スーパーSF大戦 第17話 新しき学び舎




 初夏、GGGから新たに編成される事になったスーパーロボット軍団(正式には特殊機動自衛隊)へ転籍になったエヴァンゲリオンパイロットの3人、碇シンジ、惣流アスカラングレー、綾波レイは富士の裾野にあるここ、SCEBAIに敷地内にある江東学園の中等部に転校してきていた。
 ようやく慣れ始めたGアイランドでの生活であったが、彼らが守ろうと奮戦した結果、彼らの責任ではないが地上は戦火によって半分以上の地域が焼き払われてしまったのだ。
 幸いなことに人的な被害は少なく、宇宙開発公団もそのまま存続していた。
 勿論、天海護一家とその友達も無事であった。が、GGG機動部隊はかなりの損害が出ていたため現在は彼らの機能回復に全力を傾けていた。
 幸いなことに、ここのところゾンダーの出没は見られず小康状態を保っていたため、GGGも体力の回復に専念していた。
 また、ガオガイガーの新装備であるゴルディオンハンマーの致命的な欠陥である、重力衝撃波のフィードバック問題を回避するための特殊ツールをゴルディオンハンマーに組み込み新たなる勇者として生み出そうという計画「新勇者ゴルディーマーグ」も既に動いていたのだ。


 さて、シンジ達がこの特殊機動自衛隊の少年パイロット達を密かに保護するために設立された江東学園に転校してきたのがスケジュールの都合上2学期の始まる9月頭に転校手続きをとる事になっていた。
 当初の計画とは若干修正する事が出てきてしまったが、計画ではシンジ達が転校してきてから1週間後に霧島マナの転校というイベントを行う事になっていたので、マナの転校イベントは9月7日に行われる事になった。
 7月下旬から始まった夏休みの間、世界はともかく日本の周辺は奇跡的に「安全」であった。(平和ではない)
 その間、3人はただ単に休日を楽しんでいたわけではなかった。
 ゼルエル戦にて初号機に取り込まれ、イリス戦で帰還を果たした碇シンジの心は消耗し、現実に戻って来ていなかったのだ。
 その為シンジと共にいたアスカとレイ、そして加治首相によってシンジ達の世話をするように言いつけられたHM−13セリオは夏休みの間、シンジのリハビリに励んだのだ。
 当初の治療予想では、シンジの快復は全くの未定であり快復の兆候すら見当たらなかったのだがセリオがアスカとレイの看病疲れを癒すために計画した三浦半島ドライブでシンジ快復のきっかけを掴んでからのシンジのリハビリは急速に進んだのである。
 彼らは鎌倉の近くに一夏の間住むマンスリーマンションを借りて、毎日そこから三浦半島の西側中腹にあった一軒の喫茶店「カフェ・アルファ」に行っては、そこを中心に周囲の散策に出ていた。
 途中、そこの店員であるアルファさんとココネさんがロボットであるという事実を知り驚愕するなどの事件もあったが、今まで過ごしたことのないゆったりとした雰囲気にシンジの心だけではなく、アスカやレイ、そしてセリオの心にも重大な何かを残したようだった。
 そして、一夏の経験はシンジに心を完全に癒した。
 新しい体に馴染む訓練なども行われたのだが、8月の下旬には最早昔のシンジ以上に健康な男の子になってしまった印象を受ける。
 もしも、この時のシンジを元の世界に連れて行ってもすっかり前向きになった彼の精神を拠り代にしてサードインパクトを起こすことなど出来ないと思えるほどだ。
 もっとも見た目で彼の行動のパターンに変化が出たわけではない。
 例え凄いきっかけがあったとしても、人間の行動パターンなどそうそうに変わるわけがないからだ。しかし、彼の精神の内部には次なるステップへと踏み出す強い芯が芽生えている事は間違いのない様である。
 アスカがゾンダー化によって心のストレスと共にトラウマまでもが燃やし尽くされ、前向きに変わったのと同様に彼も少しずつ変わりつつあった。

 8月の最終月曜日、彼ら3人はGGGの保護下を離れスーパーロボット軍団の中枢となるSCEBAIのある富士市に引っ越してきていた。
 そこには政府主導で秘密裏に計画が進められたパイロット達のバックアップ機構として作られた物達のひとつ、下は幼等部から上はSCEBAIとの繋がりのある大学院をも備えた一大学園組織、私立江東学園に転校と言う事になった。
 広大な敷地の中には学生達のための学生寮が建築されており、そこに彼らは移り住むことになったのだ。

