兵器開発史




 チラム。
 エマーンから重力制御ユニットを輸入することで手早く安価に大量のグラビティー・コントロールユニット(以後G.C.U.と略する)を手に入れたアメリカ兵器開発廠はまず次の様な手順で兵器への導入を図った。
 最初に行ったのは陸戦兵器の重量軽減対策である。
 戦車に代表される装甲車両の歴史は総重量と接地圧、そして機関出力との妥協によって生み出されてきた。近年は装甲による耐弾能力よりも機動性による回避能力に傾いてきているが対装甲兵器の主力がMBTであるのは変わらない。
 敵の攻撃に耐えられるだけの装甲を施すとその車輌の接地圧が高くなりどんなに機関出力が高かろうがドン亀のような鈍い機動性しか得ることが出来ない。しかし、G.C.U.さえ有れば最早過重量による接地圧に悩まされることは無いのだ。つまり必要なだけの装甲、機関と火器管制システムを積む事が可能なのである。
 そうして最初に開発が行われたのが対ムー戦闘ロボット用の多砲塔戦車オクトパスであった。
 歴史上の多砲塔戦車は第一次世界大戦にてその非効率性が暴露され、以後開発されることは無かった。それはひとつの機体に複数の火器を積むと装填システム火器管制システム駆動部の増大等果てしない複雑化を招き装甲の脆弱化を招くか機動性の著しい低下が克服出来なかったからだ。
 その為に主砲以外には車外に機関砲等の補助兵装以外を積む事は無くなったのである。
 しかし、敵の対象が装甲兵器から軽装甲のロボット兵器へ変わった事により事情が変わった。
 それまでは装甲の厚い敵集団の中から一機を選びそれを確実に撃破出来る火器が必要だった訳だが、相手がムーになってから敵の攻撃力は増大しそれに代わって装甲は減った、それによってより数多くの敵を同時に攻撃できる方が戦術的に有利になったのだ。
 G.C.U.によって多砲塔戦車の宿命から逃れる事になったアメリカ兵器廠はムーの攻撃に耐えられる装甲と、イージス艦の様に多数の敵を同時に攻撃出来るだけの数を揃えた中口径火器とその全ての敵を捕捉し管制する火器管制システムを贅沢に盛り込み、更にWWTの頃は人力で行っていた装填作業を自動化、わずか3人で20を超える大中口径の火砲と対空CIWSシステムを持ちムーのレーザー砲に短時間なら耐えられる装甲を持つ兵器を保有することになったのだ。
(もっとも戦闘後には敵弾命中により消耗した対レーザー冷却ジェルの再装填が欠かせなかったのだが)
 何故最初に陸戦兵器に搭載が決まったかと言うと、G.C.U.の管制コントロール技術の問題であった。
 空戦の場合G.C.U.の管制次元は前後左右上下と3次元となり、未知の技術としてはハードルが高すぎた。
 その点、陸戦兵器ならば使用中は上方向のみであり一定の出力があれば充分であったのだ。
 そして陸戦兵器で経験値を積んだ兵器廠はいよいよ第2段階である空戦兵器の開発に手を出した。
 その実験機の設計は慎重に行われた。
 3Dの動きを要求される機体は空中で制御を失っても無事生還出来るようにと過去に開発された兵器のデーターを参考にした。

