『パンドラの箱』
Aパート
東京都新宿区市ヶ谷 防衛省防衛技術研究所
ここ防衛省防衛技術研究所では、時空融合時にさまざまな世界から現れた機体を調査し、それぞれの機体に用いられている技術を研究する事を任務としていた。
その研究対象は民間の企業や団体(科学要塞研究所など)から提供されている。
しかし、それは表向きに公表されている部分に過ぎない。
この研究所に与えられた本当の使命。
それは市ヶ谷駐屯地地下200mにある倉庫、通称『パンドラの箱』の中身を研究し、
陸海空各自衛隊の新兵器を開発する事であった。
この研究所は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地の敷地内の、地上5階地下8階の建造物の中にある。
地上1〜5階は研究室以外の全設備が入っている。
肝心の研究室は地下1〜8階にある。
それぞれの階に一つずつ第1〜第8研究室があり、それぞれが異なる分野を研究している。
第1研究室 敵の機動兵器に対処できる新型陸上兵器の開発。
現在四つの計画が進行中。
第2研究室 回収された敵軍事技術の研究と応用。
例、機械獣の戦闘システムを応用した無人戦闘機の開発。
第3研究室 砲弾、ミサイル、銃弾などの威力を増す為の弾薬・爆薬の研究。
第4研究室 レーザー・メーザー・ビームなどの光学兵器の研究。
民間の研究所からの協力により0式メーザー自走対空砲を完成。
第5研究室 新型合金、及び民間から提供された新素材
(ニュージャパニウム合金など)の研究及び応用。
現在、新素材を使った複合装甲(チョバムアーマー)を開発中。
第6研究室 出現した敵の分析、及び有効な戦術立案の補佐。
第7研究室 ニーズに応じた新型武装の開発。
現在、対機械獣用振動地雷(瞬時に地面を液状化させ移動を妨害する地雷)や
89小銃用新型徹甲弾の開発を行っている。
第8研究室 『パンドラの箱』に収容されている機体の調査及び保守。
「なってない、全然なってない」
新人の企画書を捨てながら第1研究室主任である斎藤弘之は言った。
「なぜですか!?」
「いいか新人さん?俺達が今研究してるのは、強い戦車じゃないんだよ。戦車に変わる機動兵器なんだよ。そこを考えろ」
「しかし、機動兵器なら特機(特殊機動自衛隊)に腐るほどあるじゃないですか!」
先ほどの新人がつばを飛ばしながら反論する。
「何もあんな馬鹿でかいのを作れとは言ってないだろ、俺達に求められてるのはレイバーサイズだぞ、民間企業に出来てなんでウチでできない?」
「できないとは言ってません!」
「じゃあやろうぜ」
むきになったところですかさず隙を突く。
「……わかりましたよ、しかし一体どんな奴を作れば良いんだか…」
「一応陸自さんからの要望は来てるぞ」
そう言って書類を出す。
「拝見してもいいですか?」
「ああ」
新人に書類を投げる。
「なになに……レイバーサイズで、90式戦車以上の火力!? しかも戦闘ヘリ並みの機動性だぁ? こんなもん作れるわけがないじゃないすか」
「そうとも言いきれないぞ」
「言いきれないって、もしかして主任にはなにか考えでも?」
新人が不安そうに聞く。
「いやな、一応地下で理想的な機体見つけてはいるんだ」
「本当ですか!?」
「ああ……そうだ、お前も見ていけ」
「はいっ!」
二人はさらに地下へと向かうエレベーターへ向かった。
市ヶ谷駐屯地地下200m、厚さ25mのコンクリートに覆われた巨大な格納庫。
それが、防衛省S級秘匿施設、通称『パンドラの箱』である。
ここに収納されているのは、その有効性に疑問があるものや、あまりにも威力が強すぎて使用が禁止された兵器、兵器は来たが搭乗員は来なかった物である。
例えば都市防衛用空中移動要塞スーパーX1を始めとする対ゴジラ用兵器や、一部の世界が持っていた原水爆、N2爆雷を始めとする大量破壊兵器などである。
これらは下手をすると使用した周辺地域全域が消滅する危険性があるため、後が無くなるまでは使用しないと決定されていた。
今回斎藤が目をつけたのはWAP(ヴァンドルング・パンツァー)である。
「主任、こいつは一体どんな機体なんですか?」
機体の前に付くなり新人が言った。
「これはWAP、西暦2112年から来た霧島重工の倉庫から発見された機体だ。動力源はハイドロエンジン。これはなんと水を動力とする画期的なエンジンだ。また、WAPはレイバーサイズであるにもかかわらず、その機動性、装甲などには特筆すべき物があり、既に第2と第5研究室が調査を開始している」
WAPの説明をし終わってから斎藤は新人に尋ねた。
「見た感じどう思う?」
「どう思うですか?………これで良いと思います」
「ほう、なんで?」
「関節についているアクチュエーターの量なんかを見ただけで間違っているかもしれませんが、空挺レイバーのより優れているような気がしまして……」
「気がするね……なるほど、君はなかなか見所があるなぁ。そう、実はこいつ戦闘ヘリ以上の機動性が見込めるんだ」
「凄い、それじゃあこのままでも陸自に持ってけるじゃないですか」
「ああ、だがこのまま出しても面白くない。ここは技術者らしく持てる限りの技術を投入すべきだとはおもわんか?」
「確かにそうですね」
返事を聞くと斎藤は始めてにこやかに笑った。
「よーし、そうと決まれば全員集めて緊急ミーティングだ」
「はっ」
始めましてT・Mです。今回、このSSに参加させてもらう事になりました。
特機に出番を持ってかれがちな自衛隊の為に新型でも作ってあげたいな。なんて思いましてこの話を書きました。
次はいつになるか分かりませんが早めに出したいと思ってます。
みなさん、楽しみにしてて下さい。
あ、そうそう。この作品も出して欲しいってのがある方、良かったらメールに書いて送ってください。
問題が無ければ出せるかもしれません。
それでは、また。