「理津子、ちょぉーっちお願いがあるんだけど…」
新世紀元年、九月。夏休みも終わり新学期が始まったばかりの頃。
第三新東京市で中学教師を勤める葛城美里は、同僚である赤木理津子と顔をあわせた途端、両手を合わせて彼女に頼み込んだ。
「何? 先に言っておくけど、お金なら貸さないわよ。麗を引き取っていろいろ物入りだったんだから」
「うっ、いきなり厳しいわねー」
「別に、あなたが毎日ビールを一本ずつ節約すればいいだけのことよ。次の給料日まで我慢しなさい」
「えびちゅは私にとって命の水よ! 英語で言うなら"Aqua Vita"!」
「それ、ラテン語よ…」
理津子のツッコミに、美里はアハハと軽く笑って誤魔化した。まぁ、付き合いの長い両者にとってはほんの挨拶代わりというところであろう。教師が職員室で話す話題としてはイマイチ不適当かも知れないが。
「それより理津子、今回は知恵を借りたいの。まぁ、これを見て」
そう言って美里が差し出した携帯端末の液晶画面には、あるアドレスが表示されていた。
「ネットオークション? いったい何を競り落とそうというの?」
携帯端末の情報を自分のパソコンに転送し、理津子はカチャカチャとキーボードを操作する。1〜2秒のタイムラグの後、モニターに情報が表示されていく。
ちなみに、この時点でインターネットは第三新東京市やGアイランドなどの大都市のみだが回復している。
「中古自動車… あのフェアレディーZ、事故って廃車にでもしたの? その割には、怪我が無くて良かったじゃない」
「違うわよ! 事故ってないって! コレはカーマニアの夢なのよん」
美里はグイッと胸を逸らし、自慢げに解説を始めた。
「時空融合のおかげで様々な時代の車がたくさん出現したわ。それで中古車市場は凄いことになってるんだけど、その中でも、ここはマニア向けにセレクトされたものばかり扱ってるの」
「どれどれ… ポルシェでしょ、これはフェラーリ… うわ、ランボルギーニ・カウンタックまであるわ」
カーマニアである美里と付き合いが長いため、理津子もスポーツカーに対する知識は一通り持っている。
「確かに、ヨーロッパがあの状況じゃ、これ以上輸入されないわけだしね」
「ふふん、理津子、まだ目の付け所が甘いわね。国産車にも凄いのがあるのよ」
さすがに理津子は国産車の方まで覚えていないので、美里が一つ一つ説明していく。
「これはブルーバード510、サファリの覇者ね。これはコスモスポーツ、MATにも納入されている、日本初のロータリーエンジン搭載車。これは…S2000、私たちにとっては幻の車ね」
「幻?」
「えぇ、私たちの世界ではセカンドインパクトがあったから」
「違う世界から来た車なのね…」
二人ともセカンドインパクト後の苦しい時に青春時代を過ごしたので、この話題になるとちょっと遠い目をしてしまう。
六分儀源道と碇唯の尽力によりセカンドインパクトは最小限に抑えられたが、それでも地球規模での災害だったのだ。
「…そして! これよ! 今回の目玉!」
気を取り直して二人はカタログチェックを再開し、美里はビシッとモニターの一点を指差した。それはノーズがぐいっと張り出した、綺麗な流線型のボディを持つ車だった。
「あら、国産車にしては随分と大胆なデザインじゃない」
「トミタ2000GT。映画『007は二度死ぬ』のボンドカー、60年代の世界的名車よ。技術も価格も当時の最高峰だけあって、300ちょいしか生産されてないんだけど」
「本当にレア物なのね。最低落札価格を比べても、他のものより一桁高いわ。 …美里、一介の中学校教師の手に届くものじゃないわよ。素直に諦めたら?」
「諦めきれないから相談してるんじゃない。2000GTを手に入れる機会なんて、おそらくこれが最初で最後よ …っと、もうこんな時間?」
そこで始業を知らせるチャイムが鳴り、美里は慌てて教室へと走っていった。
