四国は土佐、高知県にて。
「こいはチャンスぜよ」
高知県高知市、とある会社の会議室にて男がつぶやいた。
「どういうことじゃ?坂本さあ」
初めにつぶやいた男の名は「坂本 竜馬」、それに問い返したのは「中岡 慎太郎」。二人はこの高知県高知市に本社を置く中堅商社「亀山社中」の社長と重役である。
彼らの会社は元々高知県を中心とした四国にて商売を行っていたのだが、今回の時空融合による混乱に巻き込まれてしまった。その中で何とか連絡の取れた社員達を集め、今後の会社の方針についての会議を行っていたのである。
「みんな昨日のニュースは見たろう?」
「ああ、日本臨時政府ちゅうのが成立して、加治隆介とかいう人が代表に選ばれたとかいう話やろう」
営業本部長の「武市 半平太」が答える。
「だが、そいでどうなるちゅうことでもなかろうが」
財務本部長「岩崎 弥太郎」が続ける。
「うんにゃ。わしはあん人は信用できるち思うちょる。たぶんこんわちゃくちゃもあんお人を中心としてまとまりがつくっちゃろ。東京の方はこれで平気やろう」
「じゃが坂本さあ。東京の方はそれでまとまる言うても、こっちはどうするんじゃ?取引先やらなんやら、みーんな無くなってしまったんやぞ」
営業2部長「板垣 退助」
「そうじゃ。今までの取引先やらほとんど消えて、代わりに聞いたことの無いようなお人や会社ばっかりになってしもうたわ」
営業1部長「後藤 象二郎」
「そこじゃ」
「どこじゃ?」
総務部長「池 内蔵太」
「ぼけとる場合やないぞ池さあ。わしらが今までの取引先やなんやらばらんばらんになって無くなってしもうて困っちょうちゅうことは、おんなじ様に別の世界からやってきた人も困っちょうちゅうことじゃ」
「なるほどのう。そういう様に考えてみれば、これは大変な新規開拓のチャンスちゅうこっちゃのう」
「さすがじゃのう武市さあ。そういうことじゃあ。そういう風に右も左もわからんで困っちょる所とどんどん取り引きしていけば、苦労せずに商売相手が広がるちゅうもんじゃ」
「じゃがのう坂本さあ。そんな右も左もわからんでうろうろしちょる会社にいきなり行って、「商売してください」ちゅうても、相手が信用してくれるかのう」
「そうじゃなあ岩崎さあ。いきなりようわからんお人がうちとこ尋ねてきて、「お願いします」言われても、こっちとしても困るきに。同じ事になりゃせんか?」
「そこじゃ中岡さあ」
「どこじゃ?」
「そんぼけはもういいぞ池さあ。確かに知らん会社ん人がいきなり尋ねて行っても、そりゃあ信用はされん。だがそれはみんな同じことじゃ。そこでじゃ」
「どこでじゃ?」
「いいかげんにせんかい池さあ。そこでわしは思ったんじゃ。今の段階では確かに実績がのうて知られてないきに信用もされん。ただ実績いうもんをいきなり作りだすんは無理じゃ」
「確かになあ。今この世界で「亀山社中」ちゅうても何人の人が知っちょるかのう」
「そういうことじゃ。まずは知って貰うちゅうことが先決じゃ。そこでわしは考えたんじゃ。この「亀山社中」ちゅう社名を思い切って替えて、新しい名前でばばーんと世間の人に知って貰うんじゃ」
「ほほう、なかなか良い案じゃのう。で、そう言う案が出てくるっちいうことは、何か新しい名前について坂本さあの考えはあるんじゃろ?」
「そうくると思ったぞ中岡さあ。実はもうここに考えてあるんじゃ」
そう言って坂本は懐から一通の封筒を取り出す。
「ど、どんなんじゃ。もったいつけちょらんではよう見せんか坂本さあ」
「そんなにあわてんでも逃げやせんて。落ちつけ板垣」
「じゃと言うたかて気になるっちゃろうが後藤。おんしは気にならんのか」
「二人とも今見せるから待っちょれ。ほら、これじゃ」
中から一枚の折り畳んだ紙を取り出し、二人に渡す。慌てて広げ、読み上げる二人。
「「…として下記の金額を頂きました。3万2千円。クラブ東洋…」」
「な、なんじゃそれは」
