碇源道の徒然なるままにDIARY


スーパーSF大戦  インターミッション



 私の名は碇源道。第三新東京市に住む一介の大学教授にしてナイスガイである。
 皆は私の事を姿形で判断し何を考えているか分からない不気味な奴という評価を下す事が多い様なのだが・・・フッ、肝心の人間に理解してもらえれば良いのだ。問題ない。
 普段は大学での研究に精を出す私だが別に仕事が趣味ではない。
 確かに趣味を仕事にしている部分もあるのだが、やり甲斐のある仕事という物は多分にそう言う物だろう。少なくとも私は自分の仕事に満足している。
 それはさておき、私達夫婦はひょんな事から連合政府でも重要な秘密に触れる事となってしまった。
 それをここへ書き記す事は出来ない。
 この日記はあくまでも私個人の物である。例え妻と言えども読む事はお断りだ。
 ・・・決して唯に知られたらお仕置きを受けるようなことを書いたのではないと言う事は念を押してここに記す。・・・嘘ではない、本当だ。
 さて、私の第1の趣味として皆に良く知られているのは私のひとり息子の成長の記録を細大漏らさずビデオカメラに記録する事である、が、ここでは関係ないので敢えて省かせて貰う。とは言え最新鋭の多機能なカメラの広告が入っていたらその限りではないが。
 そして第2の趣味として、私は新聞を読む事が好きだ、社会に目を向ける事は成人男性として当然の事だと思うからだ。媒体は紙に限らないが基本的にはニュースペーパーだな。しかし、即応性という点ではネット配信の物も捨てた物ではない。
 ひとつ云って置くと、目が覚めて唯の用意してくれた朝食を頂きながら読む新聞は最高だ。うらやましかろう。ふっふっふ。
 ・・・唯の小言が厄介と言えば厄介なのだが。
 とは言えど、ただ単に新聞を読んで世界情勢に目を通す事も有意義だがそれだけでは発展性という物がない。
 そこで私は気に入った記事のスクラップを行っている。
 特に時空融合後のこの世界の出来事は数も多く質も多様だ。
 これから記す事になる記事は、毎日読み続ける新聞記事の中から気になった物を集めたスクラップである。
 それ故に世間では重大事だと騒いでいても私の選択には入っていない事もあるので、その年に何が起こったのかを正確に知りたい時には図書館にでも行って調べる様に。

 基本的にスクラップした新聞は第3新東京新聞という我が家で取っている一地方紙である事を記しておく。
 時空融合直後は編集部もパニックを起こしたのか、かなり錯綜した記事が多かったのだが、現在ではすっかり落ち着いてまともな記事を書いているごく一般的な新聞である事は確かである。
 前書きはこれ位にして記録を始めよう。

 これ以前のスクラップについては発行が安定していなかった為もあり、別冊にて編集中である。

<新世紀元年2nd half>
・6月25日付/四国圏自治政府成立。
 四国全域を自治政府の行政区域として管轄することとなる。
 これまでの各県は再編成した上で「管区」制へ移行し、香川県ならば「四国圏香川管区」と呼称されることとなる。 首長は「橋本大二郎」四国圏自治政府行政委員会主席(前高知県知事)。行政府所在地は高松市におかれることとなる
<新四国日報総合面>
 コメント
「時空融合後、自治体の活動は中央依存から地方自治政権の様相を強めてきていたが、ここまで大胆に行うとは正直驚いた。
 まあ四国の各県がそのまま自治区になっても政治力経済力での発言力が向上するとも思えん。
 細かく分裂する方向性が多い中逆に統合を進めるというのだから、この橋本首長の手腕とリーダーシップは本物なのだろう」



・7月5日付/ニューヤイヅCITY(旧焼津市)大規模武装テロにて壊滅状態に。
<一面>
 コメント
「後日犯人グループの名称が明らかになった。
 Dr.ヘル率いる機械獣軍団だそうだ。
 まさかこの時テレビで見ていた時には怪獣と戦った巨大な人型兵器のパイロットが彼らだとは夢にも思わなかったのだが・・・。
 縁とは奇妙な物である」



・7月6日付/バンデイ社の人気キャラクターシリーズ・バケットモンスター、アメリカ・バンザイ社のパケットモンスターの日本展開による相乗効果により人気急上昇。業務提携間近か?
<経済面>
 コメント
「この記事を読んだ時、日本から海外に波及した文化が根付いている事に誇りに思う。
 やはりジャパニメーションの質の高さは世界に通用する物だったのだ」
新世紀2年6月10日追記
「まさかこの事が後に大問題に発展するとは思いも寄らなかった。つくづく世界は複雑怪奇である」



・7月6日付/怪獣騒ぎによる世情不安の為、株式市場の一般向け開放を延期。
<総合面>
 コメント
「タイミングという物は難しい物だ。
 往々にして最悪のタイミングで事は起こるからな。
 確か・・・マーフィーの法則だったかな?」



・7月7日付/怪魚? 日本近海にて古代魚(総鰭類)多数釣れる。
<スポーツ・フィッシング面>
 コメント
 「記事によるとこの古代魚はシーラカンスに近い種類の魚らしい。
 味は若干パサついているがカエルに近い味だそうだ。
 さすがは両生類に近い種類の事だけはある」



・7月7日付/Gアイランド怪獣に襲撃さる。地上に甚大な被害なれど住民避難迅速にて死傷者僅かに。ニューヤイヅCITYの教訓活きる。Gアイランド厳戒態勢続く。
<総合面>
 コメント
「続けざまにこれとは。この世界はそれ程に危険で満ちているというのか・・・。
 ひとりの父親として次世代の子供達に出来事はないかと考えてしまう。
 まぁ、一般市民の自分としては自分の仕事に打ち込む事こそが社会の貢献となるのだろうが」



・7月10日付/集団幻覚? 湘南海岸にて多数の観光客が日本アザラシの群の中に人魚の姿を目撃。 政府調査機関はゾーンダイクとの関連を調査。
<社会面>
 コメント
 「人魚か・・・水中活動形態としては頭部を支える頸部の強度が足りない様な気がするのだが。
 海中で直立移動をするタツノオトシゴの様な活動をしているのだろうか?
 少なくともマグロの様なスプリンターでない事は確かだが。
 その生態に関する物には大変興味深い物を感じる」



・7月13日付/Gアイランド壊滅状態、続けざまに首都圏へ襲撃続く。防衛力の限界か?
<社説・総合面>
 コメント
「自衛隊の根拠は旧来の日本国憲法の埒外にある。だが、日本の歴史上そう言う物の存在は自衛隊が初めてという訳ではないか・・・平安時代の検非違使も法律で規定されていない物だったからな。
 しかし、国を滅ぼす事の出来る兵力を有する組織の法的根拠が国家の屋台骨を組み上げる憲法に記載されていないと言うのは明らかにおかしい。私個人の意見としては集団的自衛権を有し諸外国への侵略行為を禁止する防衛軍とすることの方が現実的だと思うのだが。
 加治首相の指導力で正しく力を行使する事の出来る、国民の納得の行く組織に、各省庁間の力具合によって曖昧な玉虫色の決定にならない事を願うしかないか。
 因みにこの日から数日間唯は親友の響子と共に数日家を空けていた。
 ああ、開放的・・・いやいや、唯のいない我が家のなんと色あせて見えることか。誠を以って遺憾である」



