時に新世紀元年五月、後に「RYOMA」の名の元に世界的な大企業として大成功を遂げる「海援隊」誕生の瞬間であった。
「ええと、やっぱりちょっと派手じゃないかしら…」
「そんなことないって、よく似合ってるよ」
「姉さん…綺麗」
「そうだよお姉ちゃん。自信持ちなよ」
新世紀2年3月、四国は高知、隆山市に所在する四国最高級のホテル「鶴来屋ホテル」の結婚式場控え室である。そこでは今日の晴れの日の主役である花嫁、「鶴来屋ホテルグループ」のオーナーであり会長である「柏木 千鶴」が妹たち「梓」・「楓」・「初音」の手を借りながら花嫁としての支度をしていた。最も花嫁の飾り付け自体は会場の係りの女性が行ってしまい、妹たちの役目としては不安がる花嫁の励ましといったところで、千鶴さんにおいては唯言われたとおりに飾り付けられているという状況であった。
「でも、やっぱりそのあの…」
「だああぁ、しつこいぞ千鶴姉」
「千鶴姉さん…15回目…」
「梓お姉ちゃんも楓お姉ちゃんも言い過ぎだよう」
コンコン
「ん?誰だろ。初音、見てきてくれる」
「はーい。どちらさまですか」
「俺だけど、入っていいかな」
「耕一お兄ちゃん。うん、いいよ」
「は、初音。ちょ、ちょっと」
「何言ってんだ千鶴姉。花婿さんのお出ましだろ」
「耕一さん。もう準備は出来てますからどうぞ」
ガチャ
「ういっす。えー…と、千鶴さんは?」
「何言ってんだ、千鶴姉なら…あれ?」
「千鶴姉さん…」
「千鶴お姉ちゃん。こんなところに隠れないでよう」
「(わたわた)」
「はあ…初音、いいからそのまま引っ張ってきて。楓も頼む」
「(こくり)」
「ちょ、ちょっと待って初音、楓、梓も」
「千鶴姉、往生際悪いぞ」
「耕一さん…待ってます」
「早く行こうよ、千鶴お姉ちゃん」
「そ、そんなに押さないで…きゃっ」
「おっと」
バランスを崩して転びかけた千鶴はそのまま耕一の胸に抱きかかえられる格好になる。
「こ、耕一さん…」
「千鶴さん…」
「おほん」
「あっと」
「きゃっ(*・・*)」
見つめ合っていた二人は慌てて離れる。
「ったく千鶴姉も耕一もさあ、まだここにはアタシも楓も初音もいるんだよ」
「耕一さん…場所を考えてください」
「(ドキドキ)」
「(ぽりぽり)」
「あ、あなたたち…」
「ま、いいや。アタシ達は会場の方に行ってるから。あとはごゆっくり」
「ドレス…しわにしないでください」
「(ドキドキ)」
「ちょ、ちょっと」
「じゃーねー」
ばたん
「もう、あのこたちったら…」
「まあまあ千鶴さん、そんなに怒らないで…」
そう言いながら千鶴を抱き寄せる耕一、見つめ合う二人。
「耕一さん…」
「千鶴さん」
「そ…」
「そ?」
「そんなに見つめちゃいやですぅ(*//o//*)」
ズダダダァ
「お、おい、お前ら何してんだ」
「何してんだじゃないよ千鶴姉。あれがこんな時に言う台詞かぁ!?」
「千鶴姉さん…あれはまずいと思います」
「(ドキドキ)」
「そ、それは…ってなんであなた達が知ってるのかしらぁ」
「へっ…そ、それは」
「あなた達…覗いてたわねえ(しゃきーん)」
「ちょ、ちょっと千鶴さん」
「あなたを…殺します」
「ち、千鶴さんこんなところでやめてくれぇ!!」
「わぁ!ちょっ、ちょっと待って千鶴姉ぇ!!」
「聞く耳持ちません」
「だから千鶴姉ぇ!、覗いてたのは私らだけじゃないんだからぁ!!」
「誰であろうと…え?」
「お、おう」
「って、坂本さんまで…きゃあっ」
真っ赤になった顔を両手で隠していやんいやんする千鶴。それを宥めながら耕一が坂本に問いかける。
「坂本社長まで覗いてらしたんですか?」
「い、いやわしはのう。そろそろ時間じゃって呼びに来たらなんぞ柏木の妹さん方がドアの前に鈴なりになってたんでの、なんぞあるのかと思ってなあ」
「で、覗いてらしたんですか」
「いやじゃからそういうことじゃなくてのう…って佐那子いつのまにぃ」
いつのまにやら坂本の後ろに坂本夫人「坂本(旧姓千葉) 佐那子」が立っている。
「さ、佐那子さん」
「まったく呼びに行ったこの人が帰って来ないと思ったらこんなところで遊んでるし…、お二人さん、そろそろ時間ですよ。式場の方へいらしてくださいな」
「そ、そうじゃそれを言いに来たんじゃ」
「ほらあなたも良いからさっさと行きますわよ」
「い、痛いって佐那子よぅ…い、行くからそんなに耳をひっぱらんで…い、いたたた…」