   そして、いよいよ今日9月8日、キリヤマ マナが霧島マナとして特別任務に就くことになる日がやってきた。  緊張してしまった彼女は朝の4時に起きてから丁寧すぎるほど髪を梳かしたり制服の着具合を鏡で確認していたのだが、6時半には保安部によるミーティングが始まり直属の上司より細々とした指示が与えられていた。
 そして朝のホームルームの直前、マナは江東学園中等部2−A前の廊下で出番を待っていた。
 彼らが転校してきてから一週間が経った今日この日、以前から訓練を受けていた霧島マナが過去の訓練を反芻しながら深呼吸を繰り返していた。
 全てはシナリオ通りに進んでいた。
 後は私が出ていって挨拶をすれば顔見せは終わる。
 絶対に上手くやって見せるわ。
 霧島マナは教室の前で息巻いていた。
 何故、シンジ達を先に転校させ護衛役のマナを後から転校させるという面倒な手段を取ったかと云えば、転校生という相手よりも立場の弱い者になる事で護衛相手に精神的優位に立たせる為である。
 それは特に3人の中でシンジに有効であろうと思われる。
 そう言う構想の元、計画は実行された。
 シンジ達のクラスの担任を務める春麗が中にはいると、マナの緊張は更に高まった。

「はーい、皆さん静かに。今日は転校生を紹介しまーす」

 それまでざわついていた教室内が一気に静まり返った。

「せんせー、野郎ですか、女の子ですかー?」

 クラスで一番の軽い男の子が春麗に問いかけるとクラスメイトの間から笑いが漏れた。

「こらこら、そんなにせっつかないの。それでは入ってきなさい」

 春麗が合図すると、扉の外で待っていたマナは初めの一歩を踏み込んだ。
 彼女は教壇に立つとペコリと頭を下げた。
 この前の演習ではここで春麗が名前を言って失敗した為、今度のシナリオでは彼女自身が挨拶する事になっていた。
 良し、ここまで完璧にシナリオ通り、後は<微笑み−2・爽やかさ>を浮かべて名乗りを上げれば任務は完璧と言える。そんな事を考えながらマナはガーリィガールとしての特訓で身につけた微笑みを浮かべると顔を上げた。
 その時、シンジとアスカは目を丸くして彼女の顔を見つめていた。その様子は尋常な物ではなかった。

「初めまして! 私は霧島」
「マナ! マナなんだろ」

 彼女の自己紹介を遮ってシンジは大声を出した。
 護衛対象であるシンジに名前を呼ばれたマナはビックリして言葉が出せなかった。

「は、はい。マナですぅ・・・えっと、どちら様でしたっけ」  とほほ、完璧なシナリオが・・・。
「マナ、ボクを忘れちゃったの?」

 忘れるも何も、初対面でしょう。

「あの、その」

 マナはシンジがシナリオの範囲から大きく逸脱した行動を取り始めた事に動揺していた。
 こんな事はシナリオライターも予想できない反応だった。

「初対面・・・ですよね」
「なに言ってんのよ! アンタ戦略自衛隊のスパイでしょ!」
「はい?! スパイって、アタシがですかぁ!」

 どうしよう。なんかばれるような事したっけぇ?! ふぇ〜ん、どうすれば良いのよぉ。 それに戦略自衛隊って一体なによ。
 まったく訳が分かんないよぉ。もう。

「そうよ、シンジからエヴァの秘密を盗もうとして、無い色気を絞って、もてないシンジをたらし込んだのは霧島マナ、アンタでしょ」

 ふざけないでよ、一体いつあたしがそんな事を・・・。ふむ、これはもしかすると・・・。
 マナはひとつ仮説を立てた。

「あの、ア・・・あなたに会うのは今回が初めてよ。アタシは」

 思わずアスカと呼びそうになったのを押し殺し、マナは「あたし」を強調してそう言い返した。
 すると興奮していたアスカもその事に気付いた様だった。
 何しろ、彼女自身にもパラレルワールドの近似人物が存在している事が確認されていたのだ。

「あ、そう言うことか。ゴメンね、霧島さん」

 アスカは素直に頭を下げた。が、シンジはまだどう云うことか把握していなかった。

「マナもこの世界に来ていたの? 」
「えっとね。あたしは、あなたの知っている霧島マナさんとは別人だと思う」
「え・・・」

 シンジはただ単にあの事件以来消息の分からなくなっていたマナが無事でよかった、と言う思いで一杯だったのだが、遅まきながら、どうやら様子が違うことに気が付いたようだった。

「そう・・・そうなんだ」
「ねえ、あたしがあなたの知ってるヒトと違うって分かったからってそんなに暗い顔しないでよね」
「え、うん。そうだね、ゴメン」
「も〜う。しょうがないなぁ。とにかく、これからヨロシク! い・・・ぇ〜い」

 思わず「碇シンジくん」と言ってしまいそうになってしまったマナは何とか誤魔化そうと照れ隠しにVサインなんか出してしまった。
 だが、その余りにもダサダサな表現に教室中の生徒はずっこけてしまった。
 まったく、演習の時と言い、彼女が絡むと妙に失敗の確率が高くなるのが気に掛かる。
 後ろからハラハラと様子を見守っていた春麗は心の中で嘆息した。





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