スーパーSF大戦  第十六話 Jパート




『君たちもいい加減にしつこいな!』

 2機のスーパーロボットの猛攻の前にイリスは傷付きながらも、未だにエヴァを諦めていなかった。
 だが、上手に電磁バリアーとカヲルのATフィールドを使い分けることによってグレートのサンダーブレイクとゲッタービームと云うエネルギー兵器、そしてアトミックパンチ、ゲッタートマホークと云う質量兵器の双方の超兵器をかわし続けていた。
 イリス自体の体は過度の損傷を受け、既に右上腕部が致命的な損傷を受けており稼働不能その他触手も残り2本となっていた。
 だが、その様な状態であるにも関わらずイリスとカヲルの戦闘意欲は些かも衰えることなく燃えさかっていた。
 先程から隙有らばと盛んに触手の荷電ビームをエヴァ初号機に撃っていたが流石にこの状況下では命中することもなく、逆にその隙を突かれて損傷が増えると云った状況になってきてしまっていた。

『このままでは埒があかない。イリス一時撤退をするぞ』

 そうカヲルが決心すると、凶暴な闘争本能の固まりであるイリスも自己の損傷割合を勘案し戦闘継続不能であると認め、戦闘撤退に賛成した。
 それまで果敢に攻めていたイリスが急に一歩退いたのに気が付いたグレートの剣鉄也は「ここで逃しては再度の侵攻は免れない。一気呵成に倒さなければ」と退くイリスよりも一歩深い間合いで踏み込んだ。
 だが、攻撃のリズムを狂わせたのは間違いだった。

「喰らえっ!!」

 鉄也は大きく振り被ったグレートソードをイリスの肩口目掛けて振り下ろした。

『甘い!!』

 だが、カヲルは冷静にグレートの動きを見極めていた。
 攻めるよりも撤退の方が難しいのは古今東西共通の事である。
 その為、敵のことを注意深く観察していたカヲルはグレートの作った隙を見逃さなかったのだ。
 イリスはグレートの構えた剣を触手で絡め取るとそれを弾き飛ばした。
 しまった! と叫ぶ暇もなくグレートの機体はイリスの体当たりを喰らって大地に伏した。

「ぐふっ!」

 流石に鍛えた肉体は伊達ではなかった。
 パイロットスーツによってその大半が吸収されたとは云え、常人ならば骨折は免れないような衝撃を受けた鉄也は一瞬気が遠くなるような感覚を持ったのだが超人的な気力で直ぐに持ち直し、機体の立て直しを図った。
 直ぐに操縦桿を握る鉄也の耳にゲッターGからの叫びが聞こえた。

「鉄也君後ろだっ!」

 はっ! とする鉄也に再度の衝撃が加わった。

「ちっ! やったなぁ!? このままじゃ済まさんぞ!!」

 鉄也は操縦桿を引く、しかし、グレートのパネルは消えたまま何の反応も示していなかった。

「しまった!」

 イリスに弾き飛ばされ大地に顔面から倒れたグレートの背中は完全に無防備になっていた。
 完全に無防備なそれをイリスが見逃すはずがない、イリスはジャンプするとグレートの背中、スクランブルダッシュの付け根に体重を乗せた蹴りを叩き込んだのだ。
 そして、それは偶然とは云え見事にグレートの唯一の構造的欠陥を突いたのだ。
 グレートのスクランブルダッシュの付け根には機体をコントロールするための中枢回路が集中しているのだが、この一点に強い物理的衝撃を受けると10秒間の間機体の制御が不能になると云う欠陥があり、現在に至るまでもそれは改善されていなかった。
 過去に於いて2度、この欠陥によってグレートは絶体絶命のピンチを迎えていたのだが、グレンダイザーなどの活躍により既にその地球防衛の役割を解かれていたと認識されていたグレートはスーパーロボット博物館への展示品とされていた為、抜本的な改修作業は行われることはなかったのだ。
 地面に倒れ伏したまま身動きひとつしなくなったグレートを見てイリスはとどめの一撃を加えるべく触手にエネルギーを貯め込んだ。