・7月13日付/環境省自然保護庁特異生物部設立される。
<総合面>
 コメント
「ふむ、怪獣か。恐らくは人類の天敵としての存在だな。
 しかし、あの巨体を維持する生体組織か・・・是非とも分子生物学者としては研究したい物だが」



・7月30日付/詐欺師グループ「ドロンボー」逮捕。
<東都日報・社会面・山岡記者>
 コメント
「他人を騙し財産をむしり取るというのは希に自然界でも見られる行動だが、論理観という物を持つ人間がこれを行うというのは少し違うのではないだろうか。・・・しかし、まんまなネーミングだな」



・8月3日付/株式市場の一般向け運用始まる。
<経済面>
 コメント
「ふむ、以前の様に金持ちだけしか運用出来ないのでは仕方がない所だが。
 小口投資家向けの小口株式取引はどうなるのだろうかな」



・8月4日付/怪獣Gメン、伊豆諸島南端の大戸島近海の調査を開始か?
<社会面>
 コメント
「八丈島の先にある青ヶ島、その先に存在する大戸島か。特異生物学なら怪獣の生体サンプルも取り揃えていそうだな。接触してみるか?」



・8月10日付/プロ野球暫定再開決定、だがチーム編成難航す。初年度は総当たり戦か? 来年度以降の2リーグ制の再検討、及びマイナーリーグ制が検討されている模様。
<スポーツ面>
 コメント
「この世界に出現したプロ野球チームで最も選手層が厚かったのは矢張り巨人軍であった。
 実力人気共にスーパーキャラクターが揃っているらしい。中には魔球と呼ばれる変化球を扱う投手まで居るそうだ。
 この前のニュースではそれら投手に制限を掛けるかどうか審議されていると言う事であったが・・・分裂魔球や消える魔球、その他ではドリームボールか。野球の活性化のためには可として置いた方が良さそうな気がするのだが」



・8月13日付/環境省自然保護庁特異生物部(怪獣Gメン)、大戸島一部近海の立ち入りを禁止。大怪獣ゴジラ存在の可能性が?
<社会面>
 コメント
「資料で確認した所、ゴジラという怪獣はその存在自体が自然界には存在し得ない程の能力を持っているらしい。出来れば一生会いたく無い相手である」



・8月14日付/自球場引っ提げアストロ野球団参戦表明。
<スポーツ面>
 コメント
「ノーコメント」



・8月20日付/アメリカ・バンザイ社保有株、米国議会にてアメリカ支社所有と認定。
<国際面>
 コメント
「この事自体は特に問題はなかったんだが」



・8月31日付/四国経済活況を呈す。海援隊坂本龍馬社長に訊く西日本経済の今後。
<経済面特集/経済人の顔>
 コメント
「例の四国圏の大立者だ。日本の経済界を支配する四財閥に真っ向から立ち向かっているのが凄い。大概はどの配下に付くかが問題になるのに独立独歩、果敢に攻める姿勢には感服する」



・9月1日付/究極の格闘技大会アルティメット・ヴァリートゥード大盛況の内に幕を降ろす、熱望される第2回大会。優勝は開催者神月財閥令嬢神月かりん。準優勝は来栖川財閥令嬢来栖川綾香。
<スポーツ面/今週のトピックス>
 コメント
「偶々テレビ中継で見ていたのだが・・・ありゃぁ内の大学の十傑衆が束になっても勝てるかどうか。
 完全に死合いをしているな、このふたりの姫将軍は」



・9月1日付/環境省特命政策対策局にプロジェクトチーム発足
 未知のウィルスや各世界特有の症例に対応する為にプロジェクトチームが編成される事となった。リーダーにはイネス・フレサンジュ博士が内定。その他にも遺伝学のフィリス・矢沢女史、伝染病の研究で名高い木梨幸水氏、臓器移植の権威である橘伸吾氏、サイバネテックスのメモリー・ジーン博士などが名を連ねている。
<週刊タカ10月号特集>
 コメント
「ふむふむ、なるほど。確かにこの世界他の事に目を奪われがちだが実は自分の足元の土塊の中に人類を滅ぼす元凶が潜んでいる可能性すら有るのだ。
 この用心は実に適格であると言える。
 しかし・・・写真で見るとなかなか美人が多いな・・・学会で接触する機会があるかも知れぬ。ふふふふ」



・9月5日付/南極観測隊、あの初代南極観測船「そうや」にて南極へ向けて今年10月中旬に出発予定。
<社会面>
 コメント
「宗谷か、船の科学館に係留されているのを見学したことが有ったが。
 NHKで見たドキュメント番組<プロジェクトX>は感動した憶えが有る。彼らと同年代に生きられると言うのは有る意味幸運と言っても良いのかもしれないな。
 話は変わるが船の博物館といえば二式大艇が展示されていたが、呉に行けば本物の稼動機が見れると<丸>や<J−FLYING>にあったな。機会が有れば行って見て来たいものだ」



・10月5日付/究極のホビー・プラレスとは何か。
<ホビー特集>
 コメント
「ほうっ! このサイズで遠隔操作による半自律行動が可能とは。
 半導体の小型化がそれほど進んでいない世界の割にかなり高度な技術力を持っていると言えるだろう。
 正に努力の勝利」



・10月16日付/各地の一級河川に回復の兆し
 全国の一級河川で生態系の回復の兆しが見え始めています。源流が自然の状態に置換わった影響により、都市部でも多くの川魚が見られるようになっています。これら水産資源の保護の為、漁業権の設定や、家庭排水への規制などを関係省庁に働き掛けていく方針。
<日本漁業月報より>
 コメント
「私が幼かった頃は<複合汚染>と<公害>が身近な自然に対する形容詞だった。
 川は灰色に濁り洗剤の泡で水面が見えないほどだった。
 公害規制によって最近はマシになって来てはいたのだが、偶然にしろこの様な自然を手に入れたのだ、絶対に以前の二の舞を繰り返してはならない」



・12月30日付/お台場歌謡祭にてテロ事件発生。歌手観客多数が人質に。
 チャイドル瀬川おんぷちゃん危うく難を逃れる。
<号外>
 コメント
「またもや過剰な武力を持つテロ集団が現れた。
 たとえ彼らに言い分が有ろうとも、私は絶対に同情はしないし、耳を貸すつもりもない。
 暴力で他人を縛るなど有ってはならない。
 ・・・それにしてもおんぷちゃんが無事でよかったよかった」