アフロ・パーマー「主任、データー打ち込みました。候補の機体の選定に入ります」
ボブ・スタイル「うむ、しかし空力特性からすると70年以上過去の1980年代以前の物を参考にしなければならないと言うのが皮肉だな」
ウルフ・カットマン「仕方ありやせんや、1990年代以降の軍用機はステルス、最低でも低ステルス効果を持たせているせいで空力特性が不安定、コンピューターの補助がなけりゃあとても飛べた物ではないっすから。万一の為に安定した空力特性を持つ軍用機となるってぇとどうしてもそれ以前。出来る事なら降下率の低いレシプロ時代が良い、てぇ分析なんでしょう?」
ボブ「まぁな」
トーラー・ガリィ「データーは現存する全ての資料を元にシミュレーションします。私の予想では機動実験の際に受ける空力特性から全翼機が選ばれると愚考しますが」
シャギー・イン「それって、前からでも後からでも来てもOKよってか? ハハハ」
ボブ「キミ、幸いここにはY属性の人間しかいないから不問にしておくが、X属性の人間に聞かれたらキミの人生は終わってたぞ。気をつけたまえ」
シャギー「ちぇ、いないから云ったのに決まってんじゃん。そんな事も分かんないかなぁ〜」
ボブ「壁に耳有りジョージにメアリーだ、気を抜いているとどこで聞き耳を立てているか知れたものじゃないぞ」
シャギー「また日本通が出たし、第一訳分かんねえよ。それって経験からですかぁ?」
ボブ「・・・・・・聞くな」
 この時代のアメリカは現代に輪を掛けて自己自由の権利と他人の権利の侵害に対して五月蝿い。
 その一例として自己の性別選択の自由とセクハラが挙げられる。因みに上の文章に出てくる登場人物の内ひとり、肉体的にはフィメールだがY属性が一人いる。さて、誰でしょう。

アフロ「主任、始めてよろしいですか?」
ボブ「うむ」

 アフロ所員がプログラムを走らせるとメイン画面に処理中の表示が数秒間出ていたが、すぐにそれは止まった。

コンピューター[希望でーたーノ検索結果デス。第1候補:あぶろかぁ<ピー!> ERROR! CAUTION! こんそーる二強イ衝撃ヲ与エナイデ下サイ]

 突然のでかい音にビビった所員らはメイン画面から目を外して音源のほうへ目を向けた。
 そこにはコンソールに拳を叩きつけた主任の姿が有った。
 いつもなら絶対に見られないその行動に所員達は目を丸くして見つめてしまった。

ボブ「コンピューター。済まんが、アメリカとカナダの兵器開発者の前でその名前を出すな。タブーだ!」
コンピューター「Yes.Yes sir! 」

 コンピューターらしからぬ声色でそう返すとコンピューターはもう一度報告を始めた。

コンピューター[第1候補:ふらいんぐ・ぱんけーき。高効率ノSTOL性能ヲ持ツ。2D二対スル抵抗形状・良好。機体規模モ大キク増設すぺーすアリ。えんじんヲれしぷろカラじぇっと二換装スル事デ発電能力規定数値二達スル計算]
アフロ「主任、第2候補も聞きますか?」
ボブ「・・・・・・いや、それには及ばないだろう。早速再設計に入ってくれ」
全員「了解っ!」

 ずいぶんと簡単な指示であったが、既に改造の方向付けのアーキテクチャーは決められインプットされているので、彼ら設計者はそれに従ってオペレートすれば良いのだ。

ボブ「しかしなんだな・・・」
ウルフ「何がっスか?」
ボブ「昔の人間て紙の図面を引いて設計してたんだろう? どうしたらこんなフリスビーに円筒と羽根を付けた様な機体になるんだ?」
ウルフ「さぁ、コンピューター革命以前の人間の考える事は良く分からないっスよ」
ボブ「それはそうなんだがな」

