民明書房刊 戦闘支援ロボットの歴史

名機「量産型 B.B.」




 特殊機動自衛隊運用の工作支援兵器<量産型 B.B.>について。
 陸空海上自衛隊にて多目的工作機械として篠原や四菱のレイバーが野戦における斬壕構築や基地設営等を使用目的として採用されている事は良く知られているが、特機隊の場合は少々事情が異なるようでレイバーはMAT等の一部部隊で使用されているに止まっている。
 では、それに代わる物として何を使用しているかなのだが、まず特機隊で使用しているスーパーロボットの大きな特徴としてその本体が格段に大きいという事が挙げられる。
 特機隊に参加している機体の中でも小柄な物を挙げると身長15メートル級のマジンガーZが挙げられる、確かに主力戦闘機であるF−15イーグルもほぼ同じ大きさだがスーパーロボットを戦場で運用する際に掛かる作業量の規模からするとレイバークラスでは能力不足は否めない。
 そこで特殊機動自衛隊の幕僚部は新たな機種選定に際し次の条件を挙げた。

・20メートル級のロボット用の掩退壕を短時間に構築できる能力を持つこと。
・陸上歩行型スーパーロボットと同行できる歩行速度を持つこと。
・スーパーロボット用の補給物資を携帯し、補給できる能力を持つこと。
・強靭な機体構造であること。
・スーパーロボットよりも安価であること。
 等である。
 この条件に対しレイバー産業各社は条件に合致できる機種の選定作業や開発計画のプレゼンテーション、条件の部分的緩和等を働きかけたが幕僚長である剣鉄也特機将は頑として条件を満たさない機種に対して首を振らなかった。
 まず、レイバー各社は以前輸出用として大量に生産していた大型レイバーの四菱タイラント2000や篠原クラブマン・ハイレッグ等を候補に挙げたのだが、演習場での性能評価試験で多脚駆動の性質を生かした不整地踏破能力を示したものの補給物資の搭載量と装甲能力の不足と言う点で弾かれた。
 実はこの時、剣特機将の脳裏にはある機体の事が灼きついていたのである。
 それは彼が現役で(今でもGM=グレートマジンガー現役パイロットだが)戦っていたミケーネ戦役、それ以前にマジンガーZが主戦力として戦っていたDr.ヘル紛争、グレート退役後に勃発した外宇宙からの対ベガ防衛戦争の計3つの時代に股がって縁の下的な働きをしたロボット、その名はボスボロットである。
 彼ら主役級のスーパーロボットが活躍していた時代、一般市民の厭戦気分の蔓延に対する為に実際の戦場で撮影されたライブフィルムを元に再構成されたストーリー性の高い実録・ドキュメンタリー番組が放映されていた事が知られているが、その中でのボスボロットの扱いはピエロそのものといった物であった。
 だが、実際のサーカスにおいて最も難しい役柄がそのピエロである様に、あの3つの戦場でピエロ役として民間人に知られるボスボロットの戦場の役割が意外と高かった事は知られていない。
 ドキュメンタリー番組では余計な事をしてマジンガーZやグレートマジンガー、グレンダイザーの足を引っ張っていた様な描写をされていたボスボロットだが、そう言う風に放送されたのは彼の果たしている作業が放映され分析される事で戦局が不利になる事を怖れた為なのである。
 戦場では、防衛側の戦力は基本的に主役級(メインアーム)1機に集中しており、それを各種サポートマシンにて支援する体制が採られている。
 これはその機体が量産の効かない一品物と言う理由もあるのだが、それを運用する事が出来るのが民間人であり、シビリアンコントロールが効き辛いと言う事がネックになっていた様だ。
 だがその為にメインアーム1機対多数という状況に陥り易く、戦局が不利な状況になる事も少なく無かったのだ。
 モチロン彼らはそれらの不利な状況を打ち破り勝ち続けてきた訳だが、いかなスーパーロボットとは言え、・・・いや強い能力を持つスーパーロボット故に消費するエネルギー、弾薬ともに膨大な物があり画期的な新エネルギーや歩く弾薬庫と揶揄されもした搭載弾薬量とて戦場で弾切れになる事がしばしば発生していたのだ。
 そう言った状況時、サポートマシンの内女性型戦闘補助ロボットのアフロダイA、ダイアナンA、ビューナスA、ミネルバX等が弾幕を張り、その隙に補給を済ませていたのである。
 その補給物資がボスボロットに積まれていた。
 ボスボロットはその機体構造が簡易な事で知られているが、実はその内部及び背面に背負った背嚢に弾薬やエネルギーカートリッジを搭載しており、そのフレキシブル且つ多機能なマニュピレーターで素早く補給作業を行っていたのだ。
 それと同様の作業がレイバーに可能かと言えば、答えは否である。
 その理由として搭載能力の不足・・・例えばレイバーにマジンガーZ用の光子力エネルギーカートリッジを積むとなるとタイラント2000でようやく1本積めるかどうか、しかも何のカバーもなく野晒し状態でである。
 また、レイバーがいかに器用だと言えども、身長差が大きいグレートマジンガーへの補給作業は容易ではなく専用のマニュピレーターが必要であろう。 しかしそれはレイバーの汎用性を削ぐことに繋がるのだ。
 ボスボロットが有利な点は次の通りだ。