「ああっ間違えたっちゃ。それはこの間飲みに行った時の領収書じゃ。岩崎さあに交際費で落として貰うつもりでずうっと持っとったんじゃ。こっちじゃこっち」
坂本は慌ててもう一通の封筒を取り出すと中から便箋を取りだし、皆に見える様に掲げる。
「「「「…海・援・隊…」」」」
「そうじゃ。我らはこの国を海から支える海援隊じゃ。そしてもう一つ。海援隊のブランドとしてこれをつけるんじゃ」
「「「「…RYOMA…」」」」
「そうじゃ。我らはこの名と共に、龍のように馬のように天高く駆け上るんじゃ」
「海援隊。RYOMA。良い名じゃなかろうか。わしは賛成じゃ」
「そうじゃのう。何かこうぐんぐんと昇っていく感じがするのう」
「わしも依存はないぞ。坂本さあにしては良い名をつけたものじゃ」
「そういう言い方は無いじゃろうが武市さあ。坂本さあがかわいそうじゃ」
「はっはっは。問題ないきに岩崎さあ。これで決まりじゃな。我らはこれから「海援隊」として「RYOMA」の名の下に日本、いや世界相手に商売をするんじゃ。皆の衆!わしらは共に世界に羽ばたくぜよ!」
「「「「応!」」」」
時に新世紀元年五月、後に「RYOMA」の名の元に世界的な大企業として大成功を遂げる「海援隊」誕生の瞬間であった。
…「坂本さあ。さっきのは交際費では落ちんきに」…
…「そがいなこと言わんでや、この通りじゃ岩崎さあ。これが落ちんかったら、わし嫁さんに殺されるっちゃ」…
始めまして。このように表にでてくるのはこれが私の初めての作品となります。小さな一読者と申します。
このSF大戦を読んでいまして、何とか自分でも参加出来ればと考えました。
そう視点から幾度か読み返して見ると、本編はアイングラッドさんが書いていらっしゃいますし、政治については岡田”雪達磨”さんがとても良いものを持っていらっしゃいます。
何か入り込める隙が無いか。ということで、民間の何も知らずに巻き込まれてしまった人々についてなら書けそうだということを狙って見ました。
さて、作品の解説なんですが。これには一応元ネタがあるにはあるんですが、ネットサーフィンをしていて偶然見つけたSFで、近未来を書いた作品がありまして、その更に設定の一部として、「海援隊」という会社名と、「RYOMA」というブランド名がでてました。その一文をヒントとして、あとは司馬先生の「竜馬がゆく」を参考に書いたのがこれです。
ただ、元ネタとしたといっても「海援隊」と「RYOMA」だけなんで、ほとんど私のオリジナルと言っても良いかも知れません。
でも、オリジナルといっても大元は日本史ですから。オリジナルとは言えませんね。
一応登場人物は、坂本竜馬と同時代の土佐藩の志士の名を使って見たんですけど。結構むちゃくちゃですね。
あと、大問題なのが、彼らのしゃべっている言葉です。高知に行ったこともない私ですが、頑張って土佐弁の雰囲気を出して見ました。が、恐らくというか400%ダメダメでしょう。私の手元にある土佐弁のテキストなど、さっき上げた「竜馬がゆく」ぐらいしか無いもので。ごめんなさい。
うう、書いては見ましたがアイングラッドさんの作品の方針に一致するでしょうか。
採用されれば幸いです。
これが良ければ次としては…もうちょっと本編に絡めたものを書くべきでしょうか。
では、この辺で。小さな一読者でした。
<アイングラッドの感想>
小さな一読者さんありがとうございます。
楽しく読まさせていただきました。
バッチグーです、グーッ!
基本的に私はこの世界で一番派手なところを書くので手一杯なので加治首相を主役に政府関係を固めてくれた岡田”雪達磨”さんや、WWII の艦船の改装案を考えてくれたVer7さん(まだ設定をアップ出来なくて申し訳有りません〜m(_ _)m。駆逐艦綾波級の近代化改装案を貰っているのですが、もう少しお待ち下さい)、そして第三の男、小さな一読者さん。
こうして一般市民の視点から見た、時空融合後の世界、有る意味一番共感できるかもしれません。
どうも、ありがとうございました!