぶと、弐号機はアンビリカルケーブルを切り離し、サキエルのATフィールドに対して浸食を始めた。
 一瞬、エヴァと使徒の間にオレンヂ色の壁が広がった。
 弐号機が力を込めるとATフィールドの波長が変更され始めた。オレンジの壁に広がっていた波のようなグラディエーションが細かい波目から広い波目にとパターンを変更しつつその中心部分のエネルギーが希薄になって行くのが見て取れた。
 アスカはソニックグレイブをそこに突っ込むと大きく振りかぶり、一気にATフィールドを斬り裂いた。

「目標をセンターに入れてスイッチ!」

 それを逃さず、シンジはハンドガンを撃ち放った。
 50センチ8口径の拳銃から発射された弾丸はサキエルの顔面に炸裂した。
 感覚器の集中する顔面にダメージを受けたサキエルは顔を押さえて立ちすくんだ。

「そこだぁ! たぁ!」

 弐号機はアスカの掛け声と共に大きくジャンプ。
 頭上高く構えたソニックグレイブを自重を加えた勢いでサキエルの顔面からコアに掛けて袈裟懸けに一気に斬り裂いた。
 弐号機は勢い余って地面にめり込んだソニックグレイブを引き上げると、直ぐに安全距離まで退いた。
 彼女の脳裏にはシンジとのユニゾンアタックでようやく倒すことの出来たイスラフェルの事がこびり付いていた。
 あのような失敗を二度と繰り返すわけには行かない。
 それにここで自分たちの実力をアピールしておかなければ今後の事にも支障を来しかねないし。
 だが、しばらくそのままサキエルの様子を伺っていたアスカであったが、コアごと真っ二つに両断された体は再生も自爆の様子もなく地面に倒れていた。

「アスカ、どうしたの」
「あ、シンジ。どうしたのって。記録は見たでしょ、サキエルは初号機に倒された後自爆したのよ、それにもしかしたら私達の(ラブラブ)ユニゾンキックで仕留めた第7使徒みたいに分裂するかも知れないし」
「う〜ん。使徒だもんねぇ」
「だから油断は禁物って事だけど、司令部」
『はい、こちらSCEBAI コントロールです』
「一応、真っ二つにしといたけど。どうなの? エネルギー反応は? 活動の兆候は見られないの? 指示をちょうだい」
『こちら岸田だ。ご苦労だった、使徒の活動の兆候は見当たらない。帰投していいぞ、あとは儂らに任せて家に帰って酒でも飲んでろ』
『博士、彼らはまだ未成年ですよ?』
『なに言ってる、儂なんかあの歳には晩酌は欠かせなかったぞ』
『そりゃあ、博士はそうでしょうけど』
『な〜んも問題はない! 』  キッパリ
「アスカ、岸田博士ってなんかミサトさんみたいな事言ってるけど」
「ほ〜んと、大人ってしょうがないんだから。帰ろ、シンジ。レイのことが心配でしょ」
「うん、そうだねアスカ」


 彼らは自衛隊が全戦力を上げて迎撃し全く成果がなかったサキエルをいともあっさりと撃破してしまった。
 エヴァンゲリオンを格納庫に戻したふたりは急いで着替えるとマナに付き添われたレイの収容されている病室へと急いだ。
 彼らが部屋に駆け込むと、ベッドの上にチョコンとした感じでレイが座っており、彼女に絡みつくように3匹の火蜥蜴がいた。残りの6匹は見当たらないが。
 ベッド脇の椅子にはマナが缶ジュースを飲みながら少女向けの週刊誌をレイに説明しながら読んでいた。

「でね、男の子ってのは女の子の・・・あ、シンジくんアスカお帰りなさい」

 マナは素早く開いていたページを閉じるとにこやかな笑顔を彼らに向けた。

「何言ってんのマナ」
「あ、ただいま。レイ、体は大丈夫?」
「ええ、いつでも問題ないわ」
「へ?」

 アスカはマナにツカツカと近寄ると後ろ手に隠していた週刊誌を奪い取った。
 そして折ってあるページを開くと内容を素早くチェックした。

「ほほう」

 アスカはマナの耳を掴んで引っ張るとその耳元に小声ながら語気荒く言った。

「ちょっとマナ、あんたレイに何吹き込んだのよ」  ぼそぼそ
「え、別に。ちょっとレイさんて一般常識に疎いようだったから、その・・・」  ボソボソ
「そっち方面の知識ばっかり偏っても仕方ないでしょ。普通の一般常識から憶えなくちゃ駄目じゃないのよ」  ぼそぼそ
「う、ごめ〜ん」  ボソボソ