 因みにタブーとされているアブロカーとは、かなり昔にアメリカとカナダが共同開発を行った空飛ぶ円盤式戦闘機のプロトタイプ計画である。
 当初の予定では空中を高速で前後左右そして垂直方向に移動し敵を倒すと言う前代未門のスーパーウェポンとして完成する予定だった。
 その実力が知られる事になったのは、この計画に骨を折った関係者を集めて行われた完成品の実用実験の時のことである。
 彼らの前に現れたジュラルミン無垢の肌をしドーナツの様な形状をしたアブロカーは倉庫から引き出され姿を現した。
 この時、鋭いスピードで空を駆けるその雄姿を思い浮かべていたに違いない関係者の前に現れたアブロカー。
 何とふわふわ地面の近くを漂うだけならともかく行く方向さえ定まらずに、とうとう実験期間中を通して牛用の柵さえ越えられない始末だったのだ。
 それ以来、アブロカーの名前は汚点として刻み込まれていた。
 結局その失敗の原因は、上から吸引し下から吐き出す空気の流速が遅く上昇に作用するパワーの不足であったのだが、それを改良し機体の周りにスカートを付けた物がホバークラフトとして実用化されているのだから、まったくの無駄と言う訳でもない、として置こう。
 よりにもよってコンピューターが選んだのが彼らが忘れ去ろうとしていたそれその物であったのだから、その打撃力は計り知れないものであったのだろう。
 何はともあれ、STOLレシプロ艦上戦闘機フライング・パンケーキの記録はコンピューターライブラリーから引き出され、2050年代の最新鋭材料工学と構造力学を用い改善、GCUを一基とそれを駆動する為の発電能力を持つジェットエンジンを2基積んだ実験機フライング・パンケーキUとして完成することになった。
 結果、この時代最もコンパクトで出力の高いジェットエンジンを発電機として用いたのだが、発電能力の限界からGCUの出力が安定せず機体の安定性が発揮される事態がたびたび発生していた。
 この欠点はこれ以降に設計される航空戦闘機群、アメリカ兵器廠とそれを引き継いだチラム工廠でも尾を引き、設計者達はその点かなり苦労することになった。
 代理案としてGCUと共にエマーンから高性能コンデンサーを輸入し(ライセンス契約は結べなかった)導入する案も検討され、計画・設計・実験も行われたのだが、そうすると機体構造物の60%、製造金額の75%がエマーン製の物となってしまい「これでは準エマーン製戦闘機だな」等と批判の声すら聞こえる始末であったのである。
 実際の所、エマーンの技術力は彼らの想像を越えていたのだが、戦闘に関するセンスが欠落していた商業民族エマーンには純然たる兵器開発力が低く、後の準軍事組織であるラース家自警団が採用する事になるオーガスUですらラース家の商業ファクトリーが拾った元アメリカ機動航宙軍軍人の桂木桂の指導の元にブロンコUに腕部を取りつけ完成した4フォーム可変戦闘デバイス・オーガスを元にしている。
(因みに戦闘励起状態ではない一般のエマーン人の勇猛さはWWUのイタリア軍と比較される)
 純然たるエマーン謹製の慣性制御戦闘機と言えばスポーツ用汎作業デバイスに武装を施したモラーバ・シリーズやその再設計版のディモーラとなるが、如何にも民間機を改造した雰囲気が残っており耐弾性能も低くエマーン的に華奢な印象が否めなかった。
 ここでアメリカ、後のチラムが発想を転換しエマーン製の部品をふんだんに使用して製品化した攻撃力防御力に優れた戦闘機をエマーン側に逆輸出すればかなり利益が出たと思うのだが、そうはしなかった訳である。
