時に新世紀元年五月、後に「RYOMA」の名の元に世界的な大企業として大成功を遂げる「海援隊」誕生の瞬間であった。

SSFW外伝−「海援隊がゆく」−


第9話「加治首相と四国圏の女神達」 Cパート



 そんなこんなもあって本日のパーティーの会場である鶴来屋ホテルの大宴会場「千歳の間」である。
 またある一方では加治首相がアユミ=セリオとともに宴を楽しんでいた。  勿論この席のメインゲストである加治首相の周りには多くの人々が集まっていたが、その人垣を分けてかの女神達が登場してきたのである。

「始めまして加治首相。潟Cーディスの営業本部長を勤めております「高原 彩理」と申します」

Round1.「加治 隆介」VS「高原 彩理」

「これはどうも、加治です」
「今日は我が社に見学にいただき、有り難う御座いました」
「いえいえ、久しぶりに楽しい時間を過ごさせていただきましたよ」
「聞いておりますわ。あのお二方が田鶴子さんの仕掛けたトラップを発動させた話は」
「あ、ああ。そうでしたか」
「まあ、あれがあの方々の良いところかも知れませんけどね」
「高原さんもおっしゃいますな」
「本当のことですからねえ」
「「あははははは」」
「さてと、それではっと。真面目な話をさせていただきましょうか」
「あ、ええ、はい」
「と申しましても、我が社業務の内容については先程説明を受けていただいたばかりですし…」
「そうですね」
「ええと…じゃ、四国圏の情報通信産業についてお話しさせていただきますわ」
「ほう、それは興味深いですね」
「それでは…首相、シリコン・バレーについてはご存じですわね」
「ええ、融合前のアメリカのカリフォルニアにあった情報通信産業の集積地ですね」
「そう、その通りです」
「なるほど、そういえばこの四国圏にも同じような、そして日本最大級の集積地域がありますね」
「ええ、そうですわ。四国圏香川管区中央部の来瀬市から瀬戸内海沿いに来瀬−高松、そして東へ伸びて徳島管区の名東−徳島と繋がる地域ですわ」
「確か付いた名前が、「シリコン・ロード」…」
「ええ、いつの間にかその呼び名が定着しておりました」
「なるほど、それで確か成り立ちはというと、この地域に幾つかの情報通信系の会社が存在していたことによるそうですな」
「そうなりますわ、例えば徳島市には「ジャストソフテム」と「四電通」の本社、名東町には四電通の「圏外通信センター」」
「そして来瀬市には高原さんの「イーディス」本社でしたね」
「そうです。そして高松とその周辺には中小のソフト会社が集まってきておりました」
「そして今日の「シリコンロード」ができあがったというわけですか」
「それだけではまだまだですわ」
「えっ?」
「「四国共通次世代OS開発計画」。これのおかげです」
「そういうことですか」
「四国圏が立ち上げたこの大規模プロジェクトのおかげで多くの才能ある人々が集まり、行政の後押しもあってこの地に多くの会社・そして研究施設が成立しました」
「ふむふむ」
「これによって現在の「シリコンロード」が誕生した訳です」
「なるほど、そういうことですか」
「そしてこのシリコンロードは今も発展を続けておりますわ」
「そうですね。この情報通信産業は今最も花形の業界ですしな」
「四国圏の柱となる産業となっておりますわ」
「ええ」
「そしてこの「四国共通次世代OS開発計画」による新OS「フォーチュン」も完成が間近だそうです」
「ほう、もうそのような段階まで」
「そうです。そろそろ正式な発売日も決定じゃないかしら」
「そうでしたか」
「ええ、しかしまだこれで終わりではありませんわ。私たち四国圏は既に次の目標に向けて動き出しております」
「なるほど、良ければそれについてのお話も聞かせていただけますか」
「そうですわね。まず名称は「ヘカトンケイルス=システム(hecatoncheires=system)」。詳細は…」
「詳細は?」
「まだ、秘密ですわ」
「は?」
「企業秘密と言いますか…、まだ公表するには早い話ですので」
「ああ、そうですか…」
「申し訳ありません。と、なあに、桐生」
「彩理さん、田鶴子さんが捜してますよ。僕と一緒に来てくださいって」
「わかったわ桐生。今行くから…と、首相、申し訳ありません。失礼させていただきます」
「わかりました。それでは」
「失礼しますね、と、桐生。ちょっと待って…」

