新世紀二年六月一日。
晴れ 時々雨後曇り
 
 まずは訂正報告を。
 一昨日の日記に海水を煮詰めた食塩は危険だ、と書いた所、「東西新聞の某究極の料理特集担当者」さん本人、山岡士郎さんと山岡ゆう子さんから現在の海水は汚染されていない旨と時空融合以前からも海水汚染には気をつけ啓発した記事を書いて来た、これからも自然汚染を警告する取材を行いマスコミ人として世間に知らせる為の記事を書いて行く、とのメールが届きました。
 どうも申し訳ありませんでした。
 取り敢えず訂正を出せば許してくれるとの事なので感謝致します。
 
 
 本日はダブルの休日二日目。初日である昨日は部屋の掃除で終わってしまった。
 生活に追われて私生活が乱れているのはどうした物か。
 誕生日を迎えたばかりだというのに、かなり駄目駄目である。
 とにかく、今日はフリーであり、少しばかり遠出をしようと昨日から計画していたので、朝早めに起きたのであった。
 しかし、三十六歳、男、独身、恋人なし、係累無し、金もなければ、情けない。
 こんな事で良いのか、俺。
 
 普段は仕事で日夜働いている私の趣味、やはりアニメや漫画が止められない。ゲームはそれ程でもないのですが。
 何しろ小さい頃から厳しい制限下でアニメを見る事を楽しみにしてきたのだから、今更止められないのだ。
 ここいわき市は、幸いにもブースターを掛ければ東京のテレビ局も視聴出来るので、最新の番組も問題なく見られるのだが同人関連の店は皆無なのが現状である。
 と言う訳で、数ヶ月に一回、秋葉原に遠出しているのであった。
 そんな訳で今日は秋葉原に行ってきました。
 スーパーひたちに乗って二時間ちょっと、往復切符一万数千円で上野駅の地下ホームに到着。
 東北新幹線を始めとする東北地方の玄関口は相変わらず雑多な人間で埋め尽くされている。メインの路線は発達した東北本線なので、マイナーな常磐線の再開発はそれほど優先されていない様な気がしている。
 さて、常々気になっていたのだが、上野駅自体は二十一世紀初期の最新の屋社なのだが、自動改札の向こうに見える町並みは、平屋建てが目立つ大正時代・・・もとい太正時代の町並みなので、大都会東京に慣れた目には違和感がバリバリである。
 百年でここまで変わるのが東京ならば、これからどう変わって行くのか、大変楽しみな所だ。
 ここから山手線に乗って秋葉原で降りても良いのだが、折角だから歩いてみる。
 偶に上野から地下鉄で浅草に行き、浅草寺境内の見世屋を回って水上バスで日の出桟橋に観光する事もある。
 時折大型客船用の有明桟橋(昔のコミケット会場であった東京国際展示場があった所の近くだ)に海王丸等の帆船やクイーンエリザベス号等の大型客船が来ている事があり、そう云う時にはわざわざ回り道してくれる事があるのだ。
 そう言えば一回、その有明桟橋に戦艦長門が停泊していた事があった。
 近代化改装されていない旧式艦とは云え、針鼠に例えられる程に大砲があちこちに突き出ている形状は正に物凄い迫力でした。
 素人なのでよく分からなかったが、何隻も出現している長門の内のどれだったのだろうか。ほとんど改装されていない様だったから・・・ムム、よく分からん。実は陸奥だったりして。
 それはともかく、上野駅公園口から町に出る。
 目の前の掲示板に国立博物館の特別展開催のお知らせが出ているな、どれどれ。