理津子は小さくため息をつきながら親友の背中を見送り、それからモニターに向き直った。
「旧車なんて、性能も燃費もメンテ性も、悪いことづくめじゃない。だいたい、今のご時世ガソリンが幾らすると思ってるのよ。美里程度の収入じゃ、維持するだけでヒーヒー言うのが目に見えているのにね」
そう言いながらも、理津子の視線は2000GTの画像に釘付けだった。
なぜだか彼女には、この車に蒼髪の愛娘が映えるような気がしてならなかった。
同時刻、第三新東京大学のある研究室で。
「冬月先生、随分とニヤニヤしているようですが、何を見ておられますかな?」
冬月孝三が見ていたパソコンモニターを後ろから覗き込むようにして、碇源道は彼に声をかけた。
「! 何だ、碇か… 脅かせおって」
「ほほぅ、スポーツカーですか。しかし、トミタ2000GTとは珍しい」
「ああ、私の子供時代からの憧れの車だよ。元から生産数が少なかったうえに、セカンドインパクトもあったからな… こうして再び会える日が来るとはな」
どこか遠い目をしながら語りモードに入ろうとする孝三。源道は年寄りの長話を遮るべく、皮肉っぽい言葉を投げかけた。
「ふっ、冬月先生にこの車は厳しいのではありませんか? その歳でスポーツカーとは、年寄りの冷や水と言われてしまいますよ」
「何だとっ!」
「このような名車には、私のようなナイスミドルが似合うのです」
ニヤリ、と無気味に笑う源道に、孝三も額に青筋を浮かべながら反撃した。
「何が“ナイスミドル”だね。お前のような悪人面には黒塗りのベンツがよく似合う」
「ふふふ、そうですかな? では冬月先生、想像してみてください。ピカピカに磨きたてられた白の2000GTに、私と唯がいるところを」
「シンジ君はどうしたのかね?」
「ふっ、2000GTは2シーターですよ。それに夫婦水入らずの場に真司など邪魔者は不要です。せいぜいトランクルームといったところです」
「…それはさすがに扱いがひどくないかね?」
「では、真司は響子のところに預けましょう。いや、いっそ響子に売り払ってしまいましょうか。2000GTの購入費用に化けてくれるなら親孝行というものです… ん? どうしました冬月先生… ハッ!」
引きつった顔をしている孝三に異変を感じ、源道は慌てて振り返った。するとそこには、源道の妻である碇唯が額に青筋を浮かべながら立っていた。
「真司を響子のところに売り払う… 逆でしょう? うちが明日香ちゃんをゲットするんじゃなくて?」
「ち、違うんだ、唯! 今のはジョークであってだな… あ、痛たたっ!」
唯に耳を引っ張られ、源道は情けない悲鳴を上げた。もちろん、それだけで済まされるはずもない。源道はそのまま唯に連行されていく。
「ふ… 碇め、恥をかかせおって」
「冬月先生、うちの亭主にベンツが似合う理由、後でお聞きしますから」
孝三は場を取り繕うようにそっと呟いたが、唯の有罪宣告からは逃れられなかった。
時空融合後、中東アジアからの輸入が途絶えたため、日本は石油難に陥った。
三大財閥の備蓄放出と中華共同体から輸入することで、深刻なオイルショックは回避された。しかし自衛隊の軍備増強や公共工事(電力、通信網、交通路の確保など)が優先されたため、一般庶民に回ってくる石油量が充分とは言えなかった。
ガソリンエンジンに替わる自動車、というものは1990年代から実用化に向けて研究が進められていた。エタノールや天然ガスを燃料とするものや電気自動車などがその代表的なものである。
だが、それらはなかなか普及しなかった。燃費性能や製造コストでガソリンエンジンを上回っても、“どこでも簡単に補給できる”というインフラ整備に莫大な金額がかかるからである。
石油は合成樹脂など化学合成技術の原料としても重要である。そして日本は、石油エネルギーよりクリーンなエネルギー源をいくつか手に入れた。