『大人しく眠っていたまえ!』

 轟っ! と鋭い一撃がグレートに止めを刺すべく撃ち込まれた。
 だが、そうはさせじとゲッターGがそれに立ちはだかった。

「危ない! 鉄也君!!」

 ゲッタードラゴンはその巨大なゲッタートマホークを掲げて触手を遮ろうとした、だがしかし浅い角度でトマホークに弾かれた触手はゲッタードラゴンの右腕を貫き、更にその後ろに伏していたグレートの背中に突き刺さり、先ほどの攻撃で損傷を受けていたニュージャパニウム合金の装甲を貫いてその内部にエネルギーを放出した。
 鉄也が納まっているコクピットに灯が入った瞬間、全ての計器がレッドアラートを示した。
 その中でも特に剣呑だったのがグレートの主機である光子力エンジンの耐久臨界までのカウントダウンだった。
 元々戦闘訓練に明け暮れ、グレートのことを隅から隅まで熟知していた鉄也は迷わずサイドのグリップを引いた。
 緊急脱出装置のスイッチが入れられた為、ブレーンコンドルは通常の分離手順と異なり固定装置の基部を爆発ボルトによって破壊すると同時に逆噴射装置を限界まで吹かし、地面ギリギリを物凄いスピードで滑空しながら脱出した。
 と同時にグレート内部の光子力エンジンに限界が訪れた。
 光子力、と名が付くだけ有って非常識なまでの輝きを放ちながらグレートの機体はイリスの触手を巻き込みつつ内部から大爆発を起こした。
 だが、巻き込まれたのはイリスの触手だけではなかった。
 先程グレートを守るべく楯となったゲッターGの機体もその爆発半径に巻き込まれていたのだ。
 爆発の衝撃もさることながら、グレートの装甲を構成していたニュージャパニウム合金の破片がゲッターの後背部前面に突き刺さったのだ。
 その大概が装甲マントだったとは言えその被害は無視し得ない物だった。
 爆風により錐揉み状に回転しながら空中高く吹き飛ばされたゲッタードラゴンは大きく3つに分解した。
 いや、安全装置の動作によって緊急分離した3機は過度の破損により合体機構に重大な損傷を来したのか腕や足、顔のパーツを変形することが出来ず、最低限の変形により飛行形態を取るとヨタヨタとした足取りでようやく空中に浮遊している状態であった。
 その3機とブレーンコンドルは合流すると暫くGアイランドの周囲を周回していたが、現在我々に出来ることは無いとばかりにそれぞれの基地を目指して飛んでいってしまった。


 地上からそれを見ていたイリスは敵影が完全に消えるのを確認すると、ヤレヤレとばかりに頭を振った。
 そして、目標をエヴァ初号機に改めると再度攻撃をすべく接近を再開した。


 その頃、地下のGGG基地の一室にて、戦況を確認していた加治首相はマイクを握り締めつつ交渉のタイミングを逸した事に歯痒い思いをしていた。
 イリスの劣勢が明らかになった時、彼こと日本連合の首相である加治はこの一室からイリスに搭乗していることが確認されていた「ナギサカヲル」と云う人物と交渉しようとマイクを握ったのだ。
 しかし、イリスの挙動に釣られたグレートが彼の目論見を砕いてしまったのであった。
 その後も機を見ていたが、ついぞその機会はなくこのまま駄目を承知で交渉しようかどうかを思案していた。
 それと同時に彼は今回の防衛戦による教訓を受け止めていた。

「やはり体勢が整えられる以前の出撃が痛かったですね。未知の敵に対するにはバックアップが大切だと云う事はこの戦いに於いても明かです。早く彼らの戦力を後ろから支える体勢を築き上げなければ。所で鷲羽さん」
「ち〜が〜う〜でしょ〜、加治さん。私のことは鷲羽ちゃんって、呼んでくれなきゃぁ」
「あ、ああ失礼。鷲羽ちゃん、・・・敵のことについて何か分かった事は?」
「うーん、ハッキリとは言えないんだけど・・・あのイリスってのエヴァンゲリオンと同系統か、その模倣によって作られたっていう気がするのよねー」
「ほぅ? その根拠は?」
「それがそのぉ〜、今は勘なんだけど、資料が入ったら立証できると思うから、確保したら私に頂戴ね」 ニパりん
「キミに、ではないが。鷲羽・・・ちゃんが調査班のリーダーになると言うので有れば構わないかな。とにかくそれはあれを撃破できた時の事だよ。出来れば彼の説得を手伝って貰いたい所だが・・・」
「うーん、残念ながら彼は説得に応じるタイプの人間じゃないと思うけど。今までの行動パターンや言動から解析すると何があっても目的を完遂するみたいだし。説得は諦めた方が良いんじゃない?」
「そうも行かないな。とにかく私に出来ることは全てやってみる積もりだ」
「まあそーね、加治さんならきっとそう言うと思ってたし、駄目モトでやってみたら? もしかしたら乗ってくれるかも知れないしね」
「身も蓋もないな、キミは」
「まぁ、科学者としては確証のないことをさも分かったように言うわけにはいかないし。正直言って人間の心ほどロジックでは割り切れない物はないしね、たとえロジックが人間の心から生み出された物だとしても」
「・・・遠回しな応援に感謝しますよ。ではセリオ」

 いよいよ覚悟を決めたのか、加治首相は傍らに控えていた付き人の来栖川電工製のHM(ホームメイド)、HM−13セリオに声を掛けた。

「−−はい、首相、ご用件をどうぞ」
「GGGのメインオーダールームへ連絡して、このマイクの回線を外部にいるイリスへ通じるように頼んでくれたまえ」
「−−はい、では直ぐに」