 流石に自分でも気付いていたのかマナは素直に謝った。

「あれ、そう言えばナディアさんとジャンさんはどうしたの?」

 突然その事に気付いたシンジはレイに聞いた。
 だが、それに答えたのはマナの方だった。

「あ、ふたりだったらSCEBAI の入国管理センターの方へ行ったわよ」
「ふたりだけで行かせたの?」
「ううん、研究所員のAさんて人と一緒に」
「研究所員A? 人のこと記号で呼ぶ何て、結構この組織危ないんじゃないの」
「さぁ、分かんないけど。そんなに非人道的な人達には見えないけど?」

 楽観的にマナは言った。もちろん、諜報部護衛課に所属しているキリヤマ マナはその事は確認しているので何の心配もしていなかった。
 確かに、この組織はNERVと違って人類防衛の最後の砦としてピリピリしていたあの雰囲気はない。
 どちらかというと大学のキャンパスにも似た開放的なお気楽極楽な感じがする。

「ま、大丈夫かな。で、レイの具合はどうだって言ってた?」

 アスカはもっとも気にしていたことを聞いた。もともとその為にここに急いできたのだ。

「ああ、レイさんなら特に異常は見当たらないって。ただ、全体的に体脂肪率が少な目だって言ってたけど・・・・・・うう、いいなぁ」
「ばかねぇ、それって良いことばかりじゃないでしょ。さてっと、それじゃこのまま帰っても良いわけ?」
「ええ。ふたりが無事に帰ってくるのを待っていたのよ。だからお帰りなさい、だったんだけど。アスカったらひどいんだから」
「あはは、ゴメンね」

 とアスカが言った途端、マナは両腕を頭上で組んだ。

「何してるの?」
「え、えへへへ。ちょっと知り合いにゴメンねって言いながらチョップをかましてくる人がいるもんだから、習慣づいちゃって」
「ふぅ〜ん。変わった人がいるものね。ま、いっか。レイ帰るわよ」
「ええ、わかったわアスカ」

 そう言うとレイは病院着を脱ぎ始めた。

「うわっゴメン!」

 慌てたシンジは病室から飛び出していった。

「・・・シンジくん、どうしたの?」
「どうしたの? じゃないでしょ! あれほど異性の前で服を脱ぐなって言ってるのに」
「好きな人の前では構わないって霧島さんが言っていたわ」

 それを聞いたアスカは首をマナの方へ向けた。

「マァァァ〜ヌァアアア〜!!」

 アスカの怒りの形相はマナをたじろがせるには充分な迫力を持っていた。

「ひぇええ、アスカごめ〜ん」
「ゴメンで済めば閻魔様はいらないのよ! コラッ! 待てぇい!」

 走って逃げだしたマナを追いかけてアスカも姿を消した。

「そう、駄目なのね」


 数分後、病室で着替え終わったレイが待っていると頭に巨大なたんこぶを作って涙ぐんでいるマナと、看護婦さんに怒られてふてくされているアスカ、苦笑を浮かべているシンジが帰ってきた。
 さて、彼らは学園に付属している寮に住んでいる。
 彼らが入った学校はエスカレーター式の総合学園で、SCEBAIの敷地の一角にあり、下は幼稚園から上は大学院までの一大学園となっていた。
 これはロボットパイロットの関係者に未成年が多いことからその戦力を維持するために国家プロジェクト(極秘)によって進められていた物であった。
 その計画進行と管理はSCEBAI によって進められていた。
 そこでは学園の運営のみならず、パイロット達の身辺警護までも行われていた。
 そのなかでもエヴァパイロット達は特Aクラスに指定されていた。
 替えが聞かないと言う点では彼らはもっとも貴重な人材である。
 もっとも、アスカとレイはシンジと部屋が離れてしまったため少し不満があったようだが。
 だが、自ら料理を作りたいという者のためにキッチンも設置されているのでアスカ達は相も変わらずシンジの弁当を昼食に頂いていた。
 ちなみにマナも彼らと同じく寮暮らしである。
 四六時中彼女たちと一緒にいるため護衛官としての鍛錬が疎かになりそうな物だが、時々春麗教官の指導の元、格闘技の技術に磨きを掛けているため、アスカと同レベルの格闘能力を保っている。
 さて、寮の夕食は男子寮と女子寮で共通した大食堂となっていた。生活区域は男子禁制及び女人禁制である。
 彼ら4人は今日の日に起こった大変な出来事について話し合っていた。
 特に、入国管理局へ行ってそのまま姿を現さないジャンとナディアが心配であった。
 何しろ私達が助ける、と、いいつつ使徒の騒ぎに巻き込んだ挙げ句いつの間にか離ればなれになってしまったのだ。
 だが食堂で夕飯を取っていると、彼らの担任、そしてインターポールの刑事で彼らの警備担当でもある春麗が2人の見慣れぬ生徒と更に高校生くらいの女子2人をつれて食堂に姿を現した。
 春麗は彼らの姿を見つけると4人を引き連れて近寄ってきた。