<新世紀2年1st half>
・1月6日付/魔法か手品か? 論戦、魔法は実在するのか。
<19頁>
 コメント
「旧来からの一般的な科学者としてはこの様なことに興味を持つことはタブー視されている事は百も承知だが。
 現実に科学の範疇から外れているような現象が多発しているような感じがしてならない。認識を改める時期に来ていると言うことだろうか」



・1月7日付/彼の「はぁと」に急接近っ! クールでキュートなチョコレート「南極の風景」限定予約販売開始。ヴァレンタインデーは乙女の心の決意です、ご予約はお早めに。東和食品。
<見開き広告>
 コメント
「期待しているよ、唯」



・1月10日付/新世紀市場ランク一覧
 女性下着部門
 第1位 Edoブランド(ピクシー社)
 アンケート結果
「なんたって気持ち良いんです(24歳OL)」
「子供を抱いていた頃を思い出しました(47歳主婦)
「ママに抱きしめられているみたい(7歳)」
「死んだあの人に抱かれた気分です(45歳主婦)」
「違和感が無いって言うか、気分良く体を動かせるんです(17歳高校生)」
<新日本経済新聞>
 コメント
「〜のしようがないではないか、私は変態ではないのだ。
 ただ、あのロゴが入った包装紙は最近見た様な気がしないでもないが。唯の物だったよな?
 ・・・・・・真司の部屋……の訳は無い・・・無いよな。……あ、飛鳥ちゃんの…か…?」



・1月15日付/マジカル・エミ謎の失踪?
<芸能面>
 コメント
「彼女が魔女だとすればこの行動には納得が行く。
 賢明な判断と云えるだろう。
 かつてのヨーロッパ程ではないが未だに彼女のような存在を受け入れられる状態かといわれれば否であると言えるからだ。」



・2月23日付/アメリカ・バンザイ社、アメリカ国内でのバンデイ社製バケモンカード販売の自主的停止を勧告。
<経済面>
 コメント
「いよいよ悪い意味でのアメリカ的根性が姿を現し始めたという所だろうか。
 大きな問題にならなければよいのだが」
 追記「予想は的中してしまった」



・2月27日付/旧欧州域現エマーン商業帝国パリ遺跡に一九二〇年時の巴里出現。連合政府は現地大使館へ調査を指示。
<総合面>
 コメント
「留学していた時に寄ったことが有る土地がなくなりかなり残念に思っていたのだが、思わぬ朗報だ」



・3月2日付/川崎市に怪ロボット出現。被害多数。
<総合面>
 コメント
「この世界は呪われているのか?
 いや、そう言う存在が集められていると見るべきなのだろうか。
 結論を出すには余りにも手掛かりが少ない」



・3月10日付/日本連合政府及び中華共同体政府はエマーンに出現した巴里市民の引き取りを決定。日本連合全自治区に受け入れを打診。難民受け入れ法案の準備急ピッチで進む。
<社会面>
 コメント
「私もエマーン人と呼ばれる人間に会ったことが有るが、確かに彼らの間で生活をするのは困難だろうと思わされた物だ。
 文化的な摩擦、経済的な負担、そして文明の格差、どれを取っても双方共に互いを敬遠するしかないからこの決定は妥当な物であろう。
 彼ら個人個人は非常に安定した精神の持ち主なのだが・・・」



・3月25日付/富士総火演襲撃される。ニューヤイヅCITY実行犯の再犯の可能性高し。
<総合面>
 コメント
「武装テロリストが又もや。奴らには道理は通用しない、何故なら奴等独自の論理で固められ、現実を見ていないからだ。
 ならばこちらも容赦なく銃を手に取るしかないのだろう。悲しい事だが」



・3月27日付/巴里難民市街地毎移送が決まる。エマーン脅威の科学力により岩盤毎市街の移送が可能に。日本列島及び中華大陸に本物の巴里市が。
<総合面>
 コメント
「予想だにしていなかったが、エマーンとはそれほどまでに科学力が進んでいると言うのか。
 ここまで隔絶した科学力があるとSF小説から沸いて出たとしか思えないが。
 これが現実なのだ。我々科学者が現実を直視せずにどうして先に進めようか。逆に良いチャンスと思うしかないだろう。
 日本人の科学者の一員として嘗められないように努力を続けるしかないな」



・3月29日付/東京都府中市にて史上最大の食中毒事故発生。問われる責任。
<社会面>
 コメント
「昔の、お嬢様そのものだった頃の唯の料理とどっちが・・・いやいや。思い出すのは止めようと心に決めていたではないか。この話題は封印だな」



・4月2日付/松村技研、人造筋肉を利用したセンチボット級アクチュエータユニットの開発に成功。微細軸受けの製作に定評のある松村技研が阪大バイオマテリアル研究室と協力し、人造筋肉を利用した極小アクチュエータを開発、同品の工業的生産に目処が付いたことを発表した。
 直接的に運動を行うアクチュエータは、直径5mm、全長15mmの円柱状、同品8ユニット毎に制御装置が必要との事。
 これらの技術は、今後の技術開発を促進するため公開されるもよう
 詳しくは、大阪中小企業共同組合のWebページ内に掲載、そちらを参照下さい
 先日タイロン社が発表したバクテリア援用海水電池と組み合わすことによって海洋型センチボットの開発が一歩前進・・・後略・・・
<日刊大工新聞>
 コメント
「むむむ。有る意味敗北感を抱く記事だ。
 私の分野は本来ならばこの様な技術に注ぎ込む必要があると思っているのだが。
 それと、以前の記事・10月5日付の記事に出ていたプラレスに応用が効きそうな気がする」



・4月5日付/謎のテロ集団による防衛省防衛技術研究所・福岡原発同時多発テロ発生。最悪の事態免れる。先の富士総火演襲撃事件との関係は?
<総合面>
 コメント
「類似点は武装テロと言う点だけしかないではないか。
 巨大戦闘ロボットを使用していない点からすると年末の事件の首謀者である「ショッカー」に近い気がするが」



・4月7日付/全国を衝撃が走る。新世紀2年最大級の時空融合遺失物、巨大ファイバー網大方の予想通り施設は連合政府に売却されるも驚愕の売価500億円(税込み)。
 イーディス社「企業家の誇り」、「情報革命」を日本連合に。
<経済面>
 コメント
「革命は革命でも武力革命ではなく情報革命は大歓迎だ。唯一の不安点は未成年者に与える影響だが」