 そう言うとセリオは直ぐに内線電話をメインオーダールームへと繋いだ。


 時はすこし戻りグレートが撃破される直前、GGGメインオーダールームではシンジのサルベージ計画の見直しが討論されていた。
 だが、会議の議題の後、最初に発言した碇唯博士のセリフは全ての希望を閉ざす物だったのだ。

「残念ながら、サルベージは不可能となりました。これからの作戦は殲滅戦の方向で進めるべきだと思います」
「それでは、再度のサルベージは出来ないと言うのかね?! 碇博士」
「・・・・・・先ほどまでとは状況が変わってしまいましたから。これについてはリンカージェルに詳しい都古さんから報告して貰います」
「都古です。・・・大変に残念なのですが、最初の状況では密閉されたプラグスーツの中にシンジくんの構成物質が封じ込められていたため何の問題もなかったのですが、発泡物質によって体積が増大しプラグスーツからこぼれてしまったシンジくんの構成物質は古細菌の一種であるリンカージェルによって分解され取り込まれてしまいました。変質し、他生物に取り込まれてしまった物質を用いてサルベージを行うのは至難の業かと・・・」
「では、・・・シンジくんは死んだと考えて間違いないのかね」
「はい、大変に残念ながら・・・。サルベージの可能性はゼロパーセントです」
「・・・・・・何と云う事だ! 今まで我々を救ってくれた彼らに対して我々に出来ることはないと言うのか!」
 大河長官はガックリと膝を着くと、床に拳を叩き付けた。
 これまでも我が身をすり減らしてまで皆の為に戦い続けてきた碇シンジ。今、彼の命運は尽きたと結論付けられたのだ。
 サルベージと云う作業ひとつとっても常識を越えた作業であったのだ。今の状態から彼を復活させると言うことは正に「奇跡」と云う現象を以てしか有り得なかった。
 それだけに、今現在この場にいる者達はいたたまれない気持ちに成らざるを得なかった。
 他に有効な手だてがなかったとは言え、結果的に僅か一四歳の少年達に戦いを強要させた挙げ句、その戦いに勝つために彼は自分の命を捨てて勝利を手にしたのだ。
 その彼が取り込まれたというエヴァ初号機、それを我々の手で破壊しなければならないとは何という呪われた巡り合わせだろうか。
 だが、今となってはそれすらも不可能となりつつあったのだ。
 彼らの上、地上に於いてその初号機を破壊するために出現した「イリス」と名乗る生体兵器が、例えシンジを救うためだったとは言え過剰シンクロを停止させ行動できなくなったその初号機に今まさに襲いかかろうとしているのだ。
 沈黙が続くメインオーダールームに地上を監視していた卯都木隊員の声が響き渡った。

「大河長官!」
「どうした卯都木くん」
「地上でイリスと交戦していたグレートマジンガー撃破、続いてゲッターGも中破し戦線を離脱しました。現在イリスがエヴァ初号機に向けて侵攻を開始しました。パイロットは全員無事脱出した模様」
「なんだと! くぅっ! しかし、最早我々には打つ手は残されていない。むざむざ手をこまねいて見ているしか無いというのか」

 意気消沈する大河の耳に、ひとつの電子音が聞こえてきた。

「What’s? コンナ時に誰からデショー 」

 その電子音はスワン・ホワイトのコンソールに備え付けのインターホンから響いていた。
 彼女が受話器を取り、相手の名前を聞くとビックリして目を丸く広げた。

「Wow! 長官、Mr.ジャパニーズプレジデンツからデース!」
「? 日本国大統領? ああ、総理大臣の事か。スワンくん、首相はプレジデンツじゃないぞ。こっちへ回してくれ」
「Yes,I’m sorry.Boss.どうぞ」
「ありがとう。もしもし、GGG長官大河幸太郎です」
<もしもし、加治です。厄介になっているだけでも済まないが、ひとつ頼まれて欲しいのですが>

 それを聞いた大河はてっきり直ぐに待避するから、と云う事を言いに来たのだと思ったのでこう答えてしまったのだが、それは加治と言う人物を良く知らないが故の発言となってしまった。
「頼み? Gアイランドからの脱出ルートでしたら事前に連絡したとおり」
<違う! いえ、違います。・・・あのイリスという生体兵器を操っているのはナギサ・カヲルと云う人間であると言うことは連絡が行っていると思いますが>
「ええ」
<私は彼を説得してみたいと思います>
「何ですって?!」
<突飛なことかも知れませんが、是非ともやって置きたいのです。我々は相手に対して武力以外の方法で交渉していません。もしも彼の要求が妥当な物であり呑める物ならば、碇シンジくんの命が掛かっているのです。私の声を彼に届けて貰いたい>
「しかし」
<分かっています。テロリストに対しては一切の妥協を許してはならない。味を占めた奴ら達はそれによって調子に乗り更なる要求を突き付けてくるだろうから、と。しかし、このままシンジくんを見捨てるわけにはいきませんから>
「・・・・・・・・」

 大河は皆が彼のことを心配している事に対して胸が熱くなると同時に、シンジのサルベージが不可能になったことを告げなければならない事に対し氷を抱え込んだような冷たい感覚をも味わっていた。