 この発電能力については意外な存在、突出した技術は持っているものの基本的に半世紀もの工業技術が遅れているとされていた相手、新世紀2年に勃発したパケモン=バケモン訴訟に端を発した著作権、商業特許権問題をクリアーした日本連合からもたらされたパラジウム・リアクターによって解決する事になる。
 どうやらこの技術、手に入れたは良いが生産に要する工業技術が日本連合の工業レベルを越えていた為に量産が可能なアメリカに製造ライセンスが売られたようなのだ。
 これによりGCUの安定駆動に必要なエネルギーが確保されたばかりではなく、かねてより研究が進められていたレーザー砲の使用も視野に入れる事が可能になったのは思わぬ幸運だった。
 その小型高性能のパラジウム・リアクターによって漸く技術的目処が立ったアメリカ兵器廠はGCUを用い兵器体系の大幅な刷新を行う事になったのである。
 既に大気圏外への進出能力を持つ大型の装甲シャトルを持つに至っていた彼らにとって空中でGCUを力学的支点とした機動が可能な大型艦を生産するのは難しいことではなく、その点に関してはα号やβ号、轟天号、空中軍艦などを反動推進で飛ばしていた日本連合に対して大きなアドバンテージを誇っていた。
 その能力は正に空飛ぶ要塞と呼ぶにふさわしい攻撃力を持ち、一時期のチラム軍は大艦巨砲主義に囚われてしまった程である。
 もっとも、反乱軍によって占拠された空中戦艦ヴァージニアが日本連合領であるハワイ県近海で日本防衛軍連合艦隊と交戦したハワイ沖軍事事件の際、日本連合とチラムの要請を受けた汎人類圏防衛機構G&Aコンバインドフォースの誇る可変戦闘機VF−1バルキリーによる攻撃で混乱していたヴァージニアが、よりにもよって海上艦である光子力バリアーを装備した打撃護衛艦ヤマトの主砲によって止めを刺された出来事はチラム首脳に衝撃を与えた。
 速度の点では比較にならない両艦であるが、可変戦闘機バルキリーの援護を受け、レーザー光線を防ぐだけの能力を持たされたバリアー装備の海上艦が撃ち放った巨弾は、狙い過たずヴァージニアの弦側装甲を紙のように貫き通し一撃の元に爆沈させた。
 もっとも、最初に攻撃を仕掛けたのはヴァージニアの方であった。
 日本からもたらされたパラジウム・リアクターの大型出力増強版の出力は大口径レーザー砲の装備をヴァージニアに許しており、そのキャパシティー一杯に貯め込んだエネルギーを位相を揃えたレーザー光線としてヤマトに向けて放ったのである。
 本来ならば戦艦の装甲とは云え一撃で貫抜く筈だったレーザー光線は、事前にヤマトが展開していた光子力バリアーによってあっさりと弾かれてしまったのである。
 物理的な力にはパリーンと気持ちよい程割れる光子力バリアーだが、流石に光子力エネルギーを利用しているだけにレーザー光線には強かったらしい。
 ならばと続けて放った高速ミサイルもバリアー自体は貫けたのだが、その時点で真管が作動してしまい艦体に届く前に虚しく爆散してしまったのである。
 むろん激しい勢いで破片が襲い掛かったが、過去と違い人間の姿は甲板上に無く、火災予防として必要の無い装備は隠されていた為被害は極めて軽微なものであったと言う。
 だが、こちらもバリアー展開時は攻撃出来ない。
 そこでハワイに駐留していた通常推進の翼揚力式新型可変戦闘機VF−1バルキリーの編隊が攪乱に出た。