石油難という事態は、石油代替エネルギーが普及するチャンスでもある。政府はそう考え、国策として新エネルギー源について検討した。以下、主なものを挙げてみよう。
注:この表には新世紀元年9月時点で未発見のものも記載してあります。
技術レベル | 名称 | 解説 |
---|---|---|
技術的に 量産不可 | 縮退炉(1) (トップを狙え) | 炉内にマイクロブラックホールを2つ持つ。 新世紀元年8月、沖縄で宇宙戦艦トライオン& マイクロガンバスター発見される。 |
縮退炉(2) (トップを狙え) | 常温で重力縮退する物質、氷の同位体である アイス・セカンドを燃料とする。 縮退炉(1)や対消滅エンジンと混同されやすい。 | |
対消滅エンジン (ナディア) | 炉内で反物質を精製する。 新世紀2年5月の時点ではノーチラス号は存在未確認。 | |
パラジウム・リアクター (フルメタル・パニック) | パラジウム(元素記号Pd)を触媒に使った 常温核融合炉。アメリカにライセンス供与。 パラジウムの産出地はロシア・アメリカ・南ア。 新世紀2年5月の時点ではミスリルのみ保有 |
|
相転移エンジン (ナデシコ) | 真空をより低位の真空にしてエネルギーを獲得。 大気圏中では非効率。 ナデシコが掘り出されるのは新世紀元年9〜10月 | |
重力波ユニット (ナデシコ) | エステバリスに搭載。 ナデシコから放出される重力波ビームが必要。 ナデシコが掘り出されるのは新世紀元年9〜10月 | |
WAP型ハイドロエンジン (フロントミッション) | 水を動力とする画期的なエンジン。 防衛省防衛技術研究所で解析中(軍事機密) 新世紀2年3月の時点ではまだ解析中 | |
タキオンエンジン (グロイザーX) | 別名、波動エンジン。超光速粒子タキオンを 用いるらしい。 | |
ムーロボットの核融合炉 /内蔵電池(オーガス) | 燃料電池は交換・充電不可で寿命は100年くらい。 新世紀2年4月、邦人救出作戦にてムーと交戦、サンプルを 入手。 | |
素材的に 量産不可 | S2機関 (エヴァ) | 使徒のエネルギー源。国家機密? 新世紀元年9月、サキエルを倒してコアのサンプルを入手。 |
光子力 (マジンガーZ) | 稀少鉱物ジャパニウムが必要。 量産型グレートマジンガーや打撃護衛艦ヤマトに搭載は 可能だが、広く民間に普及するだけの量産は不可能。 | |
ムー戦闘ロボットの ステルス装甲板 | レーダー波を熱と電気に変換する。 新世紀2年4月、邦人救出作戦にてムーと交戦、サンプルを 入手。 | |
リンカージェル (ベターマン) | 古細菌の一種。特殊な脳内インパルスに反応し 高エネルギーを生む。 科学研究機関モーディワープの門外不出品。 使い手を選ぶためこの分類にしました。 | |
霊子力機関 (サクラ大戦) | 人間の持つ霊力を霊子水晶で変換・増幅し、 機械動力とする。 使い手を選ぶためこの分類にしました。 | |
量産可能 | ゲッター炉 (ゲッターロボ) | 元々は火星で発掘されたもの。まだ完全解明 されていない。原理は不明だが早乙女研で複製可能 |
GSライド (ガオガイガー) | GGGの元世界では、GSライドの使用には国連の 許可が必要(建前上は)。 獅子王博士はGストーンを複製できるみたいです。 | |
シズマ=フォーグラー・ドライブ (ジャイアントロボ) | 中華共同体の主エネルギー源。 これについてのアイングラッド氏の考察 | |
核分裂炉 | 四国の伊方原発に設置。 運転開始は新世紀2年6月 | |
核パルスエンジン (ナデシコ) | 核爆発の反動を推進力にするもの。 厳密にはジェネレーターではなく推進機関。 | |