「総理、残念な事実を告げなければなりません。先程のサルベージ失敗の後検討したところ、・・・・・・碇シンジくんは死亡した事が確定しました」
<なん・・・・そんな。我々は我々の運命を身勝手にも彼に預け、彼はそれに答えるために自分の命を捨ててまで戦ってくれたというのに、我々には何もできないと言うのですか>
「我が身の不甲斐なさに身を切られる思いです」
<そうですか・・・・しかし、彼を止めなければならないことには違い有りません。直ぐにお願いします>
「・・・・分かりました。スワンくん、総理の回線をイリスとの無線に繋いでくれ給え」
「Yes sir! どうぞ」

 スワンが回線を切り替えるとノイズの後に静寂が広がった。

<テステス、ただ今マイクのテスト中・・・・[コンコン]あーあー、えへん。ナギサカヲルくん聞こえていたら返事を貰いたい。私は日本連合国首相加治隆介です。キミの目的、要求、何でもいい、よかったら話して貰えないだろうか>

 加治が呼びかけるが返事は虚しい沈黙だけだった。

<・・・・繋がっているのかな・・ナギサくん、まずは君の声を聞かせて欲しい。キミの目的は何なのか、答えてくれないか?>

 再びスピーカーからは沈黙しか聞こえてこないかに思えたが

<<・・・・わざわざ総理のお出ましとは、>>

 報告では聞いていたが、その声色が少年の物であることに加治は少々驚いた。
 だが、折角の交渉のチャンネルが開かれたのだ、これを逃す訳には行かなかった。

<私は日本国民の代表として皆が安全に生活出来る環境を守るためにいる。多少の危険を冒しても私はその本分を尽くすだけだよ>
<<政治家の建前としては良くあるセリフだね、でも貴方が本心からそれを言っているのは分かるよ。貴方は実に希有な存在だね、それは好意に値するよ>>
<そう言って貰えると嬉しいな。さて、単刀直入だが、キミの目的は何なのか。 キミのしたことは我々の立場からすれば我が国の主権を侵す行為に他ならない>
<<だがしかし、エヴァンゲリオンを野放しにすることは人類の滅亡を意味することに他ならないよ。エヴァンゲリオンこそ人類の敵なんだ。ボクはエヴァンゲリオンが復活しこの世に災いをもたらした時のために仕組まれた安全回路として古代文明によって生み出されたんだ、自己のアイデンティティを満たすためにもあれを見過ごすわけにはいかないのさ>>
<それは私の聞いた話と違うな。あれを作った碇ユイ博士と異なる人生を辿った碇唯博士によるとあれは使徒に対抗するために過去の遺産を模倣し人為的に作られた特殊な能力を持たされた人造人間だと言う話だが、違うのかね>
<<違う、あれこそ全ての人間の祖先、宇宙から飛来したアトランティス人が少ない労働力を補うために自らに似せ製造した最初の人間アダム、その模造品だよ。その後に戦闘用に改造されたようだけどね。ボクはアトランティス帝国が滅んだ後に人間の手によって興った最初の人類の国でエヴァンゲリオンが人間に災厄をもたらした時に働くフェールセーフとして作られてこの前目覚めたばかりなんだ。あ、ちなみに時空融合後に現れた使徒は全てボクと同時に作られた使徒のデッドコピーだから、本物の使徒よりもATフィールド他弱いからね>>
<本物の使徒じゃないって?>
<<ええ、そうですよ。本物の使徒が戦艦の主砲弾如きにATフィールドが破られるはずがない。我々ではATフィールドを完全に再現させることは出来なかったというわけです>>
<その使徒もどきによって今まで国土は何度と無く犯されてきた>
<<しかし、あくまでその目的はエヴァンゲリオンに絞られていたはずです。とはいえ身に降りかかる火の粉は振り払わなくてはならない、あくまでも自衛の為の戦闘に限られていたはずですよ、あなた方の憲法に定められた物と同じくね>>
<だが、無垢の民の生命と財産を侵害した>
<<エヴァンゲリオンを滅ぼすことこそ我らの存在目的です、人間と違い目的を持って製造されたボク達はそう言う風にプログラムされていますから、最早誰に何を言われても行動に揺らぎは存在しません。それにそうしなければエヴァンゲリオンに人類が滅ぼされる、そうなったらボクとしても個人的に悲しい。第一彼を救いたいと言いますが、今そこにいるエヴァンゲリオンをあなた方は制御できてないではないですか>>
<・・・・・・だが、いまあの中にはパイロットの少年が取り込まれている。見過ごしたくない>
<<感傷ですよ、それは。おっと、少し話し込んでしまったみたいです。ボクにはもう時間がない、話は終わりです、それじゃ>>