「ふうむ」
「加治首相、よろしいですか」
「ああ、これはこれは三月さん」

 四国電通社長兼ジャストソフテム営業本部長「真田 三月」である。

Round2.「加治 隆介」VS「真田 三月」

「さきほどは説明をしていただきありがとうございます」
「まあ、大したことではありませんですけどね」
「しかしジャストソフテムと四電通の兼務とは、いろいろご苦労もおありだったでしょう」
「まあ、それなりには。でもそれもそろそろ終わりですわ」
「どういうことです?」
「四国圏の電子情報産業の再編ですわ。新OS「フォーチュン」の完成を期に四電通からプログラム開発部門が分離され新会社に、それに伴い私も兼務を解かれジャストソフテムに戻ることになりました」
「なるほど」
「四電通は旧NTTのように圏内の通信回線の設置・維持・管理、また基礎的な情報・通信技術研究に専念することになります」
「ほう」
「そして新会社の方ではこの新OSの更なる研究開発、また関連するプログラムの開発研究に当たることとなりました」
「ふむ、で、その新会社の名称は何というのですか」
「社名は「フォーチュン・テラー・インダストリー」。代表は…」
「代表は?」
「まだ、秘密ですわ」
「そ、そうでしたか」
「お聞きになったら、驚かれるでしょうね。とっても」
「そうなんですか」
「ええ、ただ一つ言えるのは、彼女は実力で選ばれたということですわ」
「彼女?女性なのですか?」
「あ、あら。余計なことを」

「三月さあん。どこですかあ」
「ああ一樹君。ちょっと待ってね、今行くわ。と言うわけで首相。申し訳ありませんが失礼いたします」
「ああ、はい」
「では後ほど…」

「どうやら、肝心な所で逃げられている、のか…」
「どうかいたしましたか?」

Round3.「加治 隆介」VS「柏木 千鶴」

「ああ、これはこれは」
「さきほどはどうも、鶴来屋ホテルグループ会長「柏木 千鶴」です」
「これはどうも」
「くすっ、すこしお気を抜かれていたようですね」
「え、ああ、まあ」
「それともお疲れですか」
「あ、いえ、そんなことは」
「そうですか、それなら…」

「千鶴さあ」
「あ、はい」

 海援隊石油化学部門担当部長:「菅野 覚兵衛」

「どうじゃろの、ここで千鶴さんから首相に鶴来屋の業務などをお伝えして差し上げるなどは」
「あら、それは良い考えですわね。それでは」

「ほっ」
「あら、菅野部長、どうかなされました」
「いっ、いやなんでもないっちゃ」

「そうですか、では加治首相、私ども鶴来屋についてを」
「はあ(なんです?)」

「私たち「鶴来屋ホテルグループ」はここ隆山の地に私たちの本拠となるこの「鶴来屋ホテル」を持っておりますほか、この隆山を中心とした地域で貸別荘、ペンション等のレジャー施設の経営を行っております」
「なるほど」
「あとは…そうそう、坂本社長から依頼されまして、TSL内の全ての宿泊・接客等のサービス事業を取り扱わせていただいておりますわ」
「ふむふむ」
「えと、あとは、たしかこんなところだったかしら」
「そうですか」
「ええ、それじゃあとは…そうそう加治首相に差し上げたい物が…」

「千鶴さん」
「はい?」

 海援隊製鉄部門担当部長:「高松 太郎」

「もう一つ大事なことがあったでしょう」
「あっ、そう言えばそうですね」
「説明してあげないと」
「そうですね、では加治首相」

「ほっ」
「あら、高松部長?」
「えっ、いやなんでもありません」
「そうですか」
「?(なんなんでしょうか)」
「それでですね、鶴来屋グループとしての新規事業として、シティホテル分野への進出があります」
「ほう、新分野へですか」
「ええ、坂本社長を始めとする皆様のお力添えもありまして、とりあえず高知市と高松市にまず一軒づつオープンさせる運びとなりました」
「ふむふむ」
「不安もありますけど。皆さんの協力もありますし」
「ほう…」

「あとは、この程度でしたかしら」
「そうですか」
「ええ、あとは…そうそう、わたくしの手料理を差し上げようと思いまして…」

「え゛」

「今日のは自信作ですの」
「そ、それは(汗)」
(ピーンポーン:千鶴さんのいわゆる「鬼をも倒す」と言われた料理の腕前については、インターミッション:POISON DARKをご覧下さい)
 あやうし加治首相
 この日本連合最高の宰相はここで哀れ命を落とすことになるのか