熱核融合炉 (マクロス) | ヴァルキリーに搭載。VF-1は熱核炉を用いたタービン エンジンだが、YF-15以降は吸入した気体をプラズマまで 励起させて噴出するバーストタービンエンジン。 新世紀2年1月の時点ではまだ軍事用技術 | |
熱核融合炉 (エリアル) | ARIELに搭載されているトカマク型レーザー 核融合炉LAF300は海上自衛隊の艦艇にも 採用された。(アドバンスト・エリアルに搭載されている LAF500型が戦艦エチゴに搭載予定) 熱核融合炉はアメリカ/チラムの主エネルギーと推測される。 新世紀2年1月の時点ではまだ軍事用技術 | |
ハイドロエンジン | 水素を燃料とする内燃機関。 ハイドロエンジンといえば普通はこっち。 | |
HBTエンジン (モスピーダ) | 複合水素を燃料とするハイドロエンジンの一種。 新世紀元年6月、遣エマーン艦隊がインビットと交戦して入手。 | |
燃料電池 | 水素と酸素を化学反応させ電気(と水)を得る。 来栖川電工のメイドロボに補助電力として搭載。 | |
太陽光電池パネル | 京レ、海援隊マテリアルなどで生産。 | |
液状石炭燃料 | 石油化学工業の原料の他にも、暖房や工業用 ボイラーに使用可能。 海援隊ケミカル工場で新世紀2年1月より量産開始。 | |
メタンガス | ゴミ処理リサイクル燃料として大阪で新世紀2年7月より 量産開始。 | |
メタンハイドレード | シャーベット上のメタンガス。北海道沿岸と 紀伊半島・四国の太平洋岸海底に多く埋蔵。 ベターマン世界では一般的技術と推測される。 |
これらのうち、政府は新世紀のエネルギー源として水素を選んだ。
水素燃料はハイドロエンジンと燃料電池、どちらも高い技術レベルを必要とせず、低公害であり、サイズも小さくて済むからである。また核融合炉は燃料として重水素・三重水素を必要とするのも理由の一つである。
どちらも動作原理については特許権フリー(細かい改良は実用新案として認可)とし、法律・工業規格の整備や水素生成プラントに対する助成補助金などでインフラ整備を支援している。
ハイドロエンジンと燃料電池が本格的に普及する(ガソリンスタンドで水素が買えるようになる)のは、新世紀3年以降と予想されている。またインフラがある程度整備されたら、石油エネルギーからの移行を促すため、ガソリン税の値上げが検討されている。
水素燃料以外のガソリンエンジン代替車としては、電気自動車も開発が進められている。
電気は水道と並ぶ最重要社会基盤であり、時空融合後の混乱の中でも(電力会社の並々ならぬ努力により)安定して供給されていた(計画停電は頻繁に行われたが)。資源エネルギー庁から“電力安定宣言”が出されたのは、新世紀元年六月下旬のことである。
水素燃料の安定供給が当分先となるのに対して、家庭用電源から充電可能な電気自動車は“どこでも簡単に補給できる”という条件を満たしている。電気モーターはパワーでガソリンエンジンに劣るものの、日常の足として使うには問題ない。事故に遭っても爆発炎上しない、という部分もポイントである。
電気自動車が“新世紀初の低公害車”として世に出てくるのも、そう遠くない話である。
(新世紀2年1月、海援隊プロデュースの電気自動車、プリリスが発売されて人気商品となりました)
理津子はモニターの画像をぼんやり眺めながら、思考を働かせていた。
オリジナルの2000GTを入手したとしても、単に観賞用とするには余りにも勿体無い。だからといって走らせようにも、1960年代の製品では技術的にポンコツもいいところだ。