 カヲルが一方的に通信を打ち切ると加治はマイクを握ったまま立ちすくんだ。

「エヴァンゲリオンとはそんなに危険な物なのか? それに時間がないとは一体」
「加治さん、ちょっと良い?」
「ああ、どうぞ鷲羽・ちゃん」
「横から話は聞いてたんだけど、文脈や資料からすると、・・・・どうやら彼の言うエヴァンゲリオンとあのエヴァンゲリオンは別のエヴァンゲリオンだって気がするんだけど」
「本当ですか?!」
「え、ええ。あくまでも印象程度の物なんだけどさぁ。資料を斜め読みしかしてないから確証はないんだけどねぇ」
「つまり彼の云う事が正しいのか、碇博士が正しいのかは」
「結論付けるに足る確証が欲しいわね」


 話を済ませたカヲルは最早迷わずエヴァの元に近付いた。
 既にイリスの武器は片腕に触手が一本、両脚のみという状況であったがサルベージの影響で活動を停止しているエヴァンゲリオン初号機には充分すぎるほどであった。

「・・・・シンジくん、キミとこうしていなければならないなんて、巡り合わせとは言え悲しい物だね。もしも違った出会いをしていたらいい友としていられたのかも知れないのにね」
 そう言うと今度こそ外さないように慎重に狙いを定めながら、触手の先にエネルギーを貯め込み始めた。
 やがてその仄かな灯りはギラギラとするほどに輝きだした。

「サヨナラ、碇シンジくん」

 空気をイオン化させ、エネルギーの塊は狙い過たずエヴァの腹部に炸裂した。
 ATフィールドという無敵の楯を持たない今のエヴァにはそれに抗うことも出来ず、その強力な爆発によって装甲どころかその下に隠されていた素体の肉までもが削ぎ落とされてエヴァシリーズにはないはずのコアが露出していた。

「! これは! そうか、そう言うことか。生き延びるためには忌避される物でも使う、これを建造した者達も生存に必死だったんだね。だが、こんな物にまですがらなければならないとは。分かっているのか、これがもたらす物の悲劇を、命の実・コアと知識の実・人の魂を併せ持ち、地球生命の全てを啜って永遠に生き続ける、コアを有するエヴァンゲリオン。どのみち、これは存在が許される物ではない! 」

 止め、とばかりにイリスは次の一撃を放った。
 その一撃はまるでカヲルの怒りを示すかのように先程よりも激しく輝いた。
 だが

「なにっ!」

 その輝きは初号機に到達する寸前にオレンジ色の壁によって遮られていた。


「エヴァンゲリオン初号機! 再起動しました!!」

 卯都木隊員の声が静寂していた室内に響き渡った。
 それまで意気消沈していた者達はそれに驚き、サブスクリーンに表示されている地上の様子を凝視した。
 イリスの攻撃を受け、まるでマミー(包帯男)の様な参上を呈しだしている初号機がそこには映し出されていた。
 だが、その中でも最も驚いたのが唯だった。
 彼女が昔設計したエヴァンゲリオンは決して単独で動くことのない様にパイロットとのシンクロが必要不可欠なように設計されていたはずであった。
 彼女は母親として今回のサルベージを計画したが、科学者として彼女がこのエヴァンゲリオンの暴走を防ぐ最後の手段として組み込んだ秘密のプログラムがあったのだ。
 シンジが液状の状態になった時点では「取り込まれた」とは言えその構成要素と魂はエヴァンゲリオン初号機とは別にあり、初号機の中のユイとシンクロしていつでも暴走可能性があったのだが、完全に取り込ませて
しまうことでそれを防ごうと目論んだのだ。
 しかし、現実にはそうならなかった。
 何故か。
 パニックに陥ってしまいそうな唯だったが辛うじて初号機から送られてくるか細い通信ログからそれの解析を始めた。
 そして彼女はそれを見つけた。
 エヴァから送信されてくるエヴァのログを分析していた碇唯博士の注目を引くデータが見つかった。

「シンクロ率が計測されている? シンジくんを取り込んで一体となったエヴァにシンクロ率から計測されるなんて。 ・・・・初号機は一体何とシンクロしているというの? まさか・・・・まだ希望はある! 」


双方とも満身創痍だったとは言え、バケモノその物の初号機とイリスの戦いは凄惨を極めた。
 もはや防御の概念すら忘れた、ひたすら相手を破壊し尽くし、先に倒れた方が負けというもはや戦いとは言えない状況に陥っていた。
 なにしろ双方とも生体兵器である。肉を破裂させ骨は打ち砕かれ血飛沫は辺りに飛び散り、これほど凄惨な殺し合いは六〇〇〇万年前の白亜紀以来行われたことがなかったほどである。
 その余りにもな光景にメインオーダールームの面々、特に潔癖性である摩耶にとっては余りにも悲惨な状況に全員が押し黙った。
 摩耶が以後それらを連想させる食材を口に入れることがなかったのも仕方のないところであろう。
 それはともかく、勝負は意外と速く着いた。
 その時初号機は左腕に重大な損傷を受けながらも右手に力を集中させていた。
 止めを刺そうとイリスが大きく腕を引いたところ、その瞬間を逃さずATフィールドを集中させた抜き手をイリスの胸ぐらに叩き込んだのだ。
 ビクリとイリスは体を震わせると急激に力を失った。
 顔面の光球が完全に消えるとその体中から繭に包まれたカヲルの体を引きずり出した。
 光が失われたイリスはそのまま、大地に伏せると動きを止めた。
 最早脅威でも何でもないそれに興味を失った初号機は握り締めた繭に注意を引きつけた。
 繭の先端は破れ、グッタリと力を失ったカヲルの顔が覗いていた。