「スカルリーダーより各機へ。敵は言わば武装テロリストだ、手加減する必要はないぞ。対空砲火に気を付けつつ・・・! ターリホー! 奴ら艦載機を発艦させやがった。チラム騎兵隊に配備されたばかりの新型イシュキックが20機か! 面白い。ブラウン、パープルの両小隊はそのままヴァージニアに向かえ、レッドとブルーは俺に続けぇ、アタァーック!」

 フォッカーがスロットルを押し込むと2基のFF−2001熱核タービンエンジンは1基当たり11.5トンの出力を吹き出し、機体を加速させた。
 バルキリーは機体の各所から水蒸気を引きマッハを超えるスピードで迫る。それに対しイシュキックの方は基本的に亜音速帯のスピードで飛行していた。
 これは戦術思想の差によってもたらされた性能差である。
 基本的に空飛ぶ戦車という思想の元に戦車並の装甲を有するイシュキックは地上にいるムーのロボットと飛行型のロボットを仮想敵として設計している為、最高スピードよりも格闘戦能力を追及した設計となっている。言うなれば蹴り技が使え戦車並の装甲を持つハリアーみたいな物だ。
 開発系列としてはガウォーク戦闘機のブロンコUの系列に重力制御システムを搭載してそのまま発展させた物である。
 その武装も基本的に近接戦闘向けで、高出力拡散ビーム砲1基と多連装小型誘導ミサイルランチャー2列2セット、30ミリ機関砲2連装2基と言った具合である。
 それに対しバルキリーは海上防衛軍と航空防衛軍、陸上防衛軍共通で使用出来る艦載可能なV/STOL性を持った制空戦闘機とMBTを兼ねた戦闘ユニットという過去の技術では絶対に創り得なかった物を特殊機動防衛軍のスーパーロボットという先例技術の応用で創り上げられた経歴を持つ。
 小型化が難しい(可能なのだが、量産技術が確立されていない)ナデシコ型重力制御システムを諦め、大気中ではほぼ無限の航続力を持つ熱核融合タービンジェットエンジンを搭載し様々な特殊合金を研究した結果戦車並の強度を持つ装甲板を有し、更に人型に可変する為の機構を内蔵しながら機体重量は従来の戦闘機とほぼ同じという信じられない機体になった。
 武装は55ミリ3連ガトリング・ガンポッド1基と主翼に設けた計4つのハードポイントに各3つの中型対空ミサイルを搭載可能、バトロイド形態での頭部ユニットに1〜4基の対空レーザー機関砲を装備しファイター形態での使用も可能と、A−10B以上の火力を保有可能である。
 比較するとスピードでは形状からして判る通りバルキリーが圧勝だが、空中での小半径ドッグファイトではイシュキックが有利、ただしガウォーク体型、バトロイド体型に可変する事で複雑な機動が可能になる為に極限的な性能では引けを取らないが、パイロット自体に掛かるGは両者とも軽減されない為ある程度制限されてしまい引き分け。装甲は揚力に寄らず空力特性を軽視出来るイシュキックが重装甲を有している為イシュキックの圧勝。
 だが、やはり実際の空戦ではそれぞれのパイロットの技量が物を言った。
 チラム側のパイロットにとって翼の揚力で空を飛ぶ飛行機など、航空教育の初歩の初歩でしか使用しない後れた技術であり、それで向かってくるバルキリーを見てまるでブロンコU並みのロートル戦闘機を使用している、と高を括っていたのだが大甘だった。
 スカル小隊隊長機パイロット「ロイ・フォッカー少佐」の愛機はVF−1Sである、これは製造メーカーによって若干パーツ構成に差がある為付けられた識別番号であるが、VF−1Sは通信能力に長けているので隊長機に使用される事が多い。
 彼に続く機体はVF−1J及びVF−1A、この他に訓練機のVF−1Dも存在するがここには居ない。

「おいコラッ! レッド小隊ミーナ、リン、パット、グレース、しっかり後に付いていろフラフラしているの見てると気が気でならん」
「「「「 了解! 」」」」
「うーむ、新人は初々しくて良いなぁ。あ〜、ブルー小隊のイルム、ヘクトール、ウィン、ジェス。お前達は好きにして良いぞ。ガッハハハハ」
「「「「たいちょ〜お」」」」

 今回、初陣パイロットが多いと言う事でフォッカーらベテランパイロットは新米の面倒を見ながらの戦闘と言う非常に厳しい状況にあったが、余り心配はしていない様だった。
 彼らとてフォッカーを始めとするベテランにしごかれ続けたエース級の腕前を持つパイロットである。初陣という状況でなければ何の心配もしていない筈だ。
 もし、撃墜されたとしても、実戦ではどの様な状況に陥り何時撃墜されるか判らない。運がなかったと言って諦める他はないだろう。

「全機、フォックス2斉射用意。敵は重力制御システム使用の格闘戦メインの機体だ。恐らく格闘戦になったら誘導弾を使用している暇なんか無いからな、少しでも機体を軽くして置けよ。・・・・・・よぉし、ファイヤー」