・4月15日付/海上自衛隊護衛艦隊、大西洋調査艦隊・中米派遣艦隊。実戦参加。
 かねてよりムーの攻撃に曝されていたアメリカ軍が絶滅の危機に瀕していた事を受け、アメリカ軍の要請の元、反攻作戦の援護攻撃をムーに対して敢行した。
 時機を得た攻撃によりムーの進行は大幅に押し返され、アメリカ軍もようやく一息吐く事が出来た。アメリカに避難しているメキシコ政府大統領及び米国大統領ホイットモア氏より日本連合政府に対する感謝の表明がホワイトハウスの記者会見にて発表された。
 これに対し日本連合政府加治首相は「人類全体に対する危機は看過し得ない」と短く表明するに留まった。
 この武力行使に対し国内武力保持反対派である左翼系政党による猛烈な反対運動が全国でキャンペーンされる模様。
 「平和憲法に違反する例を見ない愚行」「今回の集団的自衛権の行使は世界で最も優れた平和憲法に対する冒涜である」「加治首相は日本の安全を脅かす売国奴である」と鼻息も荒い。
<一面>
 コメント
「基本的に私は戦争を嫌悪している。
 自らの権益を得る為に他国の政治体制に武力で強制する事が日本が過去に行ってしまった侵略戦争であり、その反省を我々は長年続けて来た。
 確かにアメリカの謀略にまんまと乗せられてしまった当時の陸軍高官や政治家の判断が甘かったと言うざるを得ないのだが。
 今回の相手であるムーという存在は人間の存在を抹殺する事が目的の屠殺機械だと言う事だ、自衛隊の設立目的が国土の防衛と言う点で言えば今回の出動は致し方ないと言う物だろう。
 幾ら日本の安全だけを守ればよいと戦力を温存してその間に人類全体が絶滅の危機に瀕してしまったら・・・本末転倒である」



・4月25日付/大鳴門橋・本四連絡橋「明石〜鳴門ルート」再開。記念式典には錚々たるメンバーが出席。
<総合面>
 コメント
「これでまた四国圏の発展に繋がる訳か。うかうかしていると日本の中心は関西だと言いだしかねないな。
 と言うより既に全国に拡散を始めているわけだが、今正に四国圏は成長期の真っ只中、活気溢れる熱気が日本全土へ良い影響を与える筈だ」



・4月26日付/4月24日午前9時50分頃調布市都立陣代高校爆破事件発生。生徒会役員の機転により重傷者皆無。調布署署長職務怠慢の責を受け懲戒免職処分。
<総合面>
 コメント
「これからの社会を支える若者にターゲットを向けるとは、犯人の邪悪さには開いた口が塞がらない。
 しかし、新世紀になっても警察には禄な人材がいないと言うのか?
 あくまでこれは一部の事であり、他の警察関係者はそうではないと思えるのだが。
 一部の為に全体の印象が悪くなるのは仕方がないのだろう」



・5月1日付/新国会法案成立。加治首相も速やかな公示に動く
 昨年4月30日深夜、川崎のゾンダー事件が招いた混乱のうちに成立が可決し始まった連合政府であるが、実は国民の過半数の支持を受けていたわけでない。代表を送る事が出来た一部団体や地方が集まっただけに過ぎず、国民大多数の支持を持って成立したわけでない。
 とは、少数野党に没落した左翼系政党の主張であるが、加治首相も連合政府が成立してから1年間、この問題をほって置いた訳ではない。あまりにも事件が多く、その対処のために国会の再開にまで手が廻らなかったのである。
 しかし連合政府創立1周年を記念するかのように、このたび連合議会で通称新国会法案、正式名称『日本連合議会組織および議事進行規定法』案が与党『自由と責任党』と第一野党『新民自党』の賛成多数で可決された。この法案が成立するまで連合議会内で与野党を問わず約一年に及ぶ話し合いが持たれていた為に、可決自体は予想された事であった。成立を受けて加治首相も6月中、遅くても7月中の公示を政治日程に含むことを了承した。
 この決定により、連合議会は遅くても新世紀2年8月から以下のようになる。
立法府正式名称:日本連合国 連合議会
 右院:連合院(旧参議院、旧貴族員相当)
  選挙区:地域自治政府行政区毎
  議員数/1選挙区:2名
  任期:6年。ただし3年ごとに1名を選出。
     解散無し。首相不信任決議案無し。
 左院:市民院(旧衆議院相当)
  選挙区:人口比1:1.5以内に収まるように区分け
  議員数/1選挙区:1名
  任期:4年。ただし解散有り。首相不信任決議案有り。
 両院とも審議は委員会制、テレビでの公開放送は従来のままである。
 連合院はその半数の議員を昨年からの連合議員とする為、今回の連合院選挙は残り半数を選ぶものとする。したがって現在の連合議員の任期はあと3年になる。
<政府公報>
 コメント
「うむ。確かに加治首相の手腕は確かだし、その人格も尊敬されるに相応しい物だ。
 だがしかし、残念ながら彼は私達が選んだ私達国民の代表ではないのだ。
 是非とも次の選挙で堂々と政権を担うだけの人物である事を証明して貰いたいと切に思う」



・5月1日発行/  時空融合よりこちら、世界中が文字通り混乱の坩堝になった事は忘れられない所だがこの混乱が日本のみでない事も良く知られている。
 日本連合政府がそれらを調べる為に世界各地に調査艦隊を派遣しているがその第3次報告が最近発表されたので今回は日本経済に深く関わると見られている太平洋諸国について報告する事にする。
 尚、当誌独自の補填情報として漂流漁船や怪獣Gメンの調査隊からの報告も含まれている事を明記しておく。
・ソロモン群島より南方へ100キロの海域にあるファロ島。
 当初無人島かと思われていたが、怪獣Gメンのの調査隊が島に立ち入った際に住民と接触。西洋文明との接触が行われていない独自の文化を持つ。現在、特異生物部侵入制限勧告領域に指定。
・中央太平洋域にある孤島インファント島。
 旧Gフォース資料にあった怪獣モスラの調査へ向かった怪獣Gメンであったが、資料と異なり強力な放射線反応があり立ち入りを断念。再度耐放射線装備を整えて上陸を敢行した所、致死量を超える放射線量が観測されているにも関わらず少数の住民の存在を確認。
 赤い実と呼ばれる果実の果汁を摂取する事により放射線障害に耐えているらしい。住民の話によると放射線の影響を調べる為にこの島の領有権を主張していた某仏国の核実験が行われ、放射線下の人体への影響を調べていたらしい。
 現在は放射線地域の為に島より100キロ以内に近寄る事が禁止されている。肝心のモスラについてはA級機密として報告されていない。
・モルモル王国。
 中部太平洋上に浮かぶ観光によって経済を支えていた王国である。
 特に首都トーダイ近郊にあるトーダイ遺跡にまつわる伝説により近郊各国より新婚旅行のメッカとして知られていたらしい。
 民族的にはメラニアン系なのだがイスラーム形式の建物が存在している事からも推測される様に西洋文明の魔の手が伸びる以前から行われていた優れた交易者であったイスラム教を信仰する商人達との交易と共にアラブ、インド系民族との雑婚が進んでいた様である。(特に王族にはインド系の特徴が多く見られる)
 現在宗教的にはイスラム教の影響力はキリスト教宣教師達により後退し紀元前由来と伝えられる亀を主神としたパララケルス系の民族宗教と習合し土俗化したものが主流となっている。
・アフリカ大陸東岸沖に位置するマダガスカル島。
 恐竜が生存していた中生代にアフリカ大陸から分離し、その後進んだ大陸移動の影響を受けずにほぼ同一の緯度経度に居続けた特異な歴史を持つこの巨大な島には中生代の生物相がそのまま保持されていた。
 巨大なシダ類が群生し、湿度の高い森に巨大なカルノサウルスが徘徊する非常に危険な島である。
 現在恐竜類の存在が確認されているのは大西洋側コスタリカ沖のとある島とこのマダガスカル島、そしてダイナアイランドと呼ばれる学園島のみである。
 因みに沖縄沖に出現した巨大海蜥蜴リオプレウロドンを誘導していったのはその学園で恐竜使いの学生をしていた伊藤アンジェとえみり姉妹である。
 非常に危険な為立ち入り制限が掛けられている。  以下、詳細待ち。
<新世紀2年6月号 月刊誌「超絶キック」より >
 コメント
「私が特に興味があるのは赤い実と呼ばれる果物だ。
 如何なる分子構造を持っていれば被爆し続ける致死レベルの放射線の影響を免れるのだろうか。
 なにがしかの分子が遺伝子の保護と補修を高速で繰り返しているとでも?
 下手をすると不老不死の薬のヒントにでもなりそうな・・・」