「あれは、人間、少年?! と言うことはあれがナギサカヲルか。スワンくん、直ぐに照会を」
「ィエッサ! 間違い有りません、彼はアスカちゃんが言っていタ、彼女の同級生であル渚カヲル15歳デス」
「なんと、アスカちゃんの言っていたことが真実とはな」


 右手に握り締めたカヲルを睨み付ける初号機。

「やあ 人類の敵たるエヴァンゲリオンくん。キミは一体何を望むんだい。シンジくんのお母さんを取り込み、そしてその望みのままシンジくんを喰らい、そしてこれから、キミは一体何をしたいと言うんだ。キミが我々の世界のエヴァと違う存在である事は分かった。だが、キミが世界を滅ぼすのは止めて貰えないだろうか、その為ならば・・・・・・こんな命で良ければ喜んで捧げるよ」

 そんなカヲルを見て初号機は目を細め、グルグルと唸り声を漏らした。

「キミは・・・・そうか。そう言うことなら・・・・・・・・」

 不意にカヲルは微笑みをこぼした。
 それを見た初号機は大きく顎部を開くと、そのままカヲルの上半身にかじりついた。
 そして残りの下半身をも口中に放り込んだのだ。



















 サーチライトが照らし出す中、初号機は夜空の月に向かって一際大きな遠吠えを放った後、急に沈黙した。


 翌日、隔離されていたアスカとレイはメインオーダールームに呼ばれてきた。
 眠れずに一晩を過ごしたアスカ達とサルベージ担当者達は荒んだ様子で顔を合わせた。
 そこで最初は大人しく唯の説明を聞いていたアスカだったが、サルベージプログラムの所まで聞くと急に高笑いを挙げた。
 アスカの突然の豹変にどうしたのかと問う唯にアスカはひとつのプリントアウトした紙を突き付けた。

「アンタ! シンジを心配する振りをしてこれはなに? このプログラムはアンタがインプットしたところでしょうが!」

 そこに記載された内容はプログラムに参加した者達にも見覚えのない不可視属性の隠しプログラムだった。
 それを見た唯はハッとして息を呑んだ。

「・・・・もしもシンジのサルベージに失敗の兆候が有れば強制的にシンジの存在を抹消するように書かれているわ。これさえ、これさえなければあの時ピリオドがひとつ欠けただけでシンジが消えちゃうなんて事は無かったはずよ! 返して! シンジを返してよ!!」
「どう云うことだね唯博士」

 アスカによって暴露された事実に大河長官も憤然として問いつめた。

「だって・・・・暴走の可能性を秘めたままあれを放置するわけには行かないでしょう? もしもサルベージに失敗したらあれが野放しになってしまう・・・・そうしたら私達まで死んでしまうかも知れないじゃない。助かる見込みのない者を切り捨てて何が悪いって言うのよ・・・」
「アンタ・・・・!!」

 それを聞いたアスカは憤怒の表情を崩さずに唯に歩み寄った。
 次の瞬間バシーンという音が唯の頬から響き渡った。
 アスカは予想外のレイの行動に唖然としていた。

「・・・・レイ」
「アナタって最低だわ、碇博士」
「悪い? 悪いの? 良いじゃない! シンジが居なくなれば最低でもエヴァの暴走はなくなって世界は救われるのよ、少なくても私の真司は生き残れるわ。当然でしょ! 母親として自分のお腹を痛めた子供の方が大切じゃないの、生き残る可能性が無いんだったらいっそこの手で幕を引いた方が良いじゃない、母親の手に掛かって死んだ方がずっと良いでしょ! 良いじゃないアタシの子なんだから!!」
「シンジくんはひとりの人間として立派に生きてきたわ。シンジくんはアナタの物じゃないもの。勝手なこと言わないで」
「所詮、私は碇ユイと同じ人間なのよ。エゴイストだろうと何だろうと自分の信念を守るためだったら何だってするわ。それが一般的な正義とか平和とかと一致しているんだから良いじゃないの」
「良いわけ有るわけないでしょ!!」