『古代ムー帝国の遺産〜環太平洋圏の文明圏〜』

 ふむ、興味深いけどまた今度と云う事で。
 お、恩賜上野動物公園の特別展示も出てる。

『驚異の哺乳類<鼻行類>日本初公開。絶海の孤島、ハイアイアイ諸島での壮大な進化実験』

 これは、かなり興味を惹かれる、けど、また今度。
 坂を下って中央通りに出る。そこで最大の相違点を見掛ける。
 路面電車(都電)が走っているのだ。
 私の世界の歴史では昭和中期にモータリゼーションの波に押されて荒川線の一路線を除いて廃止された都電が中央通りの中央に設置された同一軌道の上を鈴なりに走っている。追い抜きが出来ないのが欠点だな。
 そう云えば、前に雑誌か何かで札幌の路面電車には急行があるとか読んだ覚えがあるけども、追い越し軌道でも用意されているんだろうか。
 それは兎も角、元々秋葉原の万世橋から上野駅を結ぶ中央通りは最も多くの路線の路面電車が集まる路面電車のメッカだったそうだが、道路の中央に半専用帯を設けた目の前の路面電車を取り巻く光景はちょっと昔の物と違っている。
 普通の路面電車の光景と言えば、道の左右に張り巡らされたワイヤーに架線が張ってある、空が煩い雑然としたものだが、今の都電では架線関係が中央に建てられたセンターポールにスッキリまとめられている。
 その為、ずいぶんとスッキリした雰囲気になっているのだ。
 走っている都電も変わっていて、荒川線を走っている七〇〇〇形〜八五〇〇形や昔の如何にも「路面電車です」と言った感じの車輛もあれば、岡山電気軌道や広島電鉄などで有名なLRV(低床車)も有る。
 そう云った路面軌道車輌の中でも特に変わっているのが帝都区を走る為の路面蒸気だ。
 帝都区は蒸気機関が非常に発達している為、一般的な路面電車の車体に蒸気機関を組み込んだ様な車体をしているのだ。
 帝都区の方面、帝國劇場のある銀座界隈の路線には架線が張っていない事もあって、結構な数の路面蒸気が見受けられる。
 路面電車で無電化列車というと松山の伊予鉄道が観光用に走らせている坊ちゃん列車(ディーゼル機関車牽引)が有名だがこっちは特別料金¥五〇〇−も無く、ごく普通に使われていると言う点が変わっている。
 また、景観保護の為、帝都区の銀座方面など架線が無い路面軌道へ新たに電力架線を張る事も出来ないので、時代情緒を感じさせるこれら路面蒸気が廃止される予定もない。
 さて、上野から秋葉原方面を見ると、低い建物の中に突然、五〜六階建てのビルディング街が盛り上がっている。
 お茶の水の方には丘がある為、それの続きの様にも見えるが歴とした人工物である。
 秋葉原は何故か知らないが太正時代の帝都区の真ん中にポッカリと出現した二十世紀末から二十一世紀に掛けての電気街で、蒸気文明が発達した帝都区区民が電気−電子文明に慣れる為の格好の場所となっている、って事で結構多くの帝都区の人の姿が見られる。
 何しろ帝都区の真ん中だけに昼間は車輛の侵入が規制されている。
 常時ホコ天状態になっている幅広の車道の路面軌道以外には歩行者が闊歩しているのだから、目立って当然だ。
 だが目立っているのは帝都区民だけじゃなく、少しオタク風の若者や商業主義逞しいと有名なエマーン人も多い。
 ここは電気部品や何かの取引には最適な街だから当然といえば当然なのだが…。
 しかし歩いているエマーン人では女の子の姿がかなり目立つ。
 それも道理で、新聞によるとエマーン人の男女出生率はほぼ一対二と女性過多なので逆ナンしに来日する女の子が急増中だそうな。
 つまり未婚で恋人もいない日本人男性が多い場所って事ですか? うむ、真理だ。
 もしも目的が商用だとしても、未婚で金を貯め込んでいる購買力の大きい層という分析でしょうか。うむ、正確な分析だ。流石エマーン人。
 なるほど、かなり遠い此処からも見えるのだが、二本の触手を生やしたエマーン人の女の子数名がそれっぽい男を囲んでって、あれはキャッチセールスか? すこし鬼気めいたものを感じてしまうが。
 どちらかというと中央通りの左側に多そうだ、私は右側を歩いて行く事にしようっと。

 「秋葉原に日帰り」 明日も早いので本日はここまで、その2に続く。