作者:こばやしさん


 時に西暦2282年。
 人類ははるか昔から信じて疑わなかった宇宙への進出をいまだ果たせずに居た。
 はばたき方を知らなかったのではない。
 行くあてを知らなかったのだ。
 その知りうる羽ばたき方も、実に幼く、稚拙なものであったが・・・・・。
 人類は、遥かなる宇宙の深遠へと思いを寄せながら緩やかな滅びの道を歩むかに思えた・・・・。
 だが、奇跡は起こった。


Super Science Fiction Wars Outside Story
鋼鉄の戦乙女(ワルキューレ)達


プロローグ 荒ぶる星オムニ



 西暦2540年。

 160年間の片道切符の旅を終えたオムニ開拓移民団は、長き旅を終え西暦2452年。新天地オムニの地を踏んだ。
 だが、惑星タイムスケジュールでジュラ紀に相応するこの若い星は絶えず人々を苦しめ続け、この計画その ものを亡き者にしようとしていた。 だが、帰る先を持たぬ人々は奮闘し、オムニの地はわずかずつでは有るが豊かな大地へと変わり始めていた。
 そのオムニに、今暗雲が立ち込めようとしていた。
 移民船団のオムニ到着に先立つこと83年前。地球において超光速恒星間航法の基礎理論が発見されたのだ。
 将来的にオムニが人類にとってそれほど遠い世界ではなくなる可能性を秘めたこの事実は、地球政府をして オムニ移民計画そのものを見直すきっかけとなる程のものであったのだ。
 その3年後に地球を発った移民船団には、地球圏全域から集められた100万の精鋭部隊と、地球政府から全権を委託された使節団が乗り込み、超光速恒星間航法が実用化された際のオムニ直轄領化を目指していた。
 2532年に到着した移民船団は、即座に兵力を展開。オムニを地球政府の管轄下に置く事を宣言。
 これに対してすでに30億を越える人口を抱えるオムニ政府は、あくまで地球からの独立を保つことを決定。
 幾度にもわたる折衝は物別れに終わり、ついに2535年1月、地球政府軍によるオムニ側偵察機の撃墜事件をきっかけとして地球政府軍は宣戦を布告。ここに人類初の星間戦争、第1次オムニ独立戦争の幕が切って落とされた。
 当初、兵力などの面で不利な戦いを強いられていたオムニ側は、西暦2539年を迎えて反撃に転じた。
 そのきっかけとなったのが、惑星開発用として使われていた人型ロボット、パワーローダーをベースにした装甲機動歩兵であった。
 当初は作業用ローダーを改造した簡便なものを使用していたオムニ軍であったが、西暦2540年。ついに専用設計の純粋な戦闘用パワーローダーの出現を見ることとなった。
 これによりオムニ独立軍(政府軍を改称)は一気に戦況を押し戻し、西暦2540年10月、女性のみで編成された特殊部隊第177特務大隊第3中隊「DoLLS(Detachment of Limited Line Service)」による地球政府軍拠点アトランタ宇宙港への奇襲作戦の成功を持ってオムニ独立軍の勝利のうちに戦いは終わったのだった。

「みんな、戦争が終わったわ・・・・」

 この日、アトランタ宇宙港上空を飛ぶ戦闘機からDoLLSのパイロットが言った台詞である。

 西暦2543年

 オムニ独立戦争から約4年。オムニの戦いの火種は完全に消滅したわけではなかった。オムニ政府の政策に反対する地球政府軍残党らが結集。反政府軍「ジアス(The Earth)」が結成されてしまったのだ。
 彼らは「大地球圏(グレーターアース・コンセプト)」を掲げ、オムニ政府に宣戦を布告。かりそめの平和は破られた。
 当初数ヶ月で終わると思われていたジアス戦役であったが、2544年4月に到着した移民船団が指揮権をジアスに移譲する形で組み込まれたことにより、一気に戦況は本格的内戦へと発展することとなった。
 この最中、第1次独立戦争で活躍したかつての第177特務大隊第3中隊隊長、ハーディ・ニューランドは戦線補強のためドールズを再結成し、彼女らは再びオムニ軍を勝利に導いた。
 その作戦の最中、ジアスが超光速航法が実用化されていることに望みを託して放った超高速タキオン通信は地球に届いていたかは定かではない。