 フォッカーの合図と共にパイロンに吊り下げられた中距離誘導弾、スサノオウ4型 9×4×3=108発が同時に射ち出された。
 イージスシステムも真っ青の火器管制システムがこの同時斉射を可能とした。
 このミサイルはアフリカに出現したゾイド連邦が持っていた対ゾイド用高機動ミサイルの技術供与を受けて開発された高機動ミサイルである。
 先端がセンサーによって平坦な為に従来のミサイルの様な紡錘型ではなく円筒型である事から現場の人間には「缶チューハイ」とか「タコチュー」「バドワイザー」等と綽名されているそうである。 <劇場版マクロス参照の事>
 翼による姿勢制御ではなく、大気圏外戦闘も念頭に置いている為ミサイルに設置されたバーニアを吹かしてまるで車線変更をしている様な複雑な軌道を描いてイシュキックにミサイルは迫った。
 大きく弧を描いて後に回ったミサイルもあり、イシュキックは主砲である拡散ビームによって一網打尽という訳にも行かずコクピット下に設けられた30ミリ機関砲をオートにして弾丸をバラ撒きつつダミーの高熱源体を散布、航空機には不可能な方向への運動を開始しそれらを撒こうとした。
 その中でも新鋭機イシュキックのカスタム機に乗ったエースパイロット、ロベルト大尉(仮名)の動きは目覚ましかった。
 機体両端の可変ベクトルエンジンを別々に操り4つに増設した30ミリをマニュアルで操作、的確にミサイルを撃墜し近寄らせなかった。

「くくく。ミサイルの性能は誉めてやるが所詮は航空機、格闘戦では圧倒的にこちらが有利。新しい空戦がどの様な物か激戦をくぐり抜けてきた我々が教育してやるわ」

 だが、全てのミサイルをかわしきったのは彼を含めて数機であり、他の機体は数発のミサイルを受けていた。
 だが重装甲が自慢なだけ有り、一発で撃墜されたのは僅かに4機、その他12機の内3機は被弾箇所が悪く操縦不能に陥ってはいる物の重力制御システムにより墜落は免れている。
 残り8機は被弾した物のさしたる損傷もなく平然と飛行を続けていた。

「今度はこちらの番だ、喰らえ」

 ロベルト大尉がミサイルの発射スイッチを押すと機体上部の左右に設置されたミサイルポッドの装甲シャッターが開き小型ミサイルが無数に撃ち出された。
 その瞬間、スカル小隊の各機はパッと蜘蛛の子を散らす様に散開した。
 情報ではイシュキックの主砲は高出力の拡散ビームであり、集結したままでは大量に撃墜される可能性が高かったからだ。
 接近するミサイルは小型だけあってプロペラントが小さいらしく、バルキリーがガウォーク形態になって加減速を繰り返しチャフや高熱源体をバラ撒いている内に追尾しきれずに落下していった。
 だが、バルキリーが逃避行動を取っている内にイシュキックは有利なポジションをキープしていた。
 バルキリーが通常の航空機である以上上下動の内、上への移動が苦手である事は変わらない。隙を突いて上空を占位したイシュキックは下に向かって拡散ビームを放った。
 だが、ブリーフィングで予想敵機がイシュキックである事を確認していた彼らは事前にレクチャーされていた通り一気に高度を下げてその射程距離から逃れた。勿論、パイロットへの荷重は想像を絶する物である。
 だがそれを見てロベルト大尉は舌なめずりした。

「バカめ、通常動力のガウォークタイプの動きなどこの重力制御システム搭載ガウォークタイプ戦闘機のイシュキックには通じぬわ」

 そう叫ぶと白い機体に黒と白のラインが描かれた隊長機と思える機体に急接近していった。
 その機体、フォッカー機は海面近くで減速する為ガウォーク形態に移行しつつあり、ブロンコUの運動性に慣れ親しんだロベルト大尉はその後のバルキリーの動きを見切った。