・5月4日付/ 『巴里歓迎・お台場フェスティバル』華やかに開催される。巴里市民代表イザベラ・ライラック伯爵夫人スピーチ。
<第1面>
 コメント
「いよいよ待ちに待ったパリ市が日本へやってきた。
 航路の関係で中華共同体、九州、四国と続き、最後に東京にやって来た訳だ。
 暇が有れば懐かしのパリ市街をみていってみたい物だが・・・」



・5月4日付/お台場にて少年10名惨殺事件発生。銃器の使用が確認される。湾岸署、他の所轄よりの増援を要請し厳戒態勢に。
<社会面>
 コメント
「華やかな舞台の裏には・・・と言ったところだろうか。
 しかし、これは余りにも残虐すぎる。一体何が起こっていると言うのだろうか」



・6月9日付/アフリカ大陸を覆っていた雲海晴れる。当地域の社会状態の調査が待たれる。
<総合面>
 コメント
「さて、これまでも驚かせられ続けて来たこの世界だが、今まで伏せられてきたこのカード、どのような手札を見せつけてくれるのだろうか。
 怖い反面、わくわくするような気もする」



・6月某日(詳細な日付は忘れた)/陸上自衛隊、新戦闘服コンペ速報
 過去一年、実戦の洗礼を受けた陸上自衛隊は普通科隊員の戦闘能力が戦場の過激さに追随できない事を考慮し、来年度から配備する新戦闘服のコンペを国内のメーカー・政府研究機関を集めて行った。
 コンペ内容はA級機密情報に指定されたので当分公開できないが、性能重視で決められた各評価項目で2位以下をダントツで突き放した1位に関する感想を、当人も交えてインタビューできた。
 防衛省技術研究所:「例の汚名を返上する為にも頑張ったんですが、あの見た目に騙されました」
 セブロ・ジャパン社:「あまり自慢できませんが、治安が悪化している環境で揉まれた装備が評価されたんだと思います。でもそれ以上に、戦闘意欲を効果的に喪失させるあのデザインに負けました」
 第1位となったS・S氏(戦闘服装備中のインタビュー):「ふもっふ、ふもふもふもっふ」
<ケーブルTVネットワーク・スノウドール/自衛隊専門チャンネルより>
 コメント
「性能が良ければそれを採用するしかないだろう。
 残念ながらその映像資料は機密の為モザイクが掛けられハッキリとは映っていなかったが、戦意を喪失させるデザインとは・・・そんなに相手に恐怖感を抱かせる物なのだろうか。
 まぁ、幾ら何でも遊園地のキャラクターを模した着ぐるみの様なファンシーな可愛い愛嬌有り過ぎな代物ではあるまいし。
 破片が飛び散る戦場に無防備な制服のまま自衛隊員達を曝して置く必要は認められないと私は思う」
追記「人型を模していない形状の場合、ムーのロボットに組み込まれていると思われる攻撃衝動プログラムの抑制が考えられるが・・・逆にクールに対応されてしまい被害が増える可能性もあるか。
メリットデメリットの観点からすれば、どのみち強化装甲服は必要だな」



・6月10日付/アメリカ・バンザイ社、バンデイ社を著作権法違反にて提訴。元々時空融合前日本国に本社のあったバンザイ社のアメリカ販売網を統括するアメリカ・バンザイ社だが、時空融合後の世界各地域に於けるパケモンカードの業績悪化の責任がバンデイ社のバケモンカードにあると断定。アメリカ国著作権法を根拠に日本国で作られているバケモンカードはパケモンカードの著作権を侵害していると提訴した物。
<経済面>
 コメント
「この項目は以下に特設する」



 現在の所、私の目に止まった記事としてはここに挙げたとおりだが特に最後の6/10付けの記事は大問題に発展しそうな気配があるので私のコメントを中心に少し詳細に挙げておこう。
 尚、ネットで得られたコメントの書き込みも織り交ぜた複数の情報源であるので心に留め置いて貰いたい。
 この出来事には下手をすると私の所属する第3新東京大学の技術もアメリカの標的になる可能性すら有るのだ。関心を寄せずにいられようか。





