新世紀二年六月二日。
晴れ後曇り、但し、濃い霧が朝から発生した為、視界不良。
湿度かなり高い。
本日はダブルの休日二日目。初日である昨日は部屋の掃除で終わってしまった。
生活に追われて私生活が乱れているのはどうした物か。
誕生日を迎えたばかりだというのに、かなり駄目駄目である。
とにかく、今日はフリーであり、少しばかり遠出をしようと昨日から計画していたので、朝早めに起きたのであった。
しかし、三十六歳、男、独身、恋人なし、係累無し、金もなければ、情けない。
こんな事で良いのか、俺。
「秋葉原に日帰り」 その1より続く。
どちらかというと中央通りの左側に多そうだ、私は右側を歩いて行く事にしようっと。
しばらくは帝都区の町並みそのもので、色々な店屋が建ち並んでいる。その中に変わった店屋があった。
『黒焼き』屋だそうな。
漫画でイモリの黒焼き、とかよく見た事があるけれど、まさか本物があるとは。
何々? 黒焼きにする事で、有効成分だけが残留し身体に良い。との事。
しかし、本当に黒一色と云うか、真っ黒けっけだ。これだけ黒く焼くのは大変だろうなぁ、と考えつつ更に進む。
少し行くと御徒町駅が近付いてくる。
左側に建っている松坂屋も太正時代の物の様で時代がかった建物である。
そしてここいら辺から自分の知ってる秋葉原になってくる訳だが、実はもう少し歩く必要がある。
大体地下鉄の末広町駅と御徒町駅のあいだ辺りが境界線になっているらしく、急に四角いコンクリート製のビルが生えている。
しかも電気部品やベアリング等の機械部品などの商店が有るかと思えば、小規模なPC関係の小売店、そしてフィギュア等のホビー小売店、同人誌やアニメーションアイテム小売店、大規模なコンピューター関連の店が見えてくる。
ビルの壁に描かれたPCゲームの広告が見えてくると雰囲気はかなり、アッチ寄りである。
さて、混乱しているPC業界で主流になりつつあるOS『窓』や『J−TRON』に対応したPCの製品をチェックしてから少し街の奥に向かう。
色々な世界のマニア向けのアイテムが続々と集まっている秋葉原であるが、取り敢えずここに来たら寄る店が『まにぃロード』と云う店だ。
ここのテレビで試映していた『ぴーひょろミーコ』と『ドリーマーズ レイ』のアニメDVDを購入してから何となく嵌ってしまったので、最近は久具津氏と云う原形師が作ったガレージキットを購入しようかどうか検討中である。買っても作る技術もない癖に、良い気な物である。
しかし、ここは品揃えが半端でないので、何かと重宝している。
だけどなぁ〜、作品自体は存在していてもアニメの制作会社や漫画の出版社が無くなっていて、続きが出ない可能性が高い作品も多いんで袋小路に入り込まない様に入念なチェックが必要なのだよね。
一通りぶらついて、気になった漫画本を三冊購入した。
ただ、店番をしていた高校生位の女の子の目が何だか痛かった。(泣)
それは良いとして、腹が減ったので秋葉原デパートの一階で蕎麦を食べた、無論立ち食いだ。
お蕎麦には、生には生の、茹でには茹での美味しさがあるのだ。<力説。
立ち食いなら出来るの早いし。
おすすめのメニューはやはり天蕎麦だろうか。かき揚げがつゆと相まって実に旨い。
ここはやはり醤油の効いた関東風のつゆが一番しっくり来る。
出汁の効いた関西風の汁も旨いが、どちらかというとうどん向けじゃないかと思われるので。
『関東風の汁は黒くてダメだ』とか『関西風の汁は薄くて味がしない』とか貶している拘りの人がいるが俺は両方とも好きだ。それぞれに合う麺があるから良いじゃないか。
第一、蕎麦とうどんは別の料理であって、一緒くたに語る方が間違っているのである。例えるならラーメンのスープの中にうどんを入れてコレは違うと云ってるみたいな物だ。と私は思うのですが、皆さんはどう思いますか?
それはともかく、立ち食いそば屋を出ると秋葉原デパートの中で帰りの電車の中で食べる為のカツサンドを買って、おっと同人屋に寄るのを忘れていた、万世橋の方だから南口の正面にある集合商業デパートにエレベーターで昇る。
漫画やアニメ、ジュヴナイル小説が大混乱しているものだから同人誌業界も大混乱である。ただ、創作系が頑張っているのが個人的に嬉しい。
ここで同人誌を四冊購入。エロもあり。
帰りは、秋葉原から乗るべきか、それとも路面電車にするべいか。
せっかくだから路面電車でGO!
大体一.五キロ位の距離だし、秋葉原からならフリー区間なので金が掛からないんだけど。若干ばかり鉄っちゃんが入っているので是非乗ってみたいのだ。
中央通りの向こう側になるので万世橋方面に向かう路面電車に気をつけて線路を渡る。
電停のホームはバリアフリーの為、道路から傾斜が着けられた三十センチくらいの高さの船型になっていて、一応転落防止用の柵が付いている。
路線的にはどれに乗っても同じなので秋葉原駅前の電停で待つ事一分、最初にやってきたのは岡山電軌のMOMOと同じ形をしたLRVだった。
停車した路面電車の扉が開くとLRVの特徴であるホームとの段差が非常に小さい、ってのが実感出来た。電車の車輪直径よりも床が低いのだ。
これには秘密があって、車輪を支えている台車が左右で独立しているらしい。簡単には作れないだろうと素人でも思う。
中に入ると構造的にロングシートが備え付けられないので壁際に小さめの椅子が取り付けられているが、少しばかり座りにくい。
取り敢えず着席し窓の外を覗く。
・・・太正時代になってしまった町並みを都電が行く。
本当に世の中が変わってしまったんだと実感する。
俺の知り合いは会社の知り合いだけで、しかも前の職場からの知り合いはたったの一人だし。
寂しいな。
と、センチメンタルな気分(死語)に浸っているとあっという間に上野駅だ。
ちなみに料金の支払いは後ろ乗りバスと同じで、整理券を取って降車口でワンマン運転の運転手さんの横に備え付けられている自動料金支払機で払う訳だ。
ガマ口から小銭を用意して料金口に整理券と一緒に支払うと都電を降りる。目の前が入り口だ。
入ってすぐに常磐線特急ホームになっているので電光掲示板の時刻表を見る、あと五分で出発じゃん!
慌ててダッシュ。
何とか自由席車に乗り込んだけど、ボンネットのある一五一系だった。これもスーパーひたちなのだろうか。時空融合前は水戸駅で練習車と書いてあるのを見掛けた事があるけど、乗ったのは初めてだった。
約二時間ちょいで地元に到着、駅から自転車に乗って途中で明日の朝飯と昼飯、それと今晩の晩飯をスーパーで購入してから帰宅した。
こんな風に休日を過ごして、さあ、明日からまた仕事だ。
しかし、今日一日の事を振り返ると、誰とも会話を交わしていない事に気づいた。
少しへこんだ。