「バァカめ。その位置からでは武器の使用は出来まい。俺の勝ちだ」

 彼は予想位置へ主砲の照準を合わせつつ引き金を引こうとした、だがその瞬間バルキリーはバトロイド形態へ可変し、55ミリガンポッドを頭上へ、ロベルト機へ向け発射した。

「ば、バカな。人型に変形だと?! ふざけるな!」

 狙い過たず、フォッカー機の撃ち出した弾丸はロベルト機の可変ベクトルエンジンを撃ち抜いた。
 信じられないと言った風情のロベルト大尉だが、実は彼も3段階可変戦闘機の事を知っていた。それは火星駐留軍地球派遣軍が使用していたレギオスである。
 実はバルキリーの開発参考資料としてレギオスの変形パターンも参考にされていたので動力源や出力を別にすれば直系の後継機種と言っても良い間柄なのだ。
 しかし、重力制御システムを過信していたチラム軍はそれらのシステムを軽視していた為に対空戦闘パターンにそれらの機種に対する物をまだ組み上げていなかったのだ。
 後に、チラム軍は火星駐留軍地球派遣軍が持ち込んだ機種の再評価を行い、制空戦闘任務に堪えうる機種の開発にゴーサインを出す事になる。
 その際選ばれたのがレギオスのブースターとしても使える大出力機のトレッドであった。
 トレッドの変形パターンを参考に開発される事になるのがバルキリーと同じく三段変形可能な可変戦闘機ナイキックである。

 さて、戦闘の方だがエンジンに損傷を受けたロベルト機は必死で海上を遁走していった。
 フォッカーもそれを追おうとしたのだが、部下達の旗色が悪い為直ぐに上空へ舞い戻った。
 実は反乱グループの一員という位置付けのロベルトであったが、現役の戦闘機パイロットとして日本が整備しつつある新機種の実力を測る為の実戦データーを得る為CIAの手引きでこの武装グループに潜り込んでいたのである。
 彼の機体は少し離れた海域で待ち受けていた北部〜中部太平洋を行動範囲とする秘密結社マックスの潜水艦に収容され密かにチラムへと帰還していた。
 ゾーンダイクの武闘派グループであるベルグ一党が鎮圧された後蔓延り始めたのが、今述べた秘密結社マックスであり、緒戦でゾーンダイクに敗れ力を溜めていたネオアトランティスである。
 現在それら海の無法者達と敵対して治安を維持しているのが日本海上防衛軍と中華共同体海軍、青、そしてゾイド連邦の海中ゾイドを中心とした防衛隊である。
 お陰で交易の主流である海上輸送は未だに護衛船団方式を続けており、海上防衛軍の負担は減る余地がなかった。
 それはともかく、迎撃機の網をくぐり抜けてヴァージニアに迫った艦攻隊は船体の周りを縦横に駆け回り攪乱を続けていた。
 ヴァージニアがヤマトに向けて主砲を斉射する様子を見せるとその開口部を狙い対艦ミサイルを発射、その他、装甲の弱そうな部分目掛けて攻撃を続けた。
 ヤマトはその隙を突き光子力バリアーを解除、推力増加ブースター付きの弾頭は艦砲の常識を越え高空にいる空中戦艦ヴァージニアに向けて撃ち出された。
 基本的に大口径砲を使用出来ない空中戦艦はレーザー対空砲で以て迎撃を試みた。
 初弾は敢えなく迎撃された、しかし、既にお馴染みになったレーザー攪乱粒子が散布され次弾にはレーザー対空砲は届かなかった。
 抜群の貫通力を持った巨砲の砲弾は海上の戦艦に較べると薄い装甲しか持たないヴァージニアの装甲を容易く貫通し、機関部を一瞬にして破壊せしめた。
 爆沈である。
 母艦を失ったイシュキック達は投げ遣りになりハワイ県を目指したが、全機バルキリー隊と防空団に配備されたばかりの対空戦闘デストロイド・ディフェンダーの濃密な弾幕の前に阻止され、ここにハワイ沖軍事事件は集結した。

 この様にして各軍の防衛力は影響し合い、発展を続けていった。
 未だ各国の技術水準が異なり戦闘前提が異なる状況に於いてはその発展方向も異なる為に単純に比較は出来ないが、日本連合も低水準の割りに頑張っていると言えるだろう。





日本連合 連合議会


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