 アスカが叫ぶと全員押し黙ってしまった。
 しばらくそのまま誰も何も喋れなかったが、事態を収拾しようと大河長官が口を開いた。

「碇博士、済まないが出ていって貰えないかな。貴方がいると混乱する一方だ」

 それを聞くと唯は無言で出口へ向かった。
 だが、扉の前に来ると立ち止まって振り返った。

「アスカちゃん、あのプログラム何処で手に入れたの? 昨日はずっと部屋にいたじゃない」
「・・・・・・プログラムしている最中よ。何かあったら困ると思ってバックアップのコピーを貰って、昨日部屋で解析していたのよ」
「ふぅん、やっぱりアナタ響子にそっくりだわ。摘み食いの癖とか。後ね、昨日初号機が沈黙する寸前シンクロ率のグラフが出ていたわ、注意して置いてね、じゃ、サヨナラ」

 去って行く唯に誰もが口を噤んだまま何も言えなかった。
 親友である響子でさえだ。

「さて、サルベージ担当者の諸君、出来れば今の初号機について説明をして貰いたいのだがよろしいかな」

 そう大河に言われると一同は戸惑い気味であったが、響子がそれに答えた。

「ええ、取り敢えず今よりも自体は深刻にはならないと思うけど。全力で頑張らせて下さい」
「ああ、頼みます」

 そう言うと大河は改めて頭を下げた。

「大河長官」
「なんだね? アスカくん」
「初号機の所に行かせて下さい」
「しかし! それは」
「暴走は終わっているはずです。それに完全にエネルギーの反応もないって。お願い、今は少しでもシンジの側にいたいの」
「そうか、・・・・・・分かった。ゲキ、頼めるか」
「おうよ。護衛なら任せとけ。それにここにいてもオレが役に立てることはなさそうだしな」
「頼むよ」
「よぅし、アスカにレイ、連れてってやるから大人しく云う事を聞くんだぞ」
「分かってるわよ」
「了解」


 3人を乗せた不整地用の高機動車は仰向けに大地に転がる初号機に慎重に近寄った。
 初号機の側にはイリスの死骸が転がっていたため念のため注意深く避けて走らせ初号機の側に停めた。
 コアが露出し、無惨な姿になった初号機は昨晩までの荒々しい鳴りはすっかり潜めて完全な沈黙に包まれていた。
 背部にあったエントリープラグの挿入口はイリスによって潰されていた。
 アスカとレイはエントリープラグに近付くことは諦めて、その怪しい機関、コアに近付くと何も言わずにただ立ちすくんだ。



 その頃、初号機の中、シンジの心は混沌に包まれ消えかかっていた。
 体も魂すらもエヴァに吸い取られてしまったシンジの存在は、最早結晶化の際に取り残された不純物のようなもので脇に追いやられ消え去る寸前だったのだ。
 だが、そんなシンジに手を差し伸べる者が存在した。

「誰」
「やぁ久しぶりだね碇シンジくん」
「カヲルくん? あれ、ここは一体」
「ああ、ここはねエヴァンゲリオンの中、ガフの部屋の入り口って所かな?」
「何だいそれ」
「ああ特に気にしないでくれ、ただの戯言さ」
「ふぅ〜ん、そうなんだ」
「ああ、そうさ」
「それで何か用なの? なんかこのまま消えて無くなってしまいたい気分なんだけどな」
「それで良いのかい?」
「ええ?」
「キミにはまだチャンスが有るんだよ」
「チャンス?」
「ああ、キミのママに頼まれてねボクからキミにあげたいモノが有るんだ」
「あげたいモノ?」
「そうさ、キミに、碇シンジくんにボクの命を上げよう」
「何を言っているのかボクには分からないよ」
「ボクにとっては生と死は等価値なんだ。そしてシンジくん、キミは死すべき存在じゃない」
「そんな、カヲルくん」
「そろそろ時間だ。キミが受け取ってくれないとこのまま消えてしまうからね。それに、キミは帰らなければならないだろう? 君を待っている人達の元へ」

 カヲルが指さす先には、絶望の余り地面に手を着き泣きじゃくるアスカ、そして只虚空を見つめるばかりのレイの姿があった。

「アスカ・・・レイ・・・。 だけど、ボクにはキミを犠牲にして生きる事なんて出来るわけ無いよ」

 首を振るカヲル。

「それは違うよ。どのみちボクはこのまま消え去る。もともとボクはイリスに乗った時から命のカウントダウンが始まっていたのさ。ボクを作った人達はね、ボクが強力すぎる力を持つことを恐れたのかな。イリスとのシンクロが始まってから48時間で消えてしまうように遺伝子に時限爆弾が仕組まれているのさ。だから受け取ってくれないとこの命はこのまま消え去ってしまう。是非受け取って貰いたい」
「カヲルくん・・・・」
「ボクは・・・・キミに出会えて良かったよ。この命も無駄にはならなかったしね」
「だからって」
「それじゃあ頼んだよ。碇シンジくん、サヨナラだ・・・・」
「カヲルくん、カヲルくん!」


 

 アスカとレイがコアの側で立ち尽くしていると、突然その近くから異音が生じた。
 何事かとそちらを見ると、何故か裸のシンジが地面に伏していた。
 暫し呆然としていた3人だったが、ふと我に返ると慌ててシンジに駆け寄った。