「まったくあの人達は何処にいても変わらんな…って千鶴さんどうしたの?」
「いえ、あの子達に覗いてたこと叱ろうと思ったらいつの間にか消えてて…まったく、あとで覚えてらっしゃい」
「あははは…(汗)」
そして時間は流れて式も終わり、披露宴会場へ。
鶴来屋ホテルの大広間で立食パーティーの形式で行われていたのである。
その賑やかにて華やかな会場の一角である二人の男がなにやら談話中であった。
「…それじゃ竜馬よ、「生ゴミ処理・メタンガス供給」のシステムの方は大阪でやっておるのと一緒と考えていいんだな」
「そうじゃ大二郎さあ。ちょこちょことした改良は入るかもしれんがな、基本的には能勢町のと一緒じゃあ」
「ふんふん…」
「どうもこの度は足をお運びいただきまして…」
「っと、今回の主役の片割れの登場じゃ」
「いいのかい耕一君。花嫁さん放っておいても」
「ええ、千鶴さんの方にもなにか挨拶したい人がいるようでしたから。それに四国を動かすお二人、海援隊の坂本社長と橋本知事に挨拶しないわけには行きませんから」
「あはは、そんな大したもんじゃないぜよ。四国を動かすなんぞオーバーじゃ。わしはしがない会社の社長じゃ。大二郎さあは違うがの。高知県知事なんぞやっちょる思うたら、今度は四国自治政府のトップじゃと」
「お、おい、そこまで言わんでも」
「なーに言っちょう。お前さんがわしら高校の同期んなかでも一番の出世頭なんじゃからの、もうちっと胸張れ胸を」
「そういえばお二人は高校の時の同級生でしたね」
「ま、な。でもわしは卒業して東京の大学へ行ったがの、こいつは高知大にそのまま進んでの、あれよあれよと言う間に県知事にまでなっちょったわい」
「まだ言うか。竜馬じゃとて戻ってきたと思うたらいきなり会社を興して、その会社がこの時空融合の後、あっと言う間に四国No.1の大企業にまでなってしまったんじゃないかい」
「あはは、まあそん話はここまでにしとこうかい。そうそう言うのを忘れちょった。耕一さあ。今ん度は結婚おめでとうじゃ」
「そうじゃな。まずは結婚おめでとう。それに相手が柏木千鶴さんじゃしの。あの美人と結婚できるとは、ちょっと羨ましいの」
「お二人ともありがとうございます。でもそんなに言われると…」
「まあ、美人の嫁さん貰った代わりじゃ…と、噂をすればじゃ」
そこには花ウェディングドレス姿の鶴来屋ホテルグループ会長「柏木 千鶴」と、海援隊企画本部長の「福岡 田鶴子」、イーディスの営業本部長「高原 彩理」が集い楽しそうに会話を弾ませていた。
「うーん。「四国財界三美神」揃い踏みじゃの」
「何ですか坂本社長、「四国財界三美神」って?」
「ああ、竜馬もあの記事読んでたか。いやこの間週刊誌に載ってたんじゃがな。あの三人こそが、四国財界の誇る三人の美女であり才女。ということじゃそうな」
「なるほど、そういうことだったんですか」
「そういうことじゃ耕一さあ。そのうちの一人を嫁さんにしちまったんじゃからの。どんなんからかわれても文句は言えんじゃろ」
「またそれですかあ…」
「みなさんこちらにいたんですか」
「おお、仁村君か」
「もう一人のからかわれ役が来たじゃいの」
「?」
「いやね、今耕一君の話をしてたんだ」
「それが桐生君聞いてくれ」
「ええ何です耕一さん」
「坂本社長も橋本知事もひどいんだよ。「四国財界三美神」のうちの一人を嫁に出来た幸せ者なんだから、どんなにからかわれても文句言うなって」
「ああ、そういうことですか」
「で、ここにもう一人からかわれ役が来たということじゃ」
「え?」
「なに言ってんだい仁村君。君もすぐだろう」
「ええ?」
「高原さあとのお話じゃよ」
「はあ…ってみなさん知ってらしたんですかぁ!!」
「何言ってるんじゃ仁村君。みんな知らんとでも思ってたのかい」
「結構有名な話だよ。桐生君と彩理さんとのなれそめとか」
「あうあう…」
「ま、仁村んもイーディスの開発一課の課長さんから四国電通の技術部長なんちゅう忙しい役についちまったからの。一段落ついたら、いうところかの」
「ええまあそんな感じでというふうに彩理さんとも話してますが…って何を言わせるんですかぁ!」
「って自分で話してるんじゃないか仁村君」
「ああうあうあう」
「で、結婚式場はやはり鶴来屋かい」
「そいがいいっちゃな。耕一さあも割引ぐらいしてくれるっちゃろ」
「あわあわあわ」
「みなさん盛り上がってるようですね」
「おお、これは「ジャストソフテム」の開発本部長」