 アメリカからの経済戦
 2050年代のアメリカには子供文化に於いて、ある要素が伝統的なアメリカ社会に浸透しており、もはやその精神的、経済的な影響は無視し得ないものとなっていた。
 それは日本発の子供向けアニメ・特撮番組であり、それに付随したキャラクター商品達である。
 彼らアングロ−サクソン、ゲルマン、フラマンを初めとする西欧社会に於いては子供というものは、未だに人間になっていない半獣的な存在であり、それらは教育・調教する必要がある存在に過ぎず自らの社会(人間の、つまり男社会)に属する存在と見なしていなかった。
 これらは20世紀も半場に「子供の再発見」によってその人権と待遇が見直されてきたのだが、歴史的にそれらを無視してきた彼らの社会では子供に対する取り扱いは幼稚なレベルに止まり、親権者たちもそれを望んでいた。
 その例としてアメリカでは子供を一人にする事は犯罪である事を知らないといけない。良くベビーシッターによる児童虐待が報道されるが、非常に需要の高いベビーシッターに対して供給は余りにも少なく性格の分からない相手に頼むしかない事実にその原因が有る。
 そんな状況の社会に子供の遊びに真剣に取り組む文化の産物が投入されたのである。
 アメリカでは西暦1970年代にも「マッハGoGoGo」や「スターブレイザー(宇宙戦艦ヤマトの英名)」がテレビにて放映されコアなマニアの心を掴んでいたが、最初のブレイクとなったのが日本では長いシリーズが続く歴史ある特撮アクション番組として知られる戦隊シリーズのひとつ「獣二ンジャー」のアメリカ版「パワー二ンジャー」であった。
 その経済効果はクリスマス商戦の時期ではないにも関わらず大量の関連商品が売れ、大型量販店の一画はパワー二ンジャー一色に染まってしまったほどである。
 だが、平和な日本と違い、実際に暴力の嵐が吹き荒れているアメリカではそれら暴力で犯罪者を撃滅するバイオレンスな作品は風当たりが激しかった。
 銃器が社会に氾濫する彼らの家で「パワー二ンジャー」ごっこをしていた子供が誤って銃器を発射し死傷する、役者と同じように暴れて怪我をする・させる等が後を絶たなかったためそれらを誘発するパワー二ンジャーは有害な作品として親達には映ったのだ。
 だが、その当時放映されていたアメリカ発の子供番組には日本発の子供番組を跳ね退けるだけの魅力を持つ物が余りにも少なかった。
 世界から認められているデ・ズニー(M.I.B.(ミツキー・イン・ブラック)が怖いので)でさえもそれらを排除することは出来なかったのである。
 これは子供文化に対する日本とアメリカの社会的歴史的な違いに由来する。
 ハッキリ言って西欧では「子供向け云々」と言うものはちゃちな作りの下らぬオモチャであるが、村社会がそのまま発展したような傾向を持つ日本文化では子供向けの物に対して高い技術力を投入する傾向が大きかったのである。
 そうして作られた日本製アニメは大人向け顔負けの高いストーリー性を持ち、「どうせ理解できないんだから、その場限りの雰囲気で楽しませよう」という感のあるアメリカ製カートゥーンを圧倒していったのだ。
<日米のそれら娯楽作品に対する取り組み方の違いはマンガに顕著である。同じストーリー性のあるマンガでも、アメコミとマンガでは販売形式からして異なっている>
 そうして90年代の後半に決定的な一撃がアメリカ・・・いや、全世界に発信された。
 それが2050年代になってもまったく衰えることを知らない化け物番組として知られる、株式会社バンザイの「パケット・モンスター」、通称パケモンである。
 内容はあえて記さないが、元々は電子ゲームとして作成されたパケモンは元々のメディアでも記録的な人気作となったのだが、時機を得たマルチメディア戦略が功を奏しアニメとしてブレイクしただけでなく続いて発売されたカードゲームとしても大ブレイクした。
 205X年現在のアメリカでは、特に初期ロットはその希少性や既に社会を構成する人々の大半が熱中した過去を持つだけにビンテージ物として莫大な価値を持つに至っていた。何しろ一桁の孫と60代の祖父母が共通の話題として語れるのだから、その影響力の大きさがうかがえる。
 さて、ここからが本題になるのだが、日本連合に所属する世界の中にここアメリカと同じ世界から来た物がなかった事を挙げておく。
 つまり、アメリカ国内に存在するパケモン関連商品の版権は株式会社バンザイ・アメリカ支社にあり、日本連合の中の会社組織は版権を有していなかった、と言う事だ。
 そして、パケモンと言うものの存在は子供達が熱狂していることからも分かる通り、存在力の一つの形として多数の世界に類似商品が存在している事が判明していた。
 それらはカードのルールが異なっていたり、図柄の違いや、登場キャラクターの違いなどとして現れていたが、それらは見逃そうと思えば見逃せる、その程度のものでしかなかった。
 時空融合が発生してより数ヶ月経ち、ようやく社会が落ち着きを取り戻して流通がスムーズに行く様になるとそれぞれの世界でストーリーやCV等にバージョンの違いがある事が判明し、アニメ映画の方も様々なストーリーがある事が分かった為、配給会社も色々な地方に残っているそれらを集めて、再版という形で売り出しにかかったのだ。
 その中でも特に数多くの様々な資料が残っていたのがアメリカであった。
 彼の地においてはパケモンの流行から半世紀以上の年月が経っており、その間に公開された映画だけでも膨大な作品数となっていたからだ。
 日米間の通商が始まった時点では友好的に商談は進んでいた。
 何しろ、原産国である日本を抜いて自分たちが世界一のパケモン・マスターであると主張できたのだから鼻高々と言う所であったのだろう。
 しかし、そこに政治が介入してからおかしくなってしまったのである。

 アメリカ政府は現状に対して激しい不満を抱いていた。
 外敵による国土の侵害。
 そして、ほぼ属国扱いしてきた日本の態度の豹変である。
 時空融合後、元の世界においては技術的に同等な物を持っていたが歴史的経緯と軍事的帰着から政治的に自国の政策の下に従って来た日本が50年もの技術格差が開き圧倒的に不利になったにも関わらず、恭順の姿勢を見せずにまるで独立国のような振る舞いを見せたのである。(独立国だがね)
 元々歴史的に見て、日本国の性格と言うのは世間知らずな、しかし天才的な才能を持つお坊っちゃんに例えられる事が多い。
 古代律令国家以前はともかくとして、大化の改新前後の大和国そして日本と、一貫して強大なそして軍事力をひけらかす中国大陸歴代帝国に常に対等たろうと外交をしてきていた。
 そして周りを海に囲まれていると言う地勢的な条件を活用して、その困難な事業に曲がりなりにも成功してきたのだから大したものだが、第二次世界大戦に惨敗しアメリカの支配下に置かれて以降アメリカの政治に従って来た。
 その日本が掌を返した様に言う事を聞かなくなったのである。
「今まで、アメリカの軍事力の傘下でヌクヌクとして来た癖に・・・許せん」
 とホイットモア大統領以下政治を司る面々は考えたわけだ。
 そこでムーの侵攻が激化した事により何とか日本をこの戦争に引きずり込もうと、最低でも日本から金をせしめなければ気が済まないということになったのである。
 様々な外交を展開した結果、日本政府の長である加治首相が予想以上のやり手で、何故か先手先手を打たれた挙げ句日本の戦力を矢面に立たせる事に失敗し、彼らが要求した多額の戦費を提供させることにも失敗した。
 そこで彼らは国際法、国内法、日本の法律を研究し日本に一泡吹かせる方法を生み出したのである。
 つけ込まれる元となったのは日本の著作権法である。
 簡単に言えばパクリに対する法律であるが、アメリカはこの点非常に厳しいものがある。
 彼らの共通認識として、自分達の持つ権利を守り、そこから得られる利益は確実に自らのものにする事が企業としての使命であり政府は法律でそれを強力にバックアップする物であると考えられている。
 それ故に、自分たちが権利を持つキャラクターを無断で使用した場合、それに見合った料金を厳しく冷酷なまでに徴収する。
 その範囲は自分達の目の届く限り、地球の果ての果てまでである。
 特に前述のM.I.B.のやり方は有名で、無断使用している事を発見した後一定期間様子を見、その後に彼らの計算した適正な料金を請求するのであるが、一例を挙げると自家用車に手書きの三月ネズミを書きそれがM.I.B.に発見されてより3ヶ月後位に自家用車の持ち主に5000万円以上の請求書が手渡されるのである。
 それは自家用車の持ち主が彼らの権利を侵害し、それにより彼らが得られるはずであった正当な利益を損なったと判断されるからだ。
 この権利はアメリカでは極めて厳重に保護されている。
 しかし、日本ではそこまで厳しくないのが現状である。
 商店街のアーケード等に明らかに手書きと分かるデ・ズニーのキャラクターが描かれているのを見た事がある人も多いはずだ。
 この様に日本側は芸術は模倣に始まり独自性を育んで行くものだと言う文化的な側面を持っていた為、よく似たキャラクターが氾濫し諸外国から権利の侵害と抗議が良く来ているのは周知の事実である。
 そして日本でも著作権についての意識が戦後に高まって行き、完全なパクリが難しくなっているのは承知だと思う。
 しかし、日本側の規制の範囲は「日本人が外国の模倣をして外国民に損害を与えない」事を目的としているために日本国内で外国及び国内の作品のパクリを行うことを禁ずる物であった。
 この為、日本の作品が外国にパクられた時にそれを国内法に於いて罰することが出来ないのである。
 アメリカもこの法律上の抜け穴には以前から気付いていたようで、自らのキャラクターに類似したものを日本側が使用すると法律で権利の侵害として告訴する一方で、自分達は日本のアニメをそっくりそのまま写したような作品を堂々と作成し「これは我々が独自に作り出した作品であって、日本の物とは一切関係無い」「我々はその様な日本の作品がある事を知らなかった」と明言していた。その制作スタッフの中に熱心なファンがいると言うのにである。
 既に1990年代にアメリカ・カートゥーンの本家本元たるデ・ズニーが手塚治虫の作品であるジャングル大帝をそのままパクったライオンキングという作品まで登場しているのだ。
 しかし、もしもこれを日本側が法廷へ訴えてもアメリカのこれを日本の法律で罰する事は出来ないのである。
 何故なら日本の国内法は国内のみに通用し、外国でその権利が侵害されたとしてもそれを罰する事が出来ないとされているためだ。
 もしも国際的な法廷に訴えたとしたら?
 ある国際法に詳しい人はこう言っている。