「シンジシンジシンジ」
「シンジくんシンジくんシンジくん」

 ほとんどパニック状態のふたりはフルチンのシンジの肩を掴んでビンタビンタの嵐をかましそうな勢いだったため、ゲキはそのふたりからシンジを奪うようにして車に乗せた。
 取り敢えず毛布を掛けると無線機に向かって怒鳴るようにして連絡した。

「そうだっ!! シンジが出てきたんだ!!! 直ぐに治療の手配をして入れ!!」

 それからアスカ達の方を見て。

「それからふたりも興奮状態で何をするかわからんから、そっちの手配も頼む。じゃあな!」

 ゲキがマイクを叩き付けるように戻すと、呆気なくマイクは砕け散った。

「ちっ、ヤワなマイクだぜ」


 それから数分後、露出したコアから出現したシンジ(3匹の火蜥蜴達はGGGの研究室で加療されることになった)はゲキの運転によって急ぎGGGの集中治療室へ搬送された。
 そこで徹底的な検査と、可能な限りの治療を行う手筈になっていたのだが、検査の結果彼の肉体には一切の外傷も内患も存在しないことが確認されたのである。
 つい数ヶ月前にアスカによって叩き折られた左腕の骨折跡すら痕跡も残さずにだ。
 様々な角度からこの事実を検証した治療団はこれが本物の碇シンジであるかの判断を保留した。
 もっとも、サルベージの計画では古傷の再現まで含まれていなかったので惣流響子博士達サルベージ担当者達は彼が碇シンジその人であることを確信していたが。
 第三者的立場から判断させる為、サルベージ担当者達と治療団は別の人間が担当することになっていたのだ。
 数時間後、シンジの脳波をチェックしていた計器から覚醒を示す兆候が検知された。
 シンジは治療を安全に行うため、完全に快適な環境を構築する為のカプセルに入れられていた。
 知らせを聞いたアスカとレイ、そして惣流博士は外部からシンジが確認できる窓にへばりついて彼の様子を見守っていた。
 長くて短いような時間が過ぎ、カプセルの横に示されている意識レベルの表示がレッドからグリーンへと変わった。
 外の3人は治療団の行動にもどかしさを感じてイライラしながらその様子を見守っていたが、検査を続けていた彼らの様子が急に慌ただしくなり検査器具や酸素マスク、様々な薬品が入ったアンプルが割られて注射器に込められて行くのを見ると、激しい緊張に包まれた。

「ね、ねぇ・・・惣流博士。一体なにがあったってぇのよ」
「ちょちょっと待ってね。ええと使われている薬品からすると・・・・循環系じゃないわね・・精神高揚薬? なんでそんな物を・・・」
「じゃあ誰かとっつかまえて事情を聞けば」

 アスカがちょっと無茶なことを言いだした途端に響子は迫力の効いた声で(ドスの利いた声で)それを否定した。

「いけません! かれらはチームで行動しているのよ、それを遮ってシンジくんに何かあったらどうするつもりなの!!」
「ひゃ、はい。ゴメンナサイ」
「分かればよろしい。部外者が横から口を出す事ほど邪魔なことはないのだから、私達は黙ってここで見ていなければならないの。例えどんなに見ていてもどかしくてもね」

 キッパリと言い放つ響子を見てアスカはこう思った。

<ああ、やっぱりあの人達の手際って悪いんだ。有能な人物ってこう云うとき悲しいわよね>

 と、響子が言いたいことを曲解していた。
 緊張に包まれた治療は数時間にも及んだ。
 取り敢えず容態が落ち着いたのだろうか、シンジは入念に監視された個室へと搬送された。勿論扉には「絶対面接謝絶!!」と!!マーク入りで掲げられていた。


 数日後、面会謝絶が解かれた。
 当然の如くふたりは面会時間5分前だというのに扉を壊すかのような勢いで中に入った。
 小道具として花束(鉢植えは当然の如く忌避される物として選んでいない・・・唯の入れ知恵だが)と果物と果物ナイフを携えて。
 ふたりとしては−−−憔悴したシンジの横に座り、自らの手で剥いた果物を「はいシンジア〜ンして」−−−等とやってみたかったのだろうが、まず主治医にシンジのことを聞かなかったことに後悔することとなった。
 ベッドの上のシンジは眠っていなかった。
 しかし、起きてもいなかったのだ。
 只、虚ろに目を開いているだけで、彼の意識は何処にもなかった。

「シンジ!」
「シンジくん」

 ベッドのとなりに座ったアスカとレイが話し掛けるが全然、全く! 完璧に!! 何の徴も示さなかったのだ。




後書き
ほぼ2ヶ月ぶりのお待たせでした。
この話の骨格はずいぶん前から出来ていたのですが、何故か肉付けの段階で躓いてしまいました。
どうもすいません。

あと、急遽思いついてしまったお話が出来てしまいましたので、今までの16話は前編、と云う事にします。
後編は、もう先に出来てしまいましたので一週間ばかりお待ちください。
ではでは。




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