「今晩は、みんな」
「「「「こんばんは先生」」」」
「きょうは皆にお願いがあって来たんだけど、ちょっと良い?」
「ええ、いいですよ」

 シンジが返事をすると春麗は後ろに控えていた4人を紹介し始めた。

「彼らも皆と同じくこの世界に放り込まれてしまった、って知ってるわね。彼らも私達が保護することになったから、身の周りの世話とか、気を使って上げてちょうだいね。」

 春麗が紹介したのは先程も話題になっていたナディアとジャンのふたりであった。キングもいるよ。
 ふたりはこの学園の中等部の制服に身を包み緊張した面持ちで立っていた。
 春麗が中国語訛りの澄んだ英語で話し掛けるとナディアはジャンに通訳した。
 そして彼女は言葉を覚えるのが早いという利点を生かし、早速日本語で4人に話し掛けた。

「コンニチハ、ヨロシクネ、コレカラ」

 彼女はアスカに握手を求めた。
 同じく気の強いアスカに共感したのか、それともこの集団のリーダーを嗅ぎ分けたのか。
 それを微笑ましいと感じた春麗は残りふたりの紹介を続けた。

「それから上のふたりは地球帝国宇宙軍付属沖縄女子高等学校から当分ここで研修することになった天野カズミさんと酒井・・・じゃなくて日高・・・じゃなくてタカヤノリコさん。高等部に通うから普段は顔を合わさないかも知れないけど、3人はあっちの方で関係があるかも知れないから。仲良くね」

 春麗はそれだけ言うと4人を置いて食堂から出ていった。

「こんばんは、今度スーパーロボット軍団に配備される予定のタカヤノリコでーす。よろしくね」
「ノリコ・・・。皆引いてるわよ、もう少し落ち着いたら?」
「はーい、お姉さま。てへへ、怒られちゃった」

 彼女、タカヤノリコはマシーン兵器のパイロットとしてカズミと共にここSCEBAI で編成中のスーパーロボット軍団に参加すべく、この学園に転校という事になった。
 だが、実はその裏でアマノ−タカヤ組とユング−リンダ組の選抜試験がここで行われようとしていた。
 その選抜試験とは。
 その発端は先日ノリコが遠泳の最中に全長三〇メートルの巨大海洋爬虫類に襲われると言う事件の際、海底で発見された全長7キロメートル近い恒星間航行用宇宙戦艦が沈んでいた事に端を発していた。
 その主動力源である縮退炉のマイクロブラックホールは既に蒸発していた為に戦艦自体の稼働は不可能であったが、広大な艦内からは数々のオーバーテクノロジーが発掘されていた。
 その宇宙戦艦の名前は地球帝國の末裔、銀河連邦軍所属のスーパーヱクセリオン級量産型戦艦のトライオン。
 その格納庫の片隅に埋もれるように隠されていたのが通称マイクロガンバスターである。
 これまた下手すると一機で地球を滅ぼせるだけのエネルギーを持っている宇宙戦用の機動兵器であった。
 こう云う物は永久に封印しておくのが一番安全であるのだが、現在、通常兵器が役に立たない敵が多く存在することが分かっていた。
 ここ、SCEBAI ではそう言った敵に対してのみ使用する特殊兵器を管理する事も重要な仕事のひとつだった。
 マイクロガンバスターと同じくエヴァもその内のひとつだった。
 国家同士の戦争には用いられることの無い兵器。もしも使用すれば徹底的な国土の破壊を招き、自然環境すら根底から破壊してしまうだろう。
 使われる場面はあくまで謎の敵や秘密結社などの超文明を持つ侵略者たちのみに対してである。