「思うに,著作権ビジネスでの国際的評価としては
アニメーションの第一人者はディズニーであり,
あくまで日本をはじめアジア亜の作品は
その亜流に過ぎないと受け止められている。
<中略>
皮肉ではあるが,ディズニーがこれを作った以上,
その元ネタとなった日本の作品の方が
逆にディズニーの権利を侵害したという結論になると思われる。」


 と言う事になると言うのだ。
 その為、時系列的に日本が先に作品を発表していたとしても、アメリカでその模倣作品が作られた途端に、今度は逆に日本がアメリカの権利を侵害したものとしてアメリカ側の会社に損害賠償を払わなければならない事態になってしまうのだ。
 理不尽な話であるが、時空融合後に旧来の法律をそのまま使用していたこの現在の日本の法律ではアメリカを訴える事は出来ないし、法律の改正を行わない限りそれが現実なのだ。
 しかもそれが適用されるのはあくまでも成立後にパクられた場合に限る。事後法と言う概念がある為だ。
「ある法律が施工される以前に逆昇ってこれを罰することは出来ない」と言う全世界で適用されている法律の基本ルールである。
 中にはこれを公然と無視して事後法にて相手を裁くならず者国家が存在するが、その代表格が当のアメリカであった。
 事の善悪は別として第2次世界大戦終了後に急遽成立させた「世界の平和を乱した罪」により戦時にまで罪状をさかのぼらせた 「極東裁判」や2001年の日本に対する鉄鋼ダンピング防止法の施行と発令が歳月を遡って適用された事が有名である。
 その様に法律を利用した戦術に於いてアメリカは一日の長を持っている。
 その彼ら、アメリカ政府の特務機関はその法律が変わっていない事を調べ挙げた上で計画を実行に移したのである。
 まず計画の第一段階として、彼らアメリカのパケモンが彼らが権利を持つ著作物であると言う根拠を作った。
 その根拠としたのは、加治首相がハワイの返還と自衛隊の日米安保に基づくアメリカ派兵を求められた時にそれを断る根拠とした
「ある世界で成されていた契約は例え類似であるとは言え異なる世界に適応される事はない」と主張した物である。
 彼らの世界でパケモンは50年を超える期間の間市民に親しまれてきたと言う事実、そしてアメリカ国内での企画生産はバンザイ・アメリカ支社が取り行っていると言う事実からその著作権が現在では資本独立し組織を改めたアメリカ・バンザイ社に帰属する事が正式に認定された。
 そして第二段階として、その権利を金に変えたのである。
 とは言っても権利をレンタルしたり売り払ったのではない。
 彼らが得るべき権利が侵害されているとアメリカの法廷に訴えたのである。
 これは民事裁判として為され、審議され、認められた。
「判決、日本国 株式会社バンデイ社他はアメリカ・バンザイ社が権利を持つパケモンカードに酷似した製品を生産販売し、アメリカ・バンザイ社が得るはずであった利益を不当に搾取している。よって被告はアメリカ・バンザイ社が販売していれば得るはずであった金額10億円と権利を侵害した事に対する賠償金150億円、計160億円のアメリカ・バンザイ社への支払いを命じる」
 審議はスピードを以って行われ、その訴えがある事自体直前まで秘密にされていたので日本及び諸外国に対してバケット・モンスター通称バケモン関連の事業を統合し企画販売していた玩具会社バンデイ社の社長にも政府の通商担当者にも寝耳に水の事態となった。
 まさに電光石火の早業であった。
 既に司法も含めた国体一致体制の下準備を進めていたアメリカ側にとって、その程度の工作は当然の事であったのだ。
 それは彼らが手強い相手と日本を認識していたからに間違いはないのだが、日本連合にとっては大変に嬉しくない事実である。
 その事実を知った加治首相は直ぐに対策を立てようとしたのだが日本の国内法(新法)は各世界の法律を引き継いでおり、各世界で以前からこのような状況になる可能性が指摘されていたにも関わらず膨大な量の検討を要する改正案が立ち塞がり未だに手着かずであったのだ。
 これも早急に解決しなければならなかった司法の問題、各種武装テロリスト達に対して自衛隊が国内で活動する為の法案を最優先したが為、突然戦乱に巻き込まれその手の法令を準備していなかった世界が多かった日本連合の不幸である。
 以前の様に国際的な司法機関が存在し、大きな権限を持った世界であれば対抗手段はあったのだ、例の鉄鋼ダンピング訴訟を覆した様に。
 しかし、中立的な国際機関が消失し、それに提訴する事で問題を解決出来る時代はとうの昔に過ぎ去っていたのだ。
 ともあれ対策を講じようにも現時点で対策の根拠となる法律が不備であること、事後法は適用されない等の大前提からあきらめるしかないか? と言う所まで追い込まれたのだがここで大人しく従ってしまうと著作権のみならず工業技術に対する特許権にまで類似の訴訟が相継ぐと言う分析が成された為、京都の連合王国自治区が誇る優秀な外務省という新しい血が入って革命的な改革をやり遂げることに成功した外務省が全力を以ってバックアップし、国際法のエキスパートと米国国内法のエキスパート集団が現在の米国の優秀な弁護士を集めて超強力な弁護団を編成した。
 裁判と言う特殊な世界の場に於いて、日本では罪は罪、取り引きなど考えられない物なのであるがキリスト教が大前提にあるアメリカに於いてはその常識は当てはまらない。
 司法とは取り引きが可能な物であり、それをしないのは只の愚か者なのである。
 何故キリスト教が? と思うだろうが、彼らにとって地上での審判はあくまで仮の物であり最終的に全てを知る全知全能の神によって裁かれるのだから、と言う理念が大前提に存在するからである。
 そう言った理屈から審議の現場でのやり取りの全てを知った者たちがあらゆる手管を用いて控訴出来る状況を作り上げたのである。
 その結果、この裁判は全米で注目を集める事となった。
 その為、再審請求を棄却して無視を決め込む戦法をアメリカ側が採ることは出来なくなってしまった。
 何故ならばこれが全米で馴染みの深いパケモン関連の裁判である事によりマスコミの注目を浴びてしまった事と、アメリカ市民にも関係するもう一点の疑念であった。
 この審議に於いて、もしも司法に挙動不信な点があらば、一般社会から激しい突き上げが起こりうる雰囲気が巷に流れていたのである。
 実はここ最近、行政側に有利な判決ばかりしている司法界に対しマスコミのみならずアメリカ市民の間にも深い疑念が出てきていた。
 そして、この裁判が全米の注目を浴びた事の裏には日本連合の表裏から行われた一連の工作が働いていたのである。
 その一例、オーソドックスな方法としてニューヨークタイムス紙等の高級紙から一般紙までの様々な新聞にバンデイ社からの主張を広告し、TVCM等も放送、その他にもネット界の草の根掲示板での一般市民への提案、「アメリカ・バンザイ社では新しい本物のパケモンの続きは見られない」と言ったネガティブキャンペーン等などあらゆる方法でアメリカ市民の目をこの裁判に注目させることに成功したのである。
 こうなるとアメリカ政府側も迂闊な干渉を行えなくなってしまった。
 アメリカの社会は別名訴訟社会と言われるほど裁判によって物事を解決するのが一般的だ。
 既にその本来の目的である「損失を取り返す」事よりも「利潤を追求する為」の裁判が目立っているのは困った物だが、様々な人種と価値観が社会に存在するが故に一定の手続きで一応の結論が出せる裁判は彼らの社会規範を確立する為に必要不可欠な物となっているのである。
 そこに政教分離が進んでいないとは言え一応三権分離が建前になっているアメリカ司法界に政治が大きく介入しているとなれば正義を愛する国民性から政府への不信感が一気に高まり、一応受け止めたとは云えアメリカに侵攻を続けているムーへの対応に国家の総力を上げなければならないこの時期に、国家としての体力の落ちる様な真似は出来る筈が無かった。
 それに今回の話に大統領が大規模にタッチする最も大きい動機となったのが、国民によって選ばれた国家の主導者としては次の選挙に大敗するようなマイナス因を作るわけには行かないのだ。
 これが大統領4年の任期2期目で次の選挙が関係ない時期であった場合は事情が少々異なったのであろうが。
 ともあれこの時のアメリカ国民は自分の利益を守る為の訴訟制度が健全かどうかを推し量る為に通称「パケモン戦争」に注目していたのである。
 密かに政府の後押しを受けた司法とアメリカ・バンザイ社の原告側合同チーム対日本連合のバックアップを受けたバンデイ社の被告側弁護団の訴訟戦争はテレビ中継によって日米の一般国民と両国の国民性を知りたがっていたエマーン商業帝国国民及び中華共同体の市民達の注目の元、静かな戦いは始まったのである。