まともに走らせるなら、エンジンを換装する必要がある。それもハイドロエンジンが良いだろう、電気モーターではスポーツカーらしくなくなってしまうから。ギアやサスペンションなどの足回りもエンジンに適したものにしなければならない、車体剛性も強化してやらないとカーブで横転してしまうし、そこまでまとめて手を入れるなら車体のバランスを取り直してやる必要がある。
つまり、外見を模しただけで中身はまったく別物のレプリカを作るのと変らない。むしろ、そう割り切って一から再設計してしまったほうが遥かに安く仕上がるだろう。
車体の外観データならオークションの出品画像から3Dモデリングが可能だし、そこから概略設計図を作ったら、後はMAGIにシミュレーションさせるだけ。
「…私ってば、いつの間にその気になってるのかしらね」
理津子はふと我に帰り、“美里に毒されてきたのかなぁ”と苦笑いした。
「まっ、いいか。美里は大学時代に自動車部だったし、あれこれ利用させてもらいましょ」
久々に自分のやりたいことが見つかって、理津子は嬉しくなった。今なら――珍しいことに――あのズボラな親友に感謝しても良い、と思えることに、更なる可笑しさを感じながら。
終
<アイングラッドの〜>
日本連合がシズマ−フォーグラー・ドライブを大々的に採用しない訳。
結論から述べるとシズマが非常に煩雑なシステムであり、いきなり導入を決定すると社会的な混乱が避けられないと言う判断が有った為である。
OVA版で描写されていた限りでは、各家庭やオフィスの家電OA機器からライターなどの雑貨に至るまでエネルギー源の全てをシズマによって賄っていた。それぞれの使用目的やエネルギー使用量に応じた形状の様々なシズマドライブが用意され、使用された後は完全リサイクルされていた。
しかし、家中の家電製品がコンセントからの電気の供給ではなく長持ちするとは言え電池で動かさなければならないと言う状況を考えてみると、家電製品毎と言っても良い程の多種類のシズマを常に用意して置かねばならずそれが切れるたびに交換しなければならない訳だ。
各家庭毎に中規模な家庭内中央シズマ−フォーグラー・ドライブエネルギー供給装置を設置すればその手間が省ける事も確かだが・・・かつて電気が物珍しい存在で直流電気しか知られていなかった頃、かの発明王エジソンは各家庭の地下に大型の発電機を設け電気の普及を図ろうとした。電気の減衰が激しい直流ではそれが最適だった訳だがニコラ・テスラによって交流が発明されてそれは解消され、我々は気軽に電気の恩恵を受けている。基本的にエンジンのメンテと燃料補給だけのそれですら多大な手間が掛かる、リサイクルシステム迄付いた家庭用の中央シズマシステムも煩雑な手間が掛かる筈だ。(もっとも、プロパンガスと同様の手間しか掛からないと言う意見もある)
中華共同体でもっとも煩雑な方法でシズマを利用している理由は、過去のエネルギー危機に於いて余程の危機的状況に陥りエネルギーの無駄使いを戒める目的であるとしか理解できない。
時空融合直後のエネルギー危機は、中華共同体で起きたバシュタールの惨劇と比較すると、電線が張り巡らされたまま供給元さえ立ち上げられれば努力する事で回避する事も出来るほど状況的に有利な物だった。
確かに時空融合直後にシズマ−フォーグラー・ドライブを大々的に導入すれば時空融合によって失業者となった方達の雇用の促進や電気機器の買い替えによる特需すら見込めるが、中華共同体の存在すら知らず、政府組織すら崩壊していた当時の日本政府にそれらが出来るはずも無く、ただ、国民の生活を守るため急速なライフラインの整備こそが必要だった。
だが、現実として中華共同体が日本連合のメインの貿易相手国である事は確かである、よってシズマ−フォーグラー・ドライブを無視する事は出来ない。同様にエマーン、チラムに対する規格への対応も必須である。
今後の対応として挙げられるのは