 1.ほぼスクラップを流用した為、機体構造が単純な外骨格式であり内部に広い空間を有していた事。実際、上半身には操縦系の配管とエネルギー伝達の為のシャフトが通じているだけで操縦・・・運転席の下は広い空間になっていた。
 Dr,ヘルとの戦いが激化し出した頃、光子力研究所のせわし博士のっそり博士もりもり博士の三人がそれに気付き機体構造の強化と共に収納庫にした事が知られている。
 2.機体パーツのモジュール化が進んでおり損傷しても直ぐにパーツ交換のみで戦場へ復帰出来る事。
 ボスボロットの機体はコクピット兼脱出ポッドの頭部と格納庫兼用の上半身、動力源が入った腹、各種歩行装置がある下半身(以上が頑丈な外骨格構造)と地面に届く長さの伸縮自在な蛇腹式腕部、重心を低くする為の同じく蛇腹式脚部。特に腕部先端のマニュピレーターは人間と同じく5本指をしており非常に器用な為繊細な作業が可能となっている。
 流石に腕部脚部の取り付け部に破損が生じると修理に手間が掛かるのだが。
 3.機体に用いている材質が一般に流通している物と同じな上に構造が単純で組み立てが容易な為、機体コストがベラボウに安い事。
 マジンガーZを1体作成する費用で20体は作成出来る。ちなみにアフロダイAなら3体が精一杯だ。
 4.機体の安定性及び積載量が高い事。
 基本的にボスボロットは輸送と土木工作がメインの機体の為に高速性能はそれ程要求されていなかった。
 その為に機体を安定させる事を第一として伸縮自在な蛇腹式の脚部を採用している。
 また、機体を支える事からそれ程脚部は長くなく、実際のシルエットからするとまるでゴリラの様に手が長く足が短い。
 だがそれによってコクピットへのショックはマジンガーZよりもかなり軽減され、特別のパイロットスーツも無しに操縦する事が可能となっている。
 また、脚部の取り付け方にも特徴がある。
 スーパーロボットとリアルロボットを見分ける際、一番簡単なのが股関節の取り付け方である。
 比較的軽量なリアルロボットは腰部下部に横に伸びた駆動軸にて脚部を回転させているが、この形式の場合有利な点は機構が簡単で自由度が高い事が挙げられるがその反面、脚部以外の重量がこの軸に対して剪断応力として掛かってしまう為に材質にも拠るが比較的軽量な機体にしか採用出来ないのである。
 この点、ボスボロットは比較的小型のロボット(約10メートル)なのだが、積載量を考えると脚部に掛かる応力が圧縮応力となるスーパーロボット形式の方が有利なのである。
 ちなみにボスボロットの場合脚部が蛇腹式の為、ユニットの基部を直接接合するだけで済むが、その他の機体の場合、圧縮応力を吸収する為のショックアブソーバーとリニアモーター状の多面接地タイプの駆動形式が採用されているようだ。(軍事機密により詳細は公開されていない)
 この場合脚部の動きは人間とほぼ同様の物としかならないが、間接部の露出がない為に防塵対弾性能は格段に高いという。
 5.高い作業性を誇るマニュピレーターの採用。
 ボスボロットの上腕マニュピレーターは自然な姿勢に於いても地面に手が着く程長い、これは人型工作機械の理想に対する答えのひとつである。
 ロボットが人型である故に存在する問題として腰部に荷重が集中する、と言う物がある。
 地面に落ちている物を拾う時にアナタならどうするであろうか。
・腰を曲げて拾う。
・膝を曲げて拾う。
・マジックハンドを使って拾う。
 社会に出て腰痛対策を習った人なら良く知っている事だが、「腰を曲げて拾う」事は腰に対して非常に良くない。場合によってはそのままぎっくり腰「椎間板ヘルニア」になる事例が数多く上げられている。それだけ腰部に対する負荷という物は大きいのだ。
 また、「膝を曲げて拾う」は腰部に掛かる荷重は軽減出来る物の作業性がイマイチの上に、脚部の自由度が低く工作機械としてはかなり致命的だ。戦闘用ならばその様な姿勢を取る事は一時的な事であるので問題はないのだが、地面間近で繰り返し作業を行う工作機械には採用が難しい。
 となれば「マジックハンドを使って拾う」が正解となる。
 実際には地面近くまで伸縮するマニュピレーターなのだが、作業時に腰部に掛かる荷重は少なく、機体整備上大変に有利であり機体の寿命も格段に長くなるのである。
 そのマニュピレーターだが、蛇腹式で伸縮自在で先端の指も人間と同様の造りの為にその作業性はレイバーにも劣らない物であるのだ。
6.各種装備を有する。
 対空戦闘は不可能だが、頭頂部に設置した巨大なプロペラによって空輸が可能である。
 過去には両脚に巨大なロケットを装備した事もあるのだが・・・そのまま戦闘獣ダンテに体当たりしてしまいそれ以来お蔵入りになっている。ちなみにダンテは撃破されてしまった。
 他にも水中移動用にスクリューを装備可能であり、浮き輪による浮遊も可能。
 雪原でのスキー装備による雪上装備など、内蔵によって対応し続けたマジンガーZと対照的に外部増設による対応をしてきた為その対応のバリエーションは広く、しかも安く付いている。