 と言う事だ。
 この問題についてはまた事態が新たな方向へ向かった時に記す事にしよう。
 少なくとも正しい交流が可能な状態に導いて欲しい物だ。
 加治首相に期待するとしよう。彼なら私は尊敬出来る。



 口述記述タイプしゅうりょ・・・ん、どうした唯?  何故にそんなに怖い顔をしているのだ? 第一、人の日記を後から覗き見るなんてお前らしくもない。

「−−源道さん・・・そんなに私にご不満がお有りになるんでしたの?  知りませんでしたわ、ふふふふふふふ。今晩は真司が合宿でふたりきりだから新婚気分(はぁと)なろうと色々考えてましたのに・・・別の方法で私のストレスを解消させてくれるなんて、クックックックックッハッハッハハハハ、かぁわいいコネコちゃんね!」

 おおうっ! 何故に女王様モードに・・・、朝食の新聞の際の記述か! それ以外って気もするけどな。 

「−−ゲンちゃん、夜は長いわよ。ピシィッ!」

 たぁすけてくれぇ! ブツッッ


 追記、翌日帰ってきた真司だが、返り血で真っ赤に染まった唯を見て気絶してしまったそうだ。我が息子ながら気の弱い・・・。
 それにしても・・・ハード過ぎるぞ。唯。




<後書き>
 まずは日本連合 連合掲示板にてネタを提供してくれた岡田”雪達磨”さん、タカさん、小さな一読者さん、ver.7さん、ありがとうございました。
 そしてこの話の大元のネタである著作権関連の切っ掛けはナデシコのSSで有名なACTION HOMEPAGEの掲示板にenopi議長閣下が書かれた物が元になっています。
 とは言え最初の構想から2転3転する事になったのですが。
 途中の引用部分がこの話の大元のコメントです。ナディア=アトランティスが話題になった際の物ですが、スーパーSF大戦でナディア達が出てきているため削らせて頂きました、申し訳有りません。
 さて、この話は次回で一応の目処が立つ筈です。
 かなり逃げてますね、この話。正面から書くには私の力量が足りないし、その時間も足りない、と云うことで他の事件も含めた報道と云う形で纏める事にしました。
 尚、碇源道のキャラクターを借りてコメントしていますので私個人の見解とは若干異なるのでご免下さい。
 あの世界に住む40代の成人男性が入手出来る情報を元に構築してますので。
 しかし、2次創作系の私が著作権云々抜かすのはかなり不遜であるのですが、この世界の中においてはかなり重要な項目なので避けられませんでした。
 と云う訳で私自身が書いた物を流用する事に関してはほぼフリーと云う考えでいます。
 つまり投稿作家の方が私の文章を自由に引用しても構いませんです。
 本物から勝手に借用しておいて自分のは許さない、というのはわがままでしょうから。
 とは言え、これはスーパーSF大戦をコピーして他のウェブサイトで公開を許すと云う訳ではないですよ?
 それと投稿作家の方々の物は投稿作家の方の物です、自重してくださいね。
 ではでは。







日本連合 連合議会


 岡田さんのホームページにある掲示板「日本連合 連合議会」への直リンクです。
 感想、ネタ等を書きこんでください。
 提供/岡田”雪達磨”さん。ありがとうございます。


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