1、政府関連として。手間が掛かっても良い存在、現在の火力、原子力発電所の代わりにセントアーバーA(旧バシュタール跡地)の様な大規模シズマ−フォーグラー・ドライブを作り、電力として各家庭へ供給を行う事。
2、民間として。輸出用家電の開発にはシズマ−フォーグラー・ドライブの導入は必須、実は中華共同体世界では産業革命が日本で起こったために日本のJIS規格と同様のメートル法準拠であり、アメリカ向けの様なインチを使用する手間が掛からないと言うメリットが有る。つまりシズマ−フォーグラー・ドライブの根底にはJISの発展した規格が有るため、意外に容易に設計が可能なのである。
現に「りんくうタウン」では中華共同体向けに開発され始めた家電他ではシズマ−フォーグラー・ドライブ・NJISコンボ対応の製品開発が始まっている。
シズマ−フォーグラー・ドライブは低公害・低発熱という大きなメリットが存在する。
地球圏の熱死問題に対応する必要をひしひしと感じている日本連合政府としてはシズマ−フォーグラー・ドライブは大きな関心である事は間違い無い。
だが社会が完全に安定するまではそれらに取り掛かる事は出来なかった。少なくとも政府主導で導入を施行しようとしても失敗する事は間違い無かった。
その為政府としてはNJISにシズマ−フォーグラー・ドライブへの対応を盛り込み、民間ベースでの普及を図るしかなかった。
とりあえずの課題はシズマ−フォーグラー・ドライブの最大の利点であるリサイクルシステムの設置である。これが無ければただの電池と代わり無い。
ただし、本場のような多種多様のシズマ−フォーグラー・ドライブに対応していてはコスト的にどうしようもない程無駄が出るため、日本連合内で流通するシズマ−フォーグラー・ドライブは現在の乾電池と同様にある程度決まった規格の物が流通し、過不足は本数で補うようにしなければならないが。
そう言った方針を決めた後に新世紀12年ころを目標に乾電池のシズマ−フォーグラー・ドライブへの換装を目的としたリサイクルシステムの確立を図るのでは無いでしょうか。
だが、それにすがるしかなかった中華共同体と違い、石油代替エネルギーにシズマ−フォーグラー・ドライブを採用する政策を日本連合が採る事はまず無い。
まず社会基盤自体の変革が必要となり、電力会社の経営が難しくなる。
電力には電力のメリットが有り、或る地域で電力消費量が過大となっても他の地域の発電所から電線を通じて電気を融通する事が出来る。
シズマ−フォーグラー・ドライブなら大規模なダンプカーのコンボイが行き来しなくてはならず、常に外敵の侵略を受ける宿命を持つ日本連合の危機管理面からするとシズマ−フォーグラー・ドライブと電気を組み合わせたシステムが最も有効であるといえる。
だが、このシズマ−フォーグラー・ドライブの役割に既に水素燃料が入り込んでた為、シズマ−フォーグラー・ドライブの出番は電池代替品として以外国内には既に無くなっていた。
軍事用のエネルギーシステムとしてはシズマ−フォーグラー・ドライブはシズマ−フォーグラー管というデメリットがあった。出力とサイズの比率が大きく複雑な機構が必要とあり燃焼エネルギーにも変換できるシズマ−フォーグラー・ドライブだが基本的には回転翼による運動エネルギーが最も有効なシステムで有るようなので、シズマ−フォーグラー・ドライブが採用される余地は無いものと思われる。
軍事用に採用されている核融合エンジンに必要な重水素、三重水素が必要である事も理由のひとつに挙げられるだろう。
それらは水素の中に極僅かに含まれている為、大量に水素を扱う施設が有る方が効率が良いからだ。
だが、交易相手がシズマ−フォーグラー・ドライブを使用している事から自然とある程度は国内製品にも反映される事は確かなので、補助のエネルギーシステムとして採用するのが現実的かと思われます。
良く分からない結論になってしまった。反論お待ちしています。