 以上の事からマジンガーZと共に戦場を駆け回り、補給作業を行い、スーパーロボットが入れるような掩退壕を作成する事が出来るロボットはこのボスボロットが最適だと言う事が分かる。
 しかし、元々あれは光子力研究所の3博士が渋々作った物なので、現在のようにSCEBAIの一組織として忙しい光子力研究所では作成している隙がないのであった。
 選考作業が長期化し始めた新世紀二年度六月にりんくうタウンに新たに作られた新興の会社から接触があった。
 その名は「棒田工業」、社長の名前は棒田進。M&Aにて光子力研究所から手を引いた元経営者の息子で、彼がM&Aにて得た資金で設立した会社である。
 彼こそボスの名で知られた元ボスボロットのパイロットである。
 その会社では光子力研究所の三博士に技術的なアドバイスを貰いながらあるひとつの機械の研究開発を進めていたのである。
 それこそが量産型ボスボロットであった。
 その試作一号機が完成したと云う連絡が入り剣特機将は決断を下した。
 そして試作一号機は特機自衛隊の試験を受けるべく富士演習場に搬入された。
 大型のトレーラーに分解して運ばれた量産型はまずクレーンにて胴部と胸部、コクピットを地面の上に組み立てて上腕のマニュピレーターを接合した後は自力で下肢ユニットと腰部ユニットを接合、そして地面に手を付いて胴と下半身の接合を行った。
 この優れた自由度を見た幹部連は感嘆の溜め息を漏らした。
 そして量産型は立ち上がったのだが、オリジナルと異なりその塗装は陸自標準のオリーブドライに塗られていた。それは表情豊かでひょうきんなロボットであったオリジナルとは異なりゴリアテとかサムソンとか云う名称が合いそうなゴツイ印象を与える物であった。
 後に採用された機体は通常塗装とイベント用の特殊塗装のパターンが決められ、特殊塗装は子供達に高い人気を持つ事になった。
 試験項目は1.搭載量。2.機体強度。3.運動性能などが測られいずれもレイバーとは比べ物にならない高性能を持っている事が確認されたのだ。
 幹部連と剣特機将は後日の会議にて採用を決定、細部の修正を依頼し量産先行型の発注を行ったのである。
 その後の活躍は、他の記録報告に譲るとしてこの機体がここまで能力を突き詰められたのは武装のプラットフォームとしての役割を担っていない為機体が簡素に設計出来た事にあるだろう。
 だからといってこの機体が戦闘に向いていないとは言えない。
 いや、むしろ格闘戦能力に於いてはマジンガーZを上回っている可能性すら秘めているのだ。(特自側は否定しているが。流石に打撃系に優れたグレートに比べると不利は否めない)
 短く頑丈な足腰により低く安定した重心は少々の力ではバランスを崩さないし、伸縮自在なマニュピレーターは関節技による被害とは無縁な上に相手に動きの予測をされ辛い。
 現に新世紀7年に中華共同体にある国際警察機構北京支部にて行われていた魔神我計画を破壊すべくDr.ヘルの機械獣軍団によって勃発した戦いに於いて、恐竜帝国侵攻時にゲッター1での自爆を決行した直後時空融合に遭い、多量のゲッター線を浴びて加療していた巴武藏がボスの操縦するボスボロットに乗り込み、「大雪山降ろし」にてトロスD7を撃破した事は記憶に新しい所である。
 余談だが巴武藏は加療終了後に汎人類圏防衛組織のゲッターロボ・ゲッターロボG、ゲッターロボ號、ゲッター烈火ら歴戦の機体が参加しているゲッターチームに参加し、現在では少々能力が落ち居てるが汎用性では負けていないゲッターロボに乗り込み活躍している。

 こうした経緯にて自衛隊に採用された量産型BBは現在は特機隊と、それと関係の深い汎人類圏防衛軍に採用され、工兵隊などが砲弾の降りしきる中果敢にも橋を造ったり落とし穴を掘ったり穴の開いた滑走路を補修したり基地を設営したりしているのである。

 こうしてメインアームと並んで根強い人気を誇る量産型ボスボロットは採用されたのである。





日本連合 連合議会


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