「そんなところに立ってないで座ったら?」

 アスカが提案すると立っていた4人もテーブルに付いた。
 最後にカズミが優雅に座ると、年長者の彼女が豪華な笑みを浮かべながらこう言った。

「それでは皆さん、自己紹介をしましょうか。まずわたくしから。わたくしは地球帝國軍付属沖縄女子3年筆頭のアマノカズミと申します。宜しくね、皆さん」
「お姉さまって凄い才能持ってるのよ」
「タカヤさん、才能というのは1パーセントの素質と99パーセントの努力によって形作られる物なのよ。持って生まれた物ではないわ、そこの所を間違えないでね」
「はーい、あ、私はねー。お姉さまと同じく地球帝國宇宙軍付属沖縄女子のタカヤノリコです。私は結構体育系なんで、体を動かして覚える方が得意かな。趣味はアニメと特撮でーす」

 ノリコの自己紹介が終わると一瞬言葉が止まってしまった。

「ねえねえ、あなた達のことも教えてよ。じゃあ、モテモテのキミお願い」

 ノリコ直々に指名されたシンジは慌てた。
 もともと自分を主張することが苦手な彼である。何から喋って良い物か。

「あの、ボクはエヴァンゲリオンパイロットの碇シンジって言います」

 いきなりそこから入ったシンジにアスカは焦った、が、春麗の言葉からすると別に彼女たちに対して秘守義務があるわけでは無いらしい。
 第一彼女たちもスーパーロボット軍団の一員ではないか。

「ここの中学二年生で一四才です。僕たち3人以外にこの世界に来た仲間はいません」
「アタシは惣流 アスカ ラングレー。シンジと同じくエヴァンゲリオンパイロットよ。本当は大学まで卒業してるんだけどシンジとかレイの面倒見るため一緒に中2をやってるわ」
「へー、アスカちゃんて凄いんだ」
「まぁねー」
「私はレイ、綾波レイ。ファーストチルドレン。シンジくんと一緒のクラスなの」
「お、レイちゃんてシンジくんにラブラブなのぉ?」
「何を言うのよ」
「照れちゃってぇ。可愛い」
「あたしは霧島マナっていいます。私は、ただの中学生です。3人の友達で、シンジくんの恋人候補生のひとり、かな?」
「ヒューヒュー」
「ムゥ」
「何を言ってんのよ」

 囃し立てるノリコの横では怖い視線で睨み付けるレイとアスカが。

「アハハハ、まぁ、そう言うことで」

 まだ日本語の話せないナディアとジャンに対してはレイとマナがそれぞれ通訳していた。
 順番が回ってきたナディアにアスカが言った。

『ねぇナディア、自己紹介してくれない? 私が通訳するから』
『自己紹介。いいけど、わたしなんて特に何も言うこと無いけど』
『別にいいじゃない。簡単なことだけで良いのよ。名前と誕生日とか年齢とか血液型とか』
『私、自分の誕生日しらないもの。孤児だから。それに血液型って、ああ、さっきの検査で血を抜いた時のアレの事かしら』
『AとかBとか言われた? じゃあそれがそうよ。分かってることだけでも教えてナディア』
『ええ。私の名前はナディア。この名前だけが私の知ってる唯一の本当のこと。あとは14才くらいの年齢ということ。最近までサーカスで曲芸をしていたの。で、この下で骨をかじっているのが私の友達のライオンのキングよ』
「ライオンキングってあのディズニーのジャングル大帝物のジャンルのアニメ・・・って違うかアハハ。・・・でも奇遇ね」
『何が奇遇なのノリコさん』
「うん、私のお母さんの名前もナディアって言うの」
『へぇ。そうなんだ』
「あらノリコ、その話私も初めて聞くわね」
「日本の人にしては珍しい名前ですね。アスカみたいにハーフなんですか」
「えへへ。実はね、あたしの曾お祖父さんがフランスから日本に帰化した人だったんだ。だから1/8は仏蘭西の血が流れてるのよ」
『へぇー。ジャン、彼女の曾お祖父さんがフランスの人なんですって』
『ふ〜ん。そうなんだ。でも見た目は東洋人だね』
「その曾お祖父さんが日本に帰化して結婚して初めて生まれた孫娘が私のお母さんなんだけど、曾お祖父さんは自分のお母さんの名前を私のお母さんに付けたんだって」
『へぇ〜。じゃあアナタの曾曾お祖母さんもナディアって言うんだ。本当に奇遇よね〜』
「うん、本当にそうね、あ、それでね今思い出したんだけど、曾お祖父さんの名前もジャンて言うのよ」
『え〜。本当なの?』
「ええ。わたしの曾お祖父さんの名前はジャン・ロック・ラルティーグJr.って名前だったわ」