「ああ、四加君」
「聞いてよ一樹君、二人ともひどいんだ」
「そうそう、俺らやられっぱなしなんだよ」
「?」
…
「しかしそうそうたるメンバーがここに集まりましたね」
「そうじゃな。まず四国自治政府行政委員会主席」
「海援隊グループ社長」
「四国電通の技術部長に、ジャストソフテム開発本部長」
「そして鶴来屋ホテルグループ次期会長と、四国を握る面々が見事に集まってる」
「うんにゃ違うぞ」
「ん?どういうことじゃ竜馬さあ」
「こん四国を握っちょるんはわしらじゃなくて、あそこに集まっちょういうことじゃ」
と、坂本が指したその先には、いずれアヤメかカキツバタ、いずれ劣らぬ美女達がきゃらきゃらと賑やか華やかにお喋りを楽しんでいた。
「…なるほど」
海援隊企画本部長「福岡 田鶴子」
イーディス営業本部長「高原 彩理」
鶴来屋ホテルグループ会長「柏木 千鶴」
四国電通社長兼ジャストソフテム営業本部長「真田 三月」
四国自治政府財務委員会委員長「ラリー=シャイアン」
…「あそこにいる女性陣に「おば(ピー)」とか言ったりしたらどうなるじゃろの」
「…考えるだに恐ろしいぞ」
「な・に・か」
「(ぶんぶん)」…
<後書き>
どもども、お久しぶりの小さな一読者です。
今回はですねえ、初めて海援隊以外のキャラが表に出てきましたですね。はい。
今回は題名にあるように結婚式とそれに併せて四国の状況(時に経済界)について出してみました。
…苦労しました。
柏木四姉妹の書き分けとか。
イーディスの二人(彩理さんと桐生君)の性格が違ったりしてないかなとか。
中でも一番苦労したのが…
ジャストソフテムの二人と財務委員長を誰にやって貰うかという…
あまり本筋に関係ないですね。
しかし本当に悩みました。
前に「四国にはそこを舞台にした作品がないので好き勝手出来る」などと申しましたが、間違いでした。
使えるキャラがいないんです。
といってオリキャラはあまり出したくないですし。
困った困った。
取り敢えず今回は「デュアル!」(真田さんと四加君)と「サイレントメビウス」(ラリーさん)を引っ張ってきましたけど。
これもあまり…。
なのでお願いです。
私にぜひこの「四国」で使えそうなキャラクタ並びに作品を教えてください。
よろしくお願いします。
ではまた。小さな一読者でした。
P.S.本作品内にも出てきた「おば(ピー)」発言ですが、実際にやってくれた人がいるそうです。
その人、「A Little Reader」氏(仮称)は、発言した直後に、
・田鶴子さんと彩理さんのハイヒールによるテンプルへのダブルハイキックを受け。
・三月さんのどこぞから呼び出した謎の巨大ロボによってぺしゃんこにされ。
・千鶴さんの鬼の爪によってずんばらりん。
・ラリーさんが呼び出したMIBによってボコボコにされ。
どこかへ運び出されたあと行方不明だそうです。
その後、
・別子銅山の無人のはずの坑道から聞こえる謎の採掘音。
・財務委員長室に飾ってある素潜りで捕まえたとしか思えない謎の深海魚。
・伊方原発の炉心の水アカを掃除する謎の人影。
等が噂として流れました。
かの噂に関して女性陣に問うて見たところ、
「微笑み(ただし目は笑っていない)」が返って来たそうですが。
あな恐ろし。
<アイングラッドの感想>
今回はそうそうたるメンバーが揃い踏みですねぇ。
いよいよ四国の方も充実してきてこれから如何に、と続きが待ちどうしいです。
私は「BREAK−AGE」はチラッとしか知らないのでコメントを控えますが、「デュアル! ぱられるんるん物語」まで出てきましたか。
ちょっと私信なのですが羅螺博士と真田博士は貸してくださいね。
数少ない時空工学博士、少しばかり学会で鷲羽博士と対立してもらうつもりですので。
とすると南条院グループをどうしよう・・・。まぁ麗香さんだったら「四国財界三美神」に入れなくても問題はないですしね。
「無礼者!」 ガスッ うごぁっっ!!
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・
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皆さん、感想を書きましょう。ではでは。
PS.まだ九州地方と東北地方、北海道が空いています。
またこの世界では日本海側も中華共同体との交易に便利が良いためお買い得です。
随時投稿受付中です。