 しかしそこに救いの御子が現れる。

「ち・づ・る・さん」
「耕一さん」

 鶴来屋ホテルグループ副会長:柏木耕一

「千鶴さんが手料理作ったんだって聞いたんだけど(首相、お任せを)」
「ええ」
「(し、しかし)」
「ちょっと味見したいなあなんて(いいですから)」
「そ、そうですか(喜)」
「(だ、だが)」
「良かったらご馳走してくれるかなあ」
「ええ、耕一さんなら喜んで(はあと)」
「それじゃ、ちょっと良いかな」
「はあい、と、加治首相、失礼します」
「は、はい」
「では、っと耕一さん。あっ」
「おっとと、あわてないで。では加治首相、失礼します(気にしないでください)」
「そ、それでは(あ、ありがとう)」

 こうしてこの日本の名宰相はある一人の男の勇気ある行動によって難を逃れることが出来たのでした。
 そのあととある一人の男が鶴来屋ホテル内の医務室へ急遽担ぎ込まれたかどうかはさだかではありませんが。

「ふう」

 女神達3連打にちょいとお疲れのご様子の加治首相。しかし四国圏のアタックはまだまだ続くのであります。

「加治首相、よろしいですか」
「えっ」

Round4.「加治 隆介」VS「ラリー=シャイアン」

 誰もいなかったはずの背後から突然声をかけられる。驚いて振り向く加治首相。そこには何時の間に現れたのか一人の男が立っていた。

「ラリーさんがお呼びです。こちらへ」
「あ、ああ」
「アユミさんもご一緒に」
「え?」

 そしてこの案内の者に連れられ、二人は祝宴会場の「千歳の間」にほど近いとある一室に通される。
 そこには既に「四国圏の女神達」のうち重鎮の二柱「ラリー=シャイアン」と、「福岡 田鶴子」がいた。

「では、失礼いたします」
「ええ、ごくろうさま」

 ばたん

「彼は一体…」
「どうしました?」
「いえ…やはりお聞きすべきか」
「どうぞ」
「「アユミ」のことはどこまでご存じなのですか?」
「「アユミ」さん?…ああ、そのことでしたら例えば、『ブレイクスルー・シンドローム』関連のことと、『来栖川重工の新型機』という予測ぐらいですわね」
「…それだけですか」
「まだなにか?」
「いいえ、それならば、…ですが」
「なにかな?」
「ああ、彼にからかわれましたね」
「は?」
「ん?」
「ラリーさん、ほら以蔵君ですよ」
「ああ、なるほどな。だが…」
「まあ良いでしょう」
「それもそうだな」

「ど、どういうことなのでしょうか?」
「ご安心ください首相、「アユミさん」の件に関して知りうる人は四国圏でもごく僅かです」
「知っているのは我らと橋本主席、坂本社長ぐらいだ。今日彼女を着替えさせた三人もこの点は知らぬ」
「ではなぜ?」
「まあ、当然と言えば当然ですわ」
「彼が調べてきた情報だからな」
「ええ?」
「首相、我が四国圏もやはり政府として隠密裏の情報を調査しなければならぬ故、秘密裏の情報機関という物をもっております」
「で、私たちの場合には、ちょっと話せば長くなる事情という物がありまして、その情報機関を海援隊が抱えている訳なんですが」
「それはそれとして、その我が四国圏の情報機関を「海援隊・後方処理課」と申し」
「その「後方処理課」のトップが今の彼。「岡田 以蔵」課長ですわ」
「な…なるほど、そういうわけですか」
「しかし、今日のところは完全に裏方へ回るように言っておいたのだが」
「いたずら好きですからね」
「ああ、優秀ではあるのだが、ちょっと茶目っ気があるからな」
「四国圏にはそう言う、仕事だけじゃないちょっと特徴のある人が多いですからね」
「我らを含めてな」
「「「ははははは…」」」

「さて加治首相。我らが貴方を別室へお呼びしたわけは一つだ」
「端的に言えば、あそこでは出来ない話をするつもりです」
「わかっております。先程の続きですな」
「ええ」

「あ、あの私、席を外しますので…」
「いいの」
「え、しかし田鶴子さん」
「いいからアユミさん、貴方は立会人になってもらうわ」
「ええっ」
「私たち四国圏側が私とラリーさん、そして加治首相。それだけじゃダメなの。どうしてもここで何が話されたか何が行われたか、知っていてくれる人が必要なのよ」
「は…い」
「そしてその人は機密に触れられる人、そしてそれを漏らさない人でなければならない」
「はい」
「となると貴方しかいないの」
「はい、分かりました」
「ん。分かって貰えたわね。じゃ、よろしくね」
「はい」