 ノリコの言葉を聞いたナディアとジャンは絶句してしまった。

『あはは、ジャン・ロック・ラルティーグJr.だってさ、それでお母さんの名前がナディア・・・』
『うううううううう』

 思わず顔を見合わせるジャンとナディアだったが、突然ジャンの顔をナディアがひっぱたいた。

『ジャン! アナタ私のことそんな目で見てた訳?! 不潔だわ! ひどいわ、きっと私ジャンに無理矢理されたんだわー!』
『ち、違うよ! それにそんなこと、第一ボクじゃないよナディア! 単なる同名同姓かも知れないじゃないか』
『フンだ! ジャンのエッチ! 変態! スケベ! もう、口きかないんだから! ベェーだ!』
『ナディア〜…』

 そんなジャンを見てシンジは呟いてしまった。

「まるで昔のアスカみたいだ…」
「何ですってぇー! このバカシンジー!」

 パシーン! シンジはアスカの渾身の平手を喰らい部屋の隅まで吹っ飛んでいった。

「フン、いい気味だわ」
「シンジくんに何するの?」
「いい? レイ。口は災いの元って言ってね、今のはシンジが悪いんだからレイが庇う事なんてないのよ」
「そう、分かったわ」

 二人のチルドレンは壁際で伸びているシンジを無視していたが、マナは駆け寄ってシンジの介抱をしていた。1ポイントゲーット!
 それまでの騒ぎを呆然としてみていたノリコだったが、慌てて説明した。

「あのね、わたしが言ったのは私の曾お祖父さんの事なのよ。だから今から百年以上昔の事なの」
『それって19世紀って事でしょ、ノリコさん』
「う〜ん、曾お爺さんが来日したのは20世紀に入ってからだけど。大体、そんな感じかなぁ」
『ボク、1875年生まれですけど』
「………ええーっ! じゃあアダムスキー型円盤のレッドノアとNノーチラス号がパリで闘った<パリ炎上事件>を生で見たの? ねぇ? 」

『何言ってるんですか、僕たちが乗っていたノーチラス号は潜水艦ですよ。パリで戦えるわけないじゃないですか』
「そっか、知らないんだったら違うわね」
「そうとも限らないわよ、ノリコ」
「どうしてです? お姉さま」
「それはね、彼らがいつの時点でこの現象に巻き込まれたかによる訳よ。もし、パリ炎上以前にこの世界に来ていたらその事は知らないはずでしょう?」
「あ、な〜る。さすがお姉さま」
「この世界は時空が入り乱れて存在しているのだから、自分の世界の常識だけで他の世界の人の事を判断すると困ったことになるわよ。」
「は〜い。じゃあこれからよろしくねみんな。それと曾曾お祖父ちゃんと曾曾お祖母ちゃん」
『ちょっとぉ! わたしジャンと結婚なんかしてないんだから。そんな事言わないでよ』
『そうだよね。うんうん』
「ノリコ、彼女たちの言う通りよ。まだしたこともない事に責任をとれなんて言われても迷惑なだけだわ。これからは注意しなさい」
「はい・・・ごめんなさいねジャン君ナディアさん。ついつい調子に乗っちゃって」
『分かればいいのよ。気を付けてよね』
「はいはい」


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日本連合 連合議会


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おまけ。

<都合により没となった所です。設定間違えちゃったっす>
「あ、な〜る。さすがお姉さま」
「この世界は時空が入り乱れて存在しているのだから、自分の世界の常識だけで他の世界の人の事を判断すると困ったことになるわよ。だって・・・アナタだって戸籍年齢は27歳でしょ」
「あ、お姉さまそれは秘密にして下さ〜い」
 ノリコは慌ててカズミの口を塞ぐが、時既に遅し、一同のノリコを見る目が変わっていた。

ヒソヒソ…「それにしても随分若作りね」

ヒソヒソ…「バァサンは用済み」

ヒソヒソ…「裏切ったな、父さんと一緒でボクを裏切ったんだ」

ヒソヒソ…「後で秘訣を聞きに行こうっと。それにしてもアレってナンチャッテ女学生?」

ヒソヒソ…『信じらんな〜い』

ヒソヒソ…『東洋人てバケモノじみてるなぁ。怖い怖い』

「ひ〜〜〜〜ん、相対性理論のせいで27歳って事になってるけど、実年齢は17歳の可愛い女子高生なの〜! みんな信じて〜」
 言うか? 自分で可愛いなんて、