 西暦2653年

 2度にわたるオムニ独立戦争から約100年の歳月が流れた。
 2488年に地球に先駆けて実用化した超光速恒星間航法「コラプサージャンプ」は、それまで160年間と言う歳月を必要とした
 オムニまでの距離を1年にも満たない時間へ短縮し、ついにオムニと地球はリアルタイムに行き来が可能な世界となった。
 だが、この技術が完成した当時に地球を覆っていた深刻な不況はこの事件を持ってしても解決のきっかけとはならず、大量の経済難民とも言える難民希望者がオムニになだれ込む結果となった。
 これにより、地球の不況はオムニにも飛び火し、オムニ開拓当初からの住民(オムニリング)は次第に新移民達に対しての排斥活動に入るようになった。
 新移民らが強制的に押し込められた小豊穣大陸のサイフェルト州においては、オムニ政府に対する反感が強まり、ついに2632年サイフェルト州はサイフェルト共和国として独立を宣言した。
 当初はこれを容認していたオムニ政府だが、2年後に大統領ジョン・ブラウンが暗殺されてから状況は一変した。 後任として選出された弟であるジミー・ブラウンは経営者としては有能であったが、政治家としての経験の浅さからか次々と政策を失敗させ、サイフェルト国内には次第にジミーに対する不信感が強まっていた。これに対してジミーは強硬的な政策を取り、次第に彼は独裁者への道を歩み出す。そして、議会を永久停止させ国の全権を把握した彼は、国内の不安の原因をオムニ政府の陰謀と決めつけついにオムニ連邦への全面戦争を仕掛けたのだった。
 長く続いた平和のためか、平和ボケとも言える状況に有ったオムニ政府は次々と敗退を重ね、次第に不利な戦況に押し込まれていった。
 この最中、オムニ政府は独立戦争時代に勇名を轟かせたDoLLSの復活を計画。陸軍少佐フェイエン・ノールの元集められた新生DoLLSは問題を抱えながらも様々な危機的状況を打開し、オムニ政府反撃の糸口をつかむ事となった。
 1年間の休戦を置いて、どうにかサイフェルト戦役は終結した。だが、この戦いはかつての独立戦争とは違い、奇妙な空しさだけがオムニを支配していた・・・・・・・。

 そのような状況に、時空振動弾は襲い掛かったのだ。
 このプロセスはアフリカ大陸に出現したゾイド連邦が巻き込まれたパターンと酷似していたが規模は小さく、方向性も超空間の規模のためか定まってなかったため、オムニ全土に至るまで影響を及ぼさなかった。と、言うよりは極めて局地的な影響にとどまってしまったのだ。
 原因はオムニと地球の連絡のために設置されていた亜空間通信システムであった。ジアス戦役の時期に完成していたこのシステムはオムニと地球の間に相対性理論を無視できる超空間のトンネルを構築することで情報の伝達速度を光の数百倍にまで高め、リアルタイムの通信を可能にしていたのだ。この超空間トンネルが結果として時空衝撃波の影響を収束させ、オムニに存在していた超空間通信施設とその周辺エリアのみを空間の彼方へ吹き飛ばしたのだ。
 そして、偶然これらの施設の周辺に駐留していたそれぞれの時代の「DoLLS」達も・・・・・・・。
 時空の渦に巻き込まれた彼女らは、広がった空間トンネルを地球に向けて引き寄せられていく。
 だが、彼女たちはすぐさま地球への出現を許されなかった。

 相克界に阻まれた彼女らは、知らないままに消滅するかに思えた。
 だが・・・・・・。






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