「さて、我々がお聞きしたい事実と言うのは先程話し申し上げた」
「ええ」
「で、そのことなのだが」
「ちょっと待っていただきたい」
「ん」
「どこまでご存じかは知りませんが、その単語を知っていると言うことは、そのことが連合政府の機密事項に当たることもご存じですな」
「むろん」
「それを公開するには私の一存では出来ることではありません」
「ええ」
「そして、その機密事項は閲覧可能者以外が知っていると言うことはそれだけでも罪になります」
「ふむ」
「ゆえに…」
「そこまでで結構、要するに首相は四国圏が何処まで連合政府の機密を知っているかと言うことをお尋ねなのでしょう」
「まあ、そういうことになりますな」
「やはりな…ならば、これを持っていかれると良い」

 そう言ってラリーは一枚のデータディスクを手渡す。

「その中に四国圏が何を何処まで調べたか入っている故。ゆっくりご見聞なさるとよい」
「はあ」
「しかし、時限開封による暗号化がしてある故に、開けるようになるのは96時間後、首相が東京にお帰りになったあとです」
「ふむ」
「それまで無理に開かぬ方がよい。むろんコピーもだ」
「ふーむ」
「そのようなことをすればデータはもちろん使用した機器まで破壊することになります」
「ほう」
「気にはなろうが、機密保持の面もある。我慢下され」

Round5.「加治 隆介」VS「福岡 田鶴子」

「それでは、私の番ですわね」

 海援隊企画本部長「福岡 田鶴子」である。

「あ、はい」
「ふふっ、少々お疲れのようですね」
「い、いえそんなことは」
「それならよろしいのですけど」
「ええ」
「でもやはり手短に済ませましょうか」
「はあ」
「それでは…こほん」

 咳払いを一つ。きっちりと姿勢を正す田鶴子さん。そしてラリーさん。
 凛と張った空気が流れ、強い意志のようなものが加治首相にも感じられる。

「これから語る私の言葉は、少なくとも四国圏自治政府と海援隊の、そして四国圏の総意としてお聞き下さい」
「そうですか、それでは心して聞かせていただきます」
「私が四国圏の代表と成り代わりお話しいたします。私たちは融合直後から今日まで、貴方と貴方の考え方・あり方・その意志について、四国圏の総力を挙げて見、聞き、調べ、分析させていただきました」
「はい」
「そしてその分析の結果。私たちはある一つの結論に達しました」
「結論、ですね」
「ええ、それでは端的に申し上げさせていただきます。加治首相。我々は我々の総力を持って、貴方と貴方の政府を支持し、我々が出来る限りの協力をいたします。これは四国圏全てのものの総意としてお受け下さい」
「はい」
「しかし、それには一つの条件があります」
「条件、とは?」
「たった一つ、貴方が貴方であること」
「ほう」
「貴方自身が自らに背いて行動を起こさぬこと。ただそれだけですわ」
「…」
「そして万が一、貴方が貴方でなくなったとき、我々は全力を賭して、貴方に対抗させていただきます」
「ふ…む」
「よろしいですね」
「…はい、了解しました。あなた方の支持が得られるように、私は私であり続けることを此処に誓いましょう」

 その言葉を聞くと、田鶴子さんは、すっ、と立ち上がりそして加治首相に深々と頭を下げ最上級の礼をする。

「色々失礼なことを申し上げまことに申し訳ありませんでした」
「いいえ、そんなことはまったくありません」
「ただ、我々四国圏の意志として確実に伝えておきたく思いましたのでこのような形をとらせていただきました」
「いえ、十二分に通じましたよ」
「受け入れていただき有り難く存じます」

「さて、それではそろそろ戻りましょうか」
「そうだな。何時までも主客不在のままでおくわけにもなるまい」

Round6.「四国圏の女神達」VS「…」

 田鶴子さんとラリーさん、そして加治首相とアユミ=セリオがこのパーティーの会場に戻るとそこは既に…

 親父達の宴会場と化していた。

「こ…これは」
「マ、マスター」
「…」
「…」

「それいっきいっきいっきいっき…」

「さけはのーめのめ飲むならば〜」
「それがまことの黒田節〜」

「土佐の高知のはりまや橋で〜」
「坊さんかんざし買うをみた〜」

「知らぬ同士が〜小皿叩いて〜ちゃんちきおけさ〜」

 ちゃかぽこちゃかぽこ

「あ、あれは」
「田中国土相まで…」
「…」
「…」

 何か言葉を続けようとした加治首相ではあったが、自分の隣から何か異様な雰囲気を感じたためそちらを振り向くと…

 そこには妙に冷静な顔でしかしながらめらめらと何やらオーラを立ちのぼらせている田鶴子さんがいたのでありました。

(どーも、小さな一読者です。今回はこの「田鶴子さん怒りゲージ充填中」の間を使って、何故にこのような狂乱の親父宴会が発生したのかをお伝えしましょう)
(始まりは田鶴子さん及びラリーさんが加治首相とともに姿を消してしまったこと)
(これと同時に接待係に変装して隠し警護に当たっていたAMPの連中が姿を消し)
(残っていた女神様達もそれぞれの相方と共に会場を後にし)
(会場の親父率が一気に高くなったところでまず最初に「後&板」によるいかにも親父的な宴会芸が披露され)
(わずかに残っていた女性陣も一気に姿を消し)
(このような「親父達の宴会」となってしまったわけです)

「加治首相…」
「(びくっ)はいなんでしょう田鶴子さん」
「…しばらくの間席をお外し願えますか…」
「あ、ええ、はいはい」
「アユミさんもどうぞ」
「は、はい」
「ラリーさん、よろしくお願いします」
「ああ、了解した」
「ええ、では」
「それでは加治首相、アユミさん。こちらへ」

 と、ラリーさんによってあっという間に「千歳の間」から連れ出される加治首相とアユミ=セリオ。と、そこには「坂本 佐那子」竜馬夫人がいた。

「あ、ラリーさん」
「ああ、佐那子さん」
「ちょどよかった、田鶴子さんは中?」
「うむ、ちょうどこれから始まるところだ」
「ん、タイミングばっちりね。じゃ、あとよろしくね」
「ああ、そちらもお願いする」
「りょ〜かい〜」

 というと、ひらひらと手を振る佐那子さんの姿が吸い込まれるように「千歳の間」へと消え、そして彼らの目の前で扉がゆっくりと閉まっていったのである。

 がっちゃん

「そ、そのラリーさん」
「ん?」
「一体何が?」

 あまりの状況に固まってしまっている加治首相に代わり、アユミ=セリオがラリーに問いかけた。

「んー…そうだな」
「?」
「世の中には知るべきでないものもある、ということだ」
「???」

「さて、加治首相」
「あ、はい」
「お部屋の方へ案内させよう」
「ああ、はい」
「坂本社長と、うちの主席から挨拶させようとも思っていたのだが、この様子では無理だ」
「はあ」
「明日からの予定はまた後ほど連絡する故、ゆっくり休んでくだされ」
「ええ、わかりました」
「では、失礼する」

 と言うわけで、加治首相とアユミ=セリオは案内のものに連れられて部屋へお帰りになった訳なんですが、はてさて、今宵、鶴来屋ホテル「千歳の間」においては一体何が起きているので御座いましょうか??

「『知るべきものでないものもある』と言っただろう?」

 はあい、ラリーさんごめんなさあい。

 つづく

<なかがき>

 さて此処で問題です。
 混乱と酒乱と怒りが渦巻く「千歳の間」へ、「坂本 佐那子」竜馬夫人は何をしに入っていったのでしょうか? 次の3つから選んでください。

1.田鶴子さんを援護する為に入った。
2.田鶴子さんに協力する為に入った。
3.田鶴子さんの支援の為に入った。

「あのう…」
 ああ、アユミさん。どうかなさいました。
「上のクイズなんですけど…」
 はい。
「『止めに入った』っていうのはないんですか?」
 ええ、ありません。
「そ、そうなんですか」
 だってその方が面白いじゃないですか。
「はあ…」
 さあて正解は!
「そなたが自分で見てくるのだな」
 えっ…って、きゃーラリーさんやめてええええ

 がちゃ
 ぽい
 ばたん
 しーん

「あのう…」
「ん?アユミさんか、ちょうどよかった。これを読んでくれ。さっきの男が残していったものだ」
「あ、はいわかりました」

 次回予告
 次回は加治首相四国圏訪問の二日目。
 四国圏経済の心臓部の一つでもある高知周辺を紹介しながら四国圏が取り組んでいるプロジェクトについて加治首相と皆様にご紹介いたします。
 あまり期待しないでお待ち下さい。

「ん、ご苦労様…と、ああ、私だ、うむうむ、なるほど。了解した。…アユミさん」
「はい?」
「加治首相がお呼びだ」
「はい、分かりました」
「共に参るぞ」

 二人は消え、後に残るはたった一つの扉のみ。
 次に入るは、さてどなたかな…。

<アイングラッドの感想>
 四国女神陣、怒濤の如くの波状攻撃ですねー。
 見事な「攻撃」ではありますが、接待の場ではゲストにストレスを与えない様にしないと。
 逃げられてしまいますぞ。(苦笑)
 では、今後の加治首相の無事を願いつつ次回の投稿を心待ちにしています。
 それでは。




日本